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長谷川幸洋「ニュースの深層」
2012年05月25日(金)
消費増税の前に公約違反のけじめをつけろ!
当選前後で主張を180度変えた野田首相の「政治的倒錯」とは
消費税引き上げをめぐる国会論議が本格化している。野田佳彦首相は「(増税実現に)政治生命を懸ける」と繰り返し強調しているが、この言葉をどう受け止めたらいいか。
永田町やマスコミは「増税を実現できなければ退陣」という趣旨と受け止め、野党は首相に圧力をかける材料にしている。私は、ちょっと筋が違うと思う。野田はそもそも増税を言い出した時点で議員バッジを外すべきだったのではないか。
野田は2009年総選挙の前に「増税の前にシロアリ退治をする」と約束していた。国民に対する重い公約を破った時点で、政治家にとって一番重要な「正統性」がない。公約破りについて、政治家としてけじめをつけるほうが先である。
■ 「財源を作ることは十分可能」
まず、野田自身の発言を確かめておこう。YouTubeで「野田、シロアリ」と検索すれば、次のような野田の演説が出てくる。すでに多くの読者が見ていると思うが、あまりに象徴的な演説だ。消費税論議がヤマ場を迎える前に、あらためて見ておく意味はある。
まず1本目だ。野田はマイクを握って聴衆にこう語りかけている。
「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールです。
書いてないことを平気でやる。これっておかしいと思いませんか。書いてあったことは4年間何にもやらないで、書いてないことは平気でやる。それはマニフェストを語る資格がないというふうに、ぜひみなさん、思っていただきたいと思います。
その一丁目一番地、税金の無駄遣いは許さないということです。天下りを許さない。渡りは許さない。それを徹底していきたいと思います。
消費税1%分は2兆5,000億円です。12兆6,000億円ということは消費税5%ということです。消費税5%分のみなさんの税金に天下り法人がぶら下がってる。シロアリがたかってるんです。それなのにシロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか? 消費税の税収が20兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれません。
鳩山さんが『4年間消費税を引き上げない』と言ったのは、そこがあるんです。シロアリを退治して、天下り法人をなくして、天下りをなくす。そこから始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしいんです。徹底して税金の無駄遣いをなくしていく。それが民主党の考え方です」
「シロアリ退治から始めなければ、消費税を引き上げる話はおかしい」と強調している。ここがポイントだ。
次に2本目。
「私どもはマニフェスト、みなさまにお配りをしております。魂を込めて今回はマニフェスト作りました。私たちの、このマニフェストの一丁目の一番地は、税金の無駄遣いは許さない、ということであります。徹底して天下りをなくす、そして渡りは認めない。
こうした税金の無駄遣いを徹底することによって、お金を生み出していき、16兆8,000億円、民主党のマニフェストを実現するには新たな予算が必要になります。私たちは、財源は見つけることができるんです。
一般会計は80兆円ほど、特別会計を合わせると207兆円。この特別会計には無駄がいっぱいあります。私はこの特別会計改革の責任者をやってまいりました。
一般会計は黒い皮の財布です。1万円やカードが入っている。そのほかに21の特別な財布がお尻のポケットや靴裏にいっぱい入っているんです。でも21の特別会計、21の離れでは、私たちが調べた限りでは、すき焼き食べ放題、焼肉食べ放題、ビール飲み放題、焼酎飲み放題、無駄遣いはいっぱいやってます。
ここから16兆8,000億円の財源を作ることは十分可能であります。無駄な事業をやめて、本当に必要なところにお金を回していく。これが政権交代です。政策の優先順位を決めて、本当に必要なところにお金を流していく、予算をつけていく、これが民主党の考え方であります。
財源はいっぱいあります。天下り法人に12兆円もお金を使ってる国です。シロアリを退治して、働きアリの政治をたまには実現しようではありませんか」
こちらではシロアリ退治に加えて、特別会計に無駄遣いがいっぱい詰まっている、という話をしている。16兆8,000億円の財源があるというマニフェストにも触れている。
