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9月13日(木)
橋下新党「日本維新の会」がめざすのは超新自由主義による強権独裁国家と弱肉強食社会にほかならない(五十嵐仁の転成仁語)
こんな政党に期待と幻想を抱く人が、まだまだ多くいるということが信じられません。それだけ、日本の政治についてのまともな知識も識見もない人が多いということなのでしょうか。
それとも、民主・自民の2大政党が完全に破綻してしまい、政治閉塞からの出口を求めている人が殺到しているということの表れなのでしょうか。出口を求めることは間違っていませんが、その方向が正しいようには思えません。
昨日、橋下徹大阪市長は自らが代表となる新党「日本維新の会」の結党を正式に宣言しました。橋下さんが「自立」「競争」「自己責任」を新党の理念として強調していたように、この政党は明らかに新自由主義の立場に立っており、基本的には格差拡大や医療・介護現場の崩壊などを社会問題化させた小泉構造改革路線を引き継ぎ、さらにそれを拡大・推進する超新自由主義政党だといって良いでしょう。
このような政党が国政に進出しても、現状より悪くなることはあっても良くなることはありません。民主・自民の2大政党に幻滅して橋下新党に殺到した人々は、いずれ、もう一つの幻滅を味わうだけです。
橋下新党「日本維新の会」が掲げる綱領としての「維新八策」は、一言で言って子供じみた妄想の羅列ですが、それが依拠しているのは小泉政権以上の超新自由主義であり、目標としているのは強権独裁国家による弱肉強食社会です。その内容を詳しく知れば、現在の民主党政権でさえ、ずっとまともに見えてしまうほどのものです。
以下、その内容がどのようなものか。今後、問題とされるであろうような項目を摘出して、以下に掲げておきましょう。
なお、この「維新八策」の全文は、『日本経済新聞』9月1日付http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC3103B_R30C12A8000000/に掲載されています。関心のある方は、そちらをご覧下さい。
・首相公選制
・現在の参議院廃止を視野に入れた衆議院優位の強化
・条例の上書き権(憲法94条の改正)
・地方財政計画制度・地方交付税制度の廃止
・消費税の地方税化と地方間財政調整制度
・道州制が最終形
・大阪府・市方式の徹底した行財政改革
・国民総背番号制の導入
・衆議院の議員数を240人に削減
・歳費その他の経費の3割削減
・企業・団体献金の禁止、政治資金規正法の抜本改革(全ての領収書を公開)
・大阪府・市の公務員制度改革(頑張ったものは報われる、能力、実績主義、職位に見合った給料)を国に広げる
・官民給与比較手法(総額比較)の抜本的改正、人事院制度の廃止
・地方公務員も含めた公務員の総人件費削減
・大阪府・市職員基本条例をさらに発展、法制化
・公務員の強固な身分保障の廃止
・公務員労働組合の選挙活動の総点検
・公務員の関係首長選挙活動の制限
・自立する国家、自立する地域を担う自立する個人を育てる
・あしき平等・画一主義から脱却し、理解ができない子どもには徹底的にサポートし、理解できる子どもはぐんぐん伸ばす、個人の能力を真に伸ばす教育ヘ
・教育委員会制度の廃止(首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視)、教育行政制度について自治体の選択制
・公立学校長の権限の拡大・強化、校長公募など、学校マネジメントの確立
・国立大学長の権限拡大・強化、大学マネジメントの確立
・教育バウチャー(クーポン)制度の導入=教育機会を拡大するとともに教育機関の切磋琢磨を促す
・大阪府・市の教育関連条例をさらに発展、法制化
・教職員労働組合の活動の総点検
・自立する個人を増やすことにより支える側を増やす
・自助、共助、公助の役割分担を明確化
・社会保障給付費の合理化・効率化
・(1)努力に応じた、(2)現物支給中心の、最低生活保障制度を創設
・所得と資産のある個人への社会保障給付制限
・国民総背番号制で所得・資産(フロー・ストック)を完全把握
・現物支給中心の生活保護費
・支給基準の見直し
・有期制(一定期間で再審査)
・医療扶助の自己負担制の導入
・受給認定は国の責任で
・公的保険の範囲を見直し混合診療を完全解禁
・公的医療保険給付の重症患者への重点化(軽症患者の自己負担増)
・競争力を重視する自由経済
・産業の淘汰を真正面から受け止める産業構造の転換
・イノベーション促進のための徹底した規制改革
・TPP参加、FTA拡大
・民民、官民人材の流動化の強化徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)
・ニーズのない雇用を税で無理やり創出しない
・日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備
・日米同盟を基軸とし、自由と民主主義を守る国々との連携を強化
・国連PKOなどの国際平和活動への参加を強化
・憲法改正発議要件(96条)を3分の2から2分の1に
・憲法9条を変えるか否かの国民投票
なお、ここには「企業・団体献金の禁止」が掲げられていますが、橋下さんは「新党は企業献金を受け取らないのか」との記者の質問に、「選挙はただではやれない」「受け取らないというのなら、どうやって選挙をするのか」と胸を張って答えています。「綱領」を発表した途端に、それを破ることを表明したわけで、「維新八策」には「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」などの政策も掲げられていますが、それがどこまで本気で信用できるものか、分かったものではありません。
日本国民は、すでに新自由クラブ、日本新党、新進党、そして民主党と、新党に期待をかけては裏切られるという経験を積み重ねてきました。橋下新党「日本維新の会」の本質と危険性を見極めることができなければ、この裏切りの歴史に、もう一つの新しい経験が付け加わることになるだけでしょう。
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