http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/312.html
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後ろに引用で使った記事を添付するが、日経新聞の昨日(29日)朝刊の一面で大きく取り上げられ、夕刊で、安住財務相が「省内に研究会を設けて検討する方針を正式に表明」したと報じられた、海外からの国内向け配信事業への消費税課税問題について考える。
消費税については、統治機構と主要メディアが一体となった宣伝活動により、ウソとゴマカシの論理がまるで正しいものであるかのように流布している。
その罠から抜け出るためには、いろいろな角度から消費税を捉え直さなければならないと思っている。
今回も、「えっ、なんで?」と考えさせられる内容を含んでいると思うので、多くの人が消費税に対する理解を深めていく一助になればと願っている。
「ネット配信、消費増税なら外国勢有利 各社、募る不公平感 「国外取引」も課税求める」(http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/165.html)で、この問題に関する考えを述べたが、海外からの音楽や電子書籍などのダウンロードサービスに国内の消費税を課税することは極めて困難である。
実効性のある徴税+国内事業者の競争条件という二つを満足する課税方法は、ダウンロードを輸入とみなし、利用者から「料金×消費税税率」の金額を輸入関税として徴収する他は思いつかない。
この方法でも、利用者の自主申告はほとんどないと思うし、国税当局が利用者を把捉し納税を求め督促もかけるコストを考えたら、採算性で放っておいたほうがいいというものかもしれない。
物品税や売上税ではない付加価値税である消費税は、そもそも、相手に対して法人税を課税できる条件がなければ徴税できない性格の税なのである。
なぜなら、消費税は、「売上×消費税税率」が納税金額というわけではなく、設備投資や派遣労働者費用までを含む「“仕入”×消費税税率」を控除したあとの金額が納付すべき消費税額だからである。
ちょっと考えればわかるように、日本向け配信サービスで売上を上げた米国の企業に消費税を課そうとしても、“仕入”がこれだけあるから納付すべき消費税はゼロと言われたとき、日本の課税当局に、それはおかしいといって、税務調査を実施する権限はないと思われるからである。
海外事業者に消費税を課税すると、消費税の課税論理から、逆に、“仕入”にかかわる消費税を控除するとマイナス5百万円になると申告されて、“追いゼニ”を渡さなければならなく可能性さえあるのだ。
(極端な論理を持ち出すと、海外事業者にとって日本向け配信は“輸出”に相当するから、消費税の課税という話になると、「輸出戻し税」の適用を求めることさえできる)
記事によると、「外からの配信に付加価値税をかけている欧州連合(EU)に近い課税方法となる見通し」とあり、「国内企業の依頼を受けて米グーグルなど海外企業がネット広告を配信する場合、その国内企業が消費税を納める。日本の消費者が海外企業から音楽や電子書籍をネットで買ったときは海外企業が納税する」と説明されている。
二つの取引は性格も課税論理も異なるので、「ネット広告配信」と「ダウンロードサービス」に分けて説明したいと思う。
■ ネット広告配信と消費税
まず、国民生活とは少しかけ離れた広告のほうから考えてみる。
海外事業者による国内向けネット広告配信は、広告主である国内企業が納税主体となるとのことだが、広告主である国内企業が大喜びする可能性がある。
課税されるのになんで喜ぶんだという疑問を持たれる人もいるかも知れないが、消費税(付加価値税)というのは、それほど奇っ怪な税制なのである。
なぜ喜ぶかと言えば、課税される広告料として支払ったものは、「仕入にかかわる消費税額」として、「売上にかかわる消費税額」から控除できるからである。
少し具体的に説明する。
消費税税率を5%とし、広告主の全体の「売上にかかわる消費税額」を5億円、ネット広告料を税抜1億円とする。
国内企業に委託してネット広告を配信すると、税抜1億円の広告料は税込1億5百万円の支払いになる。(消費税本来の論理で言えば、1億5百万円×5/105=5百万円)
そして、決算時に、「売上にかかわる消費税額」5億円から広告料で負担したと主張できる5百万円が差し引かれる。
これでわかるように、ネット広告料を考慮しただけの納付すべき消費税額は、4億9千5百万円である。
次に、海外配信事業者に発注した場合を考える。
同じネット広告料であれば、海外事業者に発注したときの支払いは、税抜の1億円でオールである。
ここからは、落語「時そば」(「時うどん」)の「今何時でい!」の世界に入る。
● ネット広告料の消費税を実際に納付
これはありえないケースだと思っている。なぜなら、そのような消費税を納付しても、広告料は“仕入”だから、実質的には戻ってくるからである。
それでも、とにかく税抜1億円の広告料に対し5百万円の消費税を納付したとする。
決算で消費税を申告する段階になると、「売上にかかわる消費税額」5億円から納付した消費税5百万円は控除できる。
差し引きした結果の納付消費税額は5億円である。
では、海外配信のネット広告料に課税しなかったときはどうなのだろうか?
