http://www.asyura2.com/12/senkyo132/msg/165.html
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先だって投稿した「国税局と追徴課税でもめているアマゾン(Amazon.co.jp)は消費税の申告・納付をしているのか?」(http://www.asyura2.com/12/senkyo131/msg/745.html)のなかでダウンロードサービスと消費税の関係について触れた。
日経新聞の記事に、それに関するまとまった説明があるので紹介したい。
記事を読んでいくと、日経新聞の記者はともかく、事業者などは、消費税が、物品税でも売上税でもなく、付加価値税であるという認識が欠如しているように思える。
日経新聞は、「電子書籍を配信、販売する事業者が国内にそのサービスに関連する事務所を持たず、配信サーバーなども海外にあれば「サービス提供地は国外」となり、非課税だ」と書いているが、国内に倉庫・配送機能がある(Amazon.co.jp)の経営主体が、消費税を納付しているかどうかまず明確にしてもらいたい。
この問題は、取引の対象がデジタル情報であるとか、サービス提供地が国外であるとかという話を超えたもっと根深いものがある。
(アマゾンはともかく、記事にもあるが、「販売する事業者が国内にそのサービスに関連する事務所を持たず」というのがポイントで、楽天が、仮にサービス提供地を国外に移しても、消費税を逃れることはできない)
消費税は、付加価値税だから、「売上にかかわる消費税−仕入にかかわる消費税」を納付する。
消費税は、物品税や売上税とは違う税だから、“売上”だけでなく“仕入”が明らかにならなければ、追徴課税もできない。
しかも、“仕入”といっても、個々の商品の仕入れ額の集積ではなく、機械設備、広告宣伝費、派遣労働者に関する支払い、事務用品、家賃など幅広い経費がその対象である。
例えば、税抜き800円の電子書籍を取引すると、購入者は800円×5%=40円を消費税として払うが、40円が国庫や地方自治体金庫に入るわけでもない。もっと言えば、著作者に払う1部当たりの印税にかかわる消費税額を差し引いた額が納付されるわけでもない。
個々の売上取引は消費税にとってかたちだけの断片でしかなく、トータルの売上とトータルの“仕入認定”経費が消費税の納付額を決するのである。
だからこそ、売上に消費税を転嫁していても、結果的に、消費税を1円も納付しないというケースがそれほど珍しくなく発生するのである。
デジタル情報の配信サービスに関する消費税問題は、デジタル情報という商品の性質にかかわるものではなく、日本徴税当局の課税権・調査権が、海外にのみある販売主体事業者にストレートには及ばないことに帰する。
例えば、阿修羅デジタルサービスという香港法人が香港にあるサーバーを使って日本人向けの配信サービスを行っているとする。
徴税当局は、取引が日本円で行われていることを頼りになんとか日本での売上を把握できるだろう。しかし、それだけでは、消費税の徴収額を決定できない。仕入の全貌とまではいかなくても、日本向け販売にかかわる仕入の額を把握しなければならないからだ。
そして、最後の難関は、香港政庁(中国の領土)に、日本政府が阿修羅デジタルサービスに課税権(徴税権)があることを認めさせなければならない。日本政府が消費税を徴収すれば、香港の法人税収入が減少するのだから厳しい争いになるだろう。
日経の記事には、解決策の一例として、「内外事業者間の不平等が顕在化する中、政府関係者からは海外事業者への課税に向けた秘策もくすぶり始めた。会社法の「外国会社の登記」に関する規定を使う方法だ。会社法は債権者を保護するため、外国会社が日本で継続して取引するときは日本に住む代表者を決め、登記を義務付ける。登記する前には継続取引を禁じている。この登記をテコにして、海外事業者を国内に拠点を持つ事業者とみなし、消費課税できないかというのだ」と書いている。
しかし、登記を義務づけたとしても、政府がインターネット及び類似的通信手段の遮断権もしくはクレジットカードによる決済を停止できる権限を持っていないかぎり、登記させることはできないだろう。
それができるというのなら、国内法では違法とされるハードコアポルノを日本国刑法を根拠に排除することも可能ということになる。
アマゾンへの課税は、日本向けにダウンロードサービスを行う海外事業者への課税に較べると、実務的には数段やさしいものである。
“物”が日本にある倉庫を経由して動いており、取り次ぎや出版社など仕入元の販売価格、そして、日本法人2社に支払っている金額(米国法人アマゾンにとっての仕入)を把握できることから、法人税や消費税の申告がない場合でも、法人税額や消費税額を試算して追徴課税することができるからである。アマゾンは追徴課税相当を供託に付したが、所有権がある資産が倉庫にあるのだから、差し押さえさえできる。
