http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/488.html
Tweet |
「ニューズウィーク日本版7・4」は、「世界経済に迫る失われた10年・世界経済を飲み込むユーロ恐慌」というおどろおどろしい形容句を付けた“ユーロ銀行(債務)危機”特集がメインになっている。
ユーロ債務危機の解決策やドイツや米国の経済見通しなど読むに値するものが多いが、日本との絡みでとりわけ気になったのは、「欧州に蔓延する自殺という疫病」という社会問題を取り上げた記事である。
記事は、欧州で多発している自殺の生々しい有様をイタリアを中心に描いているが、NHKBS「ワールドウェーブ」(海外ニュース番組)のイタリア局でも報じていたことだが、自殺者には中小企業の経営者が多いという。
記事は、「年初来の緊縮策で追い詰められたとみられる人たちの自殺や死亡例は既に80件を超えている」と説明しているが、緊縮策も大きな要因であることは確かだが、昨年9月に付加価値税が1%引き上げられたことや「国税庁傘下の徴税公社ユタイタリアによる強引な取り立て」(記事に詳細)が大きく関わっている。
イタリアはかつて徴税レベルが緩かったということもあるのだろうが、財政健全化を目的とした付加価値税増税と徴税強化が、企業経営者の自殺を増大させていると言える。
さらに、自殺者を急増させるほどの増税と徴税を行っても、イタリアの付加価値税の受取額は減少し、この4月末までの1年間の徴収額は、06年以降で最低に落ち込んでいるという。(記事にもあるが、自殺すると税の債務が消えるという問題もある)
驚くのは、付加価値税の減収を受けて、イタリア政府が税率の2%アップを検討していることだ。
このようなイタリアの状況が、先ほど行われたユーロ首脳会議で、モンティ首相が緊縮策緩和と成長策を強く求めた背景でもある。
ニューズウィークの記事は、「イタリアだけではない。09年に財政危機が表面化したギリシャではもっと多くの人が自殺している。厳しい緊縮策が課されて以降、既に1727人が自殺、または自殺を試みている。スペインでも自ら命を絶つ人が増えている。特に、失業率が50%を超える25歳未満の若者の自殺が多い。
00年以来の景気後退が続くアイルランドでも、自殺を図る人の数は08年当時の倍になった。ユーロ危機の影響を強く受けている国では、どこでも鬱病患者や自殺が増えている」とも書いている。
ひとごとではなく、日本でも、消費税税率が2%アップされた97年の翌98年から自殺者が急増している。
警察庁の統計によれば、97年には2万4391人であった自殺者が98年に3万2863人まで急増した。そして、98年以降昨年まで、14年連続で自殺者数は3万人台を記録している。
この数字も、遺書などの死亡状況から判断された警察庁統計なので、変死や行方不明とされている人などを含めるともっと多くの人が自殺していると考えられている。
また、自殺を図りながらも、死には至らなかった人は自殺者の10倍いるとも言われている。
日本の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は24.4人で、09年ベースで世界10位になっている。
ちなみに、なぜか日本のメディアは経済状況が良いように報じている韓国は、31.0人で世界2位の自殺率である。1ヶ月ほど前の韓国KBSニュースは、60歳以上の高齢者の自殺率は、なんと70人/10万人を超えていると報じていた。
私は、自殺を悪だとは思っていない。罹病の見通しを含め“自由意志”で自分の生に区切りを付けることも、一つの生きる行為だと思っている。
しかし、自殺の原因が経済苦に追い詰められたものというのでは、先進国として、あまりに哀しすぎる現実だと思う。そして、自殺のある割合がこれから説明する問題に絡んでいるとしたら、とても許せることではない。
ここ数ヶ月、うっとうしいと思われる人がいることも承知で、消費税に関する投稿を数多く行ってきた。
消費税(付加価値税)は、供給主体(事業者)の付加価値から徴税するだけのものでなく、輸出比率が高いグローバル企業群に他の事業者が生み出した付加価値を移転させる仕組みでもある。
消費税が付加価値であるからこそ、消費税が増税された97年の決算が終わる(った)98年に自殺者が急拡大したと考えている。
ニューズウィークの記事にも、「南欧諸国では、家族を養えない、あるいは従業員に給料を払えない人が増えていて、彼らにとっては自殺が唯一の逃げ場となっている。このところの自殺者で目立つのは自営業者と中小企業の経営者、そしてディミトリス・クリストウラスのような年金生活者だ」と書かれている。
