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株式日記と経済展望
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韓国は今後、米国でなく、韓国にとって最重要の国が、
米国から中国へと、静かにだが劇的に転換している。田中宇
2012年9月3日 月曜日
◆東アジア新秩序の悪役にされる日本 8月29日 田中 宇
http://www.tanakanews.com/120829japan.htm
8月17日、北朝鮮の金正恩の摂政役で、事実上の国策決定者である張成沢(金正日の妹の夫)が北京を訪問し、胡錦涛主席や温家宝首相といった首脳陣と会談した。張成沢は、9月に金正恩を訪中させたいので国賓として受け入れてほしいと中国側に要請した。中国側は、北朝鮮を同盟国として支持するとともに、北朝鮮が中国式の経済改革を採用すれば経済発展できると勧めた。中朝は、両国の国境地帯の北朝鮮側にある黄金坪や羅先の経済特区で、経済協力を強化することを決めた。(China's Wen urges North Korea to let the market help revamp economy)
張成沢は、妻(金正日の妹)である金敬姫と一緒に、以前から北朝鮮の中枢で、中国式の経済開放策をやろうとしてきた。先代の指導者だった金正日は、支援元のソ連が崩壊して北朝鮮が飢餓状態になった90年代、軍部に権力を与える「先軍政治」をやらざるを得ず、昨年末に死ぬまで軍部に頭が上がらなかった。だが今年、金正恩への世代交代が行われるとともに、摂政役の張成沢が、権力中枢の軍幹部(李英鎬ら)を7月に更迭して軍から実権を奪い(朝鮮労働党への権力返還)、北朝鮮の国策を経済開放の方向に大きく転換し始めた。その流れの中の最新の動きが、今回の張成沢の訪中であり、中国が北朝鮮の経済開放策への協力を強めると決めたことだ。(◆経済自由化路線に戻る北朝鮮)
北朝鮮は最近、平壌に駐在する米国のAP通信社に、中朝国境の羅先経済特区を取材させたりして、外資導入に向けた宣伝にも力を入れている。(China's flagging economic aid to North Korea)
北朝鮮はこれまで何度も経済開放策を試みて失敗し、中国の協力も無為に終わってきたので、今後の試みも成功するとは限らない。だが今回が従来と決定的に異なるのは、北朝鮮の中枢で張成沢ら経済改革派が権力を握り、経済改革に反対してきた軍部が失権したことだ。今後、北朝鮮は経済面で中国の傘下に入る傾向をさらに強めるとともに、中国がいやがる核実験や韓国との交戦を避ける傾向を強めるだろう。
この変化は、経済崩壊していく北朝鮮を支援する優位な立場で南北間交渉をしていこうと考えていた韓国政府にとって、危機的だ。韓国優位の南北統一ができなくなり、中国に仲裁してもらわないと北との対話もできなくなる。北朝鮮が中国の傘下でうまく経済成長していくと、韓国の出る幕はなくなり、韓国がいずれ取ろうと考えてきた北朝鮮の経済利権は、中国にもっていかれる。韓国が頼みの綱にしてきた米国は、この数年、ときどき北朝鮮との交渉を試みるも失敗し続け、問題の解決に本腰を入れるまでに至っていない。韓国は今後、米国でなく、中国を仲裁役として頼って北朝鮮と向き合っていく時代に入る。韓国にとって最重要の国が、米国から中国へと、静かにだが劇的に転換している。(Ties with China Are Key to Korea's Future)
そうした現状に立つと、韓国の李明博大統領が8月10日に竹島を訪問し、日韓関係を劇的に悪化させた背景も見えてくる。以前の記事に書いたとおり、今後の韓国は北朝鮮への敵対をゆるめ、南北対話を再開せねばならないので、代わりの悪役として再び日本を引っ張り出す策略だろう。米国政府は、日韓に安保協定を結ばせて、日米と米韓がバラバラだった東アジアの安保戦略を日米韓の三角関係に転換させたい。だから李明博は、これまで日韓関係を良好に保とうとしてきた。だが今や、韓国にとって米国の重要性が落ちている。だから韓国側は、米国の思惑を無視し、米国側からの批判に耳を貸さず、竹島問題で反日感情を煽っている。(◆李明博の竹島訪問と南北関係)(Time for U.S. to help Japan, South Korea to get along)
