http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/318.html
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海外からの配信サービスと消費税の関係をめぐる問題の第2弾として、「ダウンロードサービス」を取り上げたい。
今後の音楽や書籍に関する販売形態を考えると、阿修羅に集う人々も利用は増加すると思われるサービスなので、自分とどう関わってくるかを考えながら読んでいただければ幸いである。
このスレッドの少し下にあるスレッド「海外配信問題:国内広告主への消費税課税の意味と論理」で少し触れ、先日投稿した「ネット配信、消費増税なら外国勢有利 各社、募る不公平感 「国外取引」も課税求める」(http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/165.html)でも、例をあげてこれに関する問題点を指摘した。
財務省が海外配信をめぐって消費税問題を考えている理由は、徴税というより、国内事業者の競争条件をめぐるものであろうと推察される。
同じデジタルデータで、入手方法と決済方法でほとんど同じでありながら、国内事業者の配信サービスを利用すると、消費税税率分だけ価格が高くなるという不利な状況をなんとかしてくれ(しなければ)ということで出てきた政策テーマである。
ネット配信広告については、おそらく“利益供与”になる国内広告主への課税という、かえって課税しないほうが徴税額的にはいいという奇妙な結果になる政策で落ち着きそうである。
前回も引用した日経新聞の記事によると、海外事業者の国内利用者向けサービスは、「すでに域外からの配信に付加価値税をかけている欧州連合(EU)に近い課税方法となる」可能性が高いという。
記事は、それに続いて、「現在、日本に拠点のない海外企業が納税する場合は、申告書の提出などを日本で担当する「納税管理人」を届け出る義務がある。海外の配信企業が消費税を納める際も、この仕組みを使う。確実な納税を促すために、海外企業に登録を義務付ける制度を創設する案も浮上している。取引金額が少ない海外事業者も納税してもらう方向だ」と説明している。
EUの方式をもう少し説明する。
EUは、デジタルデータの国境を越えた取引にVATを課税するため、03年7月から「e-VAT」という付加価値税を導入することにした。
まず、課税場所を消費者がサービスを受ける場所とすることで、EU域外の事業者に納税義務を課すことができるようにした。
この規定により、外国(域外)の配信事業者は、EUのどこかの国に登録し、その国の税率でVATを納税することを求められた。
EU市民にデジタルデータの配信サービスを行なう日本の事業者は、例えば、英国で登録し英国のVAT番号をもらい、英国市民への売上であれば、英国のVATを上乗せし、他のEU諸国の市民に販売するときは、それぞれの国のVATを上乗せした金額にする。
納付すべきVATは、いずれの場合であっても、英国の徴税当局に納付する。最後は、英国政府が取引内容に応じてEU各国の政府と清算することになる。
EUと日本で大きく異なるのは、他の国の政府と清算する仕組みを必要としないということであろう。
旧財務省官僚で、消費税増税の必要性を国民に説く伝道師のような役割を担っている森信茂樹・中央大学法科大学院教授は、EUのこの制度について次のように書いている。(EUの制度概略も森信氏の説明をベースにしたもの)
「この税制の最大の問題は、EU域内の消費者を相手に商売をする域外の事業者をどのように把握し、登録させるかという点である。かりに把握できたとしても、登録しない事業者に対して強制力を持たなければ、この制度は不公平、不完全なものとなる。
また、事業者(サービス供給者)は、税額の計算・徴収・納付の義務を負うので、事務が煩雑になり、コストが高くつくという問題もあった。
しかし導入してみると、懸念されていたような事態は生じなかった(といわれている)。域外事業者は域内のいずれか1ヵ国に登録したのである。
これは、国境を超えるオンライン取引を行う事業者は大規模事業者で、個別に把握することが可能で、EU各国の課税当局との話し合いがスムーズに行なわれたためである(といわれている)。
また、事務が煩雑でコストがかかるという問題についても、EU側は簡素な制度に改めるよう柔軟に対応したため、課税上の混乱は避けられたのである。」
※ 引用元:ダイヤモンドオンライン「森信茂樹の目覚めよ!納税者」【第29回】 2012年6月12日「えっ、海外から電子書籍を買うと消費税ゼロ!?国境超えたデジタル財取引にどう課税するか」http://diamond.jp/articles/print/19887
歯切れのいい森信氏としては珍しく、「(といわれている)」と疑念を残すような表現を使っている。
それはともかく、私が域外配信事業者であっても、素直に登録し、VATの申告もする。
なぜなら、「e-VAT」は、事業者間の競争条件を同一化するものであっても、必ずしも域外事業者の税負担増加につながるわけではないからである。
この制度は、政府が、VAT分の価格上乗せを手助けしてくれているようなもので、政府から強要された域内を含む配信事業者間のある種の“カルテル”と言えなくもない。
詰まるところ、域内の配信事業者も域外の配信事業者も、税制が影響する価格については同じ競争条件でというだけの話なのである。
VATも消費税も、付加価値税だから、売上にかかる“表面的な”税額が納税額というわけではない。
そうであれば、域外事業者が申告・納税主体になるとしても、EU諸国向け売上で計算上発生するVAT額を“打ち消せる”仕入のVAT税額があれば、実際にVATを納付する必要はないことになる。
計算上、5万ユーロのVATが発生したら、とにかく、あらゆる仕入をかき集めて5万ユーロ相当の控除できるVATを算出すればいいのである。