“消費税は最終消費者が負担している”と考えている人には理解不能な話かも知れないがご容赦いただきたい。
消費税が3%なら、7千3百万円の付加価値(消費税課税対象のマージン)で、最終利益は出ないものも、消費税・給与・利払い・元本返済・役員報酬に充当できた企業も、消費税が5%になれば、どこかにしわ寄せが来る。(減価償却費はキャッシュフローと関わらないので除外)
[消費税3%]
消費税:300万円:税引き後付加価値7千万円
給与:6千万円
利払い:200万円
元本返済:300万円
役員報酬:500万円
[消費税5%]
消費税:500万円:税引き後付加価値6千8百万円
給与:6千万円
利払い:200万円
元本返済:300万円
役員報酬:500万円
過不足:▲2百万円
銀行に対する債務不履行を避けるのなら、給与か役員報酬を引き下げるしかない。
しかし、91年以降の不況の中で、給与や役員報酬をぎりぎりまで引き下げているのなら、債務履行について銀行に相談するハメになる可能性もある。
最悪なのは、利払いを“追い貸し”で履行していたり、給与などを自分の預貯金や高利貸しでなんとか手当てしてきたようなケースである。
そのようなケースでは、ほとんどがここで終わりになるだろう。
先ほど、消費税は、輸出比率が高いグローバル企業に他の事業者が生み出した付加価値を移転させる仕組みと書いた。
消費税は、グロスで13兆円ほどの税収があり、3兆円ほどが「還付金」として戻されている。その差し引きが消費税のネットの税収10兆円である。
シンプルに言えば、3兆円/13兆円=23%だから、設定したケースの消費税500万円のうち115万円は、グローバル企業群に上納されていることになる。
この論理はイタリアも変わらない。
現在進行中の増税策で、消費税が10%になれば、設定したケースの消費税は730万円になる。そうなると、その23%、168万円がグローバル企業群への上納金になる。
大まかな説明だが、誰が、中小企業の経営者を自殺に追い込んでいるのか少しはわかると思う。
言葉は悪いが、政治家・官僚・経営者団体がグルになって、それほどの競争力のない事業者を自殺に追い込んでいるのである。
民主党+自民党+公明党は、このような現実を引き起こす消費税を力ずくで増税しようとしているのである。
この間の投稿で、「三党」は、選挙対策と増税対策のために、15兆円を超える規模で財政出動を行うだろうと書いた。
それは、グローバル企業への上納金を確実にするためにも、日本経済が破滅に向かわないためにも、どうしてもやらねばならない政策でもある。
しかし、15兆円を超える規模で財政出動を行っても、それほどの競争力のない中小企業の経営者のなかから、これまで以上の数が自殺への道を歩み始めることをとどめることはできない。
グローバル企業への上納金というGDP(付加価値)の分配を国策で歪める税制=消費税の増税が行われるかぎり。
※ 選挙対策に関連して
小沢新党や橋下新党など来る総選挙に向けた動きがあわただしい。これまで書いたように、次の総選挙は、ぎりぎりまで引き延ばされ、選挙対策・増税対策が打ち出された後の来年7月以降9月(任期満了)までに行われると考えている。
民主党が総選挙で勝利したいと思ったら、総選挙までに、消費税増税にメリットがあると思う人を増やすしかない。
有権者数を1億1百万人、投票率を70%と想定し、第一党になれる得票率を40%と予測すると、2820万人ほどを国庫金で“買収”すればいいことになる。
ちなみに、圧勝した09年総選挙で民主党は、小選挙区で3千3百万票余、比例区で2千9百80万票余の得票実績がある。
くれぐれも、それを期待しているわけでも、それが実現されると予測しているわけではない。民主党幹部は、それをめざして動くという予測でしかない。
ニューズウィークの記事の最後は、「「彼らは私たちを絶望に陥れている。これは民主主義じゃない。自由じゃない」「ほかの誰にも、私みたいな経験はしてほしくない。でも現に毎日、新たな未亡人が生まれている」とマローネは言う。「このままのペースでいくと、遠からずこの国の貧乏人はずっと少なくなるでしょう。みんな、自ら命を絶ってしまうから」」という言葉で結ばれている。
苦悩に置かれた人からにじみ出るやさしさを考えると、政治家・官僚・経団連幹部などが内に持つ心性の腐敗度がよく見えてくる。
しかし、「このままのペースでいくと、遠からずこの国の貧乏人はずっと少なくなるでしょう。みんな、自ら命を絶ってしまうから」については、哀しいかな、そんなことはなく、新しい貧乏人が次々と生み出され、今以上の数になる可能性のほうが高いと思う。
