http://www.asyura2.com/12/senkyo130/msg/719.html
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民主党の中では馬淵澄夫さんが秀逸。
小沢一郎さんとうまく連携できると良いのだが。
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「給付付き税額控除」こそが公平な低所得者対策であり、「歳入庁の創設」こそが真の霞が関改革である
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32676
先週水曜日、「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」集中審議で質疑の機会を得た。与党の一員とはいえ増税に対しては慎重派である筆者に、質疑の機会など到底ないと思っていたので思わず「いいんですか!?」と問いただしたくらいだ。国対筋である鉢呂筆頭理事からならば当然としても、藤井裕久税制調査会長から直接の依頼があったことも驚きの一つであった。
与党議員として、あまりにも野党的な質疑をするわけにもいかない。しかし、慎重派、中間派を自認する立場で、言うべきことをしっかりと政権に伝える必要もある。悩みながらの承諾ではあったが、40分間の短い時間を使ってかねてからの主張と併せて税の課題についてフルに質疑をしようと決意した。
詳しい内容はアーカイブをご覧いただければありがたいのだが、論点は二つ。
一つは、附則18条の弾力条項の歴史的経緯と、経済の好転状況の確認の意義、並びにデフレ脱却の不十分さを克服するための日銀法改正の是非。二つ目は、野党が修正を迫る軽減税率を巡る低所得者対策の骨抜き、並びに「歳入庁つぶし」の裏の思惑についてであった。
日銀法改正にまで連なる弾力条項については相当程度、ここでも考えを示しているので、本コラムでは、質疑の時に時間が足りなかった歳入庁つぶしにつながる軽減税率の問題点について触れておきたい。
低所得者に対しては確実に逆進性対策が実施される
軽減税率とは、食品など生活必需品についての消費税率を下げる制度のことである。野党は、低所得者対策としてわかりやすいとの理由から、食品などの税率軽減を訴えている。
世界の消費税に類する税制(付加価値税:VAT)を見てみると、軽減税率を採用している事例はままある。英国などは食品については「ゼロ税率」を採用しているし、米国においても州によっては食料品、アンダーウェアーなどの衣類、医薬品を無税にするなどの軽減税率が採用されている。軽減税率は一見、日々の暮らしに追われる低所得者対策のようにも見えるし、イメージとして「サイフにやさしい」税制ととらえられがちだ。
一方、民主党がかねてより主張し続け、また政府案7条1号にも盛り込まれた「給付付き税額控除」はそのネーミングのわかりにくさもあってか、あまり理解が進んでいない。これは、税額控除とそもそも税を払う必要のない低所得者には給付を行うという制度であり、低所得者に対しては確実に逆進性対策が実施される方法である。
所得控除形式や給付の付かない税額控除形式に比べ、累進性を強化することが可能であり、設計の仕方によっては、就労インセンティブの向上も可能だ。ただし、一方で給付付き税額控除は、公平な給付のためには、包括的かつ正確な所得捕捉が必要になるなど、その導入には決して容易ではない課題もある。
そこで、政府案では、マイナンバー制度(法案では「番号制度」)の導入と、さらには歳入庁の創設による税と社会保険料の一体徴収体制の構築についての本格的作業の推進が定められているのだ。
軽減税率を導入したら最後、修正は不可能
さて、上述したように、こうした状況下で野党は軽減税率を打ち出そうとしているが、そもそも軽減税率が低所得者対策には実はならないということは、海外事例からも明らかであり、財務省もそのことはよく知っているのである。
昨年の9月8日に、財務省で財政制度審議会の分科会が開かれている。
●財政制度分科会議事録(平成23年9月8日)
●日本の再成長に向けた見通しと戦略(2011年9月8日)
そこでは、IMFのMichael Keen財政局 シニア・アドバイザーから、軽減税率と給付付き税額控除についてプレゼンテーションが行われ、次のように説明されている。
「消費税は累進的ではないが、(1) 税と給付の制度全体における累進性を問題とすべきであり、(2) 異なる税率を導入することによる効果は極めて限定的なものにしか過ぎない」
さらに、
「他の地域における事例から得られる主要な教訓は、公平性という目的を達成するためには複数税率を用いるよりも良い方法があるということ、そして、過ちを犯すと修正するのは困難だということである」
この指摘を次の図表で確認してみる。
図1:日本における軽減税率導入試算(財務省財政制度分科会より)
これは、例えば食品について見るならば、食品に支出される割合は所得グループ間であまり差がないということを示している。ちなみに、選択肢@は15%の単一税率、選択肢Aは食品を10%に軽減し他を17%、選択肢Bは食品を5%に軽減し他を18%とした場合の試算である。
この図からも明らかなように、最も貧しい層に対する影響も最も裕福な層に対する影響もあまり変わらないのである。Michael Keen氏は、軽減税率に対してこうも述べている。
「消費税を引き上げるならば、貧しい人たちを保護するために、食品に関して、重要な品目に関して税率を下げるべきだという意見が出てきます。原則的には、意図するところは善意の意図があるわけですが、これは、実務上はあまりよくない方法であるということです」
軽減税率が低所得者に対して恩恵がないというのは、このような試算のみならず諸外国でも十分把握されている事実なのである。
では、どうしたらいいのか?
