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「冷戦後」という現実  田中良紹の「国会探検」 
http://www.asyura2.com/12/senkyo134/msg/839.html
投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 8 月 27 日 00:01:53: igsppGRN/E9PQ
 

「冷戦後」という現実
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/08/post_312.html#more
2012年8月26日 田中良紹の「国会探検」


 1991年12月にソ連が崩壊し第二次世界大戦後の冷戦体制に終止符が打たれた時、アメリカの政治家の多くはモスクワに向かった。歴史的瞬間を自らの身体で感じたいと思ったのだろう。また冷戦の終焉はそれまでの国家戦略を根底から見直す必要をアメリカに迫っており、そうした緊張感も多くの政治家をモスクワに向かわせたのだと私は思った。

 一つの歴史の終わりと新たな歴史の始まりを感じさせる動きだったが、日本に歴史的瞬間を体感しようとする政治家は現れなかった。冷戦の終焉を国会が議論することもなかった。政治家だけではなく日本全体が冷戦の終焉を遠くから見ていた。

 日本人にとっての戦後は、敗戦の荒廃から立ち上がり、他国にはない「勤勉さ」で高度経済成長を成し遂げたという成功物語である。平和主義に徹して冷戦による暴力の世界とは無縁でいることが成功の理由だと思い込んでいた。日本人は冷戦の終焉を「平和の配当が受けられる」と喜び、「自らの立場が根底から変わる」とは考えなかった。

 しかしアメリカは冷戦の終焉を喜んでなどいない。アメリカ議会では、ソ連の核の拡散をどう防ぐか、米軍の配備をどう変更するか、ソ連に代わる諜報の標的は何かなど、新たな秩序作りに向けた議論が3年余り続いた。その議論の前提にあるのは、米ソのイデオロギー対立で抑えられていた民族主義、宗教、文明の対立が世界中で噴き出し、世界は著しく不安定になるという認識である。

 その不安定な世界をアメリカが一国で管理する戦略とは何か。アメリカはそれまで以上に世界の情報を収集・分析する必要に迫られ、首都ワシントンのシンクタンク機能は強化され、諜報活動も冷戦時代以上に必要と認識された。一方で安全保障戦略の中枢は軍事から経済に移行すると考えられ、対ソ戦略を基にした米軍の配置を見直し、経済分野における諜報活動が強化されることになった。

 そうした中で「ソ連に代わる脅威」とみられたのが日本経済である。日本の経済力を削ぐ事がアメリカの国益と判断され、日本経済「封じ込め」が発動された。その一つが「年次改革要望書」を通して日本に国家改造を迫る事である。また一つは高度経済成長の司令塔であった官僚機構を弱体化させる事であった。さらに日本国家の血管部分に当たると言われる金融機関を抑え込むためBIS規制が導入された。

 アメリカの「年次改革要望書」は自民党の宮沢政権から麻生政権まで引き継がれ、小泉政権はこれに最も忠実に対応したが、09年の政権交代により鳩山政権の誕生でようやく廃止された。官僚機構でアメリカが標的にしたのは大蔵省と通産省である。東京地検特捜部が「ノーパンしゃぶしゃぶ」をリークし若手官僚を逮捕した接待汚職事件で大蔵省は威信を喪失、貿易立国を主導してきた通産省も輸出主導型経済を批判されて往時の面影を失った。そして自己資本比率8%の達成を迫るBJS規制は日本の銀行を貸し渋りに追い込み、企業倒産の増大と経済活動の停滞という「失われた時代」に日本を突入させたのである。

 アメリカが日本経済を目の敵にした理由は、戦後日本の経済成長は日本人の「勤勉さ」によるものではなく、冷戦のおかげだと考えるからである。アメリカのソ連封じ込め戦略は、アジアでは日本、ヨーロッパでは西ドイツを「反共の防波堤」にするため、両国の経済成長を図る事にあった。敗戦国の日本と西ドイツがアメリカに次ぐ経済大国となりえたのは冷戦のおかげである。しかし日本の高度経済成長はアメリカ経済にまで打撃を与えた。

 日本製品の集中豪雨的輸出がアメリカの製造業を衰退に追い込み、1985年、ついにアメリカは世界最大の借金国に転落する。一方の日本は世界最大の金貸し国となった。それでも冷戦体制にある間はアメリカが日本と決別することはできない。アメリカの軍事力に「タダ乗り」して金儲けに励む国をアメリカはただ批判するだけであった。

