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『検察崩壊 失われた正義』とクーデターに加担したメディアの責任
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/2012/09/post-c5b4.html
2012/09/04 誰も通らない裏道
『検察崩壊 失われた正義』を読んだ。
東京地検特捜部の虚偽公文書作成事件とは、元々は2009年3月、東京地検特捜部がでっち上げた小沢一郎(当時・民主党代表)に対する西松事件に端を発する。
この事件は公判の途中で、検察側の証人が検察の構図を否定して吹っ飛ぶという驚くべき展開を見せたが(ただしこれについて時間を割いて詳しく報道したマスメディアはなかった)、それでも懲りない東京地検がさらにでっち上げたのが小沢一郎の資金管理団体である陸山会の政治資金収支報告書虚偽記載事件だった。
この事件名だけを書けば何やらおどろおどろしいが、要するに収支報告書のちょっとした記載ミスで、訂正すればいいだけの事案であり、実際、他の多くの政治家の事務所はそのようにして対応していた。
ただ金額が4億円で、そのなかに水谷建設からの裏金5000万円が入っているのではないかという見立て(妄想)を検察はしたわけだ。が、これについてはまったく根も葉もないくことで(ただしこの件についても検察から検審へ渡った捜査報告書のなかに「小沢側が5000万円を受け取ったのは間違いない」という記述がある)、「虚偽記載」に関する小沢の関与も含めて、さしもの検察も不起訴にせざるを得なかった。
ところが、それでもあきらめなかった(というか最初から起訴できないことはわかっていた)検察は、検察審査会制度を利用して、法律に素人である検察審査員に小沢を起訴させようと目論見、まったくインチキの虚偽捜査報告書を特捜部長が陣頭指揮して作成、これを検察審査員に見せることでまんまと起訴へと持っていったのである。
これは本来ならば完全犯罪となるはずだったが、石川議員が一回目の検審議決の後の再捜査の中で受けた事情聴取をICレコーダーで録音していたことから問題が発覚、日本の法治国家としての根幹を揺るがす検察の一大疑獄へと発展した。
「陸山会」土地購入事件 石川知裕被告、再聴取のやりとりを録音 検事
http://www.dailymotion.com/video/xgl2w4_yyy-yyyyyy-yyyyyy-yyyyyyyyyyy-yyyyyyy_news
「陸山会」土地購入事件 石川知裕被告... 投稿者 w5656100
そこで健全な法治国家のために声をあげる市民の会が、この捜査報告書を作成した田代政弘元検事やその上司にあたる特捜部長らを告発したけれども、最高検はすべて不起訴にし、デタラメの報告書を出して頬かむりをしたのである。
同書の各章は郷原信郎氏と小川敏夫(前法務大臣)、石川知裕(衆議院議員)、大坪弘道(元大阪地検特捜部長)、八木啓代(健全な法治国家のために声をあげる市民の会代表)の各氏との個別対談から成り立っている。
その一つひとつが驚きに満ちているが、個人的にはとくに郵便不正事件で犯人隠避で逮捕された大坪氏の話が興味深かった。というのも、大坪氏を逮捕した論理がすべてブーメランのように最高検に戻ってきているからだ。
さて、しかしこの本を読んでいる間中、私の頭の中を支配していたのは検察の犯罪とは別に「メディアの問題」についてだった。
同書の中で八木氏はこう言っている。
私の視点でお話しします。日本で、歴史的な政権交代が二〇〇九年にありました。日本の場合は大統領制でなく、衆議院で一番多く議席をとった政党の代表が総理になるという形をとりますから、あの時点で、もし西松建設事件での検察捜査がなかったら、民主党が政権をとった段階で、おそらく小沢代表が総理になっていたのは間違いないと思います。それが喜ばしいことか、小沢氏が好きか嫌いかという問題は全く別として、民主主義の下で、選挙で民主党が選ばれた以上、代表の小沢氏が総理になるというのが当然です。
ところが、検察の捜査によってそれが阻まれてしまった。しかも、この検察の捜査自体に非常に大きな問題があったということになると、これは私の見方からすれば、クーデターです。
