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アメリカに潰される政治家たち−米国の<対日圧力>を看破した二人 元外務省国際情報局長・孫崎享、作家・関岡英之(対談)
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11368730048.html
週刊ポスト(2012/10/12号) 頁:39 :大友涼介です。
尖閣諸島問題に端を発した「反日デモ」が中国全土で繰り広げられる中、民主・自民両党の党首選では、『毅然とした態度を取る』(野田佳彦首相)、『中国には国際社会の一員としての資格がない』(安倍晋三自民党新総裁)など、中国に対する厳しい発言を各候補が繰り返した。
それは当然である。しかし、その勇ましい論戦に耳を傾けた人にはこんな思いを持った人が少なからずいたのではないか。「なぜ、誰もアメリカには物申さないのか」と。
オスプレイ配備、TPP参加問題などで「外圧」を強める米国には、誰一人として批判的な発言を口にしない。だから、いくら総理大臣や、”次期総理大臣”が「外国に物を言える政治家」をアピールしても、そこには虚しさがつきまとう。
新刊『アメリカに潰された政治家たち』(小社刊)で、現政権を「戦後最大の対米追随」と喝破した孫崎享氏と、早くから「アメリカの対日要求圧力」問題を看破してきたノンフィクション作家の関岡英之氏が語り合った。
◆尖閣問題で誰が得したのか
週刊ポスト:野田政権は事故が相次ぐオスプレイについて、「安全性は十分に確認された」として9月19日に安全宣言を出した。現政権の対米追随ぶりを象徴するのではないか。
孫崎:米国が在日米軍基地へのオスプレイ配備を発表したとき、野田首相は「米政府の基本的な方針で、(日本が)それをどうこうしろという話ではない」と発言している。これは図らずも日米安保、日米同盟の本質を表した言葉です。
日米地位協定では在日米軍基地に対して日本はほとんど口出しできないように規定されているのですが、歴代の日米政権はその点ははっきりと明言してこなかった。ところが、野田首相は「本当のこと」を平然と口にしてしまったわけです。しかも、わざわざ日本側から「安全宣言」まで出して、米国の方針に付き従おうしている。むき出しの対米追随をただただ露呈するばかりです。
関岡:孫崎さんの新著(『アメリカに潰された政治家たち』)を読んで非常に興味深かったのが、オスプレイを岩国基地に配備したことで本州が飛行ルートに入り、今まで沖縄に封じ込められてきた米軍基地問題が、日本国民全体に共有されるようになったという指摘です。オスプレイを日本の領空に解き放ってしまったことで、パンドラの箱を開けてしまったのではないか。
孫崎:オスプレイ配備交渉に対する怒りは国民全体へ拡大しています。しかし、民主党も自民党も党首選でオスプレイ問題を争点にしようとしない。両党とも対米追随しか日本の道はないと思考停止している政治家しかいなくなってしまったのです。
関岡:かつてミサイル防衛システムを導入したときも、当時与党だった自民党はもちろん、野党だった民主党も異議を唱えなかった。しかし、ミサイル防衛システムを導入すれば、自衛隊は情報収集から指揮系統まで米軍のシステムに組み込まれて一体化することになり、自主独立の国防など永久に不可能になります。国論を二分してもおかしくない問題なのに、最初から結論ありきで進められた。
孫崎:尖閣諸島の領有問題でも、米国の影が見え隠れしています。
中国が尖閣領有を主張し始めるのは70年代ですが、79年5月31日付の読売新聞の社説「尖閣問題を紛争のタネにするな」では「この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた」とし、棚上げ状態を保つことが日本の国益にかなうとしている。当時の園田直外相も「わが国は刺激的、宣伝的な行動は慎むべき」と国会で答弁しています。それなのに今、これほどの騒ぎになっているのは、背景に米国がいるからです。日中間を緊張させて中国脅威論を煽り、在日米軍の必要性を日本人に訴えるという意図が顕在化している。
関岡:孫崎さんの著書に「尖閣諸島に上陸した香港保釣行動委員会は、70年に米プリンストン大学で台湾人留学生が結成した」とありますが、同大学はダレス兄弟(ジョン・フォスター・ダレス元国務長官とアレン・ウェルシュ・ダレス元CIA長官)やジェームズ・ベイカー元国務長官、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官など、米国の世界戦略を担った共和党系要人の出身校です。戦後60周年という節目の05年に中国全土で吹き荒れた反日暴動のときも、在カリフォルニアの反日団体が煽動の発信源でしたね。
