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政治亡国と震災に沈むこの国に久々の朗報と大騒ぎ ノーベル医学賞 山中教授受賞 快挙のすべて
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2012/10/9 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を開発した山中伸弥・京大教授のノーベル医学・生理学賞受賞は久しぶりに明るいニュースだ。難病克服、再生医療と夢は膨らむが、それはそれとして、山中教授には静かな環境で研究に没頭して欲しいものだ。
ノーベル賞受賞で、大メディアは大騒ぎ、野田政権も悪乗り、国民も熱狂しているが、顔をしかめたくなる動きも中にはある。山中教授の快挙と、今後の夢と懸念を考えてみた。
◆人類は病気から救われるのか否か
ふつう、ノーベル医学賞は、その技術が医療の現場で実用化されてから受賞が決まるケースが多い。今回の山中教授の受賞は異例中の異例といえる。
iPS細胞はまだまだ実用化段階ではないからだ。それでも受賞が決まったのは、それだけ「未来」があるからだろう。皮膚や血液の細胞に3、4種類の遺伝子を導入して作り出すiPS細胞は万能細胞といわれ、そこから神経や内臓、骨などを作り出せる。実用化されれば、早い話、病気の臓器は交換できるし、新薬開発のために実験用の臓器を作ることもできる。それだけに「あらゆる病気に効くのではないか」と期待されているのだが、今はどのくらいの段階なのか。
「もっとも早く実用化されるだろう」とみられているのはiPS細胞で再生した目の網膜の移植だ。こちらは来年から本格的な研究が始まり、うまくいけば加齢黄斑変性症が治る可能性があるという。加齢によって網膜の一部が衰え、視力が落ちて失明することもある病気だ。すでに動物実験では視力が回復することが分かっている。網膜は紙のようなもので複雑な立体ではないから、それだけ簡単なのである。
「他に期待されるのが、難病指定されているパーキンソン病です。ホルモンを分泌する細胞の変性が主な原因ですが、理屈は加齢黄斑変性症と同じで、要するに“壊れた”細胞をiPS細胞を使って新しいものに取り換えるのです」(医学博士の米山公啓氏)
新薬開発については、認知症薬などの研究が進められている。世界中の製薬会社、研究機関が実用化にしのぎを削っていて、「いずれ数兆円規模の市場になる」(製薬会社関係者)といわれる。
とはいえ、人類がすべての病気から救われるわけではない。山中教授も「万能細胞といわれることもあって、きょうあすにも病気が治るという誤解を与えてしまっている」と“慎重”だ。
そもそも現時点では、iPS細胞で作れるメドが立っている臓器は網膜などに限られている。
「理論上は臓器丸ごとも可能ですが、実現は数十年先です。糖尿病患者が膵臓を丸ごと取り換えるということはまだまだ考えられない。生活習慣など複雑な要素が絡んでいる病気への応用も難しい。高血圧症の場合、臓器の一部を取り換えれば治るというわけではありませんからね」(米山公啓氏=前出)
改良が進んだといわれているが、移植した細胞ががん化する危険性も指摘されている。安全が確認されて実用化されるまでには10年単位の時間がかかるし、それでも治らない病気は残るのだ。
◆これは日本人の誇りなのか、それとも個人の才能なのか
受賞の記者会見に臨んだ山中教授は「日の丸の支援がなければ、このような素晴らしい賞は受賞できなかった。日本の国が受賞した賞だ」と謙虚に語った。
新聞の号外を読んだ人々も口々に「日本の誇り」とコーフンしていたが、こうやって、一研究者の偉業を「国家の誇り」にしてしまうのが、日本人の危ういところだ。五輪もそうだが、みんなが「ニッポン、ニッポン」みたいになる。
確かに他の研究と比べると、iPS細胞の研究は「純粋に国内で誕生した技術で、世界が後を追いかけている」(山中教授)。とはいえ、そこに国がどれだけ関わっていたのかというと、大したことない。
山中教授が勤める京大iPS細胞研究所は2年前に発足、約200人のメンバーが研究を重ねているが、年間予算は40億円程度だ。職員の90%は非正規職員で不安定。山中教授自身、「目下の日本経済の状況を考えると決して文句の言えない規模の支援をいただいている」と言いながら、「雇用は最大の問題」とこぼしている。iPS細胞の研究は海外で特許権を取ることが重要になるが、そのエキスパートも全員、非正規職員だ。
山中教授は神戸大卒業後、国立大阪病院で約6年間、臨床研修医をやった。その後、カリフォルニア大のグラッドストーン研究所の研究員になったが、帰国後は国内の研究環境のひどさに絶望、一時は研究を断念しようと悩んだこともあるという。奈良先端科学技術大学院大学に入って、ようやく、研究を続けられるようになったのだが、ここに入ったのは公募。その研究成果が注目され、ある程度の予算がつくようになったのは、つい最近のことなのだ。