 ところが冷戦が終われば事情は異なる。もはや「タダ乗り」を許すわけにはいかない。アメリカの軍事力にすがりつかなければ日本の安全保障は維持できないと思わせる一方で、そのためには出費を惜しまないようにする必要がある。日米安保体制は冷戦の終焉で終わる運命にあったが、中国と北朝鮮の存在を理由に「アジアの冷戦は終わっていない」とアメリカは宣言し、日米安保は再定義され継続された。

 しかし中国と北朝鮮はかつてのソ連と異なる。ソ連は世界を共産主義化しようとしたが、中国も北朝鮮も世界を共産主義化しようとはしていない。していないどころか「改革開放」という名の資本主義化を目指している。ただ両国とも軍事に力を入れているところがアメリカにとって都合が良い。中国と北朝鮮の脅威を強調すれば日本から金を搾り取ることが出来るからである。

 北朝鮮がミサイルを撃てば日本はイージス艦やMD(ミサイル防衛)やアメリカの兵器を購入する。しかしその北朝鮮が最も手を組みたがっている相手がアメリカである事をアメリカはよく知っている。一方の中国はアメリカにとって今や日本以上に重要な経済パートナーである。相互依存度もダントツなら、日本をしのぐための技術開発でも米中は協力している。しかも核を持つ大国同士だから戦争することはありえない。アメリカは中国に追い越されたくはないが、いずれ米中2国で世界を管理する日が来るだろうと考えている。

 地下資源があるとみられる北朝鮮にもアメリカは興味がある。ミャンマーのような民主化を達成できれば、中国以上の影響力を行使できると考えている。日本の小泉政権がアメリカの頭越しに北朝鮮と国交正常化を図ろうとしたが、アメリカは断固としてそれを許さなかった。同じように日本が周辺諸国と手を結ぶことをアメリカは望まない。日本はアメリカとだけ友好関係を築き、中国が大国化するのを牽制するために利用できる存在であればそれで良いのである。それが冷戦後のアメリカの基本戦略である。

 8月10日に韓国の李明博大統領が竹島に上陸して領土問題に火をつけた。大統領はその後も民族主義を煽る言動を繰り返して日本を挑発している。この人物の政治手法は小泉総理と似ている。アメリカを政権運営の後ろ盾としながら、小泉総理が靖国参拝で日本国民の反中国感情を刺激したように、慰安婦問題を持ち出して韓国の反日感情を刺激している。おそらくアメリカの許容範囲と見ているのだろう。

 15日には尖閣諸島に香港の活動家が上陸して逮捕・強制送還される事件が起きた。いずれも日本にとっては許しがたいが、日本の領土問題には第二次大戦とその後の冷戦体制が色濃く影を落としている。北方領土問題はそもそも太平洋戦争に勝利するためアメリカがソ連に千島列島を帰属させると約束して対日参戦を促した事から始まる。竹島は冷戦体制であったが故に日本は日韓協力を優先させて韓国の暴挙を見逃してきた。そして尖閣問題でアメリカは介入しない事を明言している。

 竹島や尖閣をアメリカが「日米安保の対象地域」と発言しても、国益にならない領土問題にアメリカが介入する事はない。つまり領土問題は日本が独力で解決する以外に方法はないのである。すでに世界が冷戦型思考を切り替えているのに、日本だけは「アジアの冷戦は終わっていない」とアメリカに教えられて冷戦型思考を引きずってきた。しかしこの夏に起きた領土を巡る不愉快な出来事は、日本が自身の戦後史を振り返り「冷戦後」の現実を直視するための格好の機会である。日本は自力で生き抜くしかない「冷戦後」の現実を下敷きにして今後の国家戦略を構築していくべきなのである。


 

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コメント
 
01. 2012年8月27日 00:16:20 : PzKanGLiXg
完璧

02. 2012年8月27日 00:51:08 : SVJ05uuWFk
鎖国が一番
日本人全員でヒキコモロウよ

03. 2012年8月27日 01:25:35 : YxpFguEt7k
斎藤やすのり氏
「貿易協定の問題と安全保障はリンクします。私は日米同盟を維持しつつ、アジア外交も大切にし、”日本の独立”を指向するべきだという考えです。」
http://saito-san.sblo.jp/article/57798668.html

