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政治アナリスト・伊藤惇夫、膠着政治を斬る!「存在意義を懸けた真の政界再編がついに始まる 民主、自民、第三極、小沢新党は生き残れるか」
http://diamond.jp/articles/-/22766
2012年8月8日 ダイヤモンド・オンライン
小沢グループを皮切りに離党者が相次ぐも、数の論理を背景に増税を推し進める民主党。三党協議で民主党に揺さぶりをかけつつも、決定打を打ち出せない自民党。そして、内閣不信任案の共同提出を行ない、既成政党の出方をうかがう第三極。消費税増税関連法案が参院で審議入りした今、各政党は危ういバランスの上で膠着状態を続けている。もはや、先を見通すのは困難な状況になった。何かのきっかけで勢力図が大きく変わる可能性もあれば、膠着状態が思いのほか長引く可能性もある。足もとで政界再編のキャスティング・ボートを握るのは誰か。注目の小沢新党はどう動くだろうか。政治アナリストの伊藤惇夫氏が鋭く斬る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
■野党6党が内閣不信任案を提出 注目される小沢新党の動き
――消費税増税法案の衆院可決に伴い、小沢グループが民主党からの離党を正式に表明、新党「国民の生活が第一」が旗揚げされた。消費税増税関連法案が審議入りした参院で出方をうかがう彼らは、7日に自公を除く野党が共同提出した内閣不信任案や首相問責決議案にも名を連ねた。しかし、世論調査によると、小沢新党の支持率は思いのほか低い。小沢氏にとって、民主党からの離党と新党の立ち上げはプラスだったのか、それともマイナスだったのだろうか。
現時点で、プラスかマイナスかははっきりわからない。ただ、それ以前の問題として、彼らには大きな誤算があったのではないか。
そもそも小沢氏の基本戦略は、消費税増税関連法案を先送りにして、解散総選挙もさせないことだった。そして、9月の民主党代表選で自分に近い候補を擁立し、鳩山政権時のように背後で自分が実権を握って、復権を目指すというものだった。
ところが、できないと思っていた民主、自民、公明の三党合意が実現し、増税法案が衆院を通過して、一気に流れが変わってしまった。加えて、国会の延長幅が9月8日までという異例の長さになったことにより、当初睨んでいた勝負所が大きく狂ってしまった。
いずれにせよ、あのまま民主党に留まっていれば、今後増税法案が成立しようがしまいが、解散の時期がいつになろうが、選挙に勝てない議員ばかりの小沢グループは、壊滅的な打撃を受けていたはずだ。
そうならないためには、一定数の味方をつれて新党をつくったほうが、自分の政界での力を維持できる可能性が高かった。
つまり、当初から新党を目指していたわけではなく、あのタイミングで新党結成へ動かざるを得なくなったのだと、私は思う。
――小沢氏は、「国民の生活が第一」をずっと主張し続け、それが増税を推し進める野田首相との明確な対立軸となっていた。しかし、「増税反対」「脱原発」などの掛け声以外に、具体的な政策ポリシーが見えてこない気がする。そもそも小沢氏が本心から目指している政策や理念は、何なのだろうか。
「国民の生活が第一」というのは、政策でも理念でもなく、ごく当たり前のポリシー。この言葉からは、「日本をどういう国にすべきか」という目標設定が全く見えてこない。
そこからはっきりわかるのは、結局「反民主」がポリシーだったということだ。政党は、同じ志を持つ人間が目標実現のために集うのが本来の姿。何かに反対するためだけに政党をつくるのは邪道である。今のところ、選挙を意識するだけの新党と考えざるを得ない。
■「反増税国民戦線」の第三極は次期総選挙で存在感を示せるか?