海外からの配信広告料に消費税を課さないときは、「売上にかかわる消費税額」から「仕入(広告料)にかかわる消費税額」5百万円を控除できないから、納付する消費税額は5億円のままである。
要するに、海外事業者が配信する広告に消費税を課そうが課すまいが、広告主である事業者が納付すべき消費税額はまったく変わらない。
税額計算で控除できる金額を税務署に納付しても、最終の税額計算で控除されるのだからチャラになる。ということは、国税当局と企業のあいだで受け払いがあるだけ余分のコストということになる。
結局のところ、課税(納付)であろうが、放置したままであろうが、その事業者からの納税額は変わらないのである。
課税取引扱いなら、その分が納税しなければならない消費税額から差し引かれ、放置(非課税)なら、納税しなければならない消費税額がそのままになるというだけで、実質的には変わらないからである。
● ネット広告料に課された消費税を納付すべき消費税で相殺
実際の税務処理では、“仕入”である広告料の消費税額はどのみち控除されるものだからという理由で、納税は計算上の話だけになる可能性が高いと思っている。
仮にだが、その条件で“素直に”(従来感覚で)消費税計算をすると、とんでもない“益税”が出る。
海外事業者の国内向け広告配信の広告料に消費税が課されないケースは、「売上にかかわる消費税額」が5億円だと、ネット広告料という“仕入”について控除すべき消費税額がないので、納付すべき消費税は5億円のままである。
しかし、「輸出戻し税」という“詐欺”を超えた“詐欺”と思われる処理方法が適用されると、
5億円−(1億円×5%)=4億9千5百万円
となる。
“理屈”は、海外から配信されるネット広告料には消費税が課されているから、それが、「売上にかかわる消費税額」から控除されるのは当然というものである。
(「輸出戻し税」もそれに近い論理だが、とりあえず、かたちとしては仕入で負担がある)
最初のパターンのように、実際に「1億円×5%」の5百万円を別途に徴収しなければ、納付も負担もしていない税金なのに、控除だけが行われるという摩訶不思議な処理の第2弾となり、ネット広告を展開する“優良企業”へのさらなる“利益供与”となる。
消費税(付加価値税)という税制に関しては、控除される部分を切り出していくら課税してもムダなのである。
それどころか、消費税につきまとっている異様な論理が控除される部分の課税に適用される、課税=税負担増加ではなく、課税=“税負担減少”になってしまうのである。
● 国内事業者と海外事業者の競争条件
「海外配信問題」は、詰まるところ、消費税税制にまつわる国内事業者の保護問題である。
では、模索されている方法で、この問題は解決するのだろうか?
端的に言えば、広告主にとって、海外配信事業者と国内配信事業者のどちらに発注しても、損得勘定は同じなのだろうか?