◆ノーベル賞を取るとアンタッチャブルに
大阪病院で同僚だった坂和明・十三市民病院整形外科副部長は若い頃の山中教授をよく覚えていた。
「非常に優秀でしたね。英語の文献の読書会みたいなのをやるんですが、大学を出た直後ではきついのに、彼は上司、先輩の分までこなしていた。その頃から、コイツは違うな、と思っていました」
しかし、だからといって、特別な支援を受けられたわけではない。それなのに、ノーベル賞をもらうと、いきなり、「日本の誇り」になってしまうわけである。
読売新聞の科学部記者だった作家の三好徹氏はこう言った。
「1949年に湯川秀樹氏が日本人として、初めてノーベル賞を受賞したでしょう。戦後の重苦しいムードを吹き飛ばしてくれた。以来、ノーベル賞は国の誇りみたいな扱いになるんですが、欧米ではこんな騒ぎ方はしませんよ。おかしいのは受賞者まで神格化され、アンタッチャブルになってしまうことです。湯川さんなんか、講演を取材に行ったけど、何を言っているのか分からない。会場にいた専門家に聞いてみたけど、みんな分からない。それでも皆、口をつぐんでいるんです。国の誇りになると、ああなっちゃうんですね」
言うまでもないがiPS細胞の研究は世界の人々のために行うものだ。山中教授はそのためにベストの環境、待遇を選ぶべきだ。「国の誇り」になったことで、ヘンに日本に気兼ねすると、世界の損失になりかねない。
◆野田政権はさっそく山中教授を政治利用するが野田にそんな資格はない
山中教授の記者会見は昨夜(8日)午後8時から始まったが、その直前、会見場に座る教授の携帯電話に野田首相から祝福の電話が入った。大勢の記者やカメラが取り囲む中、電話を取った教授は、「ありがとうございました。国を挙げて支援していただいたおかげです」と感謝していたが、会見場所への電話はいかにもわざとらしい。テレビがその映像を使うのを計算した上での行動なのだろう。
科学技術担当の前原大臣も「(iPS細胞の)一日も早い実用化を政治がバックアップしていく」とコメントを出した。京都が地元の前原は、「教授とは5、6年前からの知人。自分のことのようにうれしい」と親密さをアピールすることも忘れなかった。
野田政権は内閣改造をしても支持率下落が止まらない。だから政権浮揚のためには何でもアリだ。女子レスリングの吉田沙保里への国民栄誉賞も人気取りだ。そうしたら、山中教授のノーベル賞。野田が「シメシメ。これは使えるネタだ」と飛びついたのは間違いない。
これからは当分、世間は「ノーベル賞」と「iPS細胞」一色になる。野田は「被災地で復興を目指す方々を勇気づけられる」とか言っていたから、「iPS細胞」の研究費を“復興予算”にして増額することだってやりかねない。
「いまの野田首相を見ていると『溺れる者はワラをもつかむ』という言葉が浮かびます。山中教授のノーベル賞受賞は『ワラ』じゃないから、野田首相は舌なめずりでしょう。科学の世界は長い歴史があって評価されるもの。きょうあすのことしか頭にない政治家が口を出すべきではないし、人気取りで山中教授を利用するような卑しいことはすべきではありません」(政治評論家・森田実氏)
ロクなことをやっていないくせに、こういう時になるとシャシャリ出てくる政治家は本当に見苦しい。科学のカの字も理解していないくせに、「すっこんでいろよ」と言いたくなる。
◆京大にノーベル賞受賞者が多い圧倒的な理由
それにしても、また京大である。日本人のノーベル賞受賞者は、山中教授で19人目。そのうち第1号の湯川秀樹氏(物理学賞)をはじめ、実に7人が京大OB、あるいは京大在籍の研究者だ。
一方で、東大出身は6人。文学賞の川端康成氏と大江健三郎氏、平和賞の佐藤栄作氏を除けば、理系分野は3人だけ。世界基準でみれば、京大と東大の研究実績の差は圧倒的だ。
この違いの正体は何なのか。一貫して日本の原発の安全性に警鐘を鳴らしてきた京大原子炉実験所の小出裕章助教は、雑誌のインタビューでこう語っていた。
「私のような(国の原子力政策に盾突く)人間でも大学にいられるのは京大だからでしょう。東大の教員は国と結びついて、ステップアップしていく。でも、京大は研究者の個性を大切にしてくれる」
伝統的に京大の学風は自由で、基礎研究と創造性を重んじてきた。東大が「権威」の象徴だとすれば、京大は「反骨」だ。映画監督の大島渚氏や、俳優の辰巳琢郎など多くの異色OBを輩出しているのも特徴で、研究者にも在野の精神と、中央への対抗意識みたいなものがある。
「東大の研究室には国や民間から研究費が湯水のように流れ、そのカネは誰の目にも分かるような成果を求めたがる。研究費目当てに目先の研究成果を求めるあまり、東大の研究者は数十年後に花を咲かせるような基礎研究を軽んじてきたのです」(医療ジャーナリスト・天笠啓祐氏)
権力との距離の取り方が、権威におもねることなく地道な研究を重ねる京大との決定的な差なのだ。
◆山中教授の履歴と行く先