それにはMichael Keen氏は「さまざまな給付システム、手当てがその答え」と述べている。英国では先述したように付加価値税はほぼすべての食品に関して0%である。もともと貧困者を守るために導入された税制ではある。しかし、理論的に間違っていることはすでに明らかとなっている。それを下の図で確認してみよう。
図2:英国で食品ゼロ税率を廃止し給付にした場合の試算(財務省財政制度分科会より)
これは英国での食品ゼロ税率を廃止して他のすべての品目と同じ税率を食品に課し、貧困者を保護する給付に置き換えてみた場合の試算である。所得層で言うなら、真ん中より少し下の層(図中の所得十分位における「4」の層)で給付がゼロとなる計算なのだが、それよりも下の層(図中「1」〜「3」の低所得層)では給付額が負担を上回り、損益がプラスとなる。一方、高所得者には給付はなく、税の負担のみを負うために損益はマイナスとなる。
確かに、日々財布とにらめっこしながら食品を購入している主婦にとって、軽減税率は一見するとありがたい制度に思えてしまうかもしれない。しかし、その実、家計全体で見れば低所得者にマイナスになることはあっても、プラスになることは決してない税制なのである。本気で低所得者対策を考えるならば、給付付き税額控除のほうがはるかにその本来の目的に合致していることが、この2つの図の検証からは見えてくる。
さらにMichael Keen氏は重要な教訓として、先に示したように、「複数税率を用いる=軽減税率導入」という過ちを犯したら最後、修正は事実上不可能だと指摘する。
ゼロ税率を廃止すべきだということについても、氏いわく、
「英国では、政策立案者は皆分かってはいるのですが、それをやろうとすると、政治的な自殺行為になってしまうのです。ただ、税率をゼロに下げるということ自体が大きな間違いだということを学ぶ必要があります。確かに誘惑はあるかもしれません。政治的な圧力があって、軽減税率が良い、複数税率が良い、という圧力はあるかもしれません。しかし、結局は大変なツケが回ってくるものだと思います」
単一税率である今の税制を崩してしまったら最後、その歪は永遠に修正されない事態にもなりかねないのである。
歳入庁の創設こそが真の霞が関改革
もちろん一方で、給付付き税額控除を実現しようとすれば先に述べたように、番号制度と歳入庁創設により、「所得の捕捉の完全化」ならびに「保険料徴」および「徴税の一体化」で公平性を期すことが制度設計の大前提となる。
逆に、軽減税率導入となれば、現行の国税庁並びに地方自治体税務当局、あるいは国民年金機構による税と保険料徴収体制のままでも実行が可能だ。言い換えれば、軽減税率導入となれば、喫緊の課題としての歳入庁創設、は必要なくなる可能性が大きいのである。
実は筆者は、5月17日特別委員会初日に前原政調会長からの「軽減税率では十分な低所得者対策ができない」という質問に対する、総理の「いわゆる逆進性対策の中で、軽減税率を効果的に使えないかというご議論もあります」という答弁に危うさを感じていた。メディアも翌18日には一斉に「軽減税率に前向きな姿勢」と報じた。
すでに4月27日に、官邸内の作業チームで行っていた歳入庁構想の徴収イメージ3分類に、類型3として「連携強化型」が示され、今の国税庁と国民年金機構を存続させるイメージを打ち出していたために、歳入庁構想はもはややる気がないとみられていたことに追い打ちをかける答弁でもあったからだった。
残念ながら、今の政府に歳入庁構想を是が非でも進めようという意思は見えにくい。むしろ、増税できるなら野党の軽減税率に乗っても構わないという空気すら感じる。
そして、何よりも警戒すべきは、野党の対案作成にも深く関わっているであろう財務省自身が、税制の公平性をかなぐり捨ててまでも軽減税率導入を密かに野党に吹き込み、結果としての歳入庁つぶしに暗躍しているのではないかということだ。もちろん邪推に過ぎないと当局は否定するかもしれないが、十分に監視を高めなければならない事象ではないか。
一見、「主婦にやさしい税制」という触れ込みで軽減税率導入などになってしまって、真の公平性を担保し、国民の財布からお金を徴収するという巨大権限を、歳入庁として財務省から独立させることを、決して潰えさせてはならない。
増税の是非もさることながら、こうした背景を国民に知らしめていかねばならない。なぜなら歳入庁創設こそが、真の霞が関改革なのだから。
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