まずは普通の「同盟」関係にしたいものです。
今のは完全に宗主国と植民地の関係です。


04. 2012年8月27日 02:22:31 : 2lmTXULtcg
>>竹島や尖閣をアメリカが「日米安保の対象地域」と発言しても、国益にならない領土問題にアメリカが介入する事はない。つまり領土問題は日本が独力で解決する以外に方法はないのである

そのとうりです。


05. 2012年8月27日 03:27:07 : dGC87H9dKY
アホウヨが都合よく解釈するといけないから言っとくと

ここで重要なのは、アメリカが一番(潜在的にではあるが)敵とみなしているのは日本だというところだ

それがわかれば、強硬派(親米右翼)に付き合うのが一番の自殺行為だということが理解できるだろう

尖閣問題の解決なんかは、本当は簡単でガス田を共同開発すればいい
(ただし中国海軍が太平洋に臨むルート確保にアメリカがどこまで本気で嫌がっているかは問題、今でも結構自由に行き来してるとは思うが?)

>アメリカは中国に追い越されたくはないが、いずれ米中2国で世界を管理する日が来るだろうと考えている

>同じように日本が周辺諸国と手を結ぶことをアメリカは望まない。日本はアメリカとだけ友好関係を築き、中国が大国化するのを牽制するために利用できる存在であればそれで良いのである

アメリカがそれを許さないだけの話

竹島についても鋭い指摘がされている
李明博が
>おそらくアメリカの許容範囲と見ているのだろう

まさしくそのとおり

しかしこれはまだまだ先の話
>地下資源があるとみられる北朝鮮にもアメリカは興味がある。ミャンマーのような民主化を達成できれば、中国以上の影響力を行使できると考えている

今のアメリカの極東での獲物は韓国で
北がある程度一人立ちしてくれないことには、餌にはならない
それでなくても脆い韓国経済の足を引っ張るから

中国も黙って見ているとは思えない


06. 2012年8月27日 09:06:54 : FUviF2HWlS
冷戦後の日本の生き残りのために、米国の要求するがままに日本の社会・経済体制を米国流に改変することを画策したのが、他ならぬ小沢一郎氏である。

その小沢一郎氏の功罪が、阿修羅掲示板で存分に語られるべきである。


07. 2012年8月27日 10:26:29 : Kpi7aOiIHE
>>06
可哀想に・・・・今年の夏も暑いからねえ。

08. 2012年8月27日 10:40:52 : FUviF2HWlS
>>07さん

可哀想なのは、あなたです。

さあ、小沢一郎氏について関心のある方は、小沢一郎氏の政治信条を徹底的に分析しましょう!!

まずは、小沢一郎ウェブサイトから、彼の政策の真意を探っていきましょう!!!

「富裕層の生活が第一」の政治信条が見えてきます。

■小沢一郎ウェブサイト
http://www.ozawa-ichiro.jp/


09. 2012年8月27日 11:55:00 : i0akdQty3c
>08

おじちゃんは、どぼじで、笛吹いてんの?
おじちゃんは、自分でやらないの?

いきなり、さあ〜ましょう、って話しかけてくる人は
人さらいかも知れないってばあちゃんが言うてたよ。


10. 2012年8月27日 20:08:53 : QqIzhDIiJA
流石に田中良紹だ。
日本の政局の見方を完全に読み違えた事を謝りもせず、
古きアメリカの戦略を語る。

田中に言われなくても、こんな話は、そこら中に出回っている。
田中よ、野田と輿石と小沢氏の協力態勢で、自民党を崩壊させるとか言う
あの変な主張の落とし前をつけてから新しい話をしろよ!!!


11. 2012年8月28日 01:23:42 : EAG37JGqnM
>アメリカは冷戦の終焉を喜んでなどいない。

冷戦の終焉に向けて、日本以外の西側先進国は着々と準備していたのでは?

「1989年3月、アメリカを代表する大手企業6社がソ連との間で企業合同を結成した。シェブロン社、イーストマン・コダック社、ジョンソン&ジョンソン社、ナビスコ社、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社というアメリカの経済界を代表する最大手の企業群がコンソーシアムを組織したのである。そして、それを取りまとめたのは、投資銀行メルカトール・コーポレーションであった。ルカトール・コーポレーションのデフェン会長は、『これによって、100億ドルの対ソ投資の道が開かれました』と語った。」

