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日本には8月15日を終戦記念日と言う人がいる。終戦では、戦争に勝ったのか負けたのかは分らない。敗戦を終戦と言い換えて、日本人は敗戦の現実から目を逸らしていると、予ねてから思っていた。孫崎亨著「戦後史の正体」を読むと、日本以外の国では、大東亜戦争(太平洋戦争)の終戦日は、戦艦ミズーリ号上で、日本が無条件降伏文書にサインした昭和20年9月2日となっていることを知った。
確かに言われてみればその通りである。昭和20年8月15日は、大日本帝国がポッダム宣言を受諾したと内外に宣言した日であり、戦闘状態が停止した日に過ぎない。日本は8月15日を戦争の終わりと位置づけ、敗戦とか降伏という言葉を避け、終戦という言葉を使うことにより、「降伏」というきびしい現実から目をそらしてきた。その結果、戦後世代には日米戦争の事実を知らない者までいる。
降伏文書には「日本のすべての官庁および軍は降伏を実施するため、連合国最高司令官の出す布告、命令、指示を守る」「日本はポッダム宣言実施のため、連合国最高司令官に要求されたすべての命令を出し、行動をとることを約束する」ということが書かれていた。それは日本政府が「連合国最高司令官からの要求にすべて従う」ことを約束したことになる。つまりそれが無条件降伏なのであった。
この無条件降伏の下で連合国最高司令官から出された最初の通告は、次の3布告であった。@日本を米軍の軍事管理のもとにおき、公用語を英語とする。A米軍に対する違反は軍事裁判で処分する。B通貨を米軍の軍票とする。お金は米軍が印刷した軍票で、裁判権は米軍にある。そして公用語は英語で軍事管理=軍政であるから、軍事植民地と同じである、と。孫崎氏は「戦後史の正体」の中で、そう書いている。
ウイキペディアで調べたら分るが、この3布告はポッダム宣言の合意内容とは違う。ここで、無条件降伏だからとして唯々諾々と受け入れるか、それとも降伏文書よりポッダム宣言の方が上位にあると正論を述べるか。それが外交力である。ミズーリ艦上で屈辱の降伏文章にサインした重光葵氏は、堂々と正論を述べ、この3布告を撤回させたのだが、この事実をどのくらいの日本人が知っているのだろうか。
戦後の混乱の中で、重光葵氏のように毅然として米国に立ち向かい、意見を主張した政治家たちがいたが、一方、サンフランシスコ講和条約を締結した吉田茂元首相は、米国の「進んで米国の対日政策にしたがって行こうとする熱意ある人」の条件に適う者として米国に擁立された。吉田氏の被占領時代の行動は、ある意味で致し方ない。だが、問題は講話条約後の独立国家日本の首相として、相応しかったかである。
重光葵氏のように毅然として米国に立ち向かった多くの政治家は、占領軍によって公職追放された。このような政治家の対極に、対米追従路線を選択した政治家もいた。日本の戦後史を、この対米自主路線と対米追従路線の二つの流れに焦点を当てて書かれたのが、孫崎亨著「戦後史の正体」である。この書を読み、本稿を8月15日に書いていながら、今、改めて「日本人とは」との思いを強くしている。
孫崎史観と揶揄する人もいるだろうが、これまで戦後の日米関係を本書ほど、対立点を明白にして書かれたものはない。断片的な事実の積み重ねは、単なる史表である。物事には因果関係がある。歴史上の出来事には必ずその原因がある。その原因を究めないで、単に「イイクニ(1192)できた」などと年号を暗記しても、歴史を学んだことにはならない。そういう意味から戦後史を学ぶには格好の書である。
この書を読むと、今問題になっているオスプレイ、TPPそして原発問題、さらには小沢裁判なども、その因って来る所に、米国の存在があることがよく理解できる。そしてその遠因は、日本人が8月15日を終戦記念日と称して、敗戦の現実から目を逸らして来たことにあることもよく分る。これ以上のことは、この「戦後史の正体」を読んでご理解して頂きたいと考える。
最後に蛇足だが、対米自主路線の政治家、即ち、重光葵、芦田均、石橋湛山、鳩山一郎、田中角栄、細川護熙、鳩山由紀夫、小沢一郎たちが、被占領下時代には公職追放され、講和条約後はマスコミによって叩かれた。この事実だけはよく覚えておきたいものである。なぜなら、そこに日米関係が凝縮されているからである。
http://www.olivenews.net/news_40/newsdisp.php?m=0&i=12
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