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今春の大阪における卒業式・入学式において、三六人の教育労働者が「君が代」斉唱時の不起立を理由として、「戒告」の懲戒処分を受けた(他に一人が文書訓告)。逆に言えば、昨年六月三日に成立した大阪府の「君が代」起立斉唱強制条例から始まった不起立教員への徹底した攻撃にもかかわらず、三七人が不起立による抵抗を選択したことになる。「戒告」処分を受けた教育労働者の中で、すでに何人かが人事委員会への不服申し立てにより、処分撤回闘争を開始している。この処分撤回闘争を支援するとともに、橋下市長と大阪維新の会による教育労働者攻撃、新自由主義的教育「改革」に反対する闘いを、従来の運動圏の違いを超えた結集によって拡げていこう。
異様な卒業式・入学式の光景
卒業式で「君が代」斉唱が終わると、「何しに来たんや」とのひんしゅくを買いながら、靴音も高らかに式場を後にする維新の会の議員たち。
来賓紹介の時に「卒業おめでとう!」の代わりに「社会の常識、社会のルールを教えるのも学校なのに、そのルールを守れない教員がいることをお詫びします。ほんとうにごめんなさい」と話した維新の会府議。
その後、彼のブログには「両親に続いて、我が子のように時に厳しく、時に優しく私たちをここまで育ててくださった最高の恩師をけなされて黙っていられません。どこまでも不快な思いをさせられました」「子どもたちを直接教育された人を公の場で辱めていいんですか。祝いの席で言うべき言葉だったのでしょうか」などと卒業生や保護者からの批判が殺到した。
そして、「君が代」斉唱の際に、校長に命じられて、教職員が歌っているかどうか「口元チェック」を行う教頭ら。
入学式での不起立を表明していた教員に「職員室での勤務」を命じる職務命令が出され、式場の外でその教員の動きを監視する市教委職員の姿。
今春、大阪での卒業式・入学式において、このような異様な光景があちらこちらで見られた。昨年六月三日に大阪府議会で「君が代」起立斉唱強制条例が可決成立してから初めての卒業式・入学式での状況である。これらは、思想・良心の自由が「ルールを守ること」にすり替えられ、ある種の戒厳令的状況の中で卒業式・入学式が行われたことを示す一例に過ぎない。
「君が代」起立斉唱強制条例成立
昨年の五月大阪府議会への「君が代」起立斉唱強制条例の提案は、大阪維新の会府議団によるものだった。しかし、その背後に維新の会代表である橋下大阪府知事(当時)の意向があったことは間違いない。
昨年四月、ある大阪府立高校入学式において、校長の職務命令に違反して「君が代」斉唱時に不起立であったことを理由に、三人の教員が「戒告」処分を受けた。「君が代」不起立での「戒告」処分は、一昨年の卒業式における四人に続くものだった。同時に、五月上旬の新聞では、処分はされなかったが、府立学校二六校で不起立があったと報じられた。これに激怒した橋下が「複数回の不起立で免職とするルール」を作るように求めたメールが維新の会幹部や府教委幹部に流された。これを受けて、維新の会府議団からの提案が行われたのであった。
この条例では、府立学校を含む府の施設での「日の丸」常時掲揚(第三条)とともに、学校の「行事において行われる国歌の斉唱にあっては、教職員は起立により斉唱を行うものとする」(第四条)と規定された。そして、第一条には「次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」というイデオロギー的側面だけでなく、「府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図ること」が条例の目的として掲げられ、その狙いが教育労働者への徹底した統制強化であり、その踏み絵として「君が代」を用いることが明記された。それは、橋下が、「君が代」問題は「思想・良心の自由の問題ではなく、公務員がルールを守るかどうかの問題」と一貫して主張してきたこととも符合している。
大阪府教委は、この条例化が表面化したとき、「府立学校の教職員全員に教育長から職務命令を出して、起立斉唱を徹底させるから条例は不要」との主張を展開した。しかし、橋下が「それでは不十分」と強弁するのに、何ら有効な反撃をしえなかった。逆に、今春の卒業式・入学式に向けて、法的有効性も疑わしい教育長による職務命令通達を出さざるを得ないはめに陥ったのである。
不起立3回で免職の明確化
不起立三回で免職のルール化、条例化については、単にそれだけを条例化するのではなく、教育内容に至るまで知事や市長のもとで規制し、異論をとなえる教職員を徹底的に排除しようとする教育基本条例、職員基本条例という枠組みの中に組み入れられていった。いわば、不起立問題が教育行政のリセットを狙う橋下の意図を貫くために利用されたのである。
この二条例案は、さまざまな経緯をたどりながら、最終的に大阪府では、教育行政基本条例、府立学校条例、職員基本条例という形で知事提案となり、三月二三日の府議会本会議で維新の会、自民、公明の三党などの賛成多数で可決成立した。昨年の五月府議会であれほど強硬に二条例に反対していた公明党は、維新の会から衆院選での選挙協力を持ちかけられ、いとも簡単に橋下になびいてしまった。
成立した職員基本条例において、「同一の職務命令違反三回で原則として分限免職」という橋下の当初の意図は明文化された。「同一の職務命令違反」とは、「君が代」不起立以外には想定されておらず、明らかに不起立者への狙い打ち条項である。