アマゾンもキンドルでの日本向け配信サービスの準備を進めているが、物販でさえ課税を断念した(別の期間では係争中らしい)のだから、配信サービスで課税できるとはとうてい思えない。
配信サービスをめぐる(国内サービス業者の競争条件を不利にしないための)課税方法として実効性があるのは、海外から配信サービスを受ける利用者に、受信を輸入として消費税を課し、「サービス料金×消費税税率」を徴収するしかないと思える。
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ネット配信、消費増税なら外国勢有利
各社、募る不公平感 「国外取引」も課税求める
消費増税の動きに、国内の電子出版やネット広告などの事業者が不満を募らせている。国境を越えたネット取引が急増するなか、今の仕組みでは海外からの配信サービスには消費税がかからず、海外事業者と比べて一段と不利になるからだ。国内事業者が海外配信に切り替えれば課税されない可能性もあるがリスクも伴う。配信ビジネスを巡る消費税問題を探った。
「あまりに不公平なので公正取引委員会にまで苦情を申し入れた」。電子書籍の国内配信事業に力を入れる紀伊国屋書店の高井昌史社長は憤りを隠さない。海外事業者からダウンロードすれば消費税はかからないが、同じ本を国内事業者から買うと課税され、数年後には税率10%となる雲行きだからだ。
ネット商品はサイトなどで価格比較が簡単にできる。税理士法人プライスウォーターハウスクーパースでは、国内勢が価格競争するには「消費税分を吸収しなければならず、利益が減ってしまう傾向がある」(宮川和也代表社員)とみる。別の国内大手出版社の幹部も「米アマゾン・ドット・コムなどが海外から配信してくれば勝負にならない」と強調する。
拠点の場所注目
どうしてこんな不平等が起きるのだろうか。消費税は輸入品と国内取引が対象で、「国外取引」には課税されない。国外かどうかの判定は「サービスの提供地」で区別することがある。国境をまたぐネット配信ではサービス提供地が明確でないとされており、実際には「サービス提供に関係する事務所などの所在地」で内外を決める。
電子書籍を配信、販売する事業者が国内にそのサービスに関連する事務所を持たず、配信サーバーなども海外にあれば「サービス提供地は国外」となり、非課税だ。
米アマゾンが電子書籍端末「キンドル」の対日投入に向け、国内出版社と交渉中。同社が電子書籍事業に関する拠点を日本に設けなければ、配信サービスには課税されない可能性が高い。楽天が、買収したカナダの企業を販売主体として海外から配信しても同じだ。
海外からのネット広告にも消費課税されないことが多い。米グーグルはアイルランドなどの関連会社が日本の広告代理店などと配信契約を結ぶ。海外からの配信は「国外取引」として消費税がかかっていないようだ。一方、国内配信のヤフーに頼むと課税される。
会社法も議論に
事業者間取引のネット広告は電子書籍など消費者向け取引とは違って、課税分がそっくり広告主などの利益を圧迫するわけではない。ただ、金融や不動産などの業種では支払った消費税の多くの部分がコストとなる。
そうした広告主などが国内のネット広告事業者を使うと、海外勢への委託に比べ「消費増税によるマイナス効果がさらに大きくなる」(KPMG税理士法人の神津隆幸パートナー)。広告主が海外からの配信にシフトすれば、ヤフーなども事業拠点の海外移転を検討せざるを得ないようだ。
内外事業者間の不平等が顕在化する中、政府関係者からは海外事業者への課税に向けた秘策もくすぶり始めた。会社法の「外国会社の登記」に関する規定を使う方法だ。
会社法は債権者を保護するため、外国会社が日本で継続して取引するときは日本に住む代表者を決め、登記を義務付ける。登記する前には継続取引を禁じている。この登記をテコにして、海外事業者を国内に拠点を持つ事業者とみなし、消費課税できないかというのだ。
この方法に対し、民間の税務専門家は「登記だけでなく、その事務所を通じてサービスを提供していることが必要ではないか」と、一定のハードルを指摘する。
「日本の法体系は電子商取引に追いついておらず、その典型例の一つが消費税だ」と角川グループホールディングスの角川歴彦会長は話す。内外事業者の競争条件をそろえるには配信サービスをすべて非課税にするか、欧州連合(EU)のように海外からの配信にも課税するかのどちらかだ。
新日本アーンストアンドヤング税理士法人の網野健司統括代表社員らは「日本でも欧州と同じような法改正が必要だろう」と話す。安住淳財務相は消費増税などを巡る6月上旬の国会審議で、「EU諸国の例を参考にしつつ検討したい。問題意識は十分持っている」と述べただけだった。
(編集委員 三宅伸吾)
[日経新聞6月25日朝刊P.15]
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