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日経新聞のデタラメ加減はわかっているので笑うしかないが、米CSIS政治経済部長 マシュー・グッドマン氏の「9月下旬の国連総会の際に、野田首相がオバマ大統領に表明すれば、大統領もこれを歓迎するだろう。大統領選が迫ったこの時期に、正式に議会に諮るのは難しいが、11月6日の大統領選直後にはすぐに正式手続きに入れる」という説明を聞いても、<記者の見方>でなんの反応も示さない。
「11月6日の大統領選直後にはすぐに正式手続きに入れる」としても、90日ルールがあるから、日本政府は、来年の2月に入ってようやく交渉のテーブルに着けるということになる。
これからそれまでの間に最低でも3回の交渉が行われ、日本が交渉に参加するときには、今まで及びこれからの交渉で決まったことをそのまま受け容れなければならない仕組みになっているという。
TPPの内実がどうこういう以前に、国家主権を放棄したかのような外交を強いられる機構とは縁を切るほうが賢明である。
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[グローバルオピニオン]TPP参加は日米の利益
米CSIS政治経済部長 マシュー・グッドマン氏
野田佳彦首相の就任直後の期待は高くなかったが、驚くべき大胆さをみせている。野田政権は3つの難題を抱えてスタートした。第1は東日本大震災による原子力発電所停止後のエネルギー問題、第2は政府債務問題、第3が環太平洋経済連携協定(TPP)の問題だ。首相は大飯原発の再稼働を決め、消費税率引き上げ法案を衆院で通過させた。TPPについても昨年、交渉入りの検討を表明した。ただ最近は第1、第2の問題に集中しているのか、TPPについては言葉少なだ。
オバマ政権はTPP交渉を年末までに妥結したいと考えている。実際は来年前半になるかもしれないが全体の交渉は加速している。日本が参加を決めるのにまだ時間はあるが、それほど余裕はない。
日本ではTPPについて米国陰謀説があるようだが、私が政府で働いた経験では、米政府にはそのような能力はない。日本のTPP参加は、日米両国の利益だ。米国企業にとって日本市場への参入障壁が取り除かれれば利益になるが、狭い産業の利益だけではなく、戦略的な理由もある。
米国はTPPを通じ高度な貿易・投資ルールづくりを目指している。関税下げや国内市場開放だけでなく、国境をまたぐ規制、競争政策、投資などの問題だ。これらの多くで日米の立場は同じだ。日本のTPP参加は、他のアジアの国々、韓国、インドネシア、タイ、そして中国に強いメッセージを送ることになる。
日本にとってもアジア・太平洋地域の市場へ参入しやすくなるし、国内の構造改革を促す効果もある。農業を効率化し競争力を高めれば輸出もできるようになる。人口が減少する日本は生産性を高めることが重要だ。改革は特定部門に痛みをもたらすかもしれないが日本全体には必要だ。
TPP交渉を巡る米自動車業界の主張の一部が時代遅れであることは承知している。自動車には長い「日米摩擦」の歴史がある。自動車産業を抱える地域の議員は摩擦の時代を覚えており、業界もそこに働き掛けている。政治的な障害ではあるがこれは特殊で、ワシントン全体の見方はもっと日本に好意的だ。
私が描く最善のシナリオは、野田首相が国内の「根回し」をして、交渉参加の明確な声明を発表することだ。その際には農業、自動車、保険などの懸案に対処する姿勢を示すことが重要だ。9月下旬の国連総会の際に、野田首相がオバマ大統領に表明すれば、大統領もこれを歓迎するだろう。大統領選が迫ったこの時期に、正式に議会に諮るのは難しいが、11月6日の大統領選直後にはすぐに正式手続きに入れる。このシナリオが実現すれば、野田首相は日本の戦後の偉大な首相の一人に数えられるだろう。
(談)
Matthew Goodman 米財務省で日本経済を担当。09年にオバマ政権入りし、ホワイトハウスで20カ国・地域(G20)首脳会議などの調整にあたった。51歳。
<記者の見方>西欧の責任追及も
日本では国内で反対の根強いTPP問題についてグッドマン氏は「日本の交渉参加は日米双方の利益」と説く。貿易自由化の過程では、利益を得る部門と、短期的には痛みを伴う部門が出るのは当然だ。米自動車業界が、日本の市場開放の不足などを理由に交渉入りに反対しているのも、本音は国内の自動車関税を守りたいからだ。共に政治的な難題を掲げながらも、全体の利益のために大きな決断をできるかどうか。それは日米共通の課題でもある。
(ワシントン支局長 藤井彰夫)
[日経新聞7月16日朝刊P.5]
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