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追い詰められているのは誰か
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2012年6月25日 田中良紹の「国会探検」
今月の15日に社会保障と税の一体改革で3党合意が成立した時、私は私の想定していた政局がいよいよ幕を開けたと思った。想定の前提はまず3党合意が達成され、消費税法案が今国会で成立し、そこに自民党が巻き込まれる事である。そうしないと「何も決められない政治」からの脱却は図れない。
1日も早い解散・総選挙を求める自民党は、当初は消費税に賛成せずに野田政権を解散に追い込む戦略を立てていた。そのため問責決議案を可決して野田内閣の閣僚を次々に交代させ、重要法案も成立させない戦術を取った。「ねじれ国会」であるから自民党には苦もなく出来る戦術で、「何も決められない政治」はこうして続いていた。
最大の山場は赤字国債発行法案の採決の時に訪れる筈であった。この法案が可決されないと成立した筈の今年度予算は、財源が足りずに執行が出来なくなる。震災からの復興どころか国民生活は大混乱に陥り、日本経済は破綻に追い込まれる。昨年は8月に菅総理が首を差し出して、退陣との引き換えに赤字国債発行法案を可決させる事が出来た。
「ねじれ」がある限り今年も同じ事が想定されていた。野田総理は9月の民主党代表戦挙に再出馬どころか夏には退陣せざるを得ない状況に置かれていたのである。その状況から脱するために何をするのかに私は注目していた。すると昨年11月に野田総理は突然「社会保障と税の一体改革に政治生命を賭ける」と言い出し、それを国際公約にした。国際公約したという事は出来なければ退陣するという意味である。
どうせ今年の夏までしかない政治生命だから、自民党がマニフェストに掲げる消費増税に擦り寄り、それに自民党を巻き込む戦術に出たと私には見えた。自民党は過去の経験から増税を掲げて選挙をやれば敗北する事を良く知っている。責任のない野党だから消費増税をマニフェストに掲げたが、自分ひとりで成立させる気などさらさらない。やる時には民主党を巻き込む事が必須の条件と考えていた。
ところが野田総理が消費増税に「不退転の決意」と言いだした。すると一方で消費増税論者の小沢一郎氏が「マニフェスト違反だから認められない」と猛反対し、民主党は真っ二つになった。自民党ははじめは野田総理の「本気度」を疑っていたが、次第に民主党内の対立が激しさを増し、それに目を奪われて民主党分裂が現実になると思い込んだ。
民主党の分裂を助長させ、小沢氏を政界から駆逐できれば、自民党の思惑通りになると思ったのか、自民党は野田総理と手を組む事を決めた。消費増税に反対するつもりだった公明党も蚊帳の外に置かれる事を嫌い、3党合意はこうして成立した。3党が合意すれば民主党の中から造反が出ても法案成立は確実である。これで自民党は増税に責任を持つ「加害者の政党」になった。
3党合意が成立した時に自民党幹部は野田総理の言葉をそのまま引用して「これで決められない政治から脱却する」と言った。野田総理はそれを聞いてほくそえんだに相違ない。これで首を差し出さなくとも赤字国債発行法案の可決が見えてきたからである。
政治を読めないおバカメディアは、3党合意の瞬間から増税反対の小沢氏らは政界で孤立し、追い詰められていくと報じた。民主党分裂は不可避だとも報じた。確かに分裂状態は不可避である。そう見せる事で自民党を3党合意に引き込んだのだから、分裂状態に見えなければ困る。しかし小沢氏らが「追い詰められた」とする見方は上っ面を撫でただけの「表層雪崩」である。
根拠は消費税法案に反対票を投ずれば民主党から除名されるから、それを恐れて小沢氏のグループから脱落者が相次ぐというのだが、これは政治の修羅場を知らないサラリーマン的思考である。私は前回「民主党の半数が反対を表明すれば処分は出来ない」と書いたが、実際には半数も必要ないようだ。「54」が造反すれば与野党逆転になるため「50」を超えれば処分した側が自分の首を絞める。議員にもサラリーマン的思考はあるだろうが、国民の声は増税反対だからそちらに組する方が選挙には有利になる。
かつて郵政民営化法案に反対票を投じた自民党議員は選挙で公認されなかったが、除名された記憶はない。そもそも政党というのは国家の方向性に対する考えが同じであれば、すべての政策で一致する必要などない。自民党の前身である自由党は吉田自由党と鳩山自由党とに分かれて180度異なる安全保障政策を主張した。かたや再軍備に反対してアメリカに従属する道を選び、一方は民族自立を訴えて再軍備を主張した。選挙では同じ党員が全く逆の主張をして、それが自由党を大勝させた。
ともかく民主党は分裂状態でいる事が必要である。野田総理が小沢氏と対立している限り、自民党は野田総理を簡単には潰せない。その野田政権は選挙制度改革法案を今の国会に提出している。これに公明党が賛成すれば自民党が反対しても法案は成立する。この法案は公明党が自民党と選挙協力しなくとも現有議席を確保できる法案だから自民党にとって一大事である。公明党の選挙協力がなくなれば各小選挙区で自民党候補者は3万票程度の票を減らす事になり大打撃を受ける。
今国会で消費税法案が成立すれば、国民からは「我々に負担を強いるなら行政府も立法府も身を切る改革を徹底してやれ」という声が高まる。つまり消費税法案が成立すればそれだけ無駄を省く改革を求めるプレッシャーも強まり、2年後の実施に至るまで選挙制度改革や公務員改革など「身を切る改革」が最重要の政治課題になる。
さらに国民不在の3党談合で成立したという後ろ暗い誕生のいきさつが、小沢氏の言う「増税の前にやるべき事がある」という主張を後押する。実施の前には衆議院選挙と参議院選挙が必ずあるから、議員たちは必死になって改革を訴え続ける。自民党が消費税成立後に強く求めている解散・総選挙は「身を切る改革」の真剣度を測る選挙になるのである。その真剣度が足りないと国民が判断すれば増税反対派が選挙で勝利し、消費税は「リコール」される。
それにしてもここに来て分からないのが自民党だ。3党合意の後で「決められない政治から脱却する」と言ったかと思えば、「赤字国債発行法案と引き換えに野田総理を解散に追い込む」と言ってみたり、「解散よりも野田民主党と大連立して政権復帰した方が良い」と言う一方で、「大連立すべきではない」という声もある。
追い詰められているのは小沢氏でも野田総理でもなく自民党ではないかと私は思う。民主党の分裂に目を奪われているうち消費増税に加担する側に引き込まれ、「1日も早い解散」を求めながら国会を9月8日まで延長され、野田政権と手を組むのか戦うのかの方針を決められず、谷垣総裁のリーダーシップも見えない。9月までの国会の中で自民党に何が起きてくるか。私は民主党の分裂よりそちらに注目している。
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