――政局を睨んでの新党となると、彼らは来るべき政界再編において、どういう立場をとるだろうか。
小沢氏は、1996年のイタリア総選挙で、統一首相候補を掲げて勝利した中道左派連合の名称である「オリーブの木」を口にし、他党との連携を示唆している。
要は、新党単体では政局を動かす力になり得ないから、既成政党や第三極など、連携を組める党とはどことでも組みたいという気持ちの表れだろう。事実上の「反増税国民戦線」のようなものを念頭に置いていると思われる。
ただ、「オリーブの木」は、皮肉にも天敵だった菅直人・元首相が熱心だった構想でもあるが――。それでも次期総選挙で民主、自民両党との過半数に達しない場合、政権の行方が混迷する可能性があり、その中でキャスティングボートを握ろうとするだろう。
■今の小沢氏には展望がない 第三極も連携には慎重姿勢
――第三極には、もともと小沢氏と立場が近かった議員もいる。今後、第三極はどのように動くだろうか。
第三極の多くはまだ国政選挙を経験していないため、勢力自体が安定していない。その中で、小沢氏と積極的に組みたいと思う第三極はほとんどいないだろう。緩やかに連携を組むとすれば、もともと小沢グループだった人たちがつくった新党きづな、反増税の立場をとる社民党、河村たかし氏の減税日本あたりだろうか。鈴木宗男氏が率いる新党大地・真民主と組む可能性は、五分五分以下と見る。
軸になるのは、やはり大阪維新の会だろう。ただ、「維新八策」はあくまでスローガンであり、彼らもまだ明確な政策立案ができているわけではない。それに、維新の会は最後までどの政党と連携を組むのか、明言しないだろう。
橋下徹・大阪市長は、小沢新党旗揚げの前日に野田首相を極めて高く評価する発言を行なった一方、小沢氏については木で鼻をくくったような発言しかしていない。松井一郎・大阪府知事が、以前から「小沢さんと組むことはあり得ない」と言っていたことも考えれば、小沢氏と組む可能性は低いだろう。
――では、小沢新党が政界で影響力を持つ存在になる可能性は、足もとでは低いということか。
可能性がないとは言えない。これまで「小沢は死んだ」と何度も言われながら蘇ってきた人なので、奇策を打ち出して来る可能性もある。しかし、過去と比べると今回の新党には展望が見えない。
過去の新党結党時には、小沢氏はいずれも事前にそれなりの布石を打ったり、展望を描いていた。たとえば、1993年時の新生党結党時には、準備期間に1年ほどを費やして党内で数の確保にあたり、社会党、民社党、公明党、連合などとも、水面下できちんとパイプをつくった。だからこそ、細川内閣を実現することができた。
1997年に新進党を解党したときも、党内の反小沢派を説得する気はなかった。自分に100%従ってくれる人間を100名ほど集めて自由党をつくり、はじめから自民党との連立を目指して、ずっと自自連立の交渉を行なっていた。
こうして、いつも事前に布石を打ってきたのに、今回はどうもその形跡が見当たらない。展望がちゃんと描けていなかったのではないか。小沢氏が新党に動く前に、自民党との連携を模索していたという報道もちらほらあったが、それも自民党の長老組などごく一部だったようだ。
――とはいえ、民主党もさらなる離党者の引き留めに必死だ。三党合意を行なった自民党も、独自に内閣不信任案や首相問責決議案を提出する可能性を匂わせながら、民主党と付かず離れずの立場を続けている。こうした流動的な動きを見る限り、小沢新党と行動を共にする人々も増えていくのではないか。
民主党から新たに何人かが小沢新党へ合流することはあっても、大量に流れ込む可能性は低いだろう。既成の政党の中で、小沢氏と組みたい政党はほとんどいないはずだ。
■神話の中で2〜3倍も大きく見えていた小沢氏の「実像」
――となれば、いよいよ「小沢神話」の効力はなくなるというわけか。
「神話」の中で実像の2〜3倍も大きく見えていた小沢氏の姿が、だんだん実像に近づいてきた印象だ。小沢氏は、もともと「仕掛け」がうまくいっているときは表に出てこない。仕掛けがうまくいかなくなったり、焦りを感じているときに自らメディアに出てくる。このところ、メディアへの露出が多くなっていることを見ると、かなり焦りを感じているように思える。
―― 一方、小沢グループと決別した民主党は、数の論理で言えば、だいぶ弱体化してしまった。野田首相は、野党による内閣不信任案の提出や自民党の牽制に対して、消費税関連法案の採決を急ぐ意向を表明するなど、苦しい立場に追い込まれている。小沢氏と対峙していた野田首相にとって、小沢氏を民主党から出したことはよかったのか、それとも悪かったのか。
マイナスではなかったと思う。野田首相は、随分前から小沢氏が出ていく覚悟をしていたはずだ。今後の政権運営において、消費税増税、TPP、集団的自衛権、原発政策などで身内の造反者が大幅に減ったメリットは大きい。
これまでは、党内融和を第一に考えざるを得ず、やりたいことができなかった。それが身軽になった今、プラス評価につながるか、マイナス評価になるかは別として、野田首相は積極的な政策に打って出やすくなった。
――とはいえ、これだけ議員数が減ってしまった以上、民主党の政局運営に影響が出ないとは言えないだろう。
政権が弱体化したことは事実だし、足もとで民主党内から一定数以上の造反者が出れば、内閣不信任決議案が可決される可能性もある。しかし、野田首相はそれも含めて覚悟しているように感じる。
うがった見方をすれば、増税法案の成立や解散時期にかかわらず、民主党は次の総選挙で間違いなく負けるだろう。「その前に何をやるべきか」「今後過半数を割り込んだ場合、どうするか」ということに、野田首相の目は移っていると思う。
■不信任案が可決されなければ解散総選挙は秋にずれこむ?
