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日本維新の会の公開討論会に出席した(左から)代表の橋下徹大阪市長、審査員役の竹中平蔵氏、幹事長の松井一郎大阪府知事ら=9月29日午後、大阪市住之江区
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20121015/plt1210151719003-n1.htm
2012.10.15 ZAKZAK
次期衆院選で、大量の議席獲得が目されている橋下徹大阪市長率いる新党「日本維新の会」。このところの世論調査では支持率が低下しているが、あまり注目されていない経済政策にも落とし穴がある。キーワードは「小さな政府」と「竹中平蔵氏」だ。
■崖っぷちにある「大きな政府」の民主政権
「これって、小さな政府ですよね」
広島支局から東京政治部に異動となり、半年あまりたった平成14年の早春のころだったと思う。ある大臣秘書官にこんな質問をした。
米国ではブッシュ大統領の政策が「小さな政府」と喧伝されていた。時の小泉純一郎首相も道路公団改革や「三方一両損」による医療制度改革など、その政策は明らかに「小さな政府」を志向しているように見えた。
小泉政権の発足からいえば、1年近く経っていたが、日本では「小さな政府」という言葉を表だって聞くことはなかった。だから、「これって?」と、おっかなびっくりの体で問うたのだったが、答えは「そうですよ」という拍子抜けするほど簡明なものだった。
あれから10年余り。米国では共和党から政権を奪取した民主党が、日本では自民党から政権を奪った民主党が、それぞれ政権を明け渡すかもしれない状況にある。
そして、日本の政局の中心にいるのが、橋下徹大阪市長、松井一郎大阪府知事が代表と幹事長に座る「日本維新の会」。その政策「維新八策」には、首相公選制や国会議員の歳費3割カット、省庁の次官・局長級幹部の政治任用など、波紋を投じた政策が多い。
このため、経済政策はあまり注目されていないが、その理念は明瞭だ。「財政・行政・政治改革〜スリムで機動的な政府へ」の中では、明確に「小さな政府」を謳っている。
■「援軍」竹中氏の公募委員長就任
そして、来る総選挙に向け、「日本維新の会」の衆院選候補者を選定する「公募委員会」委員長に就任したのが、小泉政権で構造改革を強力に推し進めた竹中平蔵元総務相だ。
竹中氏は「日本維新の会」の公開討論会にも有識者の立場で出席するなど、その政策に陰に陽に大きな影響力を発揮し、「小さな政府」を推進していく援軍になるとみられる。しかし、この援軍は吉と出るのか、凶と出るのか。
日米の民主党政権はともに、「大きな政府」を志向し、財政赤字はともに悪化した。財政赤字の縮小のためには、「小さな政府」を志向することは悪いことではない。国内総生産(GDP)の2倍となる1千兆円もの債務を抱える日本にとっては、民間活力を最大限活用し、財政支出を抑える「小さな政府」はむしろ、歓迎されるべきだ。
しかし、「小さな政府」の理論的根拠にもなってきた米国の経済学者、故ミルトン・フリードマンが率いてきたシカゴ学派は旗色が悪い。97〜98年に発生したアジア通貨危機は乗り越えたものの、2008年のリーマン・ショックに続き、欧州債務危機を招いたのが、シカゴ学派の流れを汲む理論と目されているからだ。
銀行と保険、証券会社の垣根を取っ払い、国や企業の破綻に賭けることができるようなクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)などを世界中に巻き散らかして、今の危機を招いたのではないか。
直接的な危機の原因が金融機関によるCDSの乱用といったモラルハザードなどであったとしても、そうみなされてしまいがちなのには理由がある。新自由主義と呼ばれ、時には市場原理主義の呼び名で批判されてきたシカゴ学派の流れが、規制緩和を求め、市場の自主性を最大限に尊重するよう求めてきたからだ。
そして、小泉政権の主要閣僚を歴任してきた竹中氏は、一部から日本を代表する市場原理主義者と目されてきた。そのイメージこそが、政策能力にも発信力にも長けている竹中氏という援軍が諸刃の剣になりかねない所以だ。
■修正求められる市場原理主義
欧米ではこの危機を脱するため、緩和し続けてきた金融機関に対する取引規制などを強化する方向で議論がなされている。これは明らかに、市場原理主義的なものを修正する動きだ。
東大で経済理論や経済思想を学んだ佐伯啓思・京大大学院人間・環境学研究科教授はその著書「経済学の犯罪〜希少性の経済から過剰性の経済へ」のなかで一連の動きを分析。「新自由主義体制の破綻を誰の目にも示したのがリーマン・ショックであり、それに続く世界経済危機であった」と指摘している。
もちろん、金融面における挫折が即、「小さな政府」の全面的な否定につながるわけではない。「民にできることは民に」という小泉首相のキャッチフレーズに今も魅力を感じる人は多いはずだ。
しかし、順風のなかで「小さな政府」を掲げるのと、逆風のなかで掲げるのとでは、その効果には大きな違いが生じるはずだ。
「維新八策」には、「無駄な公共事業の復活阻止」や「社会保障制度の世代間・世代内不公平の解消」など、多くの人の賛同を得られそうな事柄も多い。しかし、「解雇規制の緩和」や「混合診療の完全解禁」など、「小さな政府」に賛同する立場からも異論が出そうな政策が散見される。
「日本維新の会」は近く、次期衆院選に向けたマニフェスト(政権公約)を策定するが、中身次第では国民からの支持率がさらに低下することもありそうだ。
(飯塚隆志)
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