座右の銘は「人間万事塞翁が馬」――何が幸いするか分からないという故事の通り、山中教授は決して順風満帆とはいえない半生を送ってきた。
1962年、東大阪市の小さな町工場に生まれた。学生時代は柔道に打ち込み、大阪教育大付属天王寺中・高の同級生は「山中が勉強しているのは見たことがない。大学入試前日の夕方まで柔道の練習をしていた」と振り返る。
父の勧めで家業は継がず、81年に神戸大医学部に進学。今度はラグビーにのめり込み、10回以上骨折して整形外科の世話になった。
「整形外科の仕事は工場に似ている。自分に向いているんとちゃうか」
そう思い立って整形外科の研修医となったが、手術がヘタクソで指導医の邪魔ばかりし、ついたアダ名は「じゃまなか君」。全身の骨が変形している重症患者におじけづくこともあったという。
基礎研究に打ち込むことにして、93年に米カリフォルニア大へ。ここで後のiPS細胞につながる研究を始めたのだ。
充実した研究生活は4年近く続いたが、子供の教育を考えて帰国。99年に大阪市大の助手となるも、実験用マウスの世話に追われる日々で、日米の研究環境の違いに絶望。半分うつ状態になったのは有名な話。
そんな時に目に留まったのが、奈良先端科学技術大学院大学の助教授募集の広告だった。ダメモトで応募すると、採用通知が届いた。37歳で初めて自分の研究室を持ち、どうせならと、00年に掲げた大きな研究テーマが「皮膚から万能細胞を作る」。自身が「定年までにできるか分からない」と思った夢の細胞が5年後、京大に研究の場を移して誕生した。
まだ50歳。ノーベル賞受賞でいやでも応でも世界の注目が集まるが、「iPS細胞をめぐる世界規模の特許取得合戦に巻き込まれやしないか、心配です」と、前出の天笠啓祐氏はこう言った。
「本来、工学製品を扱うべき特許に、ヒトの遺伝子研究がふさわしいのか。その根本的な問いかけをタナ上げし、世界は特許戦争になっている。その輪の中に山中教授らも参戦してしまった。すでにiPS細胞は実用化に向け、世界中で巨額のマネーが動き出しています。軍事産業も注目する中、研究者がビジネスの大波にのまれる恐れがある。冷静な研究環境を維持できるのかどうか。そんな不安を感じます」
山中教授は「病気に苦しむ患者を助けたい」という信念を、どこまで貫けるのか。
◆これで村上春樹が文学賞を取った場合の大騒動
山中教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことで、期待が高まっているのが、小説「1Q84」が世界的に売れている村上春樹氏(63)の文学賞だ。毎年のように浮かんでは消えてきたが、「さすがに今年こそ」という声が強い。
「1994年の大江健三郎氏(77)から、文学賞受賞者はほぼ“欧州勢”で占められている。そろそろ“アジア勢”でもおかしくない頃ですからね」(出版業界関係者)
ちなみに英大手ブックメーカーの受賞者予想オッズは、村上氏が2倍で断トツ。最有力とみられているが、問題は2位が中国の作家、莫言氏(57)ということ。映画化された「赤い高粱」などで知られる。
「米国の中国系メディアも〈2人の一騎打ち〉と日中対決をあおっているし、中国のネット掲示板にも〈どちらが取るか〉というスレッドが立ってヒートアップしています」(前出の関係者)
そんな中で受賞が決まれば、なおさら、大騒ぎになるのだろう。村上氏が取れば、日本人のノーベル賞は20人目。またまた、テレビが騒ぎ、野田政権が悪乗りするのが見えるようで、それが怖い。
騒げば騒ぐほど、ノーベル賞の権威が落ちていくような気がしてならない。
◆中国・韓国への優越感にまたひたる日本人の危険
ノーベル賞狂騒はおそらく、当分続く。村上春樹氏が受賞すれば、なおさらだが、こうなると、心配なのが、アホな日本人の勘違いだ。ノーベル賞=日本の力みたいに考えている日本人が実は多い。大マスコミがその筆頭なのだが、こういう連中はたかがノーベル賞でコーフン、高揚し、ヘンな優越感を抱いたりする。その対象が中国、韓国に向きはしないか。なにしろ、中国でノーベル賞をもらっているのは平和運動家の劉暁波氏(平和賞)1人だけ。韓国も金大中が平和賞をもらっただけだからだ。
日本は山中教授が19人目。村上氏が続けば20人目。ノーベル賞狂騒が民族的優越感みたいなものに変化するとコワイ。日本の場合、そうした国民感情を政治が悪用しようとしているから、なおさらだ。アジア蔑視、欧米追随に拍車がかからないか。妙な心配が頭をもたげてくるのである。前出の三好徹氏は言う。
「マスコミの騒ぎ方、持ち上げ方にも問題があるんですよ。だから、国民も洗脳されて勘違いする。ノーベル賞って、ダイナマイトをつくった儲けでやっているわけですからね。もっとクールになっていい。湯川さんの受賞で国を挙げて騒いだでしょう。あれでおかしな方向になっちゃったんです」
山中教授の快挙は快挙として、国民はクールに受け止めるべきなのだ。
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