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国内最大級の食品公害「カネミ油症」をめぐる被害者救済法が、ようやく今国会で成立する見通しとなった。
油症救済の法制化は被害者らの悲願であり、その限りでは大きく前進したと言えるだろう。しかし、これだけで問題のすべてが解決するわけではない。
法案は民主党20+ 件が新たにまとめ、超党派の国会議員連盟の総会で合意したが、患者団体の代表からは不満も漏れた。被害者は決して歓迎一色ではないのだ。
福岡、長崎両県を中心に西日本一帯で1968年、カネミ倉庫(北九州市)製の食用油を口にした人が深刻な健康被害を訴えた。食用油の製造過程でポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入し、そのPCBが猛毒のダイオキシン類に変化していた。これがカネミ油症である。
約1万4千人が被害を届けたが、認定患者は今年3月末現在、約2千人(うち生存者は1370人)にとどまる。症状が多様であることから同じ食事をした家族内で認定と未認定に分かれる例もあり、認定されてもカネミ倉庫が患者の医療費の一部などを払っているだけだ。
これに対し法案は、国が健康実態調査を毎年実施したうえで、調査を受けた認定患者や同居家族に1人年間24万円程度の支援金など(国が年19万円、カネミ倉庫が年5万円程度)を支払うという。
被害発生から44年、これまで一切なかった公的支援に一定の道筋を付ける意義は小さくない。同じ食事をした未認定家族まで救済することも評価していい。
ただし、公費による医療費の直接支援は見送られた。カネミ倉庫への経営支援策を拡充し、医療費をカネミ倉庫が支払う従来の仕組みは温存する方針だ。
カネミ倉庫の経営には不安が残り「医療費の間接支援では恒久策にならない」との被害者の心配は理解できる。
民主党20+ 件は野党時代から患者救済を掲げてきた。ところが今回、もともと超党派議連で医療費を公費助成する法案提出が決まっていたのに、一度は「国に責任はない」との厚生労働省などの抵抗から法制化の方針を覆し、批判を浴びた。被害者置き去りの醜態と言わざるを得ない。
一方で国は発生時、食中毒事件として被害者を守る適切な対応をしたのか。被害を広げた責任はないのか。被害実態が未解明のまま、政治決着で救済を取り繕う歴史は、水俣病救済と二重写しだ。
何の落ち度もない人が被害に遭ったのである。公の支えもなく、被害者らが長年耐えてきた精神的、肉体的、経済的な苦痛を考えると、この一点だけで救済されるべき理由として十分だろう。
被害者の願いは未認定患者を含めた全員救済だ。今回の法案は、その入り口でしかない。今後、認定基準の抜本見直しが不可欠で、公的支援も不十分だ。
救済法案には「3年をめどに見直す」という規定が盛り込まれる方向という。政府も国会も、油症問題に向き合い、被害者に寄り添う姿勢を見せてほしい。
=2012/08/05付 西日本新聞朝刊=
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