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2012-11-03 文藝評論家・山崎行太郎の政治ブログ 『毒蛇山荘日記』
「最高裁事務総局」とは何か?「最高裁事務総局」が司法全体を支配している。僕が「最高裁スキャンダル」というのは、この「最高裁事務総局」の司法全体の支配と言う問題にかかわっている。つまり、検察や裁判の本当の黒幕は、この「最高裁事務総局」だと言うことである。しかし、裁判問題や検察問題の「素人」である我々にとって、これまで、「最高裁事務総局」とは、まったく未知の領域だった。この「最高裁事務総局」という組織の司法支配の問題が、全面的にクローズアップされたのは、「小沢裁判」のおかげである。つまり、「最高裁事務総局」の問題は、言い換えれば、「最高裁スキャンダル」は、「小沢裁判」の深化、展開によってはじめて可能になったと言っていい。ー「小沢裁判」と「最高裁スキャンダル」再考(14)
さて、「最高裁事務総局」とは何か?何が問題なのか? 植草一秀氏は、『日本の独立』で、この「最高裁事務総局」について、こう書いている。
新藤宗之氏は、日本の裁判制度を歪めてている元凶が「最高裁事務総局」にあることを喝破した。最高裁は司法修習生時代に裁判所トップエリートを選出し、この一握りのトップエリートに最高裁事務総局の権限を担わせてきているのだ。トップエリートは最高裁事務総局と主要各地裁判所判事、法務省官僚を歴任し、日本の裁判所裁判を実質的に支配している。裁判員制度が導入され、司法制度改革が進められているとの説明がなされているが、本質的な司法制度改革にはまったく着手すらされていないのが現状である。一般国民は職業裁判官と検察官がお膳立てを終えた事案について、最終的な量刑決定にのみ駆りだされる。これが、裁判員裁判制度だ。新藤氏は、司法制度改革の本丸がどこに存在するのかを明確に指摘する。(『日本の独立』P455)
日本国憲法第76条第三項には、「すべての裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」と書かれている。つまり「裁判官の独立」の問題である。しかし、この「裁判官の独立」が、まったく機能していないというのが、問題なのである。日本の裁判では、刑事事件の99%が有罪と言われている。ちなみに、イギリスは、50%らしい。これは、日本の裁判制度が、ほとんど機能していないと言うことであろう。日本の裁判官は、実質的には、裁判官の役割を放棄しているのである。ただ、裁判官席に座っているだけの「デクノボー」ということになる。したがって、我々が、一人一人の裁判官の「良心」や「思想」「能力」を問うことには、さほどの意味はないということでもある。これは、「ヒラメ裁判官」と言う言葉があるように、日本の裁判官は、「何ものか」の顔色を伺いながら、その「何ものか」、つまり「黒幕」の言いなりに判決を下している、ということだ。
裁判官は「独立存在」ではない。裁判官を支配し、コントロールしている組織や存在がある。それが、「最高裁事務総局」である。
では、「最高裁事務総局」は、どういう方法で、裁判官を支配し、コントロールしているのか。新藤宗幸氏は、『司法官僚』で、こう説明している。
判事補・裁判官の任用と再任用、転勤、昇任、報酬、部総括指名、人事評価などは、実質的に最高裁事務総局の司法官僚の手に握られている。そしてまた、選任の基準はまったく不明のままだが、判事補段階において司法官僚エリート候補生の選別が、最高裁事務総局によって行われている。(『司法官僚』)
