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2012年10月20日 植草一秀の『知られざる真実』
私たちの大切な日本の舵取りをいつまでもペテン師に委ねておくわけにはいかない。
大多数の主権者国民がそう考えている。
他方、日本の政治を特定の既得権益の利益確保のための仕組みとして温存しようとする勢力は、ペテン師であれ低能力の人物であれ、とにかく目的のためには手段を選ばないとの判断を強めている。
大事なことは主権者である国民が主権者としての自覚を持ち、この国の方向を定めるのは自分たちであるとの認識をはっきりと持つことだ。
その際、マスメディアが流す情報というものは、特定の利害関係者、すなわち日本の既得権益の意思を反映した、色のついたものであることを、あらかじめはっきりと知ったうえで接触することが必要である。
いまの政治が混迷を極めている根本的な原因は、野田佳彦政権に民主主義政権としての正統性がまったくないことだ。
主権者が選挙で野田佳彦政権を樹立したのなら、野田政権には正統性がある。思う存分、力の限りを尽くせばよい。
しかし、野田佳彦政権はこのようなプロセスを経て誕生していない。
最大の問題は、選挙の際に主権者と政党とが交わした契約、すなわち「提示した公約に責任を持ち、政権を担う際にはこの公約に基いて政治を運営する」という根本原則が踏みにじられていることだ。
その典型例が消費税問題である。
消費税増税問題は2009年8月総選挙および2010年7月参院選での最大の争点であったと言ってよい。
この選挙で民主党は、
「シロアリを退治することが先決。シロアリ退治をしないで消費税増税に進むことをしない」
ことを確約した。
この契約を主権者国民との間で交わして民主党は政権を得たのである。
野田佳彦氏が現在進めていることは、この契約と正反対のものである。
野田佳彦氏は主権者国民を騙してシロアリ退治なき消費増税に突き進むことを約束して財務省の支援を得たのである。
野田佳彦氏は自らの魂を売り渡して、首相ポストを手に入れた。
首相ポストが欲しいがために、主権者の意思を踏みにじるという、政治家として許されない行動に進んだのである。
どんなに綺麗ごとを並べても、この一事によって、野田佳彦氏が「詐欺師」の汚名から離れることは永遠にないだろう。
消費増税に突き進むことが、日本国民の幸福のためであるとの確固たる信念の下の行動であるなら、野田氏の行動は理解され得るだろう。
しかし、現実は違う。
野田氏は首相ポストを手に入れるという「私欲」を満たすために、主権者国民との神聖なる約束、契約を自ら進んで踏みにじったのである。
万死に値する行動だ。
国民に巨大な負担を押し付けて、官僚機構はどう行動しているのか。
「復興」の名を使って、自分たちの身の回りの備品を整備するなど、暴虐の限りを尽くしている。
国民に負担を求める前に、天下り利権、わたり利権を手放すのが先決だろう。
野田佳彦氏は2009年にこのことを声高に絶叫しながら、いまや、天下り廃止もわたりの根絶も、一切口にしなくなった。
財務省はいま、2012年春の日銀人事での天下り利権奪還に全力をあげ始めている。
日銀の白川方明総裁は、余人をもって代えられない日銀総裁の適任者である。
日本がデフレから脱却できないのは日本銀行の責任ではない。
最大の責任者は財務省である。
財務省の経済政策が間違いを続けてきたために、デフレが長期化、深刻化しているのである。
その責任を財務省は日銀に押し付けるとともに、この「ガセネタ」を流布することによって、日銀幹部ポストを奪還しようと考えている。
短期金融市場に資金を供給しても、その短期資金が金融機関の与信活動につながらない限り、市場に流通するマネーサプライの増加にはつながらない。
畑に蒔かれることのない種子を大量生産しても、果実が増えることはないのだ。
財政政策当局は財政政策運営の健全性を主張するが、それならばなぜ、金融政策運営の健全性を重視しないのか。
金融理論の専門家の立場から評価して、白川方明日銀総裁の金融政策運営には非難すべき点はほとんど存在しない。
話が横道にそれたが、野田佳彦政権にはまったく正統性がないから、直ちに総辞職ないし解散を行うべきである。
新しく発足させた内閣でも重大問題が次々に発覚している。
暴力団との関係が暴かれると突然体調不良になって病院に入院するなど、箸にも棒にもかからない対応だ。
野田氏が解散を先送りしようとしているのは、来年支給される政党交付金を1年でも多く確保するためであると思われる。
来年支給される政党交付金のなかの議席割部分は2013年1月1日時点での議席数に準拠して支払われる。
総選挙を実施すればいまの民主党はほぼ壊滅的な影響を受ける。
その場合、民主党が受け取る政党交付金は激減する。
このカネ欲しさに総選挙を先送りすることが画策されている。
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