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アエラの記事を素材に消費税を考える(2):「非課税取引」で財務省が言う「税の性格」とは:病院経営と消費税
http://www.asyura2.com/12/senkyo133/msg/230.html
投稿者 あっしら 日時 2012 年 7 月 18 日 20:27:55: Mo7ApAlflbQ6s
 


「アエラの記事を素材に消費税を考える(1):“益税問題“という問題:「消費税納税義務免除事業者」と「簡易課税」の制度」
http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/832.html

※ アエラ記事の全文をこのスレッド末尾に転載
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 消費税が間接税で最終消費者が担税者と考える(主張する)人々の説明を読むと、言葉としてはもっともらしい記述になっていても、論理としては、因と果が逆転する奇妙なものが多い。

 その最たるものが、売上を通じて負担する消費税を転嫁するという説明である。

 企業は、消費税の負担に限ったことではなく、仕入に諸経費や最終利益などを上乗せした価格で販売しなければ、供給事業者として存続することはできない。

 財務者や学者が企業が納付する消費税は最終消費者に転嫁されるといくら説明しようとも、権力による転嫁保証装置がないわけだから、企業の最終利益は最終消費者が負担すると言うのとなんら変わらない戯れ言でしかない。
 企業が、マージンや税負担を思うように販売価格に上乗せできない現実は多くの人が知っている。ときには、仕入価格でさえ、転嫁できないこともある。最終利益はともかく、経費レベルだけでも思うように転嫁ができるのなら倒産は生じないない。

 消費税の転嫁問題との関連で「因と果」が逆転しているという意味は、消費税が、売上で転嫁する消費税負担を“因”としているわけではなく、売上と仕入(外部支払い諸経費)の差額である付加価値を“因”とし、その“果”として売上に転嫁すべき=税務署に納付すべき消費税額が決まる仕組みが失念されていることを指す。

 消費税は、売上があるから発生するものではなく、課税対象の取引で付加価値を得ているから発生するのである。
そして、付加価値を得ている限り、その負担をひとさまに転嫁できていようがいまいが、しかるべき消費税を納付しなければならないのである。

 今日の参議院特別委員会質疑でも、鈴木寛という民主党の参議院議員が「消費の4割は60歳以上の高齢者だから、消費税の負担も4割は高齢者と言える。この意味で“世代間の公平”に資する税だ」(趣旨)と説明していた。
 しかし、消費税に関する限り、課税事業者が負担することは明白に言えても、その負担を他の誰かに転嫁できるかどうかはまったく不明である。
 だからこそ、97年の消費税増税を機に日本経済はデフレスパイラルに陥ったのである。
 増税があっても付加価値を減らすことなく転嫁ができたのなら、名目GDPも減らず、倒産が急増することもなかったはずだ。
 鈴木氏がどこまでわかったうえでそのような説明をしているかはわからないが、消費税を消費(買い物)に課される税と考えている限り、消費税増税が日本経済や国民に及ぼすダイナミックな影響は見えてこない。

 付加価値への課税である消費税を、「売上税」と「負の仕入税」の組み合わせのように見せかけていることで、公式説として語られている消費税の課税論理はズタボロになっている。

 消費税を付加価値税として捉えることで、消費税に関する理解がスムーズに進み、消費税にまつわる様々な問題もすっきり見えてくるようになる。
 このように考えているので、これからの説明は、負担や「売上にかかわる消費税」・「仕入にかかわる消費税」という用語法はできるだけ避けるようにしたい。


 アエラの記事の流れに従えば、今回は「輸出免税」=「輸出戻し税」の問題が俎上に乗ることになるが、最重要テーマである「輸出免税」制度がより理解しやすくなるよう、先に「非課税取引」の問題を扱いたい。


■ 「非課税取引」を考えると消費税の性格が見えてくる

 消費税制では、「非課税取引」、「消費税納付免除事業者」(俗に“免税事業者”)、「輸出免税」などニュアンス的に似た概念がいくつかある。
 語感は似ていても内実は大きく違うので、消費税を考えるときには気をつけなければならない。