――目下、野党が提出した不信任決議案の可決はメドが立っていない。不信任案が否決された場合、次に解散総選挙の可能性があるとしたら、いつどんなタイミングで、どんな理由で起きるシナリオが考えられるだろうか。
その場合、最も早いところでは通常国会の会期末。消費税増税法案の片が付いた後に野田総理が決断して、解散総選挙に至るというものだ。しかし、解散総選挙はもっと先に延びるかもしれない。
たとえば、特例公債法案を早期に衆院通過させようとする民主党に対して、自公両党は衆院解散・総選挙の確約を条件に回答を留保し続けてきたため、これまでは採決を秋の臨時国会へ回そうとする動きがあった。足もとの政局次第ではあるが、今後特例公債法案の採決が臨時国会へずれ込むことを自民党が容認すれば、解散総選挙はその後にならざるを得ない。
また、そもそも早期解散を唱えているのは、谷垣禎一総裁と周囲の一部若手だけであり、これまで自民党内では「増税法案が成立した直後に解散総選挙をやって、何の得があるのか」「一定の時間を空けたほうがいい」といった意見が支配的だった。
これらを考えると、可能性が高いのは、秋の臨時国会で特例公債法案に片を付け、場合によってはその後3党で補正予算をつくりあげてから、解散総選挙が行なわれるというシナリオだ。
いずれにせよ、足もとで自民、公明は難しい「踏み絵」を迫られている。三党協議に引きずられ、他の野党が提出した不信任決議案を否決すれば、野田政権を信任することになり、自党の立場として辻褄が合わなくなってしまう。
■民主、自民は過半数をとれない?政策を軸にした「まともな再編」へ
――今後、解散総選挙となった場合、政界の状況はどうなるだろうか。
次の総選挙は、場合によってはこれまでと全く違う構図になるかもしれない。民主も自民も過半数をとれない、あるいは民主、自民、公明が3党合わせてやっと過半数をとれる状況も考えられ、第三極がキャスティング・ボートを握る可能性もある。かなりの確率で大きな再編の動きが出てくるだろう。
既成政党が分裂するのか、第三極同士が結びつくのか、様々なケースが考えられ、先は全く読めない。すでにそういう状況になることを想定して、永田町は動き出しているのだろう。
――第三極がお互いに確固たる連携を見出せていないことに加え、既成政党まで分裂してしまえば、小政党が乱立して離合集散を繰り返すという、新進党解党後に似た混沌とした状況に逆戻りしてしまう可能性もありそうだ。
私は、当時よりも本格的な再編が起きると見ている。新進党は再編ではなく、数を確保して自民党にチャレンジするだけの合従連衡に過ぎなかった。
政界再編は、本来哲学を持ってやるものだ。次の総選挙では、政策や理念を軸にしたまともな再編が、いよいよ始まる可能性がある。もちろん、そうならない可能性もあるが、どうせなら国民が希望を持てる、まともな再編になって欲しいものだ。政治家には、そうした再編を行なう義務がある。
――解散総選挙の可能性に加え、9月には民主、自民の両党とも党首選挙が控えている。今後の政局でキーマンになりそうな政治家と、その理由は?
