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★鈴木哲夫の核心リポート
民主党の小沢一郎元代表が腹をくくった。消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革」関連法案をめぐる衆院採決で反対票を投じ、その勢いで新党を立ち上げる覚悟を決めたのだ。民主、自民、公明3党の修正合意を受け、期待した「中間派」は採決での賛成に傾いている。孤立化した小沢グループは怒りをためて、日に日に先鋭化している。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が、小沢氏や側近から全内幕を聞き出した。
修正協議が大詰めを迎えていた先週12日夜。私(=鈴木)は、グループ議員のパーティーに出席して席を立った小沢氏をつかまえ、こう話しかけた。
「いよいよ、勝負のときがきましたね」
小沢氏は、決意をはっきりとこう答えた。
「そうなんだよ」
3党合意を受け、21日にも関連法案の衆院採決が行われる。小沢グループにとっては、ここからがスタートだ。若手議員は「小沢さんは先週半ばから高揚している」といい、こう続ける。
「週刊文春が先週末、小沢夫人の『(小沢氏は)放射能が怖くて(被災地から)逃げていた』といった手紙を公開した。半分はデタラメといえる。小沢さんも多少はへこんでいるかと思ったが、まったく違う。乗りに乗っていた」
確かに、私に「勝負どき」と語ったその表情も血色が良く、意気揚々としていた。
側近議員らによると、小沢氏は当初、野田佳彦首相が衆院採決できない可能性があるとみていた。しかし、修正協議が進み、野田首相が採決に自信を示したのを見て、先週金曜日に「決意した」(側近議員)という。
つまり、小沢氏は衆院採決で堂々と反対票を投じ、その後の党内処分にかかわらず、政策の違った民主党とはたもとを分かって新党を立ち上げるのだ。小沢新党、秒読みというわけである。
小沢新党については、首相官邸や党執行部の一部から、さかんに次のような話が流された。
「新党を作っても展望は開けない。選挙資金も支援団体もない。民主党は対立候補を立てる。野垂れ死にする。小沢氏も本音では『党を出たくない。反対せずに本会議欠席にとどめ、除名などの処分を受けないように』と考えているのでは」
これを耳にした小沢グループの1年生議員は揺れた。選挙に不安を抱えているからだ。そこで、小沢氏に真意を尋ねると「一笑に付された」という。1年生議員はいう。
「小沢さんは、何のために『増税法案は国民との約束を破る』と反対してきたのか。筋を通せば必ず理解してもらえる。堂々と行動しよう−という考えを示した」
18日夜、都内のホテルで開かれた民主党政策調査会合同会議で、小沢グループの議員らは激しく反対論をぶった。中には、壇上の手前まで歩いていって、前原誠司政調会長をにらみつけ、「国民から負託されているのはわれわれだ。あんた1人じゃない!」と迫る者もいた。
加えて、会議の案内文書に「議題は修正協議に関する報告、及び了承」と書かれてあったことも、小沢グループの怒りに火をつけた。
「3党合意を、党に持ち帰って意見を聞き、党内手続きをするべきなのに、議題には『報告』と『了承』としか書かれていない。『議論』をするつもりがないことが明らかになった。これは独断専行以外の何ものでもない。絶対に許せない」(中堅議員)
一体、造反議員は何人になるのか。
小沢グループ幹部は「現在、固まっているのは約50人。これに、鳩山グループや中間派などから加わって60人近くになる」と話す。
一方、党執行部は、中間派や小沢グループの1年生議員の切り崩しにかかっている。
ある1年生議員には、執行部の1人がやってきて、「次期衆院選は公明党の協力が得られる。選挙制度改革で、公明党が望む『連用制』を一部取り入れると約束し、連携していくことが決まった。民主、公明両党でしっかり握った。民主党に残った方がいい」とささやいたという。
これに対し、小沢氏も負けてはいない。19日から採決予定の21日まで、都内のホテルに部屋を押さえ、ここを拠点に造反者を広げていく。必要なら、小沢氏自身がひざ詰めで「ともに行動しよう」と説得するという。
60人が造反しても、自民、公明両党が賛成する以上、増税法案は阻止できない。だが、「今後の政局でキャスチングボートを握る大きな数となる」(同議員)という。
現在、衆院の民主党議席数は289(うち1人は離党届提出中)。国民新党の3を合わせて291。小沢新党が60人の船出となれば、民主党は一気に単独過半数を割り込む。野党陣営が結束すれば、今後、内閣不信任案も通ってしまうわけだ。
「小沢さんは『選挙資金や選挙協力の枠組みは俺がやるから心配するな』と言ってくれた。新党は2009年の政権交代時の民主党に戻るという原点回帰だ」と、1年生議員は語る。
採決に向けた激しい切り崩しのなか、小沢氏は最後の勝負に出る。
■すずき・てつお 1958年生まれ。早大卒。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部などを経て、現在、日本BS放送報道局長。著書に「政党が操る選挙報道」(集英社新書)、「汚れ役」(講談社)など。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120619/plt1206191810007-n1.htm
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