 さらに、今回の消費税増税政策のなかで浮かび上がったのが、ゼロ税率の可能性もある「軽減税率」の導入である。「軽減税率」問題を考える際も、消費税の内実を理解しているかどうかで見え方が変わってくる。
 「売上にかかわる消費税額−仕入にかかわる消費税額」の視点で「軽減税率」を考えてしまうと肝心なことがわからない。


● 消費税における事業者や取引の区分

 まず、「課税取引」や「輸入」を含めて、それぞれの違いを消費税=付加価値税という観点から簡単に説明する。

 消費税でいう付加価値とは、売上(収入)から消費税の仕入控除ができる原価や諸経費を差し引いた残りである。
 付加価値は、従業員の給与や役員の報酬、利払い、法人税・元本返済・配当などに充当される最終利益などの原資となるものである。


(1) 「課税事業者」

課税取引で得た付加価値に消費税を課される事業者。

(2) 「免税事業者」(消費税納付義務免除事業者)

「課税事業者」と対になる概念で、「免税事業者」は消費税の納付が免除される。
「免税事業者」は、実質的に、課税取引で得た付加価値に消費税が課されない。

【派生的説明】
 「免税事業者」が得るメリットはあくまでも消費税納付義務の免除なので、「免税事業者」から仕入を行った課税事業者は、その仕入を消費税仕入控除の対象にすることができる。
「免税事業者」自身の仕入控除は、納税義務がないので意味がない。


(3) 「課税取引」

課税事業者は、課税取引で得た付加価値に消費税を課される。

(4) 「非課税取引」

課税事業者であっても、非課税取引で得た付加価値であれば消費税を課さない。

【派生的説明】
 課税事業者であっても、非課税取引で仕入れたものを消費税仕入控除の対象にすることはできない。さらに、非課税取引の供給に要した課税取引の仕入も、消費税仕入控除の対象にすることはできない。
 このような処理は、消費税が付加価値税であることを踏まえていればすっと理解できるが、「売上税」と「負の仕入税」の組み合わせ的に考えている人には、どうして?なぜ?まあ、とにかくそういう規定なのねと納得するしかないだろう。

(5) 「輸出免税」

課税事業者であっても、輸出で得た付加価値については消費税を免除される。
非課税取引とされる財貨を輸出したときは、課税取引として扱うことができる。

【派生的説明】
 輸出戻し税を正当化するため、輸出に伴う消費税の免除とは税率ゼロ%の消費税を課すことのように説明されているが、消費税法にそのような規定があるわけではない。
 「輸出免税」は、「非課税取引」と異なり、輸出に要した仕入についても消費税の仕入控除を認める。非課税取引対象の物品を輸出したときに課税取引扱いするのもこのためである。
 実際にはほとんどいないだろうが、「免税事業者」が輸出専業なら、「輸出戻し税」を得られる課税事業者を選択しなければ大きな損失となる。
 この措置で発生する消費税還付金を「輸出戻し税」と呼ぶ。


(6) 「輸入」

輸入した財貨を引き取る事業者及び個人は、財貨のCIF価格に関税を加算した価格を課税ベースとして消費税が課される。

※ CIF価格:運賃と保険料が加算された輸入価格

【派生的説明】
 名称も同じで税制的にも消費税とつながっていながら、付加価値とは無関係に課税される異質の消費税である。
 消費税制度において仕入控除の対象にできる輸入関税(国内産業保護政策)と考えたほうがわかりやすい。
 輸入の引き取りで発生する消費税は、課税事業者かどうかは関係なく、個人であっても課される。課税事業者は、輸入を消費税の仕入控除対象とすることができるが、自身が納税義務者なので、普通の仕入控除とは意味が異なる。
 「免除事業者」も、輸入に課される消費税は納付しなければならないが、納税義務が免除されているので控除はできない。但し、輸入に係わる消費税は、自身が納付しているので、法人税や個人事業者所得税では公租公課として損金に計上できる。