一月一六日の最高裁判決から見ても、明らかに違法、不当な条項であるが、橋下にとっては委細お構いなしなのだ。何を言っても橋下やそれに連なる教委、校長には逆らえないのだという雰囲気を職場の中に作り出すことができれば、たとえ数年後に裁判で負けたとしても、その意図は貫徹できるという読みなのだろう。この構図は、大阪市による労働組合活動アンケートをめぐる動きと全く共通のものである。
職務命令に抗し「不起立」
府教委は、卒業式の一カ月以上も前の一月一七日、府立学校の全教職員に対して通達を出し、職務命令として「君が代」斉唱時の起立斉唱を命じた。さらに、校長・准校長に対して、式場内に入る教職員の氏名を特定した上で、職務命令を出すように指示した。そして、不起立を表明した教職員に対しては、改めて文書で職務命令をだすように念を押したのである。
このような三重もの職務命令体制のもとで迎えたにもかかわらず、二月から三月にかけての府立学校卒業式では、あわせて二九人の教員が「君が代」斉唱時に不起立で抵抗の意思表示をおこなったのである。
また、市町村立学校においては、高槻、門真などで一部の教職員に「君が代」起立斉唱の職務命令が出された。とりわけ、高槻では学労ネット・高槻の組合員四人だけに職務命令が出され、明らかに特定の組合を狙い打ちにした露骨な攻撃であった。そして、不起立で抵抗した教職員のうち、高槻、豊中、茨木で一人ずつの不起立が府教委に報告された。
橋下が大阪市長に当選して以降、大阪市教委はピアノ伴奏強制の徹底とともに、数回にわたって、卒業式での起立斉唱を徹底させるように通知を出した。さらに、二月二九日には、大阪市議会で府と同様の「君が代」起立斉唱強制条例が可決成立された。しかし、市教委は、ここ数年来、子どもたちに「君が代」を大きな声で歌わせることを至上命題として、ピアノ伴奏の強制を強めていたが、「君が代」斉唱時の不起立者はいないという立場をとっていたためか、中学校の卒業式にあたっては、職務命令そのものは出されてはいなかった。
ところが、中学校の卒業式で二人の教員が不起立を貫いたことが明らかになるや、市教委は「式場内のすべての教職員は起立して斉唱すること」を職務命令を出して徹底するように求める通知を出し、不起立を食い止めようと躍起になった。それにもかかわらず、小学校卒業式においても一人が不起立で抵抗したのである。
「誓約書」提出で転向迫る
不起立を貫いた府立学校と市町村立学校の教員三二人に対して、府教委は顛末書の提出、事情聴取を経て、三月九日と二七日の二回に分けて「戒告」処分を強行した。処分伝達の際、府教委幹部による「研修」がおこなわれ、さらに「入学式や卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を含む上司の命令に従います」という「誓約書」への署名捺印が求められた。
この「誓約書」への署名捺印は任意と言いつつも、定年退職後の再任用者に対しては「再任用に影響が出る」と解雇を示唆して、署名捺印を強制したのである。事実、「研修」への参加や「誓約書」への署名捺印を拒否した学労ネット・高槻の組合員に対して、府教委は再任用を取り消すという暴挙をあえて強行したのである。
また、大阪市教委も四月一九日に二人に「戒告」処分、一人に文書訓告処分を出した。このうち、文書訓告となった教員に対しては、保護者集会、卒業生集会、終業式の三度にわたって「ルールを守らなかったこと」を謝罪させ、さらに入学式での「君が代」起立・斉唱を強制したのである。まさに徹底した思想転向を求め、それに応じた者には「罪一等減じ」るという構図の中に、今回の処分の本質が見られる。
さらに許せないことは、中学校卒業式段階では一切職務命令は出されていないにも関わらず、「再三の職務命令」に違反したことを処分理由に挙げ、いわば「後出しジャンケン」的なでっちあげ処分となっている点である。
入学式でも不起立で抵抗
橋下は、三月二〇日に「式に出ないという選択もありうる」と発言、さらに二一日には「逃げ場を閉ざした上で、何でも締め上げることはしない。大人の対処法がある」「(式場外の係に配置することに対して)式場内での不起立を許さないよう現場でしっかりやってもらえればいい」と述べたと報道された。この発言は、学校現場での不起立による抵抗に直面して、橋下も職務命令だけでは不起立をやめさせることはできないことを認めざるをえなかったことを意味している。
橋下にとっての路線転換とも言うべきこの発言以降、各学校においては、不起立を表明した教職員や不起立の可能性があると目される教職員を、たとえ新入生の担任であっても、入学式会場の外に出す動きが急速に表面化していった。
こうした状況の中で、四月九日におこなわれた府立高校の入学式において、二人の教員が不起立に踏み切ったのである。この二人に対しては、四月二五日、卒業式の場合と同様に「戒告」処分がおこなわれた。
ホットラインと処分撤回闘争
「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪は、「君が代」不起立処分に対して、三月二七日、四月二五日の二回にわたって、府教委前で不当処分抗議・被処分者激励行動を呼びかけ、それぞれ約一〇〇人が結集した。この府教委前集会では、被処分者が次々と発言にたち、府教委による「君が代」起立強制と不当処分を強く批判した。
被処分者のうち、すでに七人が大阪府人事委員会に処分撤回の申し立てをおこなっている。今後、人事委員会の内外で「君が代」起立強制条例の違法性を問いながら、不当処分撤回の闘いが展開されようとしている。この処分撤回闘争を支援するとともに、橋下市長と大阪維新の会による教育労働者攻撃、新自由主義的教育「改革」に反対する闘いを、従来の運動圏の違いを超えた結集によって拡げていこう。 (大森敏三)
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