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野田佳彦首相が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化方針を打ち出して以降、政府・民主党には購入に向けた具体的な動きはほとんどない。尖閣をはじめ安全保障にとって重要な国境離島をどう保全していくかの議論を始める気配もない。7日の国有化方針表明後、領有権を主張する中国は挑発行為を繰り返しているのに対し、外務省は11日の日中外相会談で玄葉光一郎外相が国有化に言及しなかったと説明した。首相の本気度に疑問符が付いている。(千葉倫之)
◆「都が買った方がいい」
「国に13回も上陸申請してきたが認められなかった。国有化しても上陸は認めず、避難港や灯台の設置もしないだろう。東京都が買った方がいい」
尖閣諸島が属する石垣市の中山義隆市長は14日、「日本を創新する会」(会長・上田清司埼玉県知事)が都内で開いたフォーラムでこう述べ、政府への不信感をあらわにした。
首相の側近である長浜博行官房副長官らは石原慎太郎東京都知事と6日に会談して国有化方針を伝達。7日の報道で表面化すると、首相はすぐさま「所有者と連絡を取りながら総合的に検討している」と明言した。
関係者によると、石原氏が4月に都の尖閣購入方針を表明してから、長浜氏は尖閣の地権者の男性と数回接触したものの、条件面を含めた具体的な交渉には入れていない。石原氏は男性から「国は相手にしない」との電話を受けたことを明かしている。国有化には都との調整も不可欠だが、実務者レベルでも「特に都と接触はしていない」(官邸関係者)ありさまだ。
◆丹羽氏一時帰国も更迭拒否
国有化のための法整備も急務だ。自民党は6月、国境離島を国が管理する姿勢を明確にするため、灯台や護岸の設置や巡回など日本の主権を明示するための方策を明記した「無人国境離島管理法案」を参院に提出した。同法案は、民間所有の場合は国が買い取りや借り上げを行えることを認め、収用手続きも定めている。
消費税増税では自民党の協力を得ている政府・民主党は、離島管理法案には冷淡だ。藤村修官房長官は13日の記者会見で「法案が提出されていることは承知している」と述べただけ。自民党は、都の尖閣購入計画に反対する見解を示した丹羽宇一郎駐中国大使の更迭を求めたが首相はかたくなに拒んでいる。玄葉光一郎外相は丹羽氏を15日に一時帰国させ、中国情勢について報告を聞くが、速やかに北京に帰任させる方針だ。
国有化方針の表明後、中国は漁業監視船を尖閣に派遣した。中国共産党機関紙、人民日報が13日付で武力衝突の可能性を示唆するコラムを掲載するなど挑発はエスカレートしている。裏付けを欠く国有化の表明は、中国に付け入る隙を与えている。
「海洋権益の確保、離島の保全、海洋安全の確保など課題は山積している。国をあげてこれら諸課題に取り組む」。首相が16日の「海の日」を前に発表した談話は言葉が上滑りしている。
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