※ 個人が輸入する場合は、総額10万円以下であれば、関税として簡易課税が適用されるケースが多い。
 また、合計で課税価格が1万円以下の財貨は、指定品目を除き、関税及び消費税が免除される。個人輸入の課税価格は、商品価格の60%とされるので、16666円に対してかけられる。
 なお、海外旅行で購入した財貨を日本に持ち込んだときは、小売価格の合計が20万円以下(酒と煙草は別枠で規定)であれば、関税と消費税は課されない。


※ 「軽減税率」は、別途、番外編で説明したい。


● 健康保険診療医療機関と消費税非課税措置

 アエラは、「不公平C病院経営を圧迫 損税」というコーナーで、

「負担する側には、非課税の方がありがたいが、そのしわ寄せに頭を抱えている現場もある。医療や介護の業界だ。「消費税負担が病院経営を圧迫し、医療の後退を招いている」
 関西の私立病院の幹部は憤る。
 原因は、健康保険が適用される医療費が、非課税であることだ。患者が病院に診療代を払う時に消費税はかからない。だが、病院で使うガーゼや注射器などの医療品、診断装置などの医療機器を病院が買う時には消費税がかかる。病院は医療品などの消費税は払う一方、患者から消費税はもらえないので、その分は自らかぶっているということになる」
「一般の会社なら、それを埋め合わせるために製品価格を上げることもできる。だが、患者が払う診療代は、政府が定めた「診療報酬」に基づいて計算するので、病院が勝手に値上げできないのだ。この構図は介護も同じだ」

と説明している。

 健康保険適用医療費や介護保険適用介護費用が非課税取引であることで生じるマージン(付加価値)の減少が、医院・病院や介護事業者の経営を苦しくしているという指摘である。

 非課税取引で生じるのは、仕入で負担したと考えることができる消費税をどう転嫁するかという問題である。
 違う言い方をすると、消費税の転嫁を受けて狭まった付加価値額をどうやって本来の額まで広げるかという問題である。
 非課税取引では売上を通じて稼ぎ出す付加価値に消費税は課されないから、仕入で負担したと考えられる消費税額を販売価格に上乗せすることで問題は解決する。

 まず、アエラは、「一般の会社なら、それを埋め合わせるために製品価格を上げることもできる」と不公平である根拠をそれに求めているようだが、逆に、健康保険適用医療費の“損税”問題は、政府が「診療報酬」の点数を改正することで容易に解決できる問題である。
 医療機関が健康保険適用医療費を勝手に引き上げられないことは事実であっても、一般の会社だからといって安易に値上げ(仕入で負担したと考えられる消費税の転嫁)ができるわけではない。

 実際、89年の導入時及び97年の増税時には、医療機関が仕入で生じるであろう消費税の転嫁を考慮して「診療報酬」の点数を改正している。
 政府の判断ひとつ、それも、消費税増税によるマージン減少を解消することで医療機関の経営を安定的なものし提供する医療の質を高めると説明すれば、自己負担が3割であることからも、多くの人が納得するであろう。

 しかし、ことはそれほど単純ではない。病院は、消費税の仕組みに組み込まれていることで大きな問題を抱えている。

 アエラは、「病院で使うガーゼや注射器などの医療品、診断装置などの医療機器を病院が買う時には消費税がかかる」と説明しているが、ガーゼや注射器と診断装置を同列に論じることはできない。

 その都度消費する(消耗品である)ガーゼや注射器は、「診療報酬」の点数を改正すれば解決できる。
 しかし、診断装置や最先端の医療器具は、製造業で言えば機械装置と同じ設備投資であり、仕入で負担したと考えられる消費税の額を即応的に補うような「診療報酬」の点数改正は行われない。
 3億1千5百万円の診断装置を購入した場合、その会計年度に1千5百万円の消費税を追加的に負担したと考えることができる。
 消耗品ならば、使う都度、仕入で負担したと考えられる消費税が考慮された医療費に組み込まれる。
 しかし、診断装置の場合、購入した会計年度(一年間)で利用された数十回か数百回の検査の費用に、1千5百万円全額を割り振って上乗せしようとすれば、とんでもなく大きな保険点数になってしまう。
 厚労省は、診断装置の耐用年数や全期間で利用される回数などを考慮して、検査費用の点数を決めている。

