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危険な原発を動かすのはもうやめようという多くの国民の思いが政治に届いていない―。 デモの広がりはそんな焦燥感の表れだろう。 毎週金曜日の夜、東京・永田町の首相官邸前を大勢の人が埋め尽くし「再稼働反対」の声が響き渡る。民主党は、国民の声を足場に官僚支配からの脱却を訴えて政権交代を実現させた。しかし野田佳彦首相は原発推進派の論理に寄りかかり再稼働へ突き進んだ。
消費税増税や沖縄の基地問題にも同じような野田政権の政治手法を感じる国民は少なくない。官邸から道1本隔てた脱原発デモに首相は「大きな音だね」と漏らしたそうだ。これは単なる音ではない。首相や関係閣僚は、訴えにきちんと耳を傾けてほしい。デモは、脱原発を求める首都圏の市民グループが呼びかけ3月末に始まった。当初の参加者は約300人だったが、回を重ねるごとに増え、先週は数万人が集まった。
関西電力大飯原発(福井県)の再稼働後初めてとなる今夜も、多くの市民が集まりそうだ。札幌の道庁前でも呼応した抗議行動が企画されているという。国会周辺でこれほどのデモが起きるのは、1960年や70年の日米安保条約に反対する闘争以来という見方もできよう。 左派政党や学生、組合などの組織的な動きが中心だった安保闘争と違い、ツイッターなどネット上でデモを知り自発的に足を運ぶ会社員や子供連れの母親らが多いのが特徴だ。
国会に送り込んだ代表が政権を担う間接民主主義制度が目詰まりを起こし、民意が政治に反映されていない。多くの国民がそう感じ、官邸へ直接声を上げているのではないか。 野田首相は再稼働を決めた際の記者会見で「計画停電になれば命の危険にさらされる人、働く場がなくなってしまう人も出る。国民生活を守る」と強調した。
しかし福島の事故原因も不明確なのに再稼働させるのは国民を守ることにつながるのか。停電を避ける手段は再稼働だけではない。節電への意識は高まっている。首相の政治姿勢に国民から疑問が上がるのは当然と言えよう。首相は「国論を二分している状況で結論を出すのが私の責任」とも述べた。国論を二分しているときに、民意を丁寧にくみ取る手続きを欠かしてはなるまい。民主党政権の首相は衆院選を経ずに2度も代わった。だからこそ首相はより謙虚に、国民の声を聴くリーダーでなくてはならない。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/385442.html
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