http://www.asyura2.com/12/senkyo133/msg/279.html
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「アエラの記事を素材に消費税を考える(1):“益税問題“という問題:「消費税納税義務免除事業者」と「簡易課税」の制度」
http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/832.html
※ アエラ記事の全文をこのスレッド末尾に転載
「アエラの記事を素材に消費税を考える(2):「非課税取引」で財務省が言う「税の性格」とは:病院経営と消費税」
http://www.asyura2.com/12/senkyo133/msg/230.html
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「AERA ‘12.7.2号」に掲載された消費税特集記事で高く評価したいのは、これまでほとんど指摘されることがなかった「消費税と雇用問題の関係」にスポットライトを当てたことである。
● 人件費の企業負担を大きく変える消費税の課税論理
アエラは、特集記事の最後に、「不公平D雇用問題にまで波及」というコーナーを設け、
「政府税制調査会の専門家委員も務める青山学院大学の三木義一・法学部教授は、「消費税は企業の人事政策にも影響を及ぼす可能性がある」 と指摘する。
具体的には、企業が直接雇用する正社員の採用が抑えられ、間接的に雇う派遣社員の導入が拡大する、というのだ。
繰り返しになるが、納税額は売上高から仕入れ費用を引き、そこに税率を乗じて算定する。
計算上、納税額を減らすには、仕入れの値を大きくすればいい。その点、社員の「給与」は該当しないが、派遣会社に支払う派遣料は仕入れに計上できる」
と説明している。
※ アエラは、「納税額は売上高から仕入れ費用を引き、そこに税率を乗じて算定する」と説明し、それを繰り返し説明してきたかのように書いているが、「益税」問題では、預かり消費税ベースの説明に依拠している。
企業が直接の雇用者で負担する人件費は、税込み社会保険料込みの額面給与の他に、社会保険料の企業負担分があるので、支払い給与の1.5倍ほどになると言われている。
このような構造だからこそ、利益の他に消費税も負担する派遣会社に、余裕を持って派遣労働者を発注することができる。
派遣労働者の賃金水準は、正規雇用労働者と比較すると、同じ労働でも20〜30%ほど低いとされる。(生涯賃金は、正規労働者が2億円で非正規労働者は1億円と言われている)
失業率が8から9%と言われている若年層の状況を考えれば、直接雇用の人件費総額を支払いに当てれば、派遣会社は、消費税負担と利益を勘案しても、喜んで労働者を派遣するであろう。
発注企業は、仮に、これまでの人件費である「給与+法定福利費」がそのまま消費税転嫁込みの支払い金額であったとしても、消費税の仕入控除を考慮すると大きな“得”になる。
派遣労働者に置き換えても問題がない従業員の人件費が、法定福利費込みで1億円だとする。
人件費は、法人税では損金になるが、消費税では課税ベースに含まれるものだから、その人件費部分だけで税率が5%であれば5百万円の消費税が発生する。
この負担を嫌い、消費税税込み1億円で派遣労働者に切り替えると、消費税の課税ベースから除かれるので、消費税の負担が5百万円少なくなる。
14年4月、15年10月と消費税税率を段階的に10%にする動きが加速しているが、消費税税率が10%になれば、1億円の人件費を派遣にするか雇用にするかで、稼いだ付加価値のなかから手元に残る金額が1千万円も違うようになる。
さらに、同時に進んでいる厚生年金保険料の負担増も、企業経営者に“派遣化”を促す。
(※ 厚生年金保険の料率は、11年の16.412%から17年には18.3%になる。その半分が企業(雇用主)の負担だから、約8.2%から9.15%に負担が強まることになる。派遣労働者は、国民年金と国民健康保険に自分で加入する存在だから、派遣会社も発注企業も負担しないで済む)
従業員福利よりも最終利益にこだわる企業経営者であれば、直接雇用と派遣労働者のどちらを選択するか自明であろう。