いまの時点で読むと、野田佳彦という政治家がいかにデタラメな政治家か分かるだろう。民主党政権になっても、シロアリ退治はほとんどしなかった。形ばかりの事業仕分けをしてみたが、財務省主導だったために、根幹の部分には手が付けられなかった。にもかかわらず、3年前の演説をまったく忘れたかのように、今度は増税が日本を救うと言っている。
■ 与謝野、横粂よりもはるかに悪質な倒錯
この「シロアリ発言」は国会でもマスコミでも取り上げられたが、あまりにデタラメすぎるので、あっけにとられたのだろうか。これが議員辞職に値するような裏切りである点をしっかり追及する向きはなかったように思う。どうせデタラメを言うなら、これくらい盛大なデタラメを言えば、まかり通ってしまうという前例が作られてしまったようだ。だが、私はいまでもけっして見逃せない。
自分が公約した政策を選挙に当選した後、堂々と破っておいて、それにとどまらず、今度は裏切った政策を実現するために「政治生命を懸ける」というのは「倒錯」以外のなにものでもない。これほどの政治的倒錯はちょっと例がないだろう。
有権者に対する裏切りという点で言えば、与謝野馨元財務相が自民党の比例代表候補として当選しながら、菅直人政権で民主党内閣に入閣した例がある。このときも私は、ある署名コラムで〈与謝野は議員辞職すべきだ〉と書いた。
同じく比例代表で当選しながら民主党を離党して、菅直人元総理の選挙区から立候補を決めた横粂勝仁衆院議員についても、このコラムで〈議員辞職が筋〉と指摘した。
ただ、与謝野も横粂も自分の政治主張そのものを変えたわけではない。与謝野は自民党時代と変わらず消費税引き上げを訴え、横粂も菅の「偽りの退陣表明」が許せないというのが離党の理由だった。
それぞれ自民党と民主党に投票した有権者からみれば、比例代表の当選者が当選後に党を変えてしまうのは許せないとしても、2人の政治主張そのものには共感できる、という部分もあるかもしれない。
しかし、この2人と比べても、今回の野田のほうが実ははるかに悪質だ。野田は自分の政治主張そのものを、当選後に180度変えてしまったのだから。有権者を完全にだました形である。野田の裏切りが分かっていたなら、多くの有権者はけっして野田に投票しなかっただろう。
■ 解散とは別なけじめのつけ方
こういう裏切り行動をしっかり追及せず、野党が「(裏切り政策である)増税を貫徹できなかったら、退陣すべきだ」と言い出したら、今度は野党までが倒錯する形になってしまう。どうも永田町では、政治家の倒錯行動が野党にも感染拡大しているかのようだ。
自民党の谷垣禎一総裁は消費税引き上げに賛成する条件として、野田に対して政権公約(マニフェスト)破りを理由に解散・総選挙を求めている。これまた、おかしな話である。自民党は政策として増税が必要と考えるなら、まずは粛々と増税法案の修正を求めて正々堂々、賛成すればいい。
一方で、野田の裏切りのほうが重大と考えるなら、政策論議を棚上げしても解散ではなく議員辞職、あるいは内閣総辞職を求めるべきだ。国民を裏切ったのは野田と民主党政権である。彼らが責任をとればいい話であって、なにも他の政党の議員を巻き添えにする理由はない。
国会議員は結局のところ、国民の代理人にすぎない。国民がご主人様であって、代理人が議員なのだ。いま野田の壮大な裏切りを目の前にしながら、野党やマスコミが「裏切り政策を実現しなければ退陣して解散・総選挙を」などという議論が広がっているのを見ると、国民そっちのけで代理人たちがそろって集団自殺しようと言っているようでばかばかしくなる。
まずは議員辞職、さもなければ、少なくとも内閣総辞職を求める。それもしないなら解散・総選挙を受けて立つ、という姿勢が本筋だ。そう考えれば、自民党としては「増税法案には基本的に賛成する。ただし、公約を破った野田と民主党は政権を担当する資格がないから、内閣総辞職して政権を自民党に渡せ」という主張になる。
そんなことを考えていたら、谷垣は先のBS朝日番組『激論! クロスファイア』で「私たちは解散を求めるが、別なけじめのつけ方があるとすれば、それは野田が考える話」という趣旨の発言をした。これは注目に値する。もしかしたら、内閣総辞職と引き換えに増税法案を通すというシナリオがあるかもしれない。それは事実上、解散前の増税大連立になるので、財務省は大歓迎だろう。野田にとっても、まさに「政治生命を懸けて増税を実現した」形になる。
(文中敬称略)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32630
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