日本の裁判官は、「最高裁事務総局」に支配、コントロールされている。裁判官は「独立存在」ではない。日本の裁判官は、人事も転勤も、そして経済や報酬も「最高裁事務総局」に握られているが故に、「最高裁事務総局」に逆らうことは出来ない。たとえば、「小沢秘書裁判『陸山会裁判』」において、東京地裁の登石琢朗裁判長は、「推認」という乱暴な言葉とともに「有罪判決」をくだした。「推認」で有罪判決が下されるとすれば、これはもはや裁判ではない。推認で裁判が可能であれば、証拠もなにも不要である。何故、こういう判決がくだされるのか。おそらく、この「推認による有罪判決」は登石裁判長の判断ではなく、「最高裁事務総局」の意向が、深くかかわっている。日本の裁判官は、「最高裁事務総局」の意向に逆らうことは出来ない。
「日刊ゲンダイ」(2012.1.19)に、「小沢裁判、黒幕いた!」「゛黒幕゛は最高裁事務総局」と言う記事が掲載されている。そこには、こんなことが書かれている。
小沢強制起訴を主導したのは、検察ではなく最高裁だったーー?本当ならば仰天する話だが、ブログを中心に検察審査会のデタラメを追求してきた匿名ジャーナリストの「一市民T」氏がこう告発する。「最高裁の中に事務総局という組織があります。ほとんど表に出てくることがなく、秘密のベールに包まれた組織ですが、実はここが小沢元代表をめぐる一連の裁判の゛司令塔゛なのです。」(「日刊ゲンダイ」(2012.1.19))
ここに登場する「検察審査会のデタラメを追求してきた匿名ジャーナリストの「一市民T」氏」こそ、僕と共著と言う形で、『最高裁の罠』を刊行しようとしている志岐武彦氏その人である。この記事には、司法関係者の話として、次のような記述もある。
「陸山会裁判で゛ミスター推認゛こと登石裁判官を裁判長に指名したのも事務総局だし、もちろん、小沢氏本人の公判判事も事務総局の差配です。」(司法関係者) 最高裁と検察が結託すれば、どんな人間でも塀の中に落とせてしまう。ー(「日刊ゲンダイ」(2012.1.19))
さて、「小沢裁判」の無罪判決の後、「指定弁護士」による「控訴」がなされたが、これも、「最高裁事務総局」の意向と無縁ではあるまい。「最高裁事務総局」の支配、コントロールは、「弁護士」の世界にも及んでいるからだ。つまり司法界全体に、直接的か間接的≪≫はともかくとして、「最高裁事務総局」の支配、コントロールは及んでいる。
「サンデー毎日」(2012.5.27)に、「小沢抹殺で法務官僚が謀った『大司法省』計画」と言う記事が掲載されているが、具体的に「最高裁事務総局」の名前は出てこないが、そこに「司法の暗躍」とか「弁護士を監督して法務省の権力拡大」「大司法省」という文字とともに、こんなことが書かれている。
二人(山崎注、小津博司東京高検検事長と黒川弘務法務省官房長)が恣意的に小沢氏の排除を図ったのなら、同機は何か。解明の鍵を握るのは「日本司法支援センター」、通称「法テラス」だという。法テラスは、法務省が所管する独立行政法人に準じる組織で、政府が全額出資する。法律に関するサービスや情報を提供する体制を充実させるため、06年10月に業務を開始。日本弁護士連合会に運営への参加を義務付けた。2人を知る法務省OBが話す。「理念自体は市民にとって聞こえは良いですが、法務省が弁護士を監督することで事実上の傘下に収める制度です。まるで戦前の旧司法省のように強大な権限を持つことに繋がるため、業務が始まった当時から批判を浴びています」( 「サンデー毎日」(2012.5.27))
これは、裁判所(司法)のことではなく、法務・検察のことであるが、弁護士を、法務官僚が支配・コントロールしようとしていることがわかる。「ヒラメ裁判官」がいるように「ヒラメ弁護士」が存在するというわけだ。いずれにしろ、立法、司法、行政の「三権分立」は、一応の原則、タテマエとしては成立しているが、それが怪しくなっているのが日本の現在なのだ。したがって、「司法(裁判)」と「行政(司法・検察)」がそれぞれ独立不可侵であるとは言い難い。
(続く)
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