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ここからが中盤
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2012年8月11日 田中良紹の「国会探検」
国民に13.5兆円の負担を強いる消費増税法が成立した。民主、自民、公明の圧倒的多数の賛成によって成立した。成立に至る過程を見れば、国民生活より民主、自民、公明の政略的思惑が優先された結果である事が分かる。
野田総理にすると、「ねじれ」がある限り予算の執行を可能にする赤字国債発行法案に自民党が反対する事は必定で、昨年の菅総理同様に就任1年程度で自らの首を差し出し、自民党に譲歩を求めなければ予算執行が出来ない運命にあった。その壁を乗り越えるには自民党を自分の側に引きずり込む必要がある。
また国際金融市場では、日本の財政赤字を口実に投機筋が「空売り」を仕掛けてくる恐れもあり、財政健全化に取り組むパフォーマンスをして見せる必要もあった。そのため「待ったなし」とも言えない消費増税を「待ったなし」とフレームアップし、消費増税を選挙公約に掲げる自民党に協力を迫ったのである。
一方、多数の浪人を抱える自民党は1日も早い解散・総選挙が最優先課題であった。とは言え消費増税を単独で掲げれば選挙に負けることは必至で、民主党の政権担当能力を争点に選挙をした方が得策である。だから参議院で「問責決議」を連発し政権を揺さぶる戦術を採った。そのため言いがかりとしか思えない問責決議が次々可決されていった。その延長上で自民党のベストは消費増税法案を否決して野田政権を解散に追い込む事であった。
ところが野田総理と小沢一郎氏の真逆の姿勢に自民党は動かされた。総理は増税に 「政治生命を賭ける」と言い切り、小沢氏は増税反対に離党も厭わぬ強い姿勢を見せた。民主党分裂が確実になると見た自民党は野田政権との合意に舵を切った。これで消費税政局序盤の舞台装置が出来あがった。
小沢氏は消費増税を民意によって実現しようとしていた。これまで消費税を堂々と選挙に掲げたのは大平総理ただ一人である。しかし結果は大惨敗であった。自民党は「増税をしない」と国民をだまして選挙に勝ち、それから増税をするという手法に転じた。中曽根総理とその後を引き継いだ竹下政権はそのようにして消費税を実現した。
官房副長官として渦中にいた小沢氏は、その後細川政権で消費税を福祉目的税に変えようとしたが失敗する。それからの小沢氏は消費税を民意によって実現する方向に考えを変えたと私は見ている。それが09年の民主党マニフェストに現れている。
増税の必要性を「理屈」で説得するのではなく、「利益」を与えて説得する方法である。以前「増税の『理』と『利』」に書いたが、薩長同盟を成し遂げた坂本龍馬のやり方である。龍馬は「倒幕」の理屈で薩長を結びつけたのではない。それぞれが欲しがるものつまり「利益」を与えて薩長を結びつけた。小沢氏は国民に「利益」を与えてから消費税導入の必要性を説得しようとしたのである。
小泉政権は「トリクルダウン」と呼ばれる経済政策をとった。金持ちを優遇すればその富が貧乏人にもしたたり落ちるという理論である。しかし現実には待っていてもしたたり落ちてこなかった。それよりも格差が拡大して国民は不満を持った。そこで民主党マニフェストは政府が直接国民に利益を与えようとした。それが「子ども手当」や「高校授業料無償化」、「農業所得補償」などの政策である。
その財源は無駄の削減でねん出し、4年間は消費税を上げないと公約した。裏を返せば4年後には上げる可能性があるという意味である。4年間は無駄を削減する努力をするが、削減が限界に来たら、国民に「サービスを打ち切るか」それとも増税によって「サービスを続けるか」の選択を選挙で問おうとしたのが民主党マニフェストだと私は理解した。
ところが政権交代が実現した直後から一斉に「ばらまき批判」が巻き起こった。野党に転落した自民党が悔しさのあまり批判するのは分からなくもないが、メディアまで「鳩山不況が来る」と騒いだのである。民主党の政策は国民に富を分配することで消費を刺激しようとした訳で、私から見るとアメリカの「レーガノミクス」の変形である。減税ではないが国民の消費を拡大させて経済成長を図ろうとしたのである。
しかしそれが「ばらまき」の一点張りで否定され、今や消費を冷やすことが確実な消費増税に切り替わった。「レーガノミクス」も当初は散々馬鹿にされたが、それがアメリカの財政赤字を財政黒字に転換させた実績がある。消費を冷え込ませる政策をデフレ下で採用するなど狂気の沙汰だと私は思うが、民主、自民、公明の政治家たちはそうではないらしい。しかし財政赤字を黒字に転換させた時のアメリカの例を少しは考えてみた方が良い。
ともかく国民が参画できない中で消費増税は決まった。ここまでが長い政局の序盤である。ここからいよいよ国民の参画できる中盤の政局が始まる。それは「近いうち」と言われる衆議院選挙までの政局である。
今国会での「待ったなし」の課題は実は赤字国債発行法案と選挙制度改革法案だが、それが中盤の主要テーマである。自民党は赤字国債発行法案を通さなくすることで解散に追い込もうとしているようだが、それを通さなくすればそれこそ選挙どころの話でなくなる。国家機能が麻痺するのに選挙などやっていたら国民は既成政治家全員を落選させて全とっかえをしたくなるだろう。
そしてどうしても自民党が突っ張れば野田総理は解散よりも総辞職を選ぶのではないか。その時には谷垣総裁も退陣を迫られる。序盤の攻防で危うくなっているのは野田総理よりも谷垣総裁と私には見える。自民党の中に谷垣総裁の首を絞めようとする動きが激しく見えている。
そしてご注目なのは選挙制度改革である。議員定数を5議席減らすだけの自民党案が大勢になれば増税で負担を強いられる国民の怒りは燃え上がり、45議席減らす民主党案が通れば自民と公明の選挙協力は終わる可能性がある。どちらも自民党には厳しい。そして衆議院選挙が現実に行われれば「第三局」がどれほどの勢いを持つかが分かる。
無論、衆議院選挙では民主、自民、公明を足せば過半数を上回る可能性はある。「消費増税は信任された」と報道されるかもしれない。しかしこの政局は中盤だけでは終われない。その先には来年夏の参議院選挙に向けた終盤の政局が待ち受けているのである。それをクリアしないと消費税は実現されない。その過程で政治の舞台が大きく変わることを国民は期待するようになるのではないか。
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