「1989年6月、コール首相はゴルバチョフ議長と、世界に先駆けて投資保護協定に調印した。この協定は、それまでソ連への企業進出に細大のネックとなっていた投資リスクを、政府の責任で回避しようというものである。さらに西ドイツは、チェアマンオブチェアマンと呼ばれる財界の大立者ヘルハウゼン(ドイツ銀行頭取)の決断で、30億マルクの対ソ借款を実現した。西ドイツは、この他にも毎年ソ連から1000人の企業家を研修のため受け入れるなどソ連との信頼関係を確立していった。そしてソ連もまた、経済担当のシラー副首相をひと月に一度という頻繁さでボンに派遣し、緊密な協力関係を築いていったのである。」


12. 2012年8月28日 17:32:20 : Q3V6f0zWRw
要約してみました。
「冷戦後」という現実
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/08/post_312.html
★91年12月にソ連が崩壊し第二次世界大戦後の冷戦体制に終止符が打たれた。
★日本人は冷戦の終焉を、「自らの立場が根底から変わる」とは考えなかった。
★アメリカは冷戦の終焉を喜んでなどいない。
「民族主義、宗教、文明の対立」が世界中で噴き出し、不安定になるという認識である。
★その不安定な世界をアメリカが一国で管理する戦略とは何か。
「安全保障戦略の中枢は軍事から経済に移行する」と考えられた。
★アメリカの国益は、日本経済「封じ込め」。
@「年次改革要望書」を通して日本に国家改造を迫る事。
A高度経済成長の司令塔であった官僚機構を弱体化させる事。
B金融機関を抑え込むため自己資本比率8%の達成を迫る「BIS規制」が導入された。
★@「年次改革要望書」は宮沢政権から麻生政権まで引き継がれた。(09年鳩山政権で廃止)
Aアメリカが標的にしたのは高度経済成長の司令塔の大蔵省と通産省である。
大蔵省は東京地検特捜部の摘発による「ノーパンしゃぶしゃぶ」接待汚職事件で威信を喪失。
通産省も「輸出主導型経済」を批判されて往時の面影を失った。
B「BJS規制」は、銀行を貸し渋りに追い込み、企業倒産の増大と経済活動の停滞を生んだ。
そして、「失われた時代」に日本を突入させた。

★敗戦国の日本と西ドイツがアメリカに次ぐ経済大国となりえたのは冷戦のおかげ。
しかし日本の高度経済成長はアメリカ経済にまで打撃を与えた。
★85年、アメリカは世界最大の借金国に転落し、日本は世界最大の金貸し国となった。

★中国と北朝鮮の存在を理由に「アジアの冷戦は終わっていない」とアメリカは宣言。

★しかし中国と北朝鮮は、「改革開放」という名の資本主義化を目指している。
ただ両国とも軍事に力を入れているところがアメリカにとって都合が良い。
中国と北朝鮮の脅威を強調すれば日本から金を搾り取ることが出来るからである。

★北朝鮮がミサイルを撃てば、日本はアメリカの兵器を購入する。
@北朝鮮が最も手を組みたがっている相手は、アメリカである。
A中国はアメリカにとって今や日本以上に重要な経済パートナーである。
※アメリカは中国に追い越されたくはないが、米中2国で世界を管理する日が来ると考える。…既にアメリカは工業生産で中国に抜かれている。…

★冷戦後のアメリカの基本戦略。
@地下資源があるとみられる北朝鮮にもアメリカは興味がある。
Aアメリカにとって、日本は中国が大国化するのを牽制するために利用できる存在で良い。
※小泉政権が、北朝鮮と国交正常化を図ろうとしたが、アメリカはそれを許さなかった。
同じように日本が周辺諸国と手を結ぶことをアメリカは望まない。

★8月10日に韓国の李明博大統領が竹島に上陸して領土問題に火をつけた。
慰安婦問題を持ち出して「韓国の反日感情を刺激」している。
アメリカを政権運営の後ろ盾としながら、小泉総理が靖国参拝で「日本国民の反中国感情を刺激した」ように、この人物の政治手法は小泉総理と似ている。

★日本の領土問題には第二次大戦とその後の冷戦体制が色濃く影を落としている。
@北方領土問題は、米国が「ソ連に千島列島を帰属させると約束」して対日参戦を促した事から始まり。
A竹島は冷戦体制であったが故に「日本は日韓協力を優先させて韓国の暴挙を見逃した」。
B尖閣問題でアメリカは介入しない事を明言している。

★この夏に起きた領土を巡る不愉快な出来事は、日本が自身の戦後史を振り返り「冷戦後」の現実を直視するための格好の機会である。



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