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「最初から増税だけが狙い」という憶測も
6月15日の深夜、消費税を増税することで、民主、自民、公明の三党が合意した。原発の再稼働に関する政府のいい加減な対応もさることながら、あまりにもひどい「増税容認三党」の決断に、強い憤りを感じたのは筆者だけではあるまい。
6月16日付の東京新聞によると、三党の談合によって決まった増税の仕組みは、こうである。まず、6月21日までに増税関連法案を成立させる。そして、消費税率を「2014年4月に8%、2015年10月に10%に2段階で引き上げ」るというもの。
野田首相は「税と社会保障の一体改革」などと言っているが、フタを開けてみれば増税のみが際立つ「改革」だと言える。「本格的な少子高齢化社会を迎え、持続可能な社会保障制度を構築するため」に、「社会保障と税の改革は『一体』だ」と唱えたものの、「年金の最低保障機能や高齢者医療制度の見直しなど、消費税増税と一体であるはずの社会保障の抜本改革は棚上げされ」たからだ。
当初は「一体改革」を目指していた民主党だったが、年金や子育てなど社会保障に関する政策や理念は次々と自民党および公明党によって骨抜きにされ、最後に残ったのが消費税の増税なのであった。同紙は社説で「社会保障の全体像が見えないまま消費税増税に踏み切るのなら、最初から増税だけが狙いだったと批判されても仕方あるまい」と述べているが、これは多くの国民の意見を代弁した内容だと思う。
そもそも、増税は「国会議員や官僚が『身を切る』改革」を前提として行われる、と民主党は主張してきた。今年2月の閣議決定で、「衆院定数の80削減」「独立行政法人や特別会計の改革」「国家公務員給与を2年間、平均7.8%削減」「国家公務員制度の改革」などの法案を早期に成立させ、「歳出の無駄排除」を増税の前提として掲げていたのだ。だが、実際に成立した法案は国家公務員給与の臨時削減法のみ。
国会議員の特権見直しに「消極的」?
とりわけ気になるのは、国会議員の特権を見直すことに消極的な点である。「政治資金として税金を政党に配る政党交付金(総額年320億円)や歳費のほかに各議員が受け取っている領収書不要の文書通信交通滞在費(1人当たり年1200万円)は手付かず」となった。また、「各省庁の幹部の公用車による朝夕の送迎を局長級以上に限定」したものの、「国会議員が使う公用車」については現状維持。国会議員の「自分に甘い体質」が際立つ。
ようは、セットで行われるべき社会保障の改革も、増税の前提であった「国会議員や官僚が『身を切る』改革」も事実上の棚上げとなったまま、消費税の増税だけが決まっていくという異常な事態が、いま進行しているのである。『報道ステーション』(テレビ朝日)の世論調査(調査日は6月9日と10日)によれば、57%が消費税の引き上げに反対し、賛成は33%にとどまる。
消費税増税にせよ原発再稼働にせよ、世論を無視した上、ごり押しで政策を通す姿勢がいまの民主党には強く見られる。2009年のマニフェストなど、なかったも同然の雰囲気が漂っている。ごり押しに同調する自民党と公明党にもあきれてものが言えない。ほぼ恒久的な増税となりうる消費税増税は、衆院解散総選挙の論点となりうるのに、それもしない。
梅雨空に、どんよりとした日本の未来像が浮かんでいる。
(谷川 茂)
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