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2012年11月02日(金)長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
臨時国会が始まった。最大の焦点は会期中に野田佳彦首相が衆院を解散し、年内に総選挙があるかどうか、だ。先週のコラムで、私は12月16日に都知事選と衆院のダブル選挙がある可能性に触れたが、このシナリオはいまも消えていない、とみる。
もちろん解散するかどうかは野田佳彦首相の腹一つである。ただ政権を取り巻く状況をみると、野田が解散を年明けに先送りしたところで、野田と民主党にとってプラスになる材料はほとんどなく、むしろマイナス材料が増えるばかりに思える。
野田が合理的に考えるなら、年内の解散と総選挙に踏み切ったほうが得策、というか痛手が少ない、と判断する可能性は十分あるのではないか。
■「いずれ政権奪回は確実」と自信を強める自民
情勢を整理しよう。
自民党にはもともと、本年度予算案にはムダやばらまきが多いので、1兆2,000億円程度の減額補正予算を組めば特例公債法案に賛成してもよいとする柔軟対応論があった。総裁選当時は石破茂幹事長もこの路線だった。ところが安倍晋三総裁が誕生してから、それに加えて「年内解散の確約がなければ特例法案に賛成しない」とハードルを上げ、北風の強硬方針に転じる。
だが、野田は頑として応じない。そこで特例法案に賛成し、野田から解散しない理由を奪う太陽作戦に転じつつある。実際、安倍は10月31日の衆院本会議・代表質問で、特例公債法案や1票の格差是正、さらに社会保障改革に関する国民会議設置について「重要性を十分に認識している」と述べた。
表面的には対処方針が揺れ動いた印象もあるが、国会開会前と後で対応が変わるのは自然な流れでもある。なぜなら、国会開会前から「解散確約がなくても特例法案に賛成しますよ」などと言えるわけもなく、いざ開かれれば、テレビ中継も入った審議で復興予算の流用問題などを追及したほうが野田の失政を際立たせることができるからだ。
ひと渡り追及した後で、さて採決はどうするかといえば、その段階でもう一波乱二波乱ある可能性はある。とはいえ、自民党があくまで反対すれば「国民生活を混乱させるのか」という批判が出るのは避けられない。
自民党内には「当初の方針通り、減額補正して賛成」という立場と「このまま成立させ、いずれ政権を握った後で修正すればいい」という両論がある。流れは「このまま成立、後で修正」という路線に傾きつつあるようだ。「いずれ政権奪回は確実」という自信が強まっているからだ。
■安倍は民主党との連立をはっきり否定
自民党の賛成で特例公債法案が成立すれば、一票の格差是正のための「ゼロ増5減案」も通りやすい環境になる。さてそうなると、野田は解散するのかしないのか。
はっきりしているのは、自民党がそこまで協力しても解散しなければ、野田の「近いうち解散」は嘘だったという話である。国民には「自民党だって協力してるのに、野田さんもひどいんじゃないの」といった受け取め方が広がるだろう。
もっと重要なのは、裏切られた側の自民党で野田民主党に対する不信感が頂点に達してしまう点だ。「金輪際、民主党政権には協力しない」という最後通牒を出すのは確実である。その結果、どうなるか。私は、安倍自民党が税と社会保障に関する「3党合意」を破棄する、とみる。
安倍は総裁選から「3党合意を守る」という立場を貫いてきた。それは党代表を目指す党人の立場として、谷垣禎一前総裁が苦労してまとめた3党合意を破棄する、とは言えなかったからだ。ただ、3党合意について懸念がなかったのかといえば、そうではない。たとえば「デフレが続いていれば、増税はできない」と公に表明している。
また年金や高齢者医療のような社会保障の根幹について、3党合意が「あらかじめ3党で合意を得る」と将来の連立をにおわせるような書きぶりになっているのも不満だった。安倍は民主党との連立をはっきり否定している。
そういう懸念を飲み込んで特例法案に賛成しても、野田が解散に応じないとなれば、安倍がそれでも3党合意を守らねばならない理由はない。
■衆参両院で共倒れという最悪のシナリオも
野田は解散を年明けに先送りすれば、来年度の予算編成ができる。各界各層に予算をばらまけば「野田政権がこんな予算をつくりました」と恩を売れるだろう。だが、その予算は「一時の張りぼて」だ。与党の過半数割れが目前に迫る中、予算案が来年の通常国会で衆院を通過するかどうかさえ分からない。まして来年度の特例公債法案はまたまたねじれ国会の下、成立しないからだ。
いずれ来年夏には衆院議員が任期満了になり、それまでに総選挙は必ずある。そのとき苦労してまとめた税と社会保障の一体改革は自民党の3党合意破棄でご破算になり、予算をつくったところで「張りぼて」である。それで選挙戦を戦えるか。
次の総選挙で民主党の敗北が確実視される中、野田にとってベスト・シナリオは自公民連立政権をつくって政権の一角に食い込む以外にないが、解散先送りではフイになる。来年夏に総選挙と参院選のダブル選になれば、衆参両院で共倒れという最悪のシナリオさえ現実味を帯びてくる。つまり、解散先送りの代償はとても重い。
3党合意が破棄されたうえ、総選挙に敗北した場合の民主党はみじめなものだ。野党として何を言ってみたところで、自民党は聞く耳をもたないだろう。
逆に年内解散・総選挙に踏み切れば、野田はぎりぎりのところで3党合意の枠組みを維持した形になる。安倍自民党の下では、自公民連立政権は望めないだろうが、少なくとも3党合意を足がかりに、野党として一定の面目と存在感を保つことはできる。
■財務省にも見限られた野田政権
野田政権を実質的に支えてきたのは財務省である。ところが、いまや財務省も完全に野田政権を見限っている。自民党本部には財務省幹部がせっせと通い「予備費で景気対策とはいかがなものか」と政権に対する不満をはっきりと口にしている。
予備費は憲法第87条第1項で「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、 内閣の責任でこれを支出することができる」と定められている。この条文に従えば、iPS細胞を使った再生医療の研究開発費や震災復興の企業グループ補助金などが「予見しがたい予算の不足に充てる」支出と言えるか。とても言えない。
グループ補助金が足りなくなったのは、そもそも復旧復興と関係ない支出に復興予算を流用したからだ。政権が役所の勝手な流用を容認しておいて、不足したから予備費で補填とはデタラメにもほどがある、という話である。
次の政権を見越した自民党へのリップサービスという面はあるが、予備費を財源とした景気対策に財務省が異論を唱えるのは、財政を預かる役所として当然なのだ。
前原誠司国家戦略相は野田政権の閣僚でありながら、公然と年内解散を主張した。ほかの閣僚はどうなのか。本心から解散先送りが得策と考えているのか。野党の代表質問を聞く野田の目は宙をさまよっているように見えた。
(文中敬称略)
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