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以下は「リベラル21」(http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2041.html)から転載。
2012.07.08 窮地に陥った橋下新党の「次期衆院選マニフェスト」の混乱と矛盾、橋下ブームのピークは過ぎたかも、(ハシズムの分析、その26)
〜関西から(69)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
かねがね「国会で大阪都構想の関連法案が成立するなら、国政進出は基本的に必要ない」と言明していた橋下大阪市長が、与野党5党協議(民主、自民、公明、みんな、国民新)で大阪都法案の大筋合意が固まり、今国会に法案提出が決まった6月28日の当日、一転して次期衆院選で大阪維新の候補を全国で擁立する意向を表明した。例によって、「(2万パーセント)出ない!」と言っていたことのチャブ台返しだ。
民主党から小沢グループの離党を目の当たりにして次期衆院選が近いと踏み、6月28日の大阪の政治資金パーティにおいて橋下氏は、「次は日本を変えるラストチャンス」、「大阪の動きを日本全体にという声があれば、維新はしっかり応えていく」と述べ、その上で「応援をもらえたら日本を新しい方向に導いていく自身はある」との大見えを切ったのである。
だが問題は、橋下新党が次期衆院選の争点として挙げた「消費税の地方税化」と「地方交付税制度の廃止」が来るべき大戦(おおいくさ)の“維新の御旗”になるかどうかだろう。結論的に言って、この2大公約は小沢新党の「国民生活が第一」(反消費税、反原発)に比べてもいささかインパクトに欠けるし、総選挙の争点としてはブームを起こせるような代物ではないと思う。
なぜなら「消費税の地方税化」を掲げても、これが「地方交付税制度の廃止」と抱き合わせで打ち出されることになると、圧倒的多数の地方自治体にとっては安定した行財政制度の根幹が失われることになり、地方首長や地方議員延いては有権者の支持を得ることがきわめて難しくなるからだ。地方交付税に依拠しない東京など一部の大都市自治体を除けば、大多数の地方自治体にとっては消費税による歳入増よりも、地方交付税廃止による歳入減の方がはるかに大きいと予想されるからである。
ひょっとすると、「橋下ブーム」はもはやピークを過ぎたと言えるのかもしれない。ひとつは分析力の衰えによって、もうひとつは政策力の枯渇によってである。現下の情勢に対する分析力の衰えは、何にも増して「大飯原発の再稼働容認」という致命的な“情勢の読み違え”に象徴されるだろう。ツウィッターを駆使する橋下氏が、その後の歴史的な「反原発官邸デモ」の展開を予測できなかったところに、彼が「ふわっとした世論」をキャッチする能力をもはや失ったことがあらわれている。
政策力の枯渇は、次期総選挙に向けての「維新八策」がなかなかまとまらなかったことに加えて(7月5日に漸く公表)、今回の「2大争点」がマスメディアの話題にもならなかったことが象徴的だ。地方行財政の研究者はもとより、地方自治を専門とするジャーナリストや各紙編集委員の間でも、「この程度の政策ではねえ」との否定的反応が一般的だった。
皮肉なことに、「第3極の星」としてこれまで引く手数多(あまた)だった橋下氏の勢いが、このところ小沢グループの民主党離党と新党立ち上げを境にして急速に萎んできた。原発再稼働を容認し、「市政改革プラン」と称して大阪市民の生活をズタズタに破壊している橋下氏にとって、いまやタテマエにしろ「国民生活が第一」(反消費税、反原発)を掲げる小沢新党とは対極の位置に立つ他はなくなったのである。
といって、核武装や改憲を主張する石原新党と連携すれば、橋下新党に対する国民の警戒心が一挙に高まり、さすがのマスメディアも翼賛的報道をいつまでも続けるわけにはいかなくなる。マスメディアに支えられた「橋下ブーム」は移ろいやすく、幻想と虚像の剥げる日が一層近くなるだけだ。
結局のところ、総選挙があろうとなかろうと橋下新党は“立ち往生”せざるを得ないのではないか。近く総選挙が行われても下手に国政選挙に打って出れば、鳩山氏と手を組んだ小沢新党と自公民3党連合の挟み撃ちに遭って失速する可能性が大きい。総選挙が遠のけば、小沢新党と自公民3党連合の国会対決に国民の目が移り、地元大阪での「橋下人気」の下落も加わって橋下新党の国政進出の芽は急速に萎れていくだろう。
思えば、財界や関電の圧力に屈して大飯原発の再稼働に手を貸したことが橋下新党の運命の分岐点だった。「反原発」を掲げて橋下新党を立ち上げ、「反原発官邸デモ」にでも参加していれば、怒涛のような「橋下新党ブーム」が湧き起こったかもしれない。しかし、歴史はそのような悪戯(いたずら)を許さない。ポピュリストでありデマゴーグである橋下氏は、それにふさわしいシナリオで歴史の舞台から消える他はないのである。
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