アエラも、「もちろん、基幹人材の育成などの点から、派遣社員の導入が性急に進むことはないだろうが、「労働力の外注化を意識する経営者はじわりと増えていくのではないか」(三木さん)」と書いている。
以前にも説明したが、消費税の税率がアップすればするほど、経営幹部候補生や開発研究技術者という余人に代え難い人材は自前で抱えるとしても、代替性が高い人材は外部に依存するという人事構造が深まっていくことになる。
アエラは、続いて、「実際、建設現場では、消費税が5%に上がった97年以降、個人事業主の「一人親方」が増えた。不況による収益悪化で社会保険料負担が苦しくなっていたところへ、消費税がのしかかり、建設会社が従業員を一人親方として独立させ、請負契約を結んで仕事を外注するようになったのだという。一人親方の労災保険を運営する東京土建一般労働組合の井澤智・常任中央執行委員は、「無年金、無健保という一人親方も多い。消費税は社会保障の充実のため、というが、明らかに逆行しています」」と現状を語っている。
今回や今後の消費税増税を実現するため口が裂けても言えないだろうが、97年の消費税増税は、前回説明した論理で金融危機を誘発し、雇用者所得も減少させていくことで、日本経済をデフレスパイラルに投げ込んだのである。
増税渦中の98年から財務省理財局長を務め、現在は自民党所属参議院議員となっている中川雅治氏は、今日開催された参議院の「社保と税の一体改革」特別委員会で、恥じらいもなく、「そのように言って消費税の増税に反対するエコノミストもいるが、97年の消費税増税が景気にそれほどの悪影響を与えたわけではないことを政府はきちんと説明すべきだ」と吠えていた。(※ 中川氏が無能ではないという前提に立った好意的な評価なので悪しからず)
消費税の課税論理が採用や給与に及ぼす影響を考えると、極端な話、ユニオンショップの労働組合がそのまますっぽり派遣会社になり、利益を追求しない経営を行えば、実質がほとんど変わらない条件のまま消費税を負担しないで済む構図が生まれるということになる。
派遣会社の経営者となる組合幹部は、どのちみ組合員の組合費で生計を立ててきたわけだから、会社側から受け取ったお金のなかからその分を先取りし、残り(大半)を契約労働者となった旧組合員に給与として支給する。
会社から受け取るお金のなかには雇用主負担分の社会保険料も含まれているから、額面給与はけっこう高くなる。
契約労働者(旧組合員)は、そのなかから国民健康保険や国民年金を支払い、厚生年金との差額は、老後のために国民年金基金など税制面で優遇が得られるかたちの積み立てを行う。
消費税は、「売上−仕入」の付加価値に課されるものだから、旧組合幹部の給与分は課税対象となる。その点を組合員(契約労働者)とよく話し合い、組合費を余分に徴収するかたちで負担を逃れればなんとか丸く収まるであろう。
法人税は、組合幹部の報酬も損金になるので、基本的に発生させないで経営はできる。
消費税が先々20%になる可能性を考えると、このような話も物語では済まなくなる可能性もある。こうなっていちばん慌てるのは、税収が大幅に落っこちる財務省の官僚たちだろうが。
なお、「輸出戻し税」を受け取っているグローバル企業は、付加価値に課される消費税を納付していないことを意味するから、その企業が支払う給与(に充当される付加価値)にも消費税は課されていない。
そして、消費税が増税されると、コストアップ要因ではあるとしても、受け取る「輸出戻し税」は増大する。
同じ仕入と売上の条件であれば、消費税が10%になれば、5%である現在の2倍の「輸出戻し税」を受け取ることになる。
グローバル企業の労働組合が消費税増税に賛成するのも、むべなるかなである。
この問題は、次回、テーマとして詳述する予定である。
● 消費税は隠れた給与所得税:給与の“二重課税”
アエラは触れていないが、消費税と雇用の関係は、より深刻な問題を内包している。
昨日投稿したシリーズ(2)で、民主党参議院議員鈴木寛氏が「消費の4割は60歳以上の高齢者だから、消費税の負担も4割は高齢者と言える。この意味で“世代間の公平”に資する税だ」(趣旨)と参議院の特別委員会で説明したことを取り上げた。
