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<谷垣総裁の悲運>
日ごろは自民党批判をしていたジャーナリストが昨夜は電話で「谷垣がかわいそうだ」と言ってきた。先輩の加藤紘一の森打倒を泣いて止めた谷垣のことだ。今回、彼を泣いて出馬を断念させた側近がいたのだろう。歴史は繰り返すものか。加藤の乱の失敗が、今日の右翼化政治を生み出したものといえなくもない。その点で、自業自得だ。とはいえ確かに哀れな谷垣である。ともかく、目下の自民党総裁選はハチャメチャもいいところで救いようがない。持病の発作で政権を投げ出した人物までが、なんとしても「改憲をせねば」といって、再び手を挙げる狂った自民党の総裁選挙である。
<野田に騙され>
谷垣を多少知っている筆者である。父親とはよくおしゃべりしたものである。性格は父子ともよい方だ。人がいい。そこを死に体の野田に、してやられてしまった。野田のタヌキに化かされてしまった。
あのタヌキの顔つきを、まともに信じた結果である。野田に延命装置を用意したわけである。裏切りに気付いた場面での問責決議は、決定打とならなかった。相手は憲政の常道など、どこ吹く風の松下政経塾ではないか。
勝負に弱い。それが谷垣の弱点だ。乾坤一擲の場面では、勇猛果敢に突進するしかないのだが、その度胸がなかった。
<石原のセガレに裏切られ>
哀れをかこったのは、腹心と頼む石原のセガレに裏切られたことだった。本来、石原にはその器などない。
だいたいオヤジの方は、極右思想の三文文士にすぎない。自民党内での信頼などなかった。蒋介石や岸信介の意向を受けて暴れた以外は、自殺した中川一郎の遺産を鈴木宗男と争って敗れ、とどのつまりは小さな派閥の維持さえ出来なかった自民党の落第生である。
そもそも彼の足場は、弟の俳優知名度のお陰であった。芸能界の力で、這いあがってきたようなものである。もう一つは、あまり知られていない宗教団体である。
石原の政治的野心の最たるものは、自らの野望を2人のセガレにかけたことだ。息子を2人も政界に送り出した人物など、他に知らない。親の七光りをセガレに当てることに執着、それも困難と知るや、都知事の座をうまい具合に手にした。
谷垣は、そんなオヤジの意向に配慮して、セガレに幹事長の椅子を与えた。そもそも、ここに彼の失敗の根源があった。谷垣は極右思想の持ち主の罠に、自らハマったことになる。彼の政治家としての力量の限界があった。
<足元もすくわれ>
谷垣は杖とも頼む伝統ある宏池会(古賀派)からも、足をすくわれてしまっていた。古賀との間で何があったのか知る由もないが、こんな事例を過去の自民党史に探しても、恐らく存在しないだろう。
足元を無視して走ってきたのだろうか。そんな宏池会に、石原の魔の手が忍び込んでいたことを、谷垣は気付かなかったのだろうか。わきの甘い谷垣だった。
それにしても再選が当たり前の政界である。そんな中で、野田に裏切られ、石原のセガレに裏切られ、こともあろうに足元の派閥からも放り出されてしまった谷垣である。
彼の心中を察するに、自業自得とは言え、やはり哀れでならない。
<リベラル宏池会を放棄した罪>
谷垣が政治修業した宏池会は、リベラル派である。中曽根派や岸・福田派の国家主義を排してきた中道路線に特徴がある。筆者が一番共鳴した自民党派閥だった。
リベラルは寛容を旨とする。国民の目線を重視する国民政党を自任してきた。谷垣は歴代の池田・前尾・大平・鈴木・宮澤・加藤のリベラル路線を放棄してしまった。ここに全ての失敗の原因を見てとれる。
自民党からリベラルを排除すると、それは岸や中曽根の極右路線だけの政党と化してしまう。今ではこうした自民党の政策を解する者もいなくなっているのがわびしい。
リベラルは平和憲法路線でもある。隣国との友好路線である。いま自民党や民主党からも、これが消えてしまっている。小沢党のみだ。隣国との対立路線では、日本国民は生きてはいけない。こんなことをメディアも放棄している。危ない日本へと大きく踏み出している日本だ。
大阪もそうである。日本列島が、極右の野田と自民と大阪に絡め取られると、日本の前途はお先真っ暗になろう。小沢や鳩山のリベラルが復権しないと、日本は大変なことになるのである。
<財政破綻に反省・謝罪なしの罪>
谷垣の政策的失策は、過去を反省・謝罪しないところからも来ている。中曽根バブルの総括をしていない。さらに莫大な借金の山を築いてきた財政の失政についても。これが今日の福祉・年金の破綻となって表面化している。10%云々で処理不能だ。
中曽根バブルと小泉借金を総括、その上で国民に謝罪することが、何より重要である。民主的な政党のなすべきことである。総括することで、どうするか。まずは白アリ退治だ。これは世紀の行財政改革の断行であるが、これに頬かむりしてきた。
議会や行政にまとわりつく白アリを退治しなければ、10%はすぐに砂漠に漏れる水のように消えてしまい、大不況の追い打ちをくらい、日本沈没を速めるだけだ。
筆者は少しでも経済を活性化するために、アメリカのように高速道路を無料にすべきだと考えている。例外なしだ。それは人と物の交流を活発化するからである。交通と合わせて通信の負担を軽く、できれば無くすことだ。
今はどうか知らないが、以前の香港では電話が無料だった。そこに経済活性化の原動力があった。日本は鉄道・航空・通信などべら棒に高い。これが経済の足を引っ張っている。全てが官僚・白アリ向けの制度になっている。ここにメスをいれるのである。世の中が明るくなること請け合いだ。
国交省のスリム化を突破口に一大行財政改革を断行することが、日本沈没回避の決め手となろう。官僚・役人を減らすことが白アリ退治でもある。役人を減らすと、彼らの仕事が無くなり、血税投入が消える。中曽根バブル期の高給を支払っている今の給与体系は犯罪的である。
白アリのなすがままの制度を全面的に刷新することに尽きよう。これに自民党は立ち向かおうとしなかった。谷垣の責任であろう。石原のセガレも同罪だ。むろん、野田は総理失格である。
<極右自民党に再生困難>
自民党総裁選に一番遅く手を挙げた林とは、一度名刺交換したことがあるが、詳しくはわからない。言えることは、自民党総裁候補のなかでは、一番右翼的ではない。よりマシな候補であるが、いまの右翼化した自民党では総裁選に勝ち抜くことは困難だろう。
安倍・石原・石破・町村は自民党極右派の代表格だ。国民政党の雰囲気がまるでない。改憲軍拡に興味を示す輩である。平和を愛する市民とは別世界の政治家である。
原発推進派で10%大増税派でもある。市民と乖離した面々である。中曽根バブルを総括する考えなど無い。莫大な借金を総括するつもりなど無い。再生は困難だろう。それゆえに大阪の極右に秋波を送っている。
手を挙げた自民党総裁候補を眺めて見ると、まだ谷垣はましな総裁だったといえよう。無念の出馬断念で、同党の前途はますます暗くなるだろう。
2012年9月13日18時00分記
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