===============================================================================================
「ニューズウィーク日本版7・4」P.36〜38
欧州に蔓延する自殺という疫病
社会:財政危機の打撃を受けた国々で不景気と失業、緊縮策で追い詰められ絶望のあまり死を選ぶ人が急増している
もう限界だった。1年以上も仕事はないのに、徴税人はしっこく追い掛けてくる。
5月下旬のある日、マルコ・トウリーニ(41)はミラノ近郊の自宅アパートで4歳の息子と生後14カ月の娘を抱え上げ、6階の窓から投げ落とした。妻も投げ落とそうとしたが、妻は逃げた。最後は自分が飛び降りた。彼は即死だったが、幼子2人はしばらく息があったという。
悲惨な話だ。しかし似たような悲劇はイタリア各地で、今も繰り返されている。
5月10日の午後、ナポリ郊外に住む実業家のアルカンジュロ・アルビノ(63)は『ロザリオの聖母』で有名なポンペイの聖堂に行き、聖画の前にひざまずいた。それから駐車場に戻り、銃で自分の東を撃ち抜いた。
彼のポケットには、3通の封書があった。1通は妻子のために聖母の加護を願うもの。2通日は自分の経営する建築会社の困難な状況を説明したメモ。3通日はイタリアの徴税公社ユタイタリア宛てで、脅迫まがいの督促と容赦ない追徴課税を非難する内容だった。
「あまりにも多くの人にとって今は生きづらい時代だ」と、ポンペイのクラウディオ・グレッシオ市長は語る。「芝生に残る血痕は、この町とこの国の痛みの象徴だ。彼を死なせた責任は誰かにある。中央政府と地方政府が彼を死に追いやった」
3月末にはジュゼツペ・カンパニユーロという男性が、追徴税額を2倍にするという最終通告を受け取った後、ボローニヤのユタイタリア事務所前で焼身自殺を囲った。救助されたが重度のやけどで9日後に絶命した。
夫は一度も税金の話をしなかったと、妻のティツィアナ・マローネは言う。たぶん、それが男のプライドだったのだろう。
カンパニユーロの遺書は痛ましい。「愛する人よ、私はここで泣いている。今朝、私は少し早く家を出た。君を起こして、さよならを言いたかったが、君はとてもよく眠っていたので起こすのをやめた。今日はひどい日になる。みんな、どうか許してくれ……みんなに最後のキスを。君を愛してる。ジュゼッペより」
トウリーニやアルビノ、カンパニユーロのように、年初来の緊縮策で追い詰められたとみられる人たちの自殺や死亡例は既に80件を超えている。
平均すると1日に1人
カンパニユーロの妻マローネは夫を自殺で亡くした妻たちのグループを作った。メディアは彼女たちを「白い未亡人」と呼ぶ。ボローニヤでのデモ行進のとき、カンパ:土−ロがわが身を燃やした炎で焦げた歩道から出発した一行が、人生への「降伏」を象徴する白旗を振って歩いたからだ。参加者の多くは夫の遺書を携えていた。
マローネは首都ローマや貧しい南部の町でもデモ行進を企画している。「家族を養うことができなくて夫が命を絶った。この心の痛みは永遠に癒えない」と、マローネは本誌に語った。「そんなふうに人生を終わらせるまでに、どれほどの絶望に耐えてきたのか。私には考えることさえできない」
自殺者の遺族ネットワークを築き、この国に新たな貧困層が生まれつつある事実に目を
向けさせることが彼女の願いだ。
イタリアだけではない。09年に財政危機が表面化したギリシャではもっと多くの人が自殺している。厳しい緊縮策が課されて以降、既に1727人が自殺、または自殺を試みている。スペインでも自ら命を絶つ人が増えている。特に、失業率が50%を超える25歳未満の若者の自殺が多い。
00年以来の景気後退が続くアイルランドでも、自殺を図る人の数は08年当時の倍になった。ユーロ危機の影響を強く受けている国では、どこでも鬱病患者や自殺が増えている。
「自殺増加の最大の理由は、景気の後退と進行中の緊縮策だ。どちらも厳しい時代をさらに厳しくする。精神衛生サービスの予算も削られていく」と言うのは、欧州危機が健康に及ぼす影響についての報告を共同執筆したケンブリッジ大学のデービッド・スタックラー教授。「ある病気の爆発的な発症を『疫病』と呼ぶが、そうであれば現在の自殺も立派な疫病だ」
南欧諸国では、家族を養えない、あるいは従業員に給料を払えない人が増えていて、彼らにとっては自殺が唯一の逃げ場となっている。このところの自殺者で目立つのは自営業者と中小企業の経営者、そしてディミトリス・クリストウラスのような年金生活者だ。
ギリシャ政府の緊縮策のせいで、クリストウラス(77) の年金は半分に減らされた。4月のある日、彼は国会議事堂の前で自分の頭を撃ち、シンタグマ広場を血で染めた。「誇りを持って死んでいくにはほかに方法がない。生きるためにごみ箱をあさるのはごめんだ」というメモがポケットに入っていた。