[ネット広告料に関する取引と消費税の整理]
【設定内容】消費税税率5%:広告主企業の「売上にかかわる消費税額」5億円&ネット広告料税抜1億円
1)国内事業者にネット広告配信発注
取引:1億円+5百万円:総額1億5百万円
税額:5億円−5百万円:4億9千5百万円
【支出】1億5百万円+4億9千5百万円=6億円
2)海外事業者にネット広告配信発注
取引:1億円:総額1億万円
税額:
A計算だけ:5億円−5百万円:4億9千5百万円
B納付あり:5億円:5億円
【支出A】1億円+4億9千5百万円=5億9千5百万円
【支出B】1億円+5億円=6億円
企業にとっては、同じ便益や負担を得たときに、トータルの支出が多いか少ないかが問題である。海外発注が【支出B】になるかたちで消費税の処理が行われれば、イーブンである。
しかし、【支出A】になるような方法になれば、トータルの支出が少ない方を選択するはずだから、海外事業者が選択されることになる。
結論を言えば、海外事業者に発注したネット広告の料金に課す消費税は、決算時に計算するとしても、
「5億円+(1億円×5%)−(その他税込仕入×5/105)」
すなわち、
(「売上にかかわる消費税額」+「海外配信ネット広告料×消費税率」−「仕入にかかわる消費税額」)
という計算式で行われなければ、“課税”とはならないのである。
上述した「5億円−(1億円×5%)=4億9千5百万円」は、加算すべきものを減算するというとんでもない詐欺なのである。
税収が欲しい財務省(国税当局)はそんなバカな方式は導入しないと思われている方は、申し訳ないが“振り込め詐欺”に引っかかる可能性がある。消費税は、法治主義に反する扱いがされ、“詐欺”の巣窟のような税制だからである。
邪推をしがちな私には、ネット広告を大々的に行うグローバル企業に“益税”が生じる可能性があることが、「海外企業がネット広告を配信する場合、その国内企業が消費税を納め」、「日本の消費者が海外企業から音楽や電子書籍をネットで買ったときは海外企業が納税する」と、わざわざ納税主体を分けているワケだと見ている。
消費税増税をしゃにむに求めている経団連米倉会長に、「海外企業がネット広告を配信する場合、その国内企業が消費税を納める」という政策に対する是非を問いたい(笑)。
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海外からの音楽や広告配信に消費税 財務省14年メド 国内と公平に[日経新聞]
財務省は海外から電子書籍や音楽、広告などを日本向けに配信するサービスに消費税を課す方針を固めた。消費増税関連法案が国会で成立すると2014年4月から消費税率が8%に上がることから、早ければ同時に実施する。ネット取引課税について国内企業と海外企業の格差が解消に向かうが、海外勢にどうやって確実に納税させるかが課題となる。
消費税は「国内の取引」と「モノの輸入」だけが対象だ。海外に配信サーバーなどを置いて、音楽やパソコン応用ソフトなどを日本に配信するサービスは現行法上、「国外取引」として課税されていない。一方、電子書籍やネット広告を手掛ける国内事業者の場合は「国内取引」として課税されている。
米アマゾン・ドット・コムが近く日本で電子書籍向け端末を発売するほか、楽天も買収したカナダのコボ社を使って書籍配信を予定するなど、今年は配信市場が拡大する見込み。国内企業は消費税率が上がれば海外勢との競争が一段と不利になるとして危機感を募らせており、海外への事業移転を模索する動きが出始めていた。
このため、財務省は日本の企業や消費者が受ける配信サービスは、海外からの提供であっても消費税をかけることにした。消費税法や関連の施行令の見直しが必要なため、13年の通常国会期間中をメドに必要な制度改正を終える考えだ。すでに域外からの配信に付加価値税をかけている欧州連合(EU)に近い課税方法となる見通し。
具体的には国内企業の依頼を受けて米グーグルなど海外企業がネット広告を配信する場合、その国内企業が消費税を納める。日本の消費者が海外企業から音楽や電子書籍をネットで買ったときは海外企業が納税する。
現在、日本に拠点のない海外企業が納税する場合は、申告書の提出などを日本で担当する「納税管理人」を届け出る義務がある。海外の配信企業が消費税を納める際も、この仕組みを使う。確実な納税を促すために、海外企業に登録を義務付ける制度を創設する案も浮上している。取引金額が少ない海外事業者も納税してもらう方向だ。
ネット取引は実態の把握が難しく、海外事業者の申告漏れが起きる可能性もある。財務省では海外の税務当局と税務関連情報を交換する協定を利用して情報収集するなど、申告漏れを防止する方針だが、実効性は不透明な面もある。
財務省は7月上旬に中里実・東大教授を座長とする研究会を発足。法令の見直し内容や納税手続きなどを議論し、10月ごろまでに詳細を詰める予定だ。
国内のネット広告の市場規模は昨年、約8千億円だった。電子書籍も10年度の650億円から15年度には2千億円に拡大する見通しだ。
[日経新聞6月29日朝刊P.1]
財務相、配信に課税検討表明
安住淳財務相は29日の閣議後の記者会見で、海外から配信されるサービスへの消費税課税について、省内に研究会を設けて検討する方針を正式に表明した。現在、国境をまたぐサービスには消費税がかかっていない。海外企業が配信する電子書籍などには消費税がかからないため、競争上、不利になると産業界から不満が出ている。
[日経新聞6月29日夕刊P.2]
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