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日本経済の幻想と真実
橋下市長は伝統芸能の敵か
文楽協会との「大戦争」に見える日本社会の変化
2012.07.05(木)
池田 信夫
大阪市の橋下徹市長は、市が文楽協会に支出している補助金3900万円について、協会が話し合いを拒否したため、補助を打ち切る方針をツイッターで表明した。
僕と文楽側の意見交換を、文楽協会が遮ったようだ。そして僕は補助金執行停止を決定。すべては文楽協会の責任。文楽協会は自分で金を稼いだ経験がない。すべて補助金で穴埋めされる形でやってきた。だから金を引っ張る苦労をまったく知らない。そんな会社に公演プロデュースなどできるわけない。
橋下市長はなぜ補助金を打ち切ったのか
文楽協会は「市側の担当部局のヒアリングには応じている」とコメントしたが、事務局長(大阪市役所OB)は6月30日付で辞任した。この問題は、マスコミでは「伝統芸能を軽視する橋下市長」などと批判を浴びているが、問題はそれほど単純ではない。橋下氏は次のように激しく文楽協会を批判した。
大阪府市から一億円程度の補助金が文楽に出ている。世の中一億の金を引っ張ろうとしたらどれだけのことをしなければならないか。文楽協会の経費は、無条件で赤字が填補される。そんな会社は世の中に存在しない。皆売り上げを上げるために必死になっている。
このやり取りを読んで、私がブログでコメントしたところ、さっそく橋下氏がこう答えた。
すべての問題点は池田氏の指摘に凝縮されている。日本の公の団体は補助金漬け。金を集める努力をしなくても金がくる。一億の金も当たり前。そしてしっかり天下り。 RT @ikedanob: 池田信夫 blog : 日本ではなぜNPOが育たないのか http://t.co/mMfr8neN
これは大戦争ですが、これが日本を成長させる源泉。 RT @ikedanob: 供給側に補助金を出すのではなく消費者にバウチャーを出すことは、選択を組織ではなく個人にゆだねる革命的な変化で、抵抗が大きいのは当然。橋下改革は日本人が「独立自尊」できるかどうかの試金石。
組織の支援から個人の支援へ
これには少し説明が必要だろう。「バウチャー」というのはサービスに出す金券で、教育で使われている。公立学校のようにサービスを提供する側に出すのではなく保護者に出し、どの学校に行くかは(公立・私立に関係なく)保護者が選ぶ。これは利用者に選ばれないともらえないので、公立学校は私立学校との競争にさらされる。このため公立学校や労働組合が反対して、世界的にも実施例は少ない。
ところが大阪市は2012年1月、日本で初めての教育バウチャーを条例で決めた。これは「塾代補助クーポン」というもので、放課後の補習授業を市が補助するものだが、今までは塾に出していた補助金を打ち切り、保護者にクーポンを出すことにした。
文化予算についても大阪市は「アーツカウンシル」をつくり、文楽もクラシックも小劇団も横一線で見直すという。この予算規模は数十億円で、市の予算の中でもわずかなものだが、橋下氏もいうように「大戦争」である。
それは行政が文楽協会のような組織を支援するのではなく利用者という個人を支援するという文化・教育行政の大きな転換だからである。
橋下氏は次のように文楽の努力不足を批判する。
歌舞伎もスーパー歌舞伎などで話題性をふりまき新しいファンを獲得しながら、古典はしっかりと守り続ける。また露出についても大フィルの超過勤務や稽古の日当のような考えではなく、それこそ無給で必死になるべきだ。今の大フィルや文楽界は、何かすればカネをくれという体質なのであろう。
観客が集まるかどうかは全ては演者側の責任だろう。観に行きたくないと言った観客を叱れるのは、連日満員御礼の公演の演者。3割しか入っていない文楽公演の演者が観客を叱ってどうする。何故観客が集まらないのか真摯に反省し、努力し、創意工夫を重ねるべきだ。
大阪市にとっては小さな一歩だが・・・
このように利用者に選択をゆだねることについては、批判も多い。公共的なサービスについては市場で価値がはかれないので、あまりインセンティブを強めない方がよいという考え方もある。例えば警察を民営化したら、成績を上げるためにむやみに逮捕するようになるかもしれない。
さらに本質的な問題は、利用者が賢明な選択をするのかということだ。例えば芸術バウチャーを一括して支給すると、ポピュラークラシックやスーパー歌舞伎のような派手な興業に人気が集まり、文楽はさびれてしまうかもしれない。しかし天下りを派遣している役所が利用者より賢明な判断をするという根拠も乏しい。
こうした問題については、一般的な答はない。文楽がどの程度公共的なサービスなのか、また利用者の選択をどこまで信頼すべきか、といった問題については大阪市が情報を公開し、市議会などで議論するしかない。今のまま「公益」を隠れ蓑にして天下りを派遣し、税金を浪費することは許されない。
橋下氏の言うようにこうした企業努力によって文楽に親しむ人が増え、歌舞伎のような人気が出るかもしれない。後継者に悩む文楽を演じる若者が出てくるかも知れない。やってみないと分からない。
こうした改革は、国政レベルでやろうとすると大規模な反対運動が起こって手に負えないが、大阪市ぐらいの規模で橋下氏ぐらいの強い意志があれば実験できる。アポロ11号の有名な言葉になぞらえれば、文楽協会の補助金見直しは、大阪市にとっては小さな一歩だが、日本にとっては偉大な飛躍である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35604
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