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この10月から大不況10年のサイクルに突入するが、野田佳彦首相は、景気浮揚策に不熱心としか思えない
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2012年09月09日 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
◆日本の「景気循環(サイクル)10年説」(経験則)上、いよいよこの10月から「大不況の10年」(2012年10月〜2022年8月)が始まる。
この大不況の予兆が、はっきりと現れてきた。日本銀行が9月18、19日の金融政策決定会合で、景気の現状判断を「下方修正する」というのが、それである。
朝日新聞デジタルが9月8日午前8時8分、「日銀、景気判断を下方修正へ 追加緩和見送りか」という見出しをつけて、以下のように配信している。
「日本銀行は18、19日の金融政策決定会合で、景気の現状判断を下方修正する方向だ。欧州危機の余波で中国などの景気が減速している影響で、日本の輸出や生産が停滞し、景気回復の遅れが鮮明になっているためだ。日銀の景気判断は、8月まで『緩やかに持ち直しつつある』としていた。今回は、『持ち直し』との見方は維持しながら、生産や輸出に想定よりも弱めの動きが出ていることを強調するとみられる。欧州の景気低迷で、欧州向け輸出が多い中国の景気が減速し、日本から中国への輸出は減少。7月の鉱工業生産指数は2カ月ぶりに下がった。公共事業は震災復興で増えているが、個人消費はエコカー補助金の終了が近づき、以前の勢いはなくなっている。政府も8月の月例経済報告で、景気判断を10カ月ぶりに下方修正している」
日本は、景気循環上、大不況の10年に突入するうえに、米国や欧州諸国から1年前、「日本は一人勝ちしてはならない。今後5年間は、景気を押し上げないように」と申し渡されてきたという。このため、あと4年間は、積極的に景気を押し上げる政策を取るのが難しい状況にある。
実のところ、日本は、積極的財政政策と金融政策により、景気浮揚策を取ろうとすれば、取れる国である。その裏打ちは、「豊富な金塊」の存在である。
だが、2002年10月〜2012年8月までの大好況の10年を上手く活かし切れなかった。小泉純一郎首相は、構造改革に熱中し、景気浮揚策に熱心ではなかった。安倍晋三首相は、「美しい国」造りという抽象的な理念と右翼的観念にとらわれて、やはり景気浮揚策には関心が希薄だった。福田康夫首相は、洞爺湖サミットで高級ワインを飲むことのみにうつつを抜かしていた。次の麻生太郎首相だけは、実業経験が豊かなだけに、景気浮揚策に熱心に取り組んだ。
定額減税や公共事業を中心とする財政出動に積極的な意向を示しており、財政健全化よりも景気対策の優先を提唱。2008年になってからは、財政健全化を目指した小泉純一郎政権の構造改革路線を見直し、「基礎的財政収支(プライマリーバランス)の11年度黒字化目標」の延期に言及していた。消費税の増税に関しては、「もはや、広く薄い負担を税制に追加していくとしたら消費税しかない」として消費税増税を示唆した。だが、2008年9月15日にリーマン・ショックによる世界的な金融危機が発生すると「消費税増税を早期に行えば、著しく景気を冷やす」として、当面の増税を見送ると述べ、2011年以降に10%を超える水準まで消費税を引き上げる意向を示した。
2008年10月30日、リーマンショック以降の世界的な金融危機と景気低迷への対策として事業総額26兆9000億円の追加経済対策を発表。2度の補正予算と2009年度予算の「3段ロケット」として、最終的には75兆円の景気対策を実施した。主なものは、以下の通りだった。
1.定額給付金の支給(1人1万2千円、65歳以上・18歳以下は1人2万円)
2.高速道路料金の土日祝日最高1000円(普通車・軽自動車でETC搭載車限定)
3.東京湾アクアラインの料金を普通車800円に値下げ
4.エコカー減税・エコカー補助金
5.家電エコポイント制度(冷蔵庫・薄型テレビ・エアコン)の実施
6.住宅ローン減税(過去最高600万円の減税)
7.妊婦検診の無料化(5回→14回)
8.出産育児一時金の増額(全国一律に4万円引き上げ)
9.中小企業への支援(緊急保処枠6兆円、保証・貸出枠30兆円に拡大)
10.雇用保険料の引き下げ(標準世帯で年額約2万円)
これらは、金融危機を回避するという緊急性から急遽決定された政策でもあったことから、きめ細かさに欠けるところがあるとの指摘もあった
しかし、麻生太郎首相は、2009年8月25日、宮城県多賀城市で街頭演説し「政治はばくちじゃない。(民主党に)ちょっとやらせてみようか、というのは違う話だ。」と訴えた。2009年8月26日、愛知県のJR豊橋駅前での街頭演説で「政権交代してその先に何があるかわからない。政権交代の先は景気後退だ。われわれは少なくとも革命を起こすつもりはない」とも述べ、政治の安定の必要性を強調していた。
◆だが、2009年8月30日の総選挙の結果、民主党が圧勝し、鳩山由紀夫政権が誕生したため、自民党は下野し、麻生太郎首相の渾身の景気浮揚策は、効果を見る間もなく挫折を余儀なくされた。しかし、エコカー減税や家電エコポイント制度は鳩山由紀夫政権にも引き継がれた。
それでも、民主党政権は、マニフェストで「コンクリートから人へ」というキャッチ・フレーズを掲げて、政治の基本的使命である「治山治水」を目の敵にする政策への大転換を振りかざした。つまり、「公共事業」=[財政出動」による雇用創出、ひいては景気浮揚策に手を抜いた。このため、大好況期のピーク時である「2009年暮れ」以降、日本の景気は、シユリンクしていくことになった。おまけに、麻生太郎首相が「政権交代してその先に何があるかわからない。政権交代の先は景気後退だ。われわれは少なくとも革命を起こすつもりはない」とも述べた通り、景気は後退したまま、低迷からさらにどん底に向かって転がりつつある。
◆野田佳彦政権下の財務省は9月7日、2013年度政府予算の概算要求を締め切った。
共同通信は9月7日午後6時57分、「概算要求、過去最大102兆円台 社会保障や日本再
生膨らむ」という見出しをつけて、次のように配信した。
「財務省は7日、2013年度予算の概算要求を締め切った。一般会計の要求額は98兆円程度となり、東日本大震災の特別会計に計上する復興予算の4兆4794億円を合わせた要求総額は102兆円台に膨らんだ。高齢化に伴う社会保障費の増加などで12年度の98兆4686億円を上回り過去最大となり、財務省は年末までの予算編成過程で大幅に圧縮する」
だが、大不況のサイクルに入ったからと言っても、手をこまねいているわけにはいかない。大不況なればこそ、景気浮揚策を間断なく打ち続けなくてはいけない。そうでなければ、国民全体が地獄を見ることになる。だが2013年度概算要求をみると、残念ながら、金額が大きく膨らんでいる割には、景気浮揚につながる効果的な政策は、見当たらない。野田佳彦首相は、景気浮揚策に不熱心なのだ。
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