 この論理は、病院の建物など長期にわたって利用するもの全般に言えることであり、快適な病院づくりをめざしたり、先進的で高度な医療を追求する病院は、消費税の影響をより強く受けて経営が厳しくなることを意味する。
 ホントウにそうなるかは別として、よりよき病院をめざして、厚労省が想定している期間や利用回数より早く診断装置を更新すれば、病院経営はさらに困難になる。

 ただし、これは、健康保険適用医療費が「非課税取引」になっているからという理由ではなく、消費税そのものの論理や「診療報酬」の考え方にかかわる問題である。

 製造業などの設備投資も同じ問題を内包している。ただ、民会営利企業の場合は、利を見いだしたときに設備投資に動くわけだから、機械設備などの一括仕入控除で十分メリットがあると言える。


● 非課税取引と「消費税の性格」

 アエラは、「不公平B意外なものが非課税」というコーナーで非課税取引を紹介している。

 「消費税は、国内で商品を買ったりサービスを受けたりして代金を払う時、すべてにかかっていると思われがちだが、「例外」もある」

 「社会政策として大切な福祉や医療、教育、住宅などの分野が多いが、サラリーマンにとって身近な取引でも課税、非課税は入り組んでいる」

と切り出し、次のように実例を上げ、

 「例えば交際費。顧客をバーで接待するとその代金は課税されるが、そのあとに渡した「お車代」や「祝い金」は非課税だ。
 用途ではなく、対価性があるかどうかで判断されるためだ」と説明している。

 署名入りの記事なのであまり悪口を言いたくないが、このような説明は、消費税がまったくわかっていないことを示す典型である。


※ 念のため、消費税は付加価値を得た事業者が負担し納付するものだが、「消費税は、国内で商品を買ったりサービスを受けたりして代金を払う時、すべてにかかっていると思われがちだが、「例外」もある」という説明は、消費者の意識を表現したものとして受け容れた。


 アエラが例示した接待の場面で動いたお金と消費税の関係を消費税の課税論理に即して言い換えると、

 “例えば交際費。顧客をバーで接待するとその代金を仕入として消費税から控除できるが、そのあとに渡した「お車代」や「祝い金」は、消費税の仕入控除対象にはできない。
 用途ではなく、支払い先が財貨や役務を提供しているか(対価性があるか)どうかで判断されるためだ。
「お車代」が、「タクシー券」や「ハイヤー代金払い」のかたちになっていれば、消費税の仕入控除対象にすることができる”

 アエラは、続いて、サラリーマンが不動産を購入するケースを説明している。

 「人生最大の買い物、「マイホーム」も複雑だ。一戸建ての場合、建物は課税されるが、土地は非課税。マンションも価格のうち土地部分にはかからず、建物部分に課税される。中古住宅は仲介による個人問の取引なら非課税。また、家賃が非課税なのは「居住用」として借りた場合だ。事務所など「事業用」として借りると課税される」