日本でそういった視点を持っている方はあまりいないと思いますが、これはどう考えても、日本という国で検察が起こしたクーデター、民主主義が踏みにじられた問題です。これが許容されるということになると、検察はこれから気に入らない政治家に対していくらでも起訴立件を試みることによって、本当に、思い通りに政治を動かすことができる。逆に政治家の方も、それを恐ろしいと思ってしまうと、絶対、検察に逆らうことができなくなってしまいます。日本の検察の起訴有罪率は、世界的に見れば信じられないほど高い九九・七%という高率ですから、これは行政が、司法と立法を完全に支配しているという状態です。
(太字下線はブログ主)
私の視点も八木氏とまったく同じなのだが、にもかかわらず日本のメディアは、このクーデターの当事者である検察のリーク情報を2009年3月の「西松事件」以来、徹底的に垂れ流してきた。
2009年3月5日の当ブログエントリー
・小沢秘書逮捕報道〜いま問われているのはメディア自身である
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/2009/03/post-7b70.html
東京地検特捜部にしても、このメディアの全力バックアップによる世論操作がなければ、この無理筋の捜査をここまで展開することはできなかっただろう。
つまり、マスメディアは東京地検特捜部と一体化してクーデターへの道を驀進したのであって、これはまさに戦時中の大本営発表垂れ流しと同じレベルの犯罪だ。。
もちろん、さしものマスメディアも最後の最後にきての最高検の不起訴処分に対しては批判的である。
・2012年6月29日 朝日新聞社説
検事の処分−国民の不信がふくらむ
http://shiminnokai.net/news/asahi12020702.html
これは朝日の社説だが、毎日も、読売も、日経も、なんと産経までが同様の社説を掲載している(詳しくはこちらへ)。
それはそれで結構なことだが、しかしでは、「国民の不信がふくらむ」ばかりの検察と一体化して「小沢一郎=悪」という“風を吹かせてきた”のはどこの誰なのか? それについて省みることはないのか?
一方で朝日は小沢が民主党を離党して新党を結成した時、「小沢新党−「人気取り」がにおう」という社説のなかで、「小沢氏は政治資金をめぐる刑事裁判の被告である。一審判決は無罪だったが、国会や国民に対するいっさいの説明責任から逃げ続けている。」と書いた。検察審査会の起訴議決をめぐってこれだけ問題が噴出しているにもかかわらず、依然として「刑事裁判の被告」というレッテル貼りはやめないのである。
また、これは昨日のことだが、突然、わが家のポストに販促と称して産経新聞が投げ込まれた。
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2012/09/04/k_2.jpg
東京新聞購読者にとっては余計なお世話としかいいようがないが、どれどれと思って紙面を見てみると、社会面に「小沢氏系団体を提訴 都内不動産業者 手数料3300万円未払い」という記事があった。大したこともないクソ記事だが、さらに続く解説記事は以下のようなものだった。
http://fusenmei.cocolog-nifty.com/.shared/image.html?/photos/uncategorized/2012/09/04/3k_2_2.jpg
なんといまだに「西松建設の偽装献金事件では、」などと書いて、見出しに「西松事件」などと入れているのだ。
現在、健全な法治国家のために声をあげる市民の会では、田代政弘元検事を虚偽有印公文書作成及び行使と偽証、佐久間達哉元特捜部長、木村匡良元主任検事を虚偽有印公文書作成及び行使の共犯で、検察審査会に申し立てている。
陸山会事件では、素人相手に虚偽の捜査報告書をでっち上げて小沢を起訴に持って行こうとした検察は(そもそも本来、検察は起訴できなかったのだから、何故起訴できなかったかを説明しなければならない)、今回はこの、誰が見ても犯罪としかいいようのない虚偽報告書記載事件を、何故、検察は起訴しなかったかを全力で素人の検察審査員相手にするのだろう。
結果、起訴議決が出るのか不起訴議決が出るのか──。
現状ではまったくもって予断を許さないが、もし起訴議決が出た場合、マスメディアは枕を並べて検察批判を展開するのだろう。
しかし、では彼ら自身の責任はどうなるのか?
検察のクーデターに加担したマスメディアは「社会の木鐸」どころか、ただの戦犯である。その点について「国民に対するいっさいの説明責任から逃げ続け」ることは、もはや許されない。
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