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2012.06.12 “犬の遠吠え”に終わった橋下市長の関電大飯原発再稼働問題発言、(ハシズムの分析、その24)
〜関西から(67)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
5月31日、裏で何が起こったのか知らないが、関西電力大飯原発の再稼働に反対してきた関西広域連合の首長たちが従来の態度を一転させ、「事実上容認」の姿勢を打ち出した。この瞬間、これまで先頭に立って関電や政府に「噛みつく」姿勢を見せてきた橋下市長の本質が露呈した。
聞いて呆れるが、31日朝、橋下市長は「まあ、うわべばっかり言っていてもしょうがないんでね。事実上の容認ですよ」といけしゃあしゃあと放言する始末、周囲は声も出なかったという。前日30日の夜には「基本的には認めない」とはっきり言っていたにもかかわらずである。
私のように「橋下=デマゴギー常習犯」と理解している者には彼が何を言っても驚かない(免疫力がある)が、「橋下=正義の味方」と勘違いしている多くの関西人は正直度肝を抜かれたのではないか。これまでの再稼働反対発言がすべて「うわべ」(外見上のこと、見かけ)のことであり、「内心」(真意、本意)は再稼働容認だったことが本人の口から明らかになったのだ。
そういえば、5月19日の関西広域連合での発言が態度豹変の発端だった。橋下市長はこれまでの反対姿勢を一変させ、電力需要が高まる「夏場の限定運転」を突然主張し始めた。「(細野原発相が言う)安全判断が暫定であるのなら、運転期間を限るのが論理的帰結だ」という理由にもならない理由で、再稼働反対から容認へと180度方向転換したのである(朝日新聞、6月1日)。
だが、これには確かな裏があることがスクープされた。日経新聞(6月6日)によれば、関西広域連合の会議の直前、5月15日夜に橋下市長は松井知事と一緒に関西経済3団体首脳部と秘かに会い(酒席を共にしたとも伝えられている)、関電会長から電力需要の逼迫(ひっぱく)を理由に再稼働容認を強く迫られたのだという。そして思いついたのが(入れ知恵されたのが)「夏場限定の臨時運転」だったのだろう。
以後の橋下市長の対応は見苦しいことこのうえない。朝日新聞からは「それはないよ、橋下さん」(社説余滴、6月7日)と皮肉られ、再稼働の容認(変心)は「橋下劇場の最大のつまずき」であり、「政治家としての手痛い失点」になると断じられた。
また、これと相前後して行われた大阪市民に対する毎日新聞・MBSの合同世論調査(6月2、3日)でも、橋下市長支持率は府知事時代の最高70%から54%にまで下落し、逆に不支持率は5%から16%に上昇してきている。大阪維新の会の国政進出に対しては、期待する51%、期待しない43%となって賛否が拮抗してきたのである(毎日新聞、6月5日)。
それとともに、橋下市長の基本政策に対する評価も変化しつつある。というよりは、基本政策に疑義が生じてきたので支持率が低下したと言うべきかもしれない。具体的には、大阪都構想支持29%、不支持23%、どちらとも言えない47%、財政再建方針支持54%、不支持15%、どちらとも言えない29%、原発再稼働への対応支持49%、不支持18%、どちらとも言えない30%である。
この数字をどう読むかについては意見の分かれるところだが、過去のデータと比較すると、明らかに橋下ブームの衰えはもはや否定できないところまで来ていると言うべきだろう。それを象徴するのが『日刊ゲンダイ』(6月5日)の「民主党に“白旗”、バケの皮剥がれた橋下徹」という大見出しの記事だった。『日刊ゲンダイ』は、電車のなかで読むのが憚られるので(アダルト写真が満載だから)ふだんは滅多に買わないが、この日ばかりは見出しに釣られてつい読む破目になった。短い記事なので紹介しよう。
「正体見たり。ついに橋下徹大阪市長のバケの皮が剥がれた。関西電力の大飯原発再稼働に反対してきた橋下が「事実上の容認」に転じた件である。橋下は1日の記者会見で、「細野大臣が『暫定的な安全基準で過渡的な安全判断である』と明言した」「発送電分離など『電力供給革命』に道筋が見えてきた」と説明。「現実の政治というのは、その時々に応じて判断しないといけない」と言い訳しながら、自らの“変節”の理由を並べていた。」
「そのうえ、次期衆院選で民主党と全面対決することも撤回。「『民主党に国の統治は任せられない』と言ったのは、暫定的な安全基準なのに『安全宣言』したから。今回、細野大臣が『暫定的』と正直に認めたから、(倒閣の)前提事実はなくなった」とアッサリ白旗を揚げたのだった。あまりの豹変ぶりにフジテレビの安藤優子キャスターにまで「今まで言っていたことは建前だったんですね」と皮肉られていた。」
「でも、これが橋下という男の本質だ。ハデな攻撃は注目を集めるためのポーズ。計算ずくで相手を完全に敵に回さず、だから、悪者にもならない。「橋下さんのうまいところは、『結論』を言わないことです。原発再稼働も発言をよく聞くと、原発の是非ではなく『プロセス』を批判していた。彼はリアリスト。本気で再稼働に反対したら、財界が選挙で協力してくれなくなるのをわかっている。記者会見では『暫定的』という言葉を何度も繰り返していましたが、電力使用ピークの夏を過ぎても政府が原発の稼働を止めなければ、一転、文句をつけるための下地づくりでしょう」(地元記者)。ズルい政治家である。」
「タイムズ」「インディペンデント」「ガーディアン」などの高級紙(発行部数数十万部)で知られるイギリスでも、現実の政治を変える影響力を持つのは数百万部の発行部数を誇る「デイリーミラー」など大衆紙だといわれる。『日刊ゲンダイ』がそこまでの影響力を持っているとは思われないが、それでも「大阪のオジサンたち」に与える影響は決して小さいものではない。マスメディアの世界でも変化は着実に起こっている。
結局のところ、橋下市長の関電大飯原発再稼働問題に関する発言は“犬の遠吠え”に終わったということであろう。関電や民主党政府には「噛みつく」振りをしながら決して噛みつかず、ただ“遠吠え”しただけだった。その一方、大阪市民に対しては子ども、女性、高齢者など弱い人たちにところ構わず噛みつき、「市政改革プラン」などと称して市民生活を滅茶苦茶に壊そうとしている。
大阪市民の「補助犬」であるべき大阪市長が、財界・関電の「飼い犬」となり、民主党政府の「番犬」となったのでは市民生活はとうてい守れない。関電大飯原発再稼働をめぐる橋下市長のこの間の一連の行動は、市民の前に「正体見たり。ついにバケの皮が剥がれた」ことを自ら証明して見せたのである。
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