 消費税を購入者が負担すると考えているとそのように言いたくなるのだが、消費税の課税論理に照らすと、大きく逸脱した説明内容になっている。

 次のように説明したほうが消費税の内実に沿ったものになる。

 “人生最大の買い物、「マイホーム」も複雑だ。建て売りもマンション分譲も、土地と建物を合わせた総額で価格が提示されるケースが多い。しかし、土地の譲渡と建物の譲渡では消費税の扱いが異なるので、次のように考えたほうがいい。
 課税取引である建物の価格には販売会社が負担する消費税が上乗せされており、非課税取引となっている土地の価格には、造成費用部分を除き、消費税は上乗せされていない。が、いずれにしても、土地・建物とも、仕入原価はわからず、経費や利益がどれほど上乗せされているかわからないから、購入する予定の一戸建てやマンションにどれほどの消費税が転嫁されているかは不明である。
 消費税をいくら負担するとかではなく、支払い総額で購入に値する物件かどうかを判断するしかない。値引き交渉で5百万円まけさせたら、販売会社の消費税負担は25万円少なくなる。だからといって、さらに25万円値引きさせようというのはやり過ぎだ。
 消費税は、物件に課されるものではなく、販売会社のマージンに課されるものだからである。
 中古住宅は、土地についてはもともと非課税だが、仲介による個人問の取引なら、納税義務者である譲渡側(売り主)が課税事業者ではないので、建物についても消費税は免除となり、その分価格が抑えられる可能性はある。また、家賃が非課税取引なのは「居住用」として借りた場合だ。事務所など「事業用」として借りると貸し手が負担した消費税が転嫁されていると考えたほうがいい”


 不動産取引に関する消費税の要点をまとめると、

1)例えば、土地と建物を合わせて5千万円の物件を買うとしても、販売事業者が当該取引で得るマージン(付加価値)に対し負担する消費税額は未定である。
 税務署とはもめるだろうが、極端に言えば、消費税の課税対象となる建物は仕入価格で販売し、マージンは土地の譲渡のみから得るかたちにすれば、その取引から納付すべき消費税は発生しない。

2)販売事業者の経営内容の違いで、1億円の物件よりも5千万円の物件を譲渡(販売)したほうが、販売事業者が納付する消費税額が多い場合もある。

3)何にしろ、販売価格に占める原価とマージン(将来の消費税負担を含む)の割合は“企業秘密”なので、消費税としてどれだけ転嫁されたかはわからない。

4)このようなことから、物件の建物本体価格に5%を乗じた消費税を負担したと考えるは誤りである。
 例えば、本体価格5千万円の建物に5%の消費税250万円を支払ったつもりでも、120万円だけが消費税の納付に充当され、残りの130万円は販売会社の粗利益として残るケースは多々ある。消費税は、個々の取引ではなく通期で算定されるものなので、個々の取引で“納税する消費税を預かる”ことなぞできない。
 購入本体価格の5%を超えて納付する消費税はないから、売上税的な「消費税負担論」は、供給事業者により大きな利益を保証するようなものである。

5)地価の下落や可処分所得の低迷そして将来に対する不安が増大し、人口減少も見えていることから、物件価格の下落傾向が予想できる。消費税増税後は、負担する消費税をある程度は購入者に転嫁するとしても、マージンを減らすかたちで消費税を納付する不動産販売事業者が増加するだろう。自由主義経済では、マージンは仕入の何%、消費税は(仕入+マージン)の5%と決まっているわけではない。消費税は、あくまでも、通期で得たマージン(売上−仕入)に課される税だからである。

6)現在進行形の消費税増税を機にローンでの不動産取得に対する負担軽減措置が検討されているが、それが不動産購入者の負担を軽減することは認めるとしても、ディベロッパーや不動産販売会社そして銀行などの利益を支える政策でもあることがわかる。


※ 中古住宅の取引については、消費税が付加価値ではなく消費に課される税と言うのなら、新築時に消費税が発生しているのだから、転売(売却)でもう一度消費税が課されるのは二重課税と言わざるをえない。
 アエラは、「中古住宅は仲介による個人問の取引なら非課税」(非課税ではなく事業者ではない個人には消費税の納付義務がない)と書いているが、だからといって、個人から買う物件が“消費税分だけは安い”と決まっているわけではない。
 不動産物件ではありえない話だが、まったく同じ物件があり、一方は課税事業者、もう一方は消費税免除者が販売者とする。買い手にとっては、消費税免除者に対し、そうであること盾に値引き交渉はできるが、諸々の条件は同じで課税事業者よりも安ければ、消費税分だけ安くならなくとも、そちらを選択するはずだ。


