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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012100202000155.html
2012年10月2日 東京新聞社説
野田第三次改造内閣が発足した。マニフェストに違反し、民意から離れた野田政権継続の是非を衆院選で問い、政治を再び「民(たみ)」の手に取り戻したい。
昨年九月に就任した野田佳彦首相にとって、発足時の組閣と内閣改造合わせて四回目の閣僚・民主党役員人事だ。今回は半数近い八閣僚が留任とはいえ、約一年で四回の人事は、政権の迷走ぶりを象徴しているようでもある。
首相は記者会見で、閣僚・党役員人事について「山積する内外の諸課題に対処するため、政府・与党の連携を深め、内閣機能を強化する」のが狙いと説明した。
◆人事、1年で4回に
内外の諸課題に的確に対応し、国民の生活を豊かにするための政策実現に向けて、政府と与党が連携して政権運営、政策遂行に努めるのは当然である。
前原誠司政調会長を国家戦略担当相に、樽床伸二幹事長代行を総務相に、城島光力国対委員長を財務相に起用する一方、安住淳財務相を幹事長代行に、細野豪志原発担当相を政調会長に就ける「たすき掛け人事」を行ったのも、政府と党の一体感を高め、政策遂行の原動力にする狙いからだろう。
野田氏の党代表としての任期はあと三年間あるが、衆院議員、つまり首相としては長くても来年八月までだ。その限られた間、自らが思い描く政策実現のために、できるだけ長く首相の座にいたいと思う気持ちは分からないでもない。
首相が年内にもロシアを訪問することで合意したり、来年度予算編成に意欲を示すのは、そうした思いの表れに違いない。
しかし、首相には忘れてもらっては困ることがある。それは、二〇〇九年衆院選の民主党マニフェストに反する消費税増税を強行した野田内閣には、もはや政権の正統性がないという現実だ。
◆国民の思いと乖離
マニフェストは国民との契約である。社会保障を抜本改革し、その財源は消費税でなく、税金の無駄遣いをなくして創り出すと民主党は訴え、国民は政権を託した。
代議制民主主義である以上、国会での議論や状況の変化に応じ、公約がそのまま実現しない場合もあり得ることは理解する。
とはいえ、税金という議会制度の成り立ちにもかかわる根幹部分の公約を変えるのなら、国民にその是非を問うのが筋だ。
消費税増税以外でも、野田内閣の政策は、国民の思いと乖離(かいり)していると感じざるを得ない。
例えば原発政策。政府の討論型世論調査でも三〇年までの原発稼働ゼロを求める国民が半数近くと圧倒的なのに、それを最大で十年間も猶予する甘い目標を定め、それすら閣議決定しなかった。
首相が「一時的な感情でなく、原発に依存しない社会を目指す国民の強い覚悟を、政府も受け止める」と言っていたのは、またもや食言だったのか。
きのう、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場への配備が始まった米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの問題も同様だ。
墜落事故が相次ぎ、安全性が確立されたとは言い難い。報道各社の世論調査で日本への配備反対論が多数を占めても、首相は形ばかりの事故原因調査で「安全性は十分確認できた」と結論付ける。
内外多難な時期に衆院解散による政治空白は避けるべきだとの声もあるが、国民から遊離した政権が続くことこそ、政治空白だ。ただ、野田民主党から安倍晋三新総裁の自民党に再び政権が移っても、政治がよくなる確証はまだ得られていないというのが国民の率直な思いではないか。
巨額の財政赤字や、ずさんな原子力行政、官僚主導政治、沖縄県民の過重な米軍基地負担など、民主党政権が苦慮しているほとんどが自民党政権の「負の遺産」だ。
自民党が現実的な解決策を欠いたまま政権復帰しても、同じことの繰り返しだ。政権が代わるだけでよりよい政策が実現するというのは幻想にすぎない。これは前回衆院選の教訓でもある。
正統性を失った首相はただちに衆院解散に踏み切るべきだが、最高裁が衆院「一票の格差」を違憲状態と指摘したことは無視し得ない。与野党は党利党略を超え、格差是正を優先させる必要がある。
◆政策の徹底議論を
格差是正の法律が成立しても小選挙区の区割りに三カ月、新選挙区の周知期間に一カ月は必要とされる。つまり衆院選は当分先だ。
ならばその間、各党は国民の中に分け入って声を聞き、政策を徹底的に議論し、衆院選マニフェストとして磨き上げたらどうか。
有権者は政策を吟味し、次期衆院選で政権を委ねるに足る政党・議員を選ぶ。そうした地道な作業が、政治を再び「民」の手に取り戻す第一歩になる。
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