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2012年8月12日 (日)
消費増税法案廃案懸念で金利が上昇という大ウソ
消費増税法案の参議院での可決に前後して、日本の債券市場で価格が若干乱高下した。
これを、政府とマスメディアが、
「消費増税法案の廃案を警戒して金利上昇のリスクが表面化した」
とアピールした。
日本経済新聞は次のように報じた。
「消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案が10日に成立する見通しとなったことで、財政再建が遅れるとの市場の懸念は和らいだ。9日の債券市場では、朝方に指標となる新発10年物国債利回りが一時前日比0.03%低い0.765%まで低下した。ただ、その後は日経平均株価が上げ幅を広げたことに伴い金利は上昇に転じ、0.8%台で引けた。
今後の衆院解散・総選挙の動向など政治の不透明感は残るものの、一体改革法案が早期成立する見通しが立たことで、債券市場では財政悪化により金利が急騰する懸念はひとまず和らいだと受け止められている。」
(2012/8/9/ 19:42)
また、朝日新聞は8月11日付朝刊社説で次の記述を示した。
「衆院解散の時期をめぐる駆け引きのなかで、一時は関連法の成立が危ぶまれた。そうなれば国際社会や市場の信頼を損ね、国民に多大なリスクをもたらすところだった。」
これらの報道と平仄(ひょうそく)を合わせるかのように、野田佳彦氏は8月10日の社会保障・税一体改革特別委員会の締め括り総括質疑のなかで次のように発言した。
「欧州のいまの状態を見ても、財政に対する信任が薄らいだり、なくなったりしたときに、それが経済不安や金融不安につながってゆくという状況が生まれております。
ひとたび財政に対する信認を失ったときには、そのあとさまざまな努力をする、例えば、年金等の給付をカットするとか、大変厳しい行政改革をやるとか、等々の国民生活に相当厳しい状況を生むような状況をやらざるをえなくなってくるというのが現状だと思います。
日本については、たしかにいま、国債の金利については、低位で安定をしている状況でありますが、財政に対する信任がなくなっていく、財政規律を守ろうとしていないということが、まさに疑念として生まれたときには、私は日本とて、緊張感を持った状況にならざるを得ないと思います。
今回もさまざまな局面がありました。曲折がありました。もしかするとこの一体改革の法案も成立しないかも知れない、という状況に陥った時の金利の動向を見ても、やっぱりそこは私は一定の証明はされるのではないかと思います。
したがいまして、何としてもこの法律を成立させていただき、社会保障を安定させる、充実させるとともに財政健全化に向けても、きちっと日本は道筋をたどってゆくんだということを、しっかりお示ししなければいけないと考えております。」
野田佳彦氏の説明、朝日新聞、日本経済新聞の説明によると、
「今回の消費増税法案の可決成立が危うくなった局面で日本の長期金利が上昇した」
との主張が展開されていることが分かる。
結局、法律案は可決され、国会においては成立した。
ただし、何よりも重要な主権者である国民の賛意は得られていない。
直近二度の国政選挙で、主権者国民は消費増税を認めないとの判断を示しており、今回の国会における法律成立は、主権者国民に判断に歯向かう形で実行されたものである。
国会が主権者国民に再考を願い出たのが現状であって、主権者国民が判断を変えない限り、消費増税を実施することはできない。
本題に戻るが、法律が成立したのであるから、日本の国債金利は再低下していなければおかしい。
ところが、法律の成立にもかかわらず、日本の国債金利は低下しなかった。
この事実が意味しているのは、野田佳彦氏や朝日新聞、日本経済新聞の解説が間違っているということだ。
日本の国債金利が上昇したのは、米国の国債金利が上昇したためである。
米国の国債金利が上昇したのは、日本の増税論議とはまったく無関係だ。
米国の国債金利は、過去30年間低下の一途を辿ってきた。1971年9月に15.8%だった米国10年国債利回りは、本年7月24日には1.39%にまで低下した。史上最低金利の出現だ。
いわば、この低下しすぎた米国国債利回りが小幅反転上昇した。
日本の国債利回りは米国国債利回りに連動して変動する。国際間の資金移動、すなわち「金利裁定行動」によって、この金利の連動性が生まれる。
米国の国債利回りが上昇したから日本の国債利回りが上昇した。
消費増税法は国会で可決されたが、米国国債利回りは上昇したままだから、日本の国債利回りも上昇したままなのだ。
詳しくは『金利・為替・株価特報』第162号をご高覧賜りたい。
私が指摘したいことは、この種の「うそ」、「こじつけ」があまりにも多すぎることだ。
「ウソの情報」を流布して、主権者国民を間違った方向に誘導する。歪んだ政府の歪んだ行動がしばしば観察されることが極めて重大な問題なのだ。
先の大戦の時もそうだった。大本営は「ウソの情報」ばかりを国民に伝えた。「ウソの情報」によって騙された国民は、悲惨な境遇に追い込まれていった。
失わずに済んだ数百万の国民の命が、歪んだ政府の歪んだ行動によって失われることになった。
財政健全化に反対するつもりはない。財政の健全性を確保することは重要なことだ。
しかし、「危機」でもないのに「危機」だと騒いで国民を誘導すること、法律審議とは無関係に金融市場が変動しているのに、法律審議と金融市場の変動がリンクしているとの「誤報」を流布して、法律審議を意図的に誘導することは間違っている。
本当に財政危機なら、財務省が率先して、財務省の利権、無駄な政府支出を排除するはずだ。ところが、財務省は財務省の利権削減につながる財政支出圧縮には、一歩も歩を進めないではないか。
「シロアリ退治なき消費増税」を主張するなら、まず、財務省の天下り大手、日本銀行、東京証券取引所、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫、日本たばこ、横浜銀行、西日本シティ銀行への天下りを全面禁止することを決めるべきだ。
自分たちの利権には指を一本も触れさせず、社会保障を切り込み、消費増税に協力した議員には利権公共事業を配分する、いまの消費増税案は、財政再建政策でも何でもない。
主権者国民は、必ず次の総選挙を通じて消費増税法実施を阻止しなければならない。
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