孫崎:今回の尖閣騒動で一番得したのはアメリカです。ケビン・メア元米国務省日本部長は『文藝春秋』10月号に寄稿して、「尖閣で日本は大変だからF35戦闘機をもっと買え、イージス艦を増やして配備しろ」と要求をエスカレートしている。あまりにも率直過ぎて驚きます。もちろん、尖閣問題が起きていなければ、オスプレイの飛行訓練実施には、さらに強い批判が巻き起こっていたと思います。
◆TPPは「日本改造の総仕上げ」
週刊ポスト:現在のアメリカの対日要求は、安全保障ではオスプレイで、経済面ではTPPに強く表れている。
関岡:「TPPに参加しろ」と主張して物議を醸したアーミテージ・レポート(※注1)が発表されたのは、終戦記念日の8月15日ですよ。あまりにもあからさまで、占領軍気取りとしか思えません。
※注1 リチャード・アーミテージ元米国務副長官、ジョセフ・ナイ元国防次官補らが今年8月に発表した日米関係の報告書。日本に対し、原発の維持、TPP参加、日米の軍事協力強化、集団的自衛権の容認などが提言されている。00年、07年にも発表されている。
TPPは、ブッシュ(シニア)大統領時代の日米構造協議から、クリントン政権時代に始まった年次改革要望書(※2)まで、四半世紀にわたる一連の日本改造プログラムの総仕上げとして位置付けられるものです。そして野田政権は、「聖域なき構造改革」を謳った小泉政権が積み残した最後の砦である農業と医療の分野に、外資を含む資本の論理を導入しようとしている。
※注2 日米両政府が双方への改善要求を提言した公式文書。米軍の要望書には、派遣労働の規制緩和や郵政民営化などが盛り込まれていた。民主党への政権交代以降、廃止されている。
孫崎:TPPに関しては、詭弁が罷り通っています。経団連の米倉弘昌会長は、「TPPに参加しないと日本は”世界の孤児”になる」と発言していますが、日本の輸出額の割合でいえば、米国向けは10年度で15・3%に過ぎず、TPPに加盟していない東アジアの中国、韓国、台湾、香港の合計は39・8%。それなのに、「世界の孤児になる」と脅している。
関岡:菅直人首相(当時)もダボス会議で「TPP参加は”第三の開国”だ」と宣言しました。では、第一と第二は何かといえば、第一の開国はペリー来航による不平等条約締結、第二の開国は敗戦による占領統治です。
孫崎:どちらも「米国にとって都合のいい開国」なんです。そして「第三の開国」も同じ。TPPの最大の問題は、ISD条項にあります。外国の投資家が加盟国の規制で不利益を被ったと認識した場合、国際投資紛争仲介センター(ICSID)に提訴し、賠償を請求できる。日本の法律がISD条項の下に置かれ、日本国民は主権を失ってしまう。
関岡:アルゼンチンでは、民営化された水道事業に参入した米国企業に水道料金の大幅な値上げを認めなかったところ、アルゼンチン政府が提訴され、法外な損害賠償を支払わされました。
孫崎:野田首相はそういった実態を知らずに賛成しているとしか思えない。
関岡:昨年11月の参議院予算委員会で、自民党の佐藤ゆかり議員が野田首相にISD条項について見解を質したところ、「ISDのことは寡聞にしてよく知らない」と答弁したことがすべてを物語っています。
孫崎:ところが、野田首相はその直後にオバマ大統領と会談して、TPPの事前協議への参加を表明している。話になりません。
関岡:マスコミもTPPの本質を一向に報じようとしません。そもそも事前協議参加の条件とされているのは、簡保や牛肉など年次改革要望書に書かれていた要求の継続条件なんです。
週刊ポスト:関岡さんは、8年前にこの「年次改革要望書」の存在をスクープした。
関岡:それ以前にこの問題をマスコミがまったく報じてこなかったこと自体が不可解です。要望書は秘密文書などではない。米大使館は毎年、記者クラブ向けにブリーフィングもしていた。大メディアが知らなかったはずがないのです。
孫崎:なぜマスコミが報じないのかというと、新聞など大手マスコミの教育システムは、官僚に教えてもらうことを糸口に権力を持つ人に食い込んでいく、つまり、”当局の犬”的な存在になる訓練を受けているからです。何かの案件を見つけても、自分で分析する力がなく、官僚が解説してくれなければ記事が書けない。
関岡:私が『拒否できない日本』(文春新書)を出版した後の05年3月に、当時与党だった自民党から勉強会の講師の依頼がきたんです。国民が知らないだけでなく、与党の国会議員でさえ年次改革要望書の存在を知らなかったという事実には驚かされました。
週刊ポスト:ほとんどの議員が知らないということは、米国からの圧力を受けるのは極一部の政治家や官僚だけということ?
