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消費増税は真珠湾攻撃か
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/07/post_308.html#more
2012年7月28日 田中良紹の「国会探検」
政治の常識から言えば、通常国会の最大の使命は国民生活に支障を与えないよう予算執行を実現させる事にある。それが出来ないと国家は機能麻痺に陥り、経済は混乱し、国民生活は破綻する。それこそ「待ったなし」でやらなければならない政治課題である。
この通常国会では、成立した予算を執行させるため赤字国債発行法案を巡る議論を行い、膨大な赤字を抱える財政構造の中で、今年度予算の歳出と借金の関係は適切なのか国民に知らしめ、その上で赤字国債発行法案を成立させる必要がある。ところがそれが行なわれていない。
また深刻な原発事故の収束と将来のエネルギー政策について議論するのもこの通常国会にとって「待ったなし」の課題である。「原発再稼動」などは、それこそ国民の代表が集う国会で議論されるべき問題だが政府の判断だけで決められた。本来は統治者と国民の中間にあって政策判断をすべき議会が機能していない。それが官邸前デモという国民の直接行動を生み出している。
それら「待ったなし」の課題を議論せず、代わりに議論されているのは「社会保障と税の一体改革」である。「社会保障と税の一体改革」を全否定するつもりはないが、それを「待ったなし」だとする主張には疑問符が付く。論理的に頷けない主張だからである。
第一に再来年に実施する予定の法案をこの通常国会で成立させなければならない理由はない。第二にデフレ不況下での消費増税は経済を破綻させると世界の経済学者は主張している。経済学の理論に反して「待ったなしだ」と言うのは論理を超えた非論理の事情が背景にあると考えるしかない。
長く政治を見てきた経験で言うと、時折、非論理で動く政治家がいる。そうした場合、調べると大抵は裏で「買収」か「恐喝」が行われている。しかしその事実は半永久的に表に出ないから、国民が知る事にはならない。
「買収」というのは「次の選挙で必ず当選させる」と持ちかける事であり、「恐喝」とは「言う事を聞かなければスキャンダルを表に出す」と脅す事である。スキャンダル攻撃は国民の目に触れない時にこそ効力を発揮している。従ってスキャンダルが表に出た政治家は「恐喝」に屈しなかった結果と見る事も出来る。
かつて中曽根総理が自民党全派閥の反対を押し切り衆参ダブル選挙を実現した時に裏で駆使した「買収」と「恐喝」の手法は見事と言うしかなかった。まず竹下登氏のすねの傷に塩がすり込まれた。新潮社の『フライデー』がなぜか竹下氏の昔のスキャンダルを掲載し、竹下氏は中曽根氏に逆らわなくなる。竹下氏が安倍晋太郎氏を説得する一方、二階堂進氏には選挙資金が提供された。金丸信幹事長に対しては、竹下氏が議席予測をしてみせて選挙に同意させ、宮沢喜一氏だけが孤立に追い込まれた。
「死んだフリ解散」と言われたように、いったん衆参ダブルはなくなったと周囲に思わせ、しかし翌日には復活させるという複雑な策略も弄した。竹下氏の予測が自民大勝でなかった事から金丸氏は同意したが、自民党は300議席を超える圧勝で中曽根氏の長期政権が現実になろうとした。すると金丸氏は幹事長職を辞して中曽根氏の長期政権を阻止する行動に出た。権力闘争の複雑さと凄まじさを見せつけてくれた政局であった。
このように非論理の動きの背景には政局的な策略が忍んでいる場合もある。今回の消費増税政局をメディアが「小沢斬り」とか「小沢抜き大連立」と解説するのはそうした事を指すが、私などはさらに一段と異なる見方をしている。「ねじれ」で機能できない事がはっきりした日本の政治構造をガラガラポンするため、自民党が民主党を分断したように見せながら、実は民主党が自民党を再編に引きずり込んだという見方である。
いずれにしても「待ったなし」でない問題を「待ったなし」であるかのように議論する特別委員会の議論は、申し訳ないが建前だらけで面白くない。暑い真夏にダラダラした議論を続ける議員も大変だろうと思っていたら、参議院の予算委員会で興味ある質疑にぶつかった。
みんなの党の江口克彦議員が野田総理にぶつけた質問で野田総理の資質が見えてきたのである。それによって「待ったなし」でないものを「待ったなし」と言う理由も理解できた。江口議員は松下幸之助氏の秘書を長く勤め、松下政経塾出身の総理にとっては目上の立場にあった人物である。無論、野田総理の事も良く知っているに違いない。江口氏はまず「増税反対の立場であった人間が何故豹変したか」を問うた。
野田総理は「国際社会に出てみて岩倉使節団のような思いがした。財政健全化に取り組まないと大変な事になると思った。菅さんも安住さんも私もそうだ」と答えた。成る程と私は納得した。「菅さんも安住さんも私も」嘘と謀略にまみれた国際社会で戦った経験のない政治家である。だから国際社会を騙すより国際社会の脅しに屈する。
国際社会は他国を如何に騙して自国の利益を吸い上げるかに血道を上げる世界である。他国の政治家が日本の利益になる事など言うはずがない。岩倉使節団の公式報告書と言える久米邦武の『米欧回覧実記』によれば、道徳的である事が政治だと思っていた日本人は、西洋各国の利益追求政治の凄まじさに驚く。不平等条約の改正をしようと思ったが手もなく捻られ、西洋が私利の追求と権力による正当化という狼の文明である事を思い知る。恐らく「菅さんも安住さんも野田さんも」国際的修羅場の経験がないため狼の文明に恐怖したのだろう。国際社会の言う事を鵜呑みにして財政健全化しか見えなくなり、それを財務省の官僚に利用されているのである。
次に江口議員は「消費税を上げれば財政が立ち直るというのは一撃必勝の真珠湾攻撃で太平洋戦争に勝てると考えた戦前の軍部と同じだ。石原莞爾は国力を蓄えてからアメリカと戦うよう説いたが、石原の方が正しい。国力を蓄えずに消費増税をすれば必ず日本は敗戦する」と述べた。
これに野田総理は「真珠湾と消費税は違う」と全く意味するところを理解出来ないようだった。アメリカ発の大恐慌がヨーロッパ経済を破綻に追い込み、その影響が日本に及んできた時、石原莞爾は満州に計画経済国家を作り、国力を蓄えてから最終戦争に備えようとした。そのため石原はあらゆる戦争に反対したが、軍部は中国と戦争を始め、それがアメリカの反日感情に火をつけた。アメリカは禁輸と金融資産凍結という日本経済殲滅政策を採り、日本は対米戦争に踏み込まざるを得なくなる。そして国力のない日本は敗戦を迎えたのである。
「財政健全化をしなければ日本経済を攻撃する」という国際社会の宣戦布告に震え上がり、国力の蓄えもないまま消費増税に突き進めば、更なる消耗が重なって国民生活は疲弊する。政府が財政破綻して潰れても国民の側に蓄えがあれば日本国家の再生は早い。しかし国民が消耗してしまえば再生は遅れる。
しかも消費税を上げても財政が破綻しない保障はない。冷戦の崩壊以来続いている「失われた時代」を終らせるために財政破綻させるのも一つの方法かもしれない。無能な官僚機構を大掃除して選択肢の乏しい中央集権国家を地域主権国家に転換させる事が出来るかもしれない。
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