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「阿武隈共和国」の国歌は「夢で逢いましょう」
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12/10/04 新党日本 田中康夫 にっぽん改国 :日刊ゲンダイ
文芸評論家の畏友・斎藤美奈子嬢が「刺激的かつ挑発的な小説を読んだ」と教えてくれました。
村雲司(むらくもつかさ)氏が物した「阿武隈共和国独立宣言」(現代書館)。東京電力福島第1原子力発電所の事故で「帰還困難区域」に指定された相馬郡阿武隈村の古老達が、東日本大震災から丸2年の2013年3月11日、有楽町の日本外国特派員協会で会見を開き、日本国からの分離独立を宣言する物語です。
「祖先の多くは天明の飢饉の折、餓死で失われた相馬藩の人手不足を補う為に加賀、越中、越後、能登から秘密裏に強制移住させられた困窮農民。昭和に至っては国策の開拓団として酷寒の満州へ送り込まれ、敗戦時には軍にも見棄てられて多くの犠牲者を出し、先祖代々お上の都合で振り回されてきた私達が今また、塵芥(ちりあくた)の如く扱われようとしています」
「日本国政府は長年に亘って疲弊した地域を狙い、安全神話で騙し、補助金カットで脅し、原発を中心とするエネルギー政策を進め、その杜撰(ずさん)で悪辣な政策の結果が、多くの被曝した人間と広大な被曝した土地を生み出してしまった。国民の生命を賭けた博打をやって、金儲けしようとした連中の犯罪です。これから五年、十年と経過すれば、被曝した人達は重い困難を抱える事になる。この犯罪者を日本国は見逃そうとしています」
「私達は生きる権利を高らかに主張します。老いたる者は故郷で静かに終焉を迎える権利を有し、子供達、若者達、成人は速やかに汚染地を離れ、新しい土地で故郷の仲間と共に、健康で文化的な生活を営む権利を有します。国家の責任でこの全てを早急に実行に移すべきなのです」
「国民の条件は65歳以上。滅び行く故郷の最期を大地と共に看取ろうと決意した者達が、原発事故によって如何に滅びていくかを、インターネットによるあらゆる方法で誰に隠蔽される事も無く、隈無く世界に向かって公開する」独立国の国旗は、「暮らしの手帖」創刊者・花森安治に倣ってボロ布を継ぎ接(は)ぎした一銭五厘の旗。国歌は仮設住宅で歌った坂本スミ子女史の「夢であいましょう」と定めるのです。
「日本の美しい海、領土が侵されようとしている」と絶叫する政事屋は、「日本の海と国土は、外敵以前に放射能で侵されている」危機的な状況を見極めるセンスも欠落している、と斎藤嬢は慨嘆します。それは、強きを助け・弱きを挫(くじ)く「誤送船団・忌捨クラブ」村とて同然。鋭くも9月6日付で「日刊ゲンダイ」紙が短評を掲載した本書を紹介する「大新聞」は、果たして登場するでしょうか?
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