孫崎:そうです。議員でも官僚でも、実際に圧力を体験するのはごくわずかです。その人間が周りに拡散していくのです。
関岡:オリックスの宮内義彦会長や竹中平蔵氏などはむしろ確信犯的に米国のお先棒を担いでいた疑いがある。日々、真面目に実務をこなしている官僚は部分的にしかかかわっていないから国全体として何が進行しているのかわからない。結局、全体像を把握しているのはワシントンだけなのかもしれません。(笑)
◆日本人は「ハッピースレイブ」か
孫崎:TPP絡みで恐ろしいと思ったのは、今年の5月に起きたある事件です。
在日中国大使館の李春光元一等書記官がスパイ活動を行っていた疑いがあるとして報じられました。その対象が鹿野道彦農水相(当時)で、その後の内閣改造で農水相を辞任しました。農水省にどんな国家機密があるのか知りませんが(苦笑)、鹿野農水相はTPP加盟に反対でした。野田首相と米国にとって邪魔な存在だったのです。後任にはJAと関係が強い郡司彰議員が就きましたが、就任後、野田首相の方針に従うと宣言しています。
関岡:あのスパイ事件は発覚したタイミングからして、政治的背景が濃厚です。孫崎さんは岸信介も田中角栄も米国の工作で潰されたと述べられていますが、細川護煕首相の唐突な解任劇はどう見ていますか。
孫崎:細川氏は安全保障で脱アメリカを図り、「成熟した大人の関係」を築くと表現した。彼が作成させた「樋口レポート(※注3)」は、国連を中心とし、日米安保はその次としていました。
※注3 細川政権は樋口廣太郎アサヒビール会長(故人)を座長とする防衛問題懇談会を立ち上げ、集団安全保障の確立を日米同盟の上位に置く「日本の安全保障と防衛力のあり方」、通称「樋口レポート」を作成した。
関岡:米国は自主自立派を必ず潰しにくるわけですね。
孫崎:その通りです。細川氏の著書『内訟録 細川護煕総理大臣日記』(日経新聞出版)は、日付からなにから詳細に書かれているのですが、なぜか日米関係の話は一切書かれていない。武村正義官房長官を外したところから細川政権は崩壊したわけですが、細川氏は訪米中に「武村を外せ」と米国側に言われ、細川氏から相談を受けた小池百合子氏が自分のブログで書いたことで明らかになった。ですが、その経緯について、細川氏はまったく触れていない。結局、彼は自分の政権がなぜ倒れたのかという一番大切なところを書いていないんです。「書けない理由」があるんだろうと思います。
関岡:最近、民主党から日本維新の会に移った政治家に、松野頼久衆議院議員がいます。彼は細川氏の元秘書で、熊本1区を受け継いだわけですが、細川首相時代にはクリントンとの日米首脳会談にもおそらく同行しただろうし、細川氏から墓まで持っていく話を聞かされていたかもしれない。松野氏はその後、鳩山由紀夫氏の側近となり、鳩山政権の官房副長官として常に鳩山氏に寄り添っていた。
細川、鳩山という自主自立を目指して挫折した政治家の最側近だった松野氏が、日米同盟基軸、TPP参加を掲げる橋下徹氏の日本維新の会に移った。日米関係の深淵を見て絶望したのか、それとも何か深い思惑があるのか。実に興味深い動きです。
孫崎:細川、鳩山から橋下に移るというのは、思想的には有り得ないですね。
関岡:松野氏の祖父は松野鶴平(元参院議長)で、元祖対米追随派の吉田茂元首相の側近、父親の頼三氏は小泉純一郎元首相の後見人でしたが、血筋が蘇ったのでしょうか。(笑)
それにしても、自主路線の政治家が次々に潰され、対米追随一辺倒になっていくことに怒りの声が上がらない。日本人はハッピースレイブ(幸福な奴隷)になってしまったのでしょうか。
孫崎:歴史学者のガヴァン・マコーマック(豪州国立大学名誉教授)と対談した際、彼は「これだけ隷属し、その隷属を自ら望む日本は、世界史上でも稀な国だ」と言っていました。
週刊ポスト:民主党にも自民党にも自主流がほとんどいなくなってしまった今、現状をどう打破すればいいのでしょうか。
孫崎:まずは事実を知ることでしょうね。テレビや新聞などは一方的な情報しか流さないので、インターネットなどを駆使してどこに真実があるのか自ら努力して探していく。真実を共有できれば、日本国民は可能性を持っているのではないかと思います。
関岡:いまだにマスコミ報道やワイドショーのコメンテーターの片言隻句を鵜呑みにして投票してしまう人は決して少なくない。真実に迫るには、まずメディアリテラシーを研ぎ澄ませることが肝要だと思います。
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