李明博は来年初めに大統領任期が終わって下野するので、今後万が一、韓国が再び日本と協調せねばならなくなったら、その時の韓国は次期政権だろうから、日本との喧嘩を李明博の竹島訪問のせいにして、再び日本と協調できる。人気が落ちている李明博は、次期政権を狙う同僚の朴槿恵に頼まれ、竹島訪問、反日扇動の戦略に乗ったのかもしれない。
この時期、米国の裁判所は、韓国側の感情を逆撫でするかのように、米国企業であるアップルと、韓国企業であるサムソンの、スマートフォンの技術特許をめぐる裁判で、アップル一方的勝訴の判決を出した。これは、米国企業を勝たせたい陪審員の政治判断の結果なので、韓国側は怒っている。韓国には、米韓FTAに対する不満も残っている。韓国は、経済面でも米国との同盟関係から離脱していくかもしれない。
(日本政府は4年ぶりに北朝鮮との直接交渉を再開する。これも、北朝鮮をめぐる状況の変化を受けた動きだろう。交渉を北京でやるところがポイントだ。尖閣問題でいくら中国と対峙していても、力関係からいって、日本は北朝鮮との交渉を北京でやらざるを得ない)(North Korea, Japan to hold first direct talks in four years)
▼アーミテージ・ナイ論文との関係
竹島をめぐる韓国の思惑は分析できた。尖閣をめぐる中国の思惑はどうか。尖閣も竹島と同様、今回の対立激化は、日本側からでなく、相手方(竹島は韓国、尖閣は中国)から扇動されている。中国側は8月15日に活動家集団を船で送り込んで尖閣に上陸し、日本政府が彼らを逮捕すると、中国全土で同時多発的に反日デモが起きた。これらの一連の動きは、市民が自然発生的に起こしたというより、中国共産党が意図的に流れを作ったものだろう。その意図は何か。
中国側の事情として存在するのは、10月に胡錦涛から習近平への権力継承が本格化するので、その時期に国内政治で何か世論の怒りをかう事態になった場合に備え、日本という外部の敵を作っておくのが好都合ということだ。
その見方よりもっと私が注目したのは、米国政界に依頼され、米シンクタンクのCSISが8月15日に発表した、日米同盟の今後に関する「第3次アーミテージ・ナイ論文」だ。この論文は日本に対し、台湾やインド、オーストラリア、フィリピンといった、中国を取り囲む民主主義諸国との協調を強め、米国が作っている中国包囲網の強化に貢献するよう求めている。(Anchoring Stability in Asia - The U.S.-Japan Alliance)(US report urges Japan to work with Taiwan on security)
共和党のアーミテージと民主党のナイが連名で作る、日米同盟に関する論文は2000年以来、今回が第3弾だ。論文は毎回、日本に対し、東アジアでの米国陣営の強化にもっと積極的に貢献せよと求めている。今回も同じ流れだ。しかし、東アジア情勢の全体をめぐる変化を見ると、この10年間で、政治経済の両面で、米国が弱体化し、中国が強くなって、米国が中国の台頭を容認せざるを得なくなっている。米国は、ブッシュ政権が提唱した「G2」など、ときに中国を東アジアの地域覇権国として認める言動すらしている。米政府は、日本に中国との敵対強化を求めるが、その一方で米国自身は中国に対し、融和策と敵対策が入り交じる曖昧な態度をとっている。
こうした全体像をふまえると、アーミテージ・ナイ論文が日本に求めることは「米国の傘下でアジアの中国包囲網強化に貢献せよ」から「米国の助けを借りず、独自に中国と対決せよ」へと変化している。日本の権力中枢(官僚機構)がやりたいことは、対米従属の維持であり、中国との敵対でない。米国が、日米同盟を強化してくれるなら、日本は、米国の傘下で、虎の威を借る狐的に中国敵視の態度をとっても良いと考えているが、米国の後ろ盾がないなら、日中の経済関係が大事なので、中国との敵対を強めたくない。アーミテージ・ナイ論文の要求は、日本にとってしだいに迷惑なものとなっている。(後略)
