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特例公債法案の先送りで露呈・末期的な日本の議会制度 消費増税の「執行リスク」と「防災・減災」を大義名分とした財政政策
http://www.asyura2.com/12/senkyo135/msg/628.html
投稿者 MR 日時 2012 年 9 月 12 日 03:46:07: cT5Wxjlo3Xe3.
 


【第242回】 2012年9月12日 加藤 出 [東短リサーチ取締役]

特例公債法案の先送りで露呈
末期的な日本の議会制度



消費増税は「立法リスク」から

「執行リスク」へ


 8月10日の消費増税法案の可決により、消費税率の引き上げは「立法リスク」を乗り越えた。しかし、「執行リスク」はいまだ強いと言わざるを得ない。


 特に2014年4月の消費増税(消費税率5%→8%)により需要の反動減が起きる2014年度の景気(当社予想は-0.1%)は、かなり厳しいものとなろう。これが2015年10月の消費増税(消費税率8%→10%)に対して、非常に強い執行リスクとなる可能性がある。


 つまり、2014年4月の消費増税が景気の反動減を通じて、2015年10月の消費増税の執行リスクを強めるという皮肉な構図だ。


改めて振り返る

「消費増税法 附則第18条」と「三党合意」


 もちろん政府は、2014年4月、2015年10月ともに消費税率を引き上げようとするであろう。すなわち、2014年度の実質GDP成長率がゼロないしマイナスとなる事態を放置しないであろう。


 では、そうした事態を回避する手立てとして何が想定されるだろうか。消費増税法の「附則第18条」と民主党、自民党、公明党の「三党合意」を振り返りながら、そこで想定されている消費増税の執行リスクと、それに対する手立てを見ておこう(図表1参照)。





「名目3%成長、実質2%成長」は

消費増税の条件ではない!


 消費増税法附則第18条には、経済成長率との関係で重要な記述がある。そこでは、目指すべき望ましい経済成長率を「2011年度から2020年度までの平均で名目経済成長率3%、実質経済成長率2%」としている。

 ポイントは、これは消費税引き上げの条件ではなく、むしろ消費税を引き上げた後に目指すべき姿とされていることだ。したがって、実質GDPの成長率が2%を下回ること自体は消費増税の執行リスクではない。


 一方、消費税引き上げの条件については、附則第18条は「経済状況を好転させること」としている。つまり、成長率の絶対水準の高低というよりも成長率が高まっていることが重要と考えられる。


 したがって、当社が見込むように、2014年度の実質GDP成長率がゼロないし小幅マイナスに下がれば、この「経済状況の好転」という条件に反する可能性が出てくる。これが2015年10月の消費増税の執行リスクとなる。


「三党合意」が掲げる

成長戦略と防災・減災


「三党合意」では、この執行リスクを避けるための手立てとして、「成長戦略や事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分」することが挙げられている。これを踏まえると、財政政策から見る景気の焦点は2013年以降、「復旧・復興」から「防災・減災」に移ることになろう。


現代版「日本列島改造論」?


「防災・減災」については、すでにいくつかの政党が具体的な数値を含めて姿勢を明らかにしている。たとえば、


・自民党:国土強靭化基本法案(民間資金を含めて10年間で200兆円)


・公明党:防災・減災ニューディール推進基本法案(民間資金を含めて10年間で100兆円)


・たちあがれ日本:政策宣言(民間資金を含めて10年間で300兆円)


 などである。こうした姿勢は、40年前に発行された田中角栄元首相の著書『日本列島改造論』(1972年6月、日刊工業新聞社)を髣髴とさせる。一体100〜300兆円(年間GDP比20〜60%)という金額は、どの程度妥当なものであろうか。以下の検討によると、必ずしも大袈裟あるいは腰だめの数値とは言えない。

日本の社会資本ストックは

量的には十分だが……


 社会資本ストックを一般政府および公的企業が保有する固定資産と定義すると、その残高は直近2010年末で600兆円(再調達価格ベース)近くに達する(図表2参照)。すでに年間GDP(約480兆円)を25%も上回っており、量的に不足しているとは言い難い。