民主党代表選について言えば、野田首相はやはり強いだろう。前原誠司氏が立つ一方で、馬淵澄夫氏、細野豪志氏らが担がれる可能性もあるが、今の流れでは野田首相が再選する確率が高い。
自民党総裁選では、谷垣総裁の再選は五分五分と言うところか。目下、自民党の注目株は小泉進次郎氏くらいだが、経験や実績を考えると現実的ではない。石破茂氏、石原伸晃氏あたりが対抗馬になるだろう。安倍晋三元首相が意欲を示しているという噂も根強い。
そして第三極では、言うまでもなく橋下徹氏。一方、石原慎太郎・東京都知事は、本当に新党をつくるかどうか不透明だ。また、小沢氏が何らかのアクションを起こせば、それなりのインパクトにはなるだろう。
■細野豪志首相の可能性は?維新の会、石原新党は慎重か
――民主党では、次期代表・総理候補として、細野豪志氏がにわかにクローズアップされている。野田首相の後を継ぐ可能性は本当にありそうか。
可能性はなくはない。民主党は、世間の風当たりが強くなるときれいな看板に架け替えて勝負をしたがるきらいがあるからだ。その意味では、細野氏は看板としては見栄えがいいので、担ぐ機運が出てくるかもしれない。ただ、実績の乏しい細野氏が、野田首相と正面切って戦っても、勝てる見込みはない。
それに、そもそも代表候補として細野氏や馬淵氏の名前が浮上してきたきっかけは、「小沢氏が担ぐのではないか」という噂が流れたためだ。だが、今や小沢氏が民主党にいなくなり、神輿の担ぎ手がいない。小沢グループは民主党内で唯一結束力が強かったので、彼らが担ぐとなればそれなりの勢力になったが、今の民主党にはそういうグループがいない。
また、細野氏は前原グループなので、親分が自分で出ようとしているところに水を差すことも考えにくい。
――浮かんでは消える石原氏の新党構想がもし実現すれば、大阪維新の会や小沢新党の動きにも少なからぬ影響を与え、政界再編の台風の目となりそうだ。
もし石原氏が動くとすれば、「維新の会と組める」という確証を得たときだろう。都庁にも週に1〜2度しか顔を出さない石原氏が、橋下氏に会うために大阪まで何度も足を運んでいる。これを見る限り、やはり維新の会との連携にかなり熱を入れているように思える。
ただし、息子である伸晃氏が総理・総裁を狙う可能性もあるのに、あえてその妨害要因となる行動に出るかどうかは疑問だ。仮に新党を旗揚げしたとしても、石原氏自身が衆院選に出馬する可能性は極めて低く、党の応援団長のような立場に収まるのではないだろうか。
■存在意義を懸けた政界再編へ 政治家よ、「国家観」を持て!
――今後の政界再編で、政治家たちが持つべきポリシーとは何だろうか。
国家観を持つこと。それしかない。日本という国が今どんな立場にあり、どういう方向へ進んでいけばいいか。人口動態や経済状況を見る限り、日本はこれから下降線を辿らざるを得ないだろう。
今後政治が考えるべきは、20〜30年先を見据えて、その「下降線」が緩やかになるよう、コントロールしていくことだ。そうした考え方を軸にして、経済政策、行財政改革、社会保障改革などを考えることが、何より重要になる。
日本の政治の問題点は、目標設定をしないまま備縫策で政策の手直しや再編を行なってきたこと。目標設定をして初めて、そこへ到達するために必要なことが見えてくる。今は小泉政治の総括どころか、民主党政権発足以降の迷走の総括もできていない。前に進むためにやるべきことは、1つ1つ過去の総括を積み上げ、体系的な国家観へと収斂させていくことに他ならない。
いとう・あつお/政治アナリスト。1948年生まれ。神奈川県出身。学習院大学卒業後、自由民主党本部事務局に勤務。自民党政治改革事務局主査補として、政治改革大綱の策定に携わる。その後、新進党を経て、太陽党、民政党、民主党で事務局長を歴任。「新党請負人」と呼ばれる。2002年政治アナリストとして独立。執筆やコメンテーターの世界で広く活躍。
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