こうした「公開自殺」は、当人にとっては苦痛のシンボリックな表現だろうが、後に続けというメッセージにもなる。
5月6日のギリシャ稔選挙投票日の前には、職を失った地質学の講師が街灯に首をつって死んだ。同じ日、将来に雑望した学生が挙銃自殺し、教区民の苦しみに絶望した司祭がパルコニーから飛び降りて命を絶った(今のギリシャでは平均して1日に1人が自殺している。こうなるとメディアの感覚も鈍り、いわゆる「公開自殺」以外は記事にしなくなった。
容赦ない滞納税の徴収
自殺の場合、たいてい生命保険は支払われないが、債務者が死ねば借金の返済は免除されることが多い。だから何カ月も前から自殺を計画し、残された家族が債務を抱え込むことにならないよう、手続きを済ませておく人もいる。「自分が自殺したら家族はどうなるのか、という問い合わせがたくさんある」と言うのは、しばらく前にイタリア北部の都市トレピーゾに開設されたホットライン「職人の自殺SOS」の広報担当者だ。
イタリアの自殺者の遺族たちは、債権取り立て業者の厳しい取り立てが愛する者を追い詰めたのだと確信している。
特に非難の対象となっているのが、国税庁傘下の徴税公社ユタイタリアによる強引な取り立てだ。同公社の仕事は、何十年もの税金逃れによって積み重なった約1200億ユーロもの滞納税と延滞金の徴収。国の代わりに取り立ての汚れ仕事を請け負う見返りとして、徴収額に9%の手数料を上乗せしている。ユタイタリアは交通違反の罰金や民間債権者の取り立ても請け負っており、こうした場合の手数料は最大15%に上ることがある。10年には88億7000万ユーロの徴収額に対して、実に12億9000万ユーロもの利益を上げた。今年は国策として徴税強化が最優先されているため、エクイタリアの利益は20倍近くに膨らむかもしれない。
先月にはわずかに手数料率を引き下げた同公社だが、期日までに納税しないと容赦なく2倍、3倍の罰金を科すため、滞納者はすぐ危機的状況に追い込まれる。ナポリで自殺したアルビノはその道書で「私の人生をめちやめちゃにしてやろうという意図」が感じられたと、エクイタリアを名指しで非難した。
4月には、同公社の顧問弁護士だったジュナーロ・デフアルコが「ユタイタリア流の取り立て手法」に抗議して職を辞した。「これで少なくとも自分の良心の呵責を和らげることができる。これが法律家たちの品位を回復させる助けになればいいし、現下の危機を乗り越える社会的・倫理的な対処法を考える機会となればいい」
議員の給与は最高水準
こうした状況下、ユタイタリアとその職員に対するテロ攻撃も増えている。
昨年12月にはローマ本社に送り付けられた小型爆弾で総裁が負傷。この5月には54歳の男がライフルを手にベルガモ支所に押し入り、職員15人を人質に11時問立て籠もった。5月半ばにはリボルノ支所に火炎瓶が投げ付けられる事件があり、その数日前にもローマ本社に小包爆弾が送り付けられている(けが人はなかった)。
こうした事態にも、マリオ・モンティ首相は「長年にわたる税金逃れが現在の危機的状況を招いた」と主張し、ユタイaリアの仕事を正当化している。また内務省は、同公社の本社と支所を軍に警備させることを検討している。
夫を自殺で亡くしたマローネは、ユタイタリアは国が何年も見て見ぬふりをしてきた税金や未払い金の徴収で利益を稼ぐべきではないと考えている。モンティについては「カネ勘定と徴税の得意な銀行家だが、選挙で選ばれておらず、誰に対しても説明責任がない」と語り、モンティ率いる「実務家内閣」は国民の絶望に対する配慮がないと批判する。
マローネはまた、国民が緊縮策の影響に苦しんでいるのに、イタリアの議員たちは今もヨーロッパで最高水準の報酬を受けているという事実を指摘した。「議員たちは今も毎月3万ユーロを受け取っているが、国民は10ユーロの食べ物を食卓に並べることもできない。こんな状態で、どうして政府を尊敬できるだろうか」と彼女は涙を流しながら言う。「彼らは私たちを絶望に陥れている。これは民主主義じゃない。自由じゃない」「ほかの誰にも、私みたいな経験はしてほしくない。でも現に毎日、新たな未亡人が生まれている」とマローネは言う。「このままのペースでいくと、遠からずこの国の貧乏人はずっと少なくなるでしょう。みんな、自ら命を絶ってしまうから」
バービー・ラツツア・ナドー(ローマ)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK132掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。