http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/668.html
Tweet |
添付する日経新聞の記事によると、民主党“残留派”は、貸金業者に適用される上限金利の引き上げを検討しているという。
利子取得そのものに非を唱えている者として、貸金業者の肩を持つ気はさらさらないが、大手消費者金融(サラ金)をはじめ貸金業者が次々と破綻し、弁護士や司法書士にとってはTVCMをやるほどの思わぬ稼ぎ場となった“過払い利息返還”の法的根拠になった最高裁判決には大きな疑義を抱いている。
いわゆる「グレーゾーン金利」での金貸しについて問題にすべきは、貸金業者ではなく、金貸し業の利息制限が利息制限法と出資法で異なっているという法治国家として異常な状況を放置してきた、裁判所自身であり、立法機関の国会と行政機関の政府であると考えているからである。
貸金業者の強欲が身を滅ぼしたと言ってしまえばそれまでだが、国家権力の意思でいかようにもお沙汰を変えられるような法状況を改めることが、国会と政府の責任であり、一票の平等のように、改めるよう仕向けるのが裁判所の努めである。
消費者金融の在り方を根底からひっくり返すことになったのは、平成18年(2006年)の最高裁判決である。
それまでの判例は、せいぜい、「貸金業者は制限利息を超える部分を裁判で請求する権利はない」とか、「債務者と交わされた必要書類があることが“みなし弁済”の要件」とか、「超過利息分は他の債務の弁済に充当されるべき」という程度のものであった。
それが、平成18年の最高裁判決で、「制限利息超え利払いの“みなし弁済”を厳格に解釈し、債務者が、事実上であっても、強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をしたときは、制限超過部分を自由な意思で支払ったとは言えないとし、“みなし弁済”の適用はできない」と一気に飛躍したのである。
この判決から始まったのが、電車の広告やTVCMで見聞きすることが多くなった過払い利息の返還請求である。
※ 利息制限法は、元本の金額レベルに応じて利息の上限を、10万円未満年利20%、10万円以上100万円未満年利18%、100万円以上は年利15%と規定している。
ただし、旧貸金業規制法では、制限利息を超えた利払いも債務者が任意に支払った場合、有効な利息息の弁済とするとしていた。この“みなし弁済”規定により、制限を超えた利払いをしてしまった場合は払い損・もらい得という見方が判例をベースになされていた。
出資法は、罰則付きで、年利29.2%を超える利率で金貸し業を営む事を禁止している。
日本人は、消費者金融であっても、高利貸し=悪というイメージが強いので、グレーゾーン金利部分の過払い返還を後押しする最高裁判決は歓迎されたと言えるだろう。
「陰謀論」を抜きにしても、06年の最高裁判決は、“街金”の成り上がり形態であった消費者金融が消滅し、大手銀行が子会社として経営する消費者金融として生まれ変わる動因となった。
かつての消費者金融大手の多くは、今ではメガバンクを中心とした銀行の子会社になっている。
これを銀行側から簡単に見ると、かつて間接利息収入源であった消費者金融を直接の利息収入源として手に入れたということになる。
銀行は、“優良な貸出先”の不足に悩むなか、サラ金への融資で大きな利息を得ていた。当然、サラ金が銀行に支払う利息の原資には利息制限法を超える利払いが含まれている。もっと端的に言えば、利息制限法を超える貸し出し利息が得られる条件が、サラ金が“安定”的に債務を履行する条件でもあったのだ。
(銀行からの借り入れ利率と消費者への貸し出し利率の差が大きいほど、サラ金の収益は増大し銀行に対する債務もスムーズに履行できる)
銀行は、過払い返還請求が湧き起こっている高利貸しの“あくどい”商売と無縁の存在ではないのである。
かつての消費者金融の雄=武富士は、今年4月に法人税の過払い分返還訴訟を起こした。
当然である。制限利息を超える利息収入が大きな収益であり、その収益額に応じて法人税を納付していたからである。法人税の算定基礎であり、法人税の支払い原資の一部でもあった制限利息超え部分の利息を、“国策”に応じて返還したのなら、納付した法人税の該当部分相当を返還してもらうのは当然の権利だと思っている。
この話を敷衍すると、1兆円に達するのではという予想もある過払い利息返還の対象である制限利息超えの利息が融資の支えでもあって銀行も、無関係という顔ができないということになる。
武富士が、“過払い利息”で購った銀行への利払い相当を、銀行から返還してもらいたいと思っても無理無体とは言えない。
民主党“残存派”は、3年物国債までが利率0.1%と日銀当座預金利率と同じになった超低金利のご時世で15〜20%という超高利貸しで商売をしている貸金業者=大手銀行の利益増大を計るため、制限利息の上限をさらに高めようとしている。
制限利息を引き上げる建前の理由は、「貸金業者から資金を借りられなくなった事業者や消費者が、違法な高金利を取る貸金業者「ヤミ金」を頼る例が増えつつあることに対応する」というものだ。
しかし、「貸金業者から資金を借りられなくなった事業者」は、公的融資や銀行融資もダメという経営状況ないし担保条件であるはずだから、15%の金利で借り入れをすることさえ無謀なのである。
心ある為政者であれば、事業内容を精査して、見切りを付けさせるか、公的な低利融資を奨めるであろう。
また、「消費者が、違法な高金利を取る貸金業者「ヤミ金」を頼る例が増えつつあること」も、事故歴ありの多重債務や総額規制(借り入れ総額は年収の3分の1まで)に引っかかった人々であり、債務残高を減らす方向にもっていくべき対象であり、借り入れ条件を緩和して債務の上乗せを唆すなぞ高利貸しの代理人の所業としか言えない。
それはともかく、銀行の子会社となり、取り立て方法の規制も厳しくなったなか、消費者金融やノンバンク(貸し倒れ引当金損金算入否認の憂き目)が、とうてい回収できない相手に融資をするはずもない。
言葉は悪いが、民主党“残留派”の制限利息引き上げの理由としているような状況にある人々は、債務不履行に陥ったら、性風俗産業への身売りか債務奴隷にすることができない限り、貸せるような相手ではないのだ。
民主党“残留派”が制限利息を引き上げとしているホントウの理由は、そこそこ稼ぎがありながら、一時的な物入りや遊興費などでお金が足りなくなってサラ金を頼る人々への貸出金利を上げることで、サラ金=銀行の利益増大を支えることなのである。
======================================================================================================
民主、貸金上限金利の引き上げ検討[日経新聞]
民主党は消費者金融会社などの貸金業者による貸し付けの上限金利を15〜20%に規制した改正貸金業法を見直す方針だ。上限金利の引き上げが課題となる。一方で完全施行から約2年で再改正することに金融庁は慎重とみられる。実現に向けた調整は難航しそうだ。
2010年6月の法律の完全施行以降、貸金業者から資金を借りられなくなった事業者や消費者が、違法な高金利を取る貸金業者「ヤミ金」を頼る例が増えつつあることに対応する。
[日経新聞7月5日朝刊P.5]
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK132掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。