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小沢新党が7月11日、旗揚げした。
その動向と影響も気になるが、3年前に「歴史的な政権交代」を望んだ多くの人々にとっては、民主党の分裂は痛恨の極みに違いない。次期衆参選挙での大幅議席減は確実で、いまや自滅に向かう民主党という印象だが、まずこの事態を招いた野田首相の「3つの大罪」を挙げなければならない。
第1は「民主党より財政」という選択である。昨夏の代表選で「民主党大好き」と口走ったが、本心ではなかったようだ。民主党が滅びるのを覚悟で増税一直線に突き進んだ。
第2は「民意無視」という罪だ。2009年の総選挙で、民意は初めて政権交代の醍醐味を味わいたいと思って民主党に政権を託したのに、野田首相は民主党分裂を容認し、民意を裏切った。派閥抗争が激しかった自民党政権の時代、権力は党内の結束を維持する接着剤といわれたが、野田首相には接着剤を有効に使う知恵もノウハウもなかった。
第3は「民主主義の実現に無関心」という罪である。財政再建、増税、予算の編成を最重視するのは「統治の論理」で、国民の意思やニーズを幅広く汲み上げるという姿勢は二の次と映る。その結果、官僚主導と官僚依存の完全復活を招いた。
政権交代という実験は失敗に終わるのは必至の情勢だが、原因は一言で言えば民主党の限りない自民党化だ。財政赤字を含む長期自民党政治のツケ、霞が関の官僚機構、アメリカとの関係、早々に見限る移り気の国民という「4つの壁」を越えられず、自民党化でその場をしのごうとした。
未熟で脆弱な民主党という地顔が出たが、弱体民主党は野党時代から抱える「4つの欠陥」を克服できていない点にある。口舌政治家だらけの口先政党、「非自民党政治」の旗だけで集まったごった煮政党、わがままリーダーたちが勝手気ままに振る舞う遠心力の党、自民党公認漏れ集団が実態の選挙互助会の党という体質である。
政権交代という実験が失敗に終われば、政党不信が募り、代議制民主主義の死を招く恐れがある。
それが民主党の最大の罪だが、事ここに至って、さあどうする、野田首相。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男―宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究―政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代―「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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