● 非課税に指定された取引を見ることでわかる消費税の本質

 「非課税取引」は、対象となる取引が列挙されている程度で、非課税になっている理由がきちんと説明されることは少ない。せっかくだから、「非課税取引」を少し詳しく見てみよう。

 「非課税取引」は、非課税に指定された理由から二つに区分できる。
一つは、“税の性格”から課税対象にならない取引で、他の一つが、政治的というか社会政策的に課税対象から除外された取引である。

 財務省は、“税の性格から課税対象とならない”ものとして、次のような取引を列挙している。

1)土地の譲渡及び貸付け
2)有価証券、支払手段の譲渡
3)貸付金等の利子、保険料等
4)郵便切手類、印紙、物品切手等の譲渡
5)行政手数料等、外国為替取引

 財務省は、どんな“税の性格”かを説明をしないまま、ただ“税の性格から課税対象とならない”とし、もっともらしく5つに区分けしている。

 まず、決定的におかしいのは、郵便切手の譲渡と行政手数料の二つである。この二つは、付加価値を生産する供給活動であり、宅急便や銀行振り込み手数料と変わらない取引だからである。
 この意味で、この二つは、“税の性格”という理由ではなく、“社会政策的な配慮”として非課税取引に指定したと考えるほうがすっきりする。

 郵便切手と同列に印紙と物品切手が書かれている。確かに見た目や文字は似ているが、この三つは似て非なるものである。
 印紙は、手数料的意味合いも含まれているが税金の支払い形態の一つとみるほうが妥当なので、「税の性格から非課税」と考えることができる。
 物品切手は商品券などのことだから、これも、購入時ではなく、使用時に消費税が課される付加価値を生み出す(マージンが発生する)と考えられるので、「税の性格から非課税」と言える。

 行政手数料等となぜか並んで示されている外国為替取引は、それで利ざやを得る可能性はあるとしても、お金の量を表示する形式が変わっただけで付加価値を生んだわけではないことから、「税の性格から非課税」と言える。

 「保険料等」や「有価証券、支払手段の譲渡」も、それ自体が付加価値を生む取引ではないので、「税の性格から非課税」と言える。

 タイトルが「税の性格から非課税としているもの」でありながら、“性格”を語ることなく、そうではないものまでが混入させていることに悪意の匂いがする。

 非課税取引として列挙されているものを考えると、“税の性格”という表現が、“付加価値税の性格”を意味していることがわかる。
 付加価値税から付加価値を取り去って、“税の性格”という曖昧な表現にしてごまかしているとも言える。

 アエラが「消費税は、国内で商品を買ったりサービスを受けたりして代金を払う時、すべてにかかっていると思われがちだが、「例外」もある」という「例外」の一つは、“付加価値を生まない取引”ということになる。

 政府(財務省)は、消費税を付加価値税とは説明していないため、付加価値の生産という視点から区分されている非課税取引対象を、曖昧な“税の性格から課税対象とならない”という説明でお茶を濁している。

 非課税とされる取引のなかから、「土地の譲渡及び貸し付け」と「貸付金等の利子」について少し考えてみたい。

1)土地の譲渡及び貸し付け

 土地の譲渡は非課税取引であるが、業として土地の販売や貸し付けを行っている事業者は、それから得られるマージン(譲渡益)を給与や役員報酬そして最終利益の原資としている。

 消費されるとは言い難い建物・道路・橋梁そして機械設備などの譲渡については、それから得られるマージン(付加価値:給与や役員報酬などの原資)に消費税が課されている。

 さらに言えば、消費税法は、その第四条で「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する」と規定している。

 土地は、ほとんどの国民の意識にとって資産の代表格であり、それを販売することはまさに「資産の譲渡」と受け止めるはずだ。

 消費税が付加価値税であるのなら、土地譲渡が非課税であることは理屈に合っている。
 しかし、消費税はあくまでも消費に課される税だと言われると、便益の享受だけで消費されることはないデジタルデータの譲渡(販売)に消費税が課されていることを考えれば、土地の譲渡に消費税が課されていないのは、アエラ的に見れば不公平であるはずだ。