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 しかし、資本ストックの機能は量だけでは評価できない。そこに体化されている技術や機能の新鋭度など、質的側面も重要だ。とりわけ東日本大震災や昨今の豪雨は、社会資本ストックに「防災・減災への一層の貢献」という課題を投げかけるきっかけとなった。


社会資本ストックの

「ヴィンテージ」(平均年齢)は15.2歳


 もとより社会資本ストックには、流通市場がない。そのため、その技術や機能の質を時価に見出すことは難しい。そこで質の代理変数として「ヴィンテージ」(Vintage)に着目しよう。ヴィンテージとは、構築物や機械・設備など資本ストックの設置後の平均経過年数を表す。いわば資本ストックの「年齢」だ。


 このヴィンテージを社会資本ストックについて計算すると、直近2010年で15.2歳となった(図表3参照)。15.2歳というヴィンテージは、直接比較できる1970年以降の最高である。では、絶対水準として15.2歳は「若年」と見るべきか、「高齢」と見るべきか。



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「半減期」に当たる社会資本ストック


 内閣府によると、社会資本ストックの耐用年数は平均35年程度とされる(図表4参照)。あるいは、社会資本ストックの年間減耗率(=年間固定資本減耗÷固定資産残高)がおおむね3.6%であることを踏まえると、同ストックの経済価値の消耗期間は28年と推計することもできる。


 いずれの場合にせよ、定額償却を仮定すると、15.2歳というヴィンテージは経済価値の「半減期」に近い。やはり「高齢」と判断すべきであろう。



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 上述の約600兆円という社会資本ストックの残高は、再調達価格による評価であり、固定資本減耗(=減価償却費+資本偶発損)を差し引いたという意味での経済価値の時価評価ではない。再調達価格600兆円という社会資本ストックが「半減期」にあるとすれば、単純に言えば300兆円程度の経済価値はすでに消耗している可能性がある。


「防災・減災」を大義名分として、この消耗した300兆円に相当する社会資本ストックの更新投資を図るのであれば(もちろんこれ自体、国民の意思決定次第だが……)、先に見た自民党の200兆円、公明党の100兆円という事業費(民間資金を含む)を必ずしも大袈裟あるいは腰だめと切って捨てることはできないであろう。


ただし年間20兆円(自民党案に相当)

は「スピード違反」


 ただし、総額として100兆円や200兆円という事業費があり得るとしても、それを「10年」ですべきかは別問題。すなわち「総額」が妥当としても「スピード」が妥当であるとは限らない。

 スピードの妥当性を判断する際、その金額が長期金利を押し上げることなく調達できる金額かを、1つの基準とすることができよう。これは、おおむね経常収支を基準とすることに相当する。なぜならば、経常収支は一国経済における貯蓄と実物投資(民間設備投資、民間住宅投資、公共投資、在庫投資)の差額(ISバランス)に等しいからである。


 つまり、経常収支が黒字ということは、貯蓄が実物投資を上回っていることになる。これは、実物投資の財源を国内の貯蓄に求めた上で、なお貯蓄が余る状態を意味する。したがって、経常収支が黒字である場合、公共投資などの実物投資が資金需給の逼迫を通じて長期金利を押し上げる余地は、限られるであろう。


 筆者が使っているマクロ計量モデルによると、自民党案に相当する年間20兆円(GDP比4.2%)の防災・減災対策(=実物投資)が追加的に出てくると、2〜3年目頃には経常収支黒字はほぼ消える。すなわち、長期金利に上向きの力がかかり始める。この意味で「年間20兆円」はスピード違反だ。


2013年度以降の日本の景気は

デカップリングがテーマに


 消費増税の執行リスク(特に2015年10月の消費増税の執行リスク)を踏まえると、「防災・減災」を大義名分として財政政策が出動する可能性が高い。そもそも消費増税法附則第18条と三党合意は、こうした政策対応を想定している。


 しかし、自民党が掲げる「10年で200兆円」という事業費は総額が妥当としても、年間20兆円のペースで行なうとすればスピード違反と言わざるを得ない。年間5兆円(GDP比1%)程度が、経常収支黒字ひいては安定した長期金利と共存可能なスピードと言える。


 そのスピードで公共投資が出動するのであれば、他の主要国が財政緊縮に向かう中、「防災・減災」は2013年度以降の日本の景気に「デカップリング」の色合いを加えることになろう。

 

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