VATの税論理構造に照らして、まさか、EUや加盟各国の課税当局が、インボイスがなかいから、仕入で発生したと主張する控除できるVATを否認するようなことをするはずもない。そんなことをしたら、VATは、付加価値税ではなく、売上税になってしまうからだ。
そして、仕入にかかわる税控除を否認するような論理で課税するのなら、「域外事業者は域内のいずれか1ヵ国に登録した」という状況も生まれなかっただろう。
森信氏は、「これは、国境を超えるオンライン取引を行う事業者は大規模事業者で、個別に把握することが可能で、EU各国の課税当局との話し合いがスムーズに行なわれたためである」と解説しているが、内実は、域内と域外の事業者の競争条件を揃えることが目的で徴税自体が目的ではないことを、域外大規模事業者が、「EU各国の課税当局との話し合い」で了解したからにほかならないと受け止めている。
域内の事業者は、同じサービスを行うと、VATの課税論理で徴税されるが、対象企業に課税当局の調査権が及ばない域外の事業者は、よほど間の抜けた事業者でないかぎり、VATを納付せずに済ますことができるのである。
(日本のことを考える。楽天などが子会社を使って海外事業者として配信サービスを行っても、消費税の課税を逃れることはできないと考える。日本の国税当局は、楽天に対する“権力行使権”を有しているからである)
事業者間の話や徴税の問題はともかく、利用者にとっての問題を考えてみたい。
海外の事業者は、日本政府のお墨付きも得たので、堂々と、「消費税5%が課税されます」(法人税も消費税も納税していないと思われるアマゾンと同じ)と表示することができる。(EU市民向けに商売をする場合も同じ)
そして、結果として、消費税はゼロもしくは“還付”で申告する。
そうであれば、利用者は消費税分を上乗せされた価格でサービスを購入させられ、海外の事業者は、消費税分を上乗せした価格で販売できるというだけ話になってしまう。
ずばり言えば、消費税の徴税額は増えることなく、利用者は高い買い物をさせられ、海外事業者は利益を増やしたというオチになる。
唯一のメリットは、国内事業者が国内向けに配信サービス事業を行うときに、消費税があることで不利にならないことである。
こんな歪みっぱなしの消費税を、増税することはもってのほかだが、存続させていること自体が国家社会を破壊する元凶なのである。
物品税や売上税ではない付加価値税である消費税は、そもそも、課税対象企業に対して法人税を課税できる条件を有していなければ、実効的な徴税ができないという性格の税なのである。
消費税は、「売上×消費税税率」が納税金額なのではなく、設備投資や派遣労働者費用までを含む「“仕入”×消費税税率」を控除したあとの金額が納付すべき消費税額だからである。
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海外からの音楽や広告配信に消費税 財務省14年メド 国内と公平に[日経新聞]
財務省は海外から電子書籍や音楽、広告などを日本向けに配信するサービスに消費税を課す方針を固めた。消費増税関連法案が国会で成立すると2014年4月から消費税率が8%に上がることから、早ければ同時に実施する。ネット取引課税について国内企業と海外企業の格差が解消に向かうが、海外勢にどうやって確実に納税させるかが課題となる。
消費税は「国内の取引」と「モノの輸入」だけが対象だ。海外に配信サーバーなどを置いて、音楽やパソコン応用ソフトなどを日本に配信するサービスは現行法上、「国外取引」として課税されていない。一方、電子書籍やネット広告を手掛ける国内事業者の場合は「国内取引」として課税されている。
米アマゾン・ドット・コムが近く日本で電子書籍向け端末を発売するほか、楽天も買収したカナダのコボ社を使って書籍配信を予定するなど、今年は配信市場が拡大する見込み。国内企業は消費税率が上がれば海外勢との競争が一段と不利になるとして危機感を募らせており、海外への事業移転を模索する動きが出始めていた。
このため、財務省は日本の企業や消費者が受ける配信サービスは、海外からの提供であっても消費税をかけることにした。消費税法や関連の施行令の見直しが必要なため、13年の通常国会期間中をメドに必要な制度改正を終える考えだ。すでに域外からの配信に付加価値税をかけている欧州連合(EU)に近い課税方法となる見通し。
具体的には国内企業の依頼を受けて米グーグルなど海外企業がネット広告を配信する場合、その国内企業が消費税を納める。日本の消費者が海外企業から音楽や電子書籍をネットで買ったときは海外企業が納税する。
現在、日本に拠点のない海外企業が納税する場合は、申告書の提出などを日本で担当する「納税管理人」を届け出る義務がある。海外の配信企業が消費税を納める際も、この仕組みを使う。確実な納税を促すために、海外企業に登録を義務付ける制度を創設する案も浮上している。取引金額が少ない海外事業者も納税してもらう方向だ。
ネット取引は実態の把握が難しく、海外事業者の申告漏れが起きる可能性もある。財務省では海外の税務当局と税務関連情報を交換する協定を利用して情報収集するなど、申告漏れを防止する方針だが、実効性は不透明な面もある。
財務省は7月上旬に中里実・東大教授を座長とする研究会を発足。法令の見直し内容や納税手続きなどを議論し、10月ごろまでに詳細を詰める予定だ。
国内のネット広告の市場規模は昨年、約8千億円だった。電子書籍も10年度の650億円から15年度には2千億円に拡大する見通しだ。
[日経新聞6月29日朝刊P.1]
財務相、配信に課税検討表明
安住淳財務相は29日の閣議後の記者会見で、海外から配信されるサービスへの消費税課税について、省内に研究会を設けて検討する方針を正式に表明した。現在、国境をまたぐサービスには消費税がかかっていない。海外企業が配信する電子書籍などには消費税がかからないため、競争上、不利になると産業界から不満が出ている。
[日経新聞6月29日夕刊P.2]
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