 土地の造成などにかかわる取引には消費税が課されるが、ひとが生産するものではなく天賦のものである土地の譲渡は、付加価値を生まないから、付加価値税において非課税取引とされるのはスジが通っている。
 経済論理的に言うと、土地取引は、土地所有者と貨幣所有者が単純に入れ替わることである。

※ 土地は、消費税では非課税取引だが、土地の譲渡益には課税がなされる。

 では、土地の譲渡で得られる利益は誰が負担しているのであろうか?言うまでもなく、土地の購入者である。
 では、その購入代金は何に由来するのであろうか。借入金で購入するとしても、利払いと返済が発生するのだから、その返済方法(給与やマージンから利払いと返済を行う)を考えると、なんらかのかたちで稼いだ付加価値と言える。
 サラリーマンであれば、付加価値そのものである給与、事業者であればそれまで稼いだ付加価値や今後稼いで返済に充てる付加価値が土地の購入資金なのである。

 なぜこのような説明をしているかと言えば、土地だけを売って事業を行っている会社の営業利益は、第三者(土地購入者)が生み出した付加価値の分け前(再分配)に預かっていることを明瞭にしたいからである。
 そして、消費税は付加価値税だから、稼いだ付加価値で土地を購入すると言うことは、一般的には、消費税を課された残りのお金で土地を購入することを意味する。

 土地の貸し付けはもっとストレートでわかりやすいだろう。土地を借りた人は、その土地をどういう目的で利用するにしろ、稼いだ付加価値(給与や利益)から借地代を支払う。(預貯金から支払うとしても、それも、過去に稼いだ付加価値と言える)

 土地の取引については、購入も借り受けも、消費税を負担した後の残りの付加価値を原資として購われていると言える。


2)貸付金等の利子

 利子が消費税において非課税になっているのは、利払い者が稼いだ付加価値から購われているという前提があるからだ。
 利払い者が消費税を負担しているのに、利子取得者までが消費税を負担するのは“二重課税”になると考えているからでいる。

 消費税と利払いの関係については、これまでの投稿でも何度か取り上げ、バブル崩壊や金融危機の要因になったことを説明した。

 借入金の利払いや返済は、まっとうなら、稼いだ付加価値から充当される。利払いや返済まで借入金に頼るのは破綻を意味する。
 個人の債務履行も、給与は付加価値を原資とするものだから、やはり、稼いだ付加価値を原資としていると言える。

 消費税が導入されたり、消費税が増税されると、その分だけ稼いだ付加価値の多くが納税に費やされることになるため、それまでは可能であった債務履行が不能になることもある。
 ぎりぎりの資金繰りでなんとか債務を履行していた事業者は、消費税の負担増加で債務不履行に陥ることになる。
 利払いは法人税では損金で処理できるが、元本返済は、利益から賄わなければならないものだから、消費税の増税による付加価値の減少はより大きな痛手となる。

 ところが、GDPの算定方法の変更が利子取得について新たなスポットライトを浴びせている。
 昨年2011年7〜9月期の国内総生産(GDP)改定値から、GDPの推計方法が変わり、金融機関の“利ざや”を付加価値として加算するようになった。
 この見直しで、名目GDPが5兆〜10兆円かさ上げされると見られている。(09年度の“利ざや”は名目GDPで約7.7兆円)

 銀行などの利ざやを「金融仲介サービス」として付加価値にカウントするこの改定は、消費税で受取利子が非課税になっている根拠を失わせることになる。
 付加価値の“二重計上”が認められるのなら、消費税の“二重課税”だって認められるはずだ。

 “二重課税”でなくとも、利払い分が消費税から仕入控除できるようにする代わりに、利子受取者がその分の消費税を負担する“消費税の改正”も可能である。

 そうなったとき、付加価値に5%や10%の消費税が課されることがどれほどの重荷であるかが、銀行や政府が身に染みてわかることになり、バブル崩壊や97年金融危機がなぜ起きたかも理解できるようになるだろう。

