http://www.asyura2.com/12/senkyo131/msg/152.html
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#人的投資をある程度増やすのは悪くないだろうが
自民党だと、また無意味な箱ものを量産しそうなヤバさがある
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35401
日本経済の幻想と真実
「人からコンクリートへ」先祖返りする自民党八方美人の政治に未来はない
2012.06.07(木)
池田 信夫
自民党は6月4日、「国土強靱化基本法案」を国会に提出した。これは今後3年間を「国土強靭化集中期間」として防災設備に15兆円を集中投資し、10年間で200兆円の国債を発行して公共事業を行うという計画である。
さいわい野党が出しても今国会で通る可能性はないが、遠からず自民党が政権に復帰することを考えると笑ってすませるわけにはいかない。
古い自民党に回帰するバラマキ法案
「国土強靱化」とは聞き慣れないことばだが、自民党のホームページにある法案の概要によれば、その基本理念は「経済等における過度の効率性の追求の結果としての一極集中、国土の脆弱性の是正」による「戦後の国土政策・経済政策の総合的検証の結果に基づく多極分散型の国土の形成」だそうである。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-118.pdf
田中角栄の「列島改造論」以来の、都市から地方に再分配する「土建国家」の復活だ。その具体策も、最初の方は「大規模災害発生時の円滑・迅速な避難・救援の確保」などもっともらしい話があるのだが、後半は、
・地域間交流・連携の促進(全国的高速交通網の構築、日本海国土軸・太平洋国土軸等の相互連携)
・我が国全体の経済力維持・向上(国際競争力強化のための社会資本整備、アジアとの貿易・交流・連携)
・農山漁村・農林水産業の振興
・離島の保全等(海岸等の保全、周辺海域の警備強化、住民の生活基盤の整備)
といった項目が並ぶ。
「農山漁村・農林水産業の振興」や「離島の保全等」が防災とどういう関係があるのだろうか。要するに、震災に便乗して昔のバラマキ公共事業をまるごと復活させ、民主党のスローガンを逆転させて「人からコンクリートへ」戻ろうということだろう。
都市住民の支持を失った自民党にとって、最後の命綱は農民票と土建票である。特に土建業界は政治との関係が強く事業費の規模が大きいので、多額の政治献金を集めやすい。これは無党派層の支持はあきらめ、古い自民党に戻ってコアな支持層を固めようということだろう。
200兆円の国債発行で財政が破綻する
この「200兆円バラマキ」の教祖が、京大の藤井聡教授である──というと、マクロ経済学者が景気対策を提唱していると思われるかもしれないが、彼は工学部の教授で経済学は素人である。ところが、彼が国会に提出した資料では、「デフレ」が諸悪の根源だという珍説を展開している。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201201-201203/presentation/20120220fujii_economicgrowth.pdf
これはよくある勘違いである。デフレで名目賃金が下がると同時に物価も下がるので、実質所得(名目賃金+デフレ率)はあまり変わらない。事実、2000年代に入ってから名目賃金は11%下がっているが、実質賃金はほぼ同じだ。
したがってこの錯覚にもとづいて展開される藤井氏の壮大な「デフレ脱却策」なるものは、経済的にはすべてナンセンスである。問題はデフレでなく不況なのだ。
藤井氏の提唱するバラマキ公共事業は、無意味であるばかりではない。政府債務が1000兆円以上も積み上がった日本で、さらに200兆円の国債を発行したら、銀行は消化できないだろう。したがって日銀が買わざるをえない。これは藤井氏も認めているが、それによってインフレが起こることは「望ましい」という。デフレよりインフレのほうがいいからだそうだ。
もちろん1〜2%のインフレなら、実質賃金が下がるので雇用調整がしやすいというメリットはあるが、国債が未達になって財政が破綻したとき、マイルドなインフレで収まる保証はどこにもない。こういう「財政インフレ」は歴史的に見ても、物価が数倍から数百倍のハイパーインフレになるのが普通だ。そうならないことを藤井氏が証明しない限り、こんな危険な政策はとりえない。
政治にも「選択と集中」が必要だ
自民党が野党に転落して2年半。万年与党にあぐらをかいて業界団体と癒着していた傲慢さはなくなった(というか癒着できなくなった)が、かつて自民党に期待されていた「自由経済を守る」という使命が必要なくなり、何をしていいのかが分からなくなった。そこで自分探しの結果、出てきたのが「右シフト」と「公共事業」だ。
彼らが提案した憲法改正案も、天皇を「元首」にして国旗や国歌を定め、自衛隊を「国防軍」と改称するなど、大した意味のない改正に力点が置かれる一方、ねじれ国会の原因になっている参議院の改革にはまったくふれていない。参議院自民党が反対したからだという。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/116666.html
昔ながらの自民党の体質は変わらない。利害の対立する問題はすべて先送りし、国粋主義的なスローガンで目先を変えようということだろう。
公共事業も同じだ。規制改革については関係業界につながる族議員が拒否権を行使するため、誰も反対しないバラマキしか党として打ち出せる政策がないのだ。
こうした自民党の体質は、高度成長に適応したものだ。農産物自由化の「つかみ金」に見られるように、利害の対立する問題については金で解決するのが彼らの常套手段だった。田中角栄以来の「国土の均衡ある発展」も、地方に税金をばらまいて貧富の格差を縮小する知恵だった。いま問題になっているバラマキ福祉も、実は田中の始めたものだ。
しかしこのように利害対立を金で解決する手法は、1990年代以降、財源が枯渇すると困難になった。それでも従来の「八方美人」路線を続けたため、政府債務が膨張したのである。民主党はそれを変えるはずだったのに、バラマキ公共事業をバラマキ福祉に変えただけで、政府債務はさらに膨張した。
天文学的な政府債務を抱えた日本で、与野党ともに財政を膨張させる政策を競うのは常軌を逸している。自民党にとっても、バラマキで土建業者や農家などの票を取ることはできても、都市の無党派層は離れるだろう。国粋主義的なスローガンで高齢者の票は取れるだろうが、それは先細りだ。
この2年半で民主党は政権担当能力がないことを露呈したが、自民党も自浄能力がないことを露呈してしまった。これはイデオロギー以前の政治システムに問題がある。政府がすべての国民の問題を税金で解決するキャッチオール型政府モデルに限界が来ており、企業と同じように「選択と集中」が必要なのだ。それに気づかない限り、自民党も日本経済も衰退を続けるだろう。
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