“世代間の公平”というスローガンは、「社会保障と税の一体改革」の一環として消費税増税を行う正当性を国民に受け容れてもらう“決めぜりふ”として頻繁に使われている。
昨日の野田首相も、鈴木寛氏の質疑を受けて、消費税増税が実現する“世代間の公平”について講釈を行った。
消費税が、付加価値税ではなく、「物品税」や「小売売上税」であれば、鈴木寛氏や野田首相の説明には妥当性がある。
しかし、前項で説明した勤労者を派遣労働者に追いやる消費税の課税論理を考えただけでも、彼らの説明とは逆に、消費税増税が“世代間の不公平”に拍車を掛けることがわかる。
消費税について“世代間の公平”を論じるならば、付加価値税である消費税は、高齢者よりも現役勤労世代により大きな負担を強いる税と断じることができる。
というのは、現役勤労世代は、年金世代と同じように消費段階でなんらの転嫁を押し付けられるだけで済まず、受け取る給与が「所得税+消費税」の“二重課税”に見舞われ、前項で述べた消費税の課税論理から給与が引き上げ圧力に晒されているからである。
消費税を雇用問題の観点で見るとき、消費税の課税対象である付加価値の70%ほどは、支払い給与・報酬に充当されているものという認識が極めて重要である。
腐りきった民主党や自民党そして経産省や自動車工業会などは、自動車取得税について、自動車購入者が消費税を負担した上に自動車取得税まで負担するのは“二重課税”だと言い募り、自動車取得税の廃止を求めている。(これは笑い話では済まず、14年4月の第一段階増税までには廃止されそうな流れになっている)
消費税から切り離し、産業連関性が高い自動車産業を優遇する策として自動車取得税の廃止を議論することはやぶさかではないが、それを消費税と結びつけて議論することは、“二重の詐欺”であり、とうてい許すことはできない。
なぜなら、何度も言うように、消費税は、事業者が稼いだ付加価値に課される税でありその負担と納税は事業者自身の義務である一方、自動車取得税は、自動車を購入した人や事業者が負担と納税の義務を負う(地方)税であり、課税標準も納税義務者もまったく異なるものを“二重課税”とは言えないからである。
今回はテーマが違うので声高には言わないが、自動車の購入で負担したと考えられている消費税は、1円たりとも国庫や地方自治体の金庫に収まっていない。この二つの事実をもって、自動車取得税の廃止要求を正当化する動きを“二重の詐欺”と呼んでいる。
ついでに言えば、法人税との“二重課税”ということで軽減措置がとられている個人の配当所得は、「消費税+法人税+所得税」の“三重課税”である。
なぜ自動車取得税の問題を持ち出したかと言えば、自動車取得税の詐欺的な“二重課税”論ではなく、給与に課されている所得税のほうが、消費税との“二重課税”と言えるからである。
バブル崩壊後の不況が重苦しいベースとしてあるが、消費税の課税対象が給与(付加価値が原資)だからこそ、現役勤労世代は、消費税導入と消費税増増税に伴って生活条件がより過酷なものになってきたのである。
簡単な実例を示す。
ある企業は、1億円の売上があり、そこから3千万円の付加価値が生じ、うち2300万円を給与・報酬に充当し、200万円が最終利益だったとする。
消費税がなければ、自動車税や固定資産税そして地方法人税などはともかく、最終利益に課される法人税を負担すれば済む。
仮に、法人税の税率が70%であっても、140万円の納税である。
しかし、消費税は、利潤(最終利益)のありなしを問わず、とにかく稼いだ付加価値3千万円に課税されるものである。税額は、5%であれば150万円、10%であれば300万円になる。その付加価値のうち70%は、給与や報酬に充当されるものである。
おわかりだと思うが、付加価値に課税されるということは、給与に5%や10%の税金が課されているのと同じなのである。
違いは、受け取る前に課税されるのか、受け取った後に課税されるのかということだけである。言い換えれば、課税対象としてはまったく同じお金で、納税義務者が異なるだけなのである。
しかも、受け取った後の給与所得税であれば、様々な控除や課税最低限といった緩和措置があるが、受け取る前の消費税については、ごっそり根こそぎ課税される。