 そうは言ってみたものの、免許事業で寡占である銀行は、利子取得に消費税が課されるようになれば、それを織り込んだ利率で貸し付けを行うようになるから、借り入れする側の負担は変わらない。

 消費者にとっては同じ負担感の「小売売上税」であれば、支払い給与や利払いの原資に課税されることはない。
 支払い給与や利払いに充当されるマージンにまで課税される消費税が、どれほど過酷な税なのかは明白であろう。


※ 社会政策的配慮から非課税となっている取引:

1)医療保険各法等の医療
2)介護保険法の規定に基づく居宅サービス、施設サービス等
3)社会福祉法に規定する社会福祉事業及び社会福祉事業に類する事業等
4)助産
5)埋葬料、火葬料
6)身体障害者用物品の譲渡、貸付け等
7)一定の学校の授業料、入学金、施設設備費、学籍証明等手数料
8)教科用図書の譲渡
9)住宅の貸付け


 

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コメント
 
02. 2012年7月18日 21:31:33 : kCJydAFuv2
なんか大学で「分数計算概論」の講義を聞かされる感じ

すげーなー、引きこもり部屋の壁穴から発見する世界理解力!
自信満々ですもの


03. 2012年7月19日 06:03:26 : FLL2qjUIEI
新聞て、紙の価値5円ほどのものを50円で売ってるのだから、
仕入れ値に対する消費税負担は微々たるもので、読者に対する
最終販売段階できっちり消費税読者に負担させてるわけだから、
新聞の消費税を下げろとか言ってる新聞社の言い分はまったく
根拠の無いものだし、聞いてやる必要無し、ということが
言いたいんじゃない?

04. 2012年7月24日 19:37:00 : rah8G9aXPs

平成24年7月20日
財務省
財務省におけるウイルス感染事案について

 財務省では、次期LANシステム導入に向け、昨今の政府機関への標的型メール攻撃などによるウイルス感染事案を踏まえ、
現行LANシステムのセキュリティ対策の総点検を実施したところ、過去に複数の財務省職員用パソコンがウイルスに感染し、
何らかの情報が外部に送信された可能性があることが判明しました。

 なお、ウイルスの感染経路は不明ですが、既に、ウイルス感染したパソコンの回収や、送信先との通信を遮断するなど必要な措置をとりました。

 このような事態となりましたことを深くお詫び申し上げます。

 今後、関係機関と協力し更なる調査を進めるとともに、この度の事案を重く受け止め、情報セキュリティ対策の一層の強化に取り組んでまいります。
http://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/press_20120720.html

↑予算取りのための必要性を訴えた発表と感じる。

46:名無しさん@13周年:2012/07/21(土) 19:28:04.02 ID:qbywWrgP0

こんな事じゃ個人情報漏れ放題になるな
まだ国じゃ早すぎるって事だ

二年って事は5〜6年は情報抜かれてたって事だぞ

55:名無しさん@13周年:2012/07/21(土) 19:32:21.49 ID:ivj/EwCX0

2年7ヶ月前…

鳩山由紀夫内閣 2009年(平成21年)9月16日-2010年(平成22年)1月7日 財務大臣 藤井裕久
鳩山由紀夫内閣 2010年(平成22年)1月7日- 2010年(平成22年)6月8日 財務大臣 菅直人

64:名無しさん@13周年:2012/07/21(土) 19:38:23.26 ID:bpLsw//rO

>>55
おお…もう

81:名無しさん@13周年:2012/07/21(土) 19:44:28.90 ID:tUWElOcL0

>>55
情報公開推進派だから
ファイアウォールという情報を遮断する仕組みを認めなかったと考えると自然で筋が通る
「情報は外から見えるのが本来の姿。省庁の政策情報が集まる財務省をガラス張りにすることが霞が関の情報開示の突破口となる」と堂々と言った方が潔い


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