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「強大」な政治力はなお健在
早くも「選挙態勢」突入の電力業界
選択 2012年9月号
※文字起こし
「虎の尾を踏んだ」という表現が、この局面では最もふさわしいだろ 今秋とも囁かれる衆議院解散をにらんで足元の政治情勢が混沌とする中、電力業界では早くも政権与党民主党の壊滅に向けた策動を始めている。東京電力福島第一原子力発電所事故の対応とその後の東電処分、さらには電力自由化、電気料金値上げ、原発再稼働と続いた一連の動きでことごとく電力業界たたきに走った民主党はもはや「弁解の余地はない」(電力会社幹部)状況にある。当然ながら電力業界は票田としては斯待できない。そればかりか、労組でさえ民主党つぶしに走ることが確実視されている。昨今では「大阪維新の会」を率いる橋下徹大阪市長を籠絡したという情報が流れるなど、その「強大」な政治力はなお健在だ。
「橋下降ろし」から「橋下懐柔」へ
これまでの選挙の歴史において、電力業界が勝敗の帰趨に重要な役目を果たしてきたのは周知の通りだ。電力業界は十社ある電力会社の本体だけでおよそ十三万人の社員を抱え、そのほかの発電会社やグループ企業、メーカー、下請け企業の社員、家族を含めればその数は百万人規模に膨れ上がる。選挙活動は彼らによる投票だけではなく、資金援助や雇用の確保、支持政党による発注先の選別など多種多祥だ。
先の総選挙では民主党が歴史的勝利を収め、政権を奪取した。この背景には一般市民などの浮動票が動いたとの見方が支配的だったが、事実はそればかりではない。
「一般的に電カ業界は自民党支持といわれているが労組は別で、民主党を応援してきた。前の選挙でも電力業界のおかげで当選したやつがごろごろいる。いま閣僚を務めている連中だって我々が受からせてやったようなもんだ」(電力労組幹部)
民主党の選挙基盤の一部は電力業界の票で支えられているにもかかわらず、民主党は政権与党になった途端、手のひらを返した。最初にケチがついたのが鳩山由紀夫元首相だ。「鳩山は温暖化対策で電力業界があれほど嫌がっていた二五%削減を打ち出した。その後もしぶしぶ民主党に付き合ってきたが、福島第一原発事故の時の菅直人と枝野幸男が決定的だ。電力業界に責任を押しつけるあの態度は絶対に許さない。雇用さえ守ってくれないのだから、電力労組はもう民主党には票を入れない」(同)。
民主党に見切りをつけた電力業界はすでに誰を受からせ、誰を落とすかの算段を始めている。前出の電力会社幹部は「今のところ次の選挙で応援してもいいのは電力業界の意見に耳を貸してくれる野田仲彦、細野豪志、仙谷由人くらい。首相の野田、将来の首相候補の細野、民主党最高実力者の仙谷を押さえておけば、民主党が万が一与党に入ってもコントロールが利く」と話す。遂にいえば、鳩山、菅、枝野各氏とその周辺は票を取れる見込みはほとんどない。それどころか電力業界の妨害工作を受け、後々の政治活動にも支障をきたす公算が大きい。
民主党壊滅後の青写真も描かれつつある。電力業界が今、最も心血を注いでいるのは大阪維新の会の取り込みだ。維新の会は世論の支持の拡大とあわせて勢力を広げており、今後の政党地図を大きく塗り替えることが確実と見られている。第一党にならずともキャスチングボートを握ることは必至で、そこを懐柔することはイコール与党を手中に収めることを意味するからだ。
維新の会を率いる橋下氏といえば、反電力、反原発のイメージが強い。橋下氏は関西電力大飯原発再稼働をめぐり「立地地域の首長でもないのに認めない、許さないと好き放題だった」(関電関係者)。
こうした橋下氏の言動に電力業界の嫌悪感は強く、一時期は大々的なネガティブキャンペーンを展開。同和問題をつつくなどその筋の悪さからキャンペーン自体は失敗したが、その過程で電力業界は橋下氏の本質をいち早く見抜いた。
「橋下は本物のバカではなかった。さすがは弁護士とでもいうべきか、自分の発言をコントロールするすべを知っている。大飯再稼働への反発は彼の信念ではなく、パフォーマンスだった。電力業界は皆、これならいけると思ったはずだ」(前出の電力会社幹部)
橋下氏の正体を見破った電力業界はすかさず方針を転換。「橋下降ろし」から「橋下懐柔」へと戦略を切り替え、ネガテイブキヤンペーン担当者の配置転換にも踏み切った。
確実に選挙を勝利に持っていく力
