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今までは、小沢案件が第五検審で審査されるようになる経過を時系列で見てきたが、ここからは検察審査会そのものについて見ていこう。
東京第五検察審査会 解体新書 −その1− →
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検察審査会とは
検察審査会とは検察が嫌疑不十分等で不起訴処分とした事案について、告発人等がその処分を不服として申し立てたとき、一般市民から選ばれた審査員11人がその検察の処分の妥当性について審査する法律(検察審査会法)で定められた会をいう。審査結果として「不起訴相当(不起訴処分は妥当)」、「不起訴不当(不起訴処分は不当)」または「起訴相当(起訴すべきである)」のいずれかが議決される。
「不起訴不当」と「起訴相当」の違いが分かりにくいが、検察審査会法の第三十九条の五の第1号には、「起訴を相当と認めるとき起訴を相当とする議決」(「起訴相当」)、第2号に「前号に掲げる場合を除き、公訴を提起しない処分を不当と認めるとき公訴を提起しない処分を不当とする議決」(「不起訴不当」)と書かれている。
「不起訴不当」については「起訴すべき」とまでは言えないが、そのまま「不起訴」とするのは適当ではない、再度、処分を検討すべきというニュアンスである。
今西憲之氏(ジャーナリスト)の「検察審査会メンバーの告白」に、東京第三検察審査会で西松建設の二階ルートの審査員であったというA氏の告白が出てくるが、事務局から、「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」とプリントされた用紙が配付され、いずれかに印をつける仕組みで、簡単な理由を書くような欄もあったという。
「不起訴相当」と「不起訴不当」は過半数の6票あればそれぞれ「不起訴相当」、「不起訴不当」となるが「起訴相当」はハードルが高く、8票以上の票が必要になっている。
以上のように書くと、ある事件を審査するため、その都度、審査員が集められ検察審査会が開かれるように思われたかもしれないが、検察審査会は常時開催の体制にあり、そこにいろいろな案件が持ち込まれて審査される。小沢事件といえども審査会にとっては案件の一つに過ぎない。
検察審査会で審査した事件はその審査状況をまとめた「審査事件票」がつくられる。それには受理日、審査開始日、議決日、審査会開催数、検察官出頭回数、審査補助員出席回数等が書かれている。それを見ると、平成22年に第五検審が審査した案件は全部で33件あり、一回目の小沢事件はその5番目(追番号5番)の案件であったことが分かる。また、この小沢事件について同様の審査申立てが13件提出され、一回目の「起訴相当」議決を行った4月27日にそれらは申立権がないとして全て却下されている。
審査員の選ばれ方
検察審査会は地方裁判所及び地方裁判所支部の所在地に設置され、検察審査会の管轄区域は、政令で定められている。第五検審の管轄は東京都の特別区及び三宅村、小笠原村などの島しょである。
各市町村選挙管理委員会は毎年8月15日までに登録されている選挙人名簿の員数を管轄の検察審査会に報告することになっている。検察審査会事務局は集まった員数を基に翌年の検察審査員候補者400人(第1群(任期2月〜7月)、第2群(同5月〜10月)、第3群(同8月〜1月)および第4群(同11月〜4月)の各100人)を各市町村選挙管理委員会に割り当て、その割り当て数を通知する。各市町村選挙管理委員会はその割り当てられた員数分を選挙人名簿からくじで選出し、事務局にその名簿を提出する。
事務局では提出された名簿を予定者名簿ファイルとしてまとめ最高裁に送付、最高裁では各検察審査会から送られてきた名簿ファイルを集約し、部外委託により11月15日までに候補者となった400人に対して決定通知書を送付する。その後、最高裁から集約され戻ってきた検察審査会候補者名簿は各検察審査会で選定くじシステムに登録される。
審査員の任期は6カ月であるが、それぞれ3ヶ月毎に群が入れ替わるようになっており、各群の任期が始まる2月、5月、8月、11月の2カ月半前には「質問票」を送付し、検察審査員となることが出来ない者でないか、また辞退する理由があるかどうかが、あらかじめチェックされる(2月の第1群では「質問票」は部外委託業者によって決定通知に同封される)。それらに該当するものがいれば、事前に選定くじソフトにより候補者から排除される。
検察審査員となることが出来ない者は裁判所、法務省、警察職員(それぞれ非常勤の者を除く。)、自衛官、弁護士、弁理士、公証人及び司法書士などであり、また辞退出来るものは、70歳以上の者、国又は地方公共団体の職員及び教員 、学生及び生徒などで、また重い疾病、海外旅行その他やむを得ない事由があって検察審査会から職務を辞することの承認を受けた者となっている。
有田芳生参議院議員の「酔醒漫録」には一回目の審査員候補者の辞退率は21年第4群が22%、22年第1群が40%で、二回目の審査員候補者の辞退率は22年第2群が33%と22年第3群が29%であったことが書かれている。
選定くじソフトによる審査員の選定
その後、任期の前々月の月末までには判事、検事の立ち合いのもと、選定くじソフトにより、排除されなかった候補者の中からそれぞれ審査員、補充員が選定される。審査会は2つの群の11人の審査員で構成されるが、補充員は審査員の欠席の場合を考慮し、審査員予備群として同人数が選定されるのである。第1群と第3群は各5名、第2群と第4群は各6名である。選定が終ると、審査会会長名で「決定通知及び招集状」、「出欠表」、「アンケート」および日当と旅費の振込のための「口座振込申出書」が送付され、選ばれた審査員、補充員は「出欠表」、「アンケート」および「口座振込申出書」を任期開始月の前月、15日までに返送するようになっている。
このソフトにより選ばれた審査員の平均年齢は一回目、二回目ともに34.55歳であったことが公表されている。20歳から69歳(70歳以上は辞退できるため)までの成人が審査会に参加するとして、平成22年度の東京都の国政調査データの年齢別人口構成をもとに平均年齢が2回、34.55歳になる確率を数値シミュレーションすると、確率は185万分の1になるという。
統計学では確率的に「偶然とは考えにくく、意味があると考えられる」有意水準という概念がある。一般的には5%(20分の1)を用いるが、社会科学などでは10%(10分の1)を用いる場合もあり、厳密さが求められる自然科学では1%(100分の1)などを用いる場合もあるという。
この平均年齢34.55歳の一致についてはあらためてじっくりメスを入れていこうと思う。
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