(※ 消費税の緩和措置は、「輸出戻し税」を別にすれば、売上5千万円以下で適用できる簡易課税くらい)
今日も行われた参議院特別委員会の論戦では、自民党議員が次々と、消費税が10%になってもプライマリーバランスは実現できないのだから、次の消費税増税を早く国民に示せと迫っている。
野田首相や岡田副首相も、消費税は段階的に引き上げていくべきという考えで、消費税増税派においては、20年までに17%まで引き上げることがコンセンサスと言える状況になっている。
消費税の税率アップは、即、グローバル企業以外の企業が支払う給与(=勤労者が受け取る給与)に対する課税強化であることを見逃してはならない。
自民党国会議員たちのさらに続けて消費税を増税しろという声は、非グローバル企業のサラリーマンへの課税強化を連続的に行うことを約束しろと野田首相に迫っているに等しいのである。
まっとうな企業経営者であれば、税金で取られてしまうくらいなら、その分給与をアップしたほうがいいと思うであろう。
消費税増税は、給与に充当するお金に税金をより多く課そうという政策である。
さらに、消費税増税は、給与の原資部分だけではなく、最終利益を含む付加価値すべてに影響を及ぼす。そのため、消費税増税後に同じ経営状況で最終利益を同じ額だけ残そうと思ったら、給与部分の5%に、その他の付加価値に増税される5%からのしわ寄せ(給与が付加価値の70%とすると給与の2.1%相当)を足した7.1%の賃金引き下げを行わなければならなくなる。
このように、消費税増税は、一般企業の給与をますます引き下げるとんでもない政策なのである。
97年の消費税増税後15年にわたって給与水準がじりじりと下がっていった根本のロジックがこれである。給与はなかなか一気には引き下げられないので、じりじりと下がっただけの話である。
グローバル企業の競争力を高めることが目的の消費税増税は、ドイツ並みの20%が目標値になっていると推測するが、消費税が20%ということは、勤労者が受け取る前の給与にまるまる20%の課税が行われることを意味する。
現在の給与所得税で20%の税率がかけられる水準は330万円超である。しかし、330万円は、受取給与の総額から給与所得控除・社会保険料ほか様々な控除を行った後の金額である。
単身で生保などの支払いもない“重税”ケースでも、330万円は給与総額が600万円を超える人が対象である。さらに、20%を乗じた値から427500円を控除した金額が最終的な所得税である。
給与総額が600万円で控除がほとんどないケースなら、330万円×20%−42.7万円=23.3万円が源泉所得税となる。
この税額が元の給与の何%に当たるか計算する、23.3万円/600万円=3.9%となる。給与総額600万円の所得税は、付加価値に課される消費税換算で考えると、3.9%ということになる。
むろん、現在は5%の消費税も課されているので、所得税3.9%+消費税5%=8.9%が600万円の受取給与に課される税と言える。
少しでも想像力があれば、消費税が10%になることがどれほどの重税かわかるはずだ。
給与総額が600万円の人は、所得税と消費税を合わせて、13.9%の税負担になる。
“隠れた所得税”である給与相当分の消費税600万円×10%=60万円は、給与所得税で言えば、専業主婦と高校生以上の子ども二人を扶養している総額1000万円クラスの給与所得者が負担する税額に相当する。
消費税の税率が10%になれば、給与所得者は、“見える所得税”の他に“隠れた所得税”をとんでもなく高い所得レベルで負担することになるのだ。
このような論理だからこそ、消費税(付加価値税)の増税は、インフレ基調であればまだいくばくかの救いがあるのである。インフレ基調は基本的に名目給与の増加に支えられた経済事象である。そして、実質はともかく名目でも給与が上昇すれば、給与に対する課税強化は緩和される。
デフレ基調での消費税=付加価値税の税率アップは、ストレートに勤労者の生活条件を過酷にする。まさに、国家社会に対する破壊工作とも言える政策なのである。
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