電力業界と橋下氏の距離感はその言動を時系列で振り返れば如実にわかる。「橋下は最初、大飯を絶対に動かすべきではないと主張していたが、電力不足で自分に火の粉が降りかかりかねないとみるや、すぐに再稼働を容認した。また、関電の株主総会では筆頭株主として全原発の廃炉を強硬に主張すると見られていたが、実行しなかった。これもその実現性の低さと電力会社の反応を考えたのだろう」(前出の関電関係者)。
象徴的だったのは、政府が検討している革新的エネルギー・環境戦略の国民議論をめぐる橋下氏の言動だ。将来の原発比率に関する意見聴取会では、あろうことか一国民として電力会社社員が登場。この中には経営に関与する幹部もいたため、世論の袋だたきにあったが、橋下氏は「電力会社の社員も国民」として擁護した。多くの国民が首をひねったこの言動こそが、橋下氏と電力業界が水面下で「握った」ことを示す重要な「証拠」だ。
電力業界は大飯原発をめぐる騒動で橋下氏を恭順させてからも、示威行動を続けている。電力業界の武力の源となっているのは、ほかでもなく集票力だ。今年七月二十九日に行われた山□県知事選。この選挙では自民・公明の両党が推す元国土交通省官僚の山本繁太郎氏が勝利し、保守王国・山口の健在ぶりを見せつけた。言うまでもなく、山本氏勝利の裏には電力業界の暗躍があった。
今回の山口県知事選は中国電力上関原発の建設問題が争点の一つとなった。山本氏の対抗馬となったのは大阪市特別顧問を務め、橋下氏のブレーンという看板を掲げる飯田哲也氏だったが、飯田氏は山本氏に次ぐ票を獲得し、その差はわずかに約六万七千票と肉薄した。だが、反原発の風に乗り、予想以上に票を取ったとする見方では実態を見誤る。電力業界による選挙活動がなければ、おそらく山本氏の勝利はなかった。
今回の選挙では民主党も橋下氏も様子見の姿勢を貫いた。「反原発の色がどっぷりついている飯田氏に協力すれば、後戻りができなくなるからだろう」(前出の電力会社幹部)。
反原発の風が吹き荒れる中でも確実に選挙を勝利に持っていく電力業界の力を、民主党と橋下氏はまざまざと見せつけられたに違いない。選挙にしか興味がない政治家たちが今後、電力業界とどう付き合うかは説明するまでもないだろう。
やがて復活の日を迎える
鳩山氏、菅氏の暴走で電力業界に三くだり半を突きつけられた民主党も、実は徐々に軌道修正を始めていた。野田内閣発足後はそれが顕著であり、福島第一原発事故の「収束宣言」に始まる「功績」は枚挙にいとまがない。民主党は今も電気事業連合会との「秘密会合」を続けているが「最近ではこちらの要求が通るようになってきた」(電力業界関係者)という。その民主党の軌道修正にみそを付けたのが、枝野経済産業相だった。枝野氏は福島第一原発事故時に官房長官を務め、その評判の悪さは継続しているが「最近は度を超している。民主党が太陽政策をとろうとしているのに、一人で北風をやっている。腹いせに資源エネルギー庁の幹部をさらし者にするのも愚の骨頂だ。菅の残党はすべて狩らなければいけない」(前出の電力会社幹部)。
今夜は「近いうち」に解散・総選挙が行われるが、その際の選挙活動で脱原発を公約に掲げるのは容易ではない。電力業界では「東電と電事連が中心となり、各全国紙の論説委員クラスと定期的な情報交換を行っている。その場を使って『脱原発は国益を損なう』と説いて回っている」(前出の電力業界関係者)という。最近では全国紙も「脱原発は人気取り」との論調を展開し始めており、選挙活動での脱原発宣言は命取りになる可能性が高まっている。
反原発派の取り込みに成功し、票を取ったとしても、その後は冷や飯を食わざるを得ない。電力業界は企業単位の政治献金は取りやめているものの、役員クラスはいまだに献金を続けている。献金額は不文律として役員の格に応じて決まっており、実質的には企業献金だ。電力業界の資金力は膨大だが、脱原発を一言でも□にすれば、このカネは回ってこない。カネのない政治家が発言力を持てないのは言うまでもない。
電力業界の「選挙力」によって築かれる今後の政権は、遠い将来の原発依存の低減を掲げながら、しぶとく原発の再稼働や新増設を進めるだろう。新たな政権は、福島第一原発の廃炉や事故に伴う除染の費用を国が負担し、運転が見込めない原発を電力会社から切り出すための法整備も進めなければならない。
票とカネに依存してしまう以上、政治は電力業界に逆らえない。そして電力業界は政治を意のままに操り、やがて復活の日を迎えることになるだろう。
山口県知事選では電力業界の「選挙力」をまざまざと見せつけられた(7月29日)
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