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新党旗揚げ 小沢叩きへの疑念
http://hunter-investigate.jp/news/2012/07/1112-10200.html
2012年7月12日 僭越ながら 論 :HUNTER
11日、民主党を離党した小沢一郎氏を代表とする新党「国民の生活が第一」が旗揚げした。衆院議員37名、参院議員12名の陣容は、野党第2党となる勢力である。
掲げた主要政策は反増税と脱原発。至極もっともな主張であるが、大手メディアは小沢氏とそのグループに冷淡だ。
ことさら小沢氏の評判を落とし、国民の支持が拡がるのを防ごうという狙いでもあるかのような状況だが、小沢氏の主張が間違っているとは思えない。
度を越えた"小沢叩き"に反論したくなった。
■公約違反、責任放棄のオンパレード
"増税の前にやるべきことがある"との意見を否定する人は少ないだろう。
霞ヶ関の無駄遣い、国会の無駄遣い、地方自治体の無駄遣い・・・。なにも是正されていないばかりか、民主党政権がいったん止めるとしたはずの新幹線や高速道路、ダムといった大型公共事業は最近になって次々と復活している。マニフェスト違反どころか詐欺というべき豹変ぶりだ。
国会議員の定数や公務員の削減、天下りの禁止なども、掛け声ばかりで実現した事例は皆無に近い。野田首相は「これから取り組む」というが、政権を担って3年間、何もできなかったことを棚に上げての無責任発言だ。
この国の財政を厳しい状況に追い込んだのは、利権や既得権益の獲得に狂奔してきた政治家や役人であるが、誰かが責任を取ったという話は聞いたことがない。約束は破る、責任は取らない。悲しい政治の現状がそこに在る。
「子ども達の世代にツケを残さないため」などと、もっともらしいことを言っているが、失政のツケを増税という形で国民に払わせようとしているだけのことだ。そのことに気付いているからこそ、国民は「増税は時期尚早」と言っているのである。
"増税の前にやるべきことがある"との小沢氏らの主張は、大方の国民の声を代弁しているはずだが・・・。
■増税で「土建国家」へ回帰
消費増税が財政再建に資するという野田首相や自民党の言い分も虚構に過ぎない。消費税だけが上がっても、法人税や所得税が増収に転じなければ国家財政は好転しないからだ。
さらに、消費増税で形だけ税収の底上げを図っても、歳出削減が進まなければ赤字は増すばかりとなる。しかし、自民党や野田首相はまったく逆の道へと進もうとしている。
増税を見越した自民党は、国土強靭化総合調査会(会長・二階俊博元経産相)が今後10年間で総額200兆円規模のインフラ投資が必要だとの提言を発表、「国土強靭化基本法案」を今国会に提出している。
「コンクリートから人へ」と叫んでいた野田首相も、この法案に理解を示す発言をしており、マニフェストどころか党の存在意義さえかなぐり捨てた形だ。
消費増税が、社会保障の維持や財政再建を目的としたものではないことは、自民党やこのところの民主党の動きが如実に証明している。
そもそも5%の消費増税で得られるのは10兆円強に過ぎない。10年間でも約100兆円にしかならないのに、自民党は消費増税分をはるかに上回る公共事業投資を主張していることになる。不足分はまた赤字国債で賄うつもりなのだろうが、狙いが「土建国家」への回帰であることは間違いない。増収分を利権創出に利用しようという魂胆がミエミエだが、これでどうやって財政再建を果たすというのだろう。
消費増税やむなしと考える国民は、社会保障の維持のため、あるいは子ども達の世代にツケを残さないため、という前提条件を付けているはずで、消費増税が必要のない公共事業の呼び水になるというのなら話は変わる。
新党が掲げる"反増税"は選挙目あてだ、との批判があるがこれは的外れだ。公約とは選挙を戦う上での判断材料の提示であり、問われているのはこれを守るかどうかなのだ。
小沢氏は、将来的な税制の見直しを否定しているのではなく、デフレ不況を踏まえた上で、歳出削減や公的な無駄を徹底的に削る方が先だと言っているわけで、その主張は一貫している。
■原発めぐる鈍感さ
今月8日、川内原子力発電所の立地県鹿児島で、県知事選挙の投・開票が行なわれた。
自民、民主、公明の主要3党をはじめ、県内すべての業界・団体の支援を受けた現職が3選を果たしたが、鹿児島市や原発周辺の自治体では無所属無党派の新人が肉薄。反原発の流れが勢いを増している現状をまざまざと見せ付けた。
一方、東京では週末に反原発を訴えて首相官邸を取り囲む人の数が増え続けている。60年安保の時以来の光景であるが、参加しているのはごく普通のサラリーマンや主婦。かつてのヘルメットに角材、投石といったデモとはまったく異質なもので、脱原発の流れが定着しつつあることを示している。
しかし、永田町はあいかわらず鈍感だ。野田首相は、官邸周辺のデモの盛り上がりを「大きな音だね」と評し、国民の声を「音」としか捉えることのできない権力者の驕りを露呈した。
安全対策が不十分なまま、大飯原発の再稼働を強行した政府に対し、多くの国民が疑問を感じていることなどお構いなしなのだ。
福島第一原発の事故後、小沢氏は周辺の議員に対し、「使用済み核燃料の処分方法も決まっていないのに、原発を推進するというのは間違いだ」と明言しており、脱原発への姿勢を鮮明にしていたとされる。
あるテレビコメンテーターが「小沢さんが脱原発と言うのを聞いたことがない」と批判していたが、"あなたはどうなのか"と聞いてみたい。
「安全神話」崩壊後、政治家が原発に対する向き合い方を明確にするのが悪いこととは思えない。小沢氏の悪口を言えばうけるとでも思っているのだろうが、何でもかんでも"小沢は悪い"とする論調には違和感を覚える。
■度を越えた"小沢叩き"
西松建設による違法献金事件以来、大手メディアは事あるごとに小沢一郎氏を抹殺しようと図ってきた。
西松建設事件における検察リークのたれ流し記事、陸山会事件での「小沢はクロ」と言わんばかりの過剰報道。いずれも裁判の前に大手メディアが判決を下した形だった。人権だの冤罪だのと騒ぐ割には、小沢氏個人に対する配慮は皆無に等しい。
新党発足までの一連の動きの中では、政治評論家やコメンテーターに小沢批判を繰り返し語らせておいて、世論調査の数字を誘導する手法がまかり通っている。
言うまでもないが日本は法治国家である。裁判で有罪が確定しない限り"罪人"にはならない。
陸山会事件での小沢氏について言えば、検察が2度も不起訴にしたうえ、強制起訴後の東京地裁判決は無罪を言い渡している。それでもなお、小沢氏を犯罪人扱いする状況は異常というほかない。
増税反対、脱原発を掲げての離党・新党設立は、過半数の国民の思いを体現したものであるはずだが、反小沢キャンペーンは益々度を越えたものに変貌している。小沢夫人が書いたといわれる手紙を使った小沢つぶしは最たる例だ。
なぜ大手メディアはここまで小沢氏を目の敵にするのだろう?
小沢氏を一番怖がっているのは、他ならぬ霞ヶ関の官僚である。国家権力の裏表を知り尽くした小沢氏が本気で霞ヶ関をつぶしにかかった場合、既得権益を失うことが分かっているからに他ならない。
大手メディアと権力側が結びついたかのような現在の報道に、疑念を覚えるのは筆者だけだろうか。
小沢氏への好悪は別として、その主張をきちんと評価する姿勢も必要である。
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