(私のコメント)
韓国の突然の行動と発言の背後には、アジアにおける米中の力関係の大きな変化が反映されたものだろう。アーミテージ・ナイ論文とブレジンスキーの新著との共通点は、アメリカは徐々にアジアから引いていくから、新しい核の傘に入るか、防衛は自分で何とかしろと言う事だ。しかしアメリカからそう言われても中国に単独で対峙出来るのは日本ぐらいのものであり、韓国や台湾やASEAN諸国はとても対抗が出来ない。
アメリカが構想しているのはアジア版NATOであり、オーストラリアから日本に至る防衛ラインを築く事であり、そこに韓国が入るかどうかは微妙になる。台湾も中国の圧力に負けて入らないかもしれない。アジア版NATOの戦力の中心はもちろんアメリカと日本の軍事力ですが、これは正しく集団的自衛権の行使であり、中国はこの構想に妨害するために、韓国や台湾の反日態度を明確にさせたのだろう。
韓国や台湾は、アメリカを除けば日本の軍事力支援が無ければ中国の支配下に入らざるを得ない。しかし日本も現在の軍事力では日本を守るのに精一杯であり、アメリカに全部お任せする態度に終始している。終戦後アメリカは、日本から韓国と台湾を放棄させたのだからアメリカが防衛責任を持つのが当然であり、勝手にアジアから手を引いていく事はアメリカは無責任だ。
アメリカとしては韓国や台湾に関与していれば中国といずれは直接対決は避けられないと見ているのだろう。かつてのアメリカと中国なら原子力空母を航行させるだけで中国をおとなしくさせる事ができましたが、軍事力が近代化した中国はアメリカの軍事力を恐れなくなった。アメリカが台湾にF16を売らなくなったのも、中国に配慮すると言うよりも台湾が既に中国側に付いたことを感知しているからだろう。
アーミテージ・ナイ論文やブレジンスキーの新著は、韓国や台湾に対する縁切り宣言であり、中国の傘の下に入るか日本に面倒見てもらえと言う事なのだろう。日本に対しても自前で核武装するか他の核の傘を選べと言うのですが、選択肢は自主防衛しか選択しようがない。韓国や台湾と同じように日本が中国の傘の下に入ると言う事はアメリカも計算していないだろう。
李大統領の竹島上陸や天皇発言は日本に対する韓国式のSOSであり、アメリカは韓国の頭越しに北朝鮮と手を組もうとしている。アメリカとしては日米韓の軍事同盟を構想しているのでしょうが中国がそれを許すはずが無い。だから日米韓の軍事機密協定は韓国がドタキャンしましたが中国に脅されたのだろう。韓国人の反日感情からすれば日本に守ってもらうくらいなら中国と手を組むかもしれない。
アメリカは中国に対する包囲網を作ろうと思ってもASEAN諸国も軍事力では中国に束になってもかなわない。決め手になるのは日本の軍事力ですが憲法改正も集団的自衛権も店晒しであり、民・自・公の三党合意が出来ても憲法改正の気配はないし改正案の条文すら出来ていない。大連立状態になっても決まったのは消費税の増税だけであり、このまま選挙に突入しそうだ。
田中氏は次のように書いている。『こうした全体像をふまえると、アーミテージ・ナイ論文が日本に求めることは「米国の傘下でアジアの中国包囲網強化に貢献せよ」から「米国の助けを借りず、独自に中国と対決せよ」へと変化している。』と指摘していますが、中国と対峙出来るだけの首相がいない。今まで日本はアメリカにおんぶに抱っこに肩車できたから自主独立など考えている官僚や政治家などいない。
ロシアや韓国や中国との領土問題が起きたのは、鳩山首相がアメリカとの亀裂を深めたからと言う事が言われていますが、「米国の助けを借りず、独自に中国と対決せよ」とアーミテージやナイやブレジンスキーが言っているのだから鳩山首相の沖縄からの米軍基地移転はアメリカ自身が望んでいる事なのだ。在日米軍基地があれば韓国や台湾はまだ安心できたのでしょうが、アメリカの戦略家の構想によって切り捨てられる事がはっきりした。だから李大統領の行動は中国と手を組み反日に舵を切ったとも思える。
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