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9月に発足する予定の原子力規制委員会の人事が暗礁に乗り上げている。委員長候補の田中俊一氏は、67年に日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)入所、原子炉工学部遮蔽研究室長、東海研究所副所長、所長、副理事長などを歴任。その間に、日本原子力学会会長や原子力委員会の委員長代理を務めている。読売新聞は放射線物理が専門のしがらみの無い実務派と報道した。
だが、この経歴からも分かるように、日本の原発事業を推進してきた原子力ムラの中心的人物である。マスコミの報道によると、原発推進派であった経歴を、「脱原発」を唱える議員や市民団体が問題視して、反対していることになる。だがそれよりは、「原子力損害賠償紛争審査会」の委員としての発言の方が、看過することが出来ないとして反対されているのだろう。それが証左にネットには次のような書きこみがある。
田中氏は、100ミリシーベルト(ms)未満は、健康に影響はないとか、20ms未満の地域は帰宅しても大丈夫だと言い、自主避難者への賠償を打ち切ろうとした。また、環境省が除染の基準を1msにしようとした時も、5msが現実的だと主張。食品の安全基準を500ベクレル(bq)から100bqに、水の安全基準を100bqから10bqへ引き下げようとした時も反対したそうだ。
この発言を含め、ネット上で取り上げられている田中氏の発言は、斑目原子力安全委員会委員長が、浜岡原発の運転差し止め訴訟の被告側証人として証言した、「どこかで割り切らないと(原発の)設計はできない」との発言に匹敵するほど、放射能禍の畏れを知らぬと言うか、危険性を見下した発言である。筆者が草創期の原子力事業に関わった経験から言えば、考えられないほど無責任な発言なのである。
草創期の原子力の研究開発に関わった研究者・技術者達は、ある意味で原子力の素人であった。そして素人であるがゆえに、原子力の危険性や放射能禍に畏れを抱いた。だが、大学に原子力工学科が設置され、そこで学んだ世代から、原子力の利用には長けても、畏れを抱く謙虚さが失われた。初期の原子力工学科の教授たちも現場を知らぬ素人。その下で学んだ世代が、今、原子力ムラの中枢にいるのが問題だと思う。
なぜ、謙虚さがないと言うか。89年のサンフランシスコ大地震で、サンフランシスコ湾に架かるベイブリッジが崩れ落ちたのを見て、日本の建築技術者は「日本の建築技術ではあのような損壊は起こらない」と言った。だが僅か数年後(95年)に起きた阪神大震災で、日本の建築技術者は顔色を失った。そして彼らは謙虚に反省し、道路や鉄道の橋梁には耐震補強工事がなされた。それに比べ原子力業界はどうか。
86年にチェルノブイリ原発事故が起きた時、日本の原子力技術者は「我が国では、このような事故は起こらない」とうそぶいた。そして原子炉が3基もメルトダウンする最悪の事故を起こした。ここで謙虚に反省するならば、幾つかの事故調報告書が出揃ったのだから、事故原因究明の議論が起きるはずだ。ましてや、それに基づく安全対策が講じられる前に、軽々しく原発の再稼動などを言わないはずである。
確かに原子力規制委員会は、原子力発電の安全対策の第一歩ではあるが、委員長の人事が難航するのは、これまでの日本の政官学を含む原子力業界が招いた必然である。それは原発推進の経済産業局が、省益追及を優先し、米国のNRC(=原子力規制委員会)のような独立した原子力安全に関する監督業務の独立を妨害し、学会や業界では原発の安全性に疑義を挟む研究者を、原子力ムラから追放してきたからである。
原子力規制委員会とは言っても、この委員会の目的は「原子力利用における安全の確保を図るため」であるから、京大の熊取5人衆と呼ばれるような反原発の研究者を、原発推進の経済産業局の官僚が、委員長に推薦をしないだけではなく迎え入れる訳もない。そして、今以て斑目原子力安全委員長は辞職しない。原発推進の中核である原子力委員会の委員達の誰一人として、原子力行政の責任をとって辞職しない。
何も東電を庇うのではないが、原発事故は東電だけの問題ではない。政官学を含む原子力業界全体の問題でもある。処が、政官は事故を隠蔽し、学者の言う「安全」は、次々とその嘘がばれている。これでは、国民が反原発になるのは当然である。学問や技術の進歩には、反対意見を取り入れることも重要である。反原発の研究者・技術者意見を真摯に聞く。これができない限り、反原発の動きは収まらないだろう。
http://www.olivenews.net/news_40/newsdisp.php?m=0&i=12
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