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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32415
4月13日、厚生年金と共済年金の一元化のための法案が国会に提出された。だが、長年の懸案が民主党政権になってようやく実現した、と評価してもらっては困る。この法案は5年前に自民党と公明党が提出した法案とほぼ同じだ。この時、内容が中途半端だとして法案を潰したのが民主党である。自分で否定したものを5年も経ってから提出したのはなぜか。実はこの裏には、官僚の策謀があるということを読み解いてみたい。
今回出された統合法案により、これまであったいくつかの官民格差が是正される。しかし、公務員に対する様々な制度上の優遇措置が厚生年金並みに変更されるのには時間がかかる。格差が解消されるとしても3年半後。それまでの間は格差を温存するのだ。
また、現在は厚生年金の保険料率16・412%に対して国家公務員共済は職域加算分まで含んでも15・862%と安くてすむのだが、これが統一されるのは平成30年になってから。6年も先だ。
さらに、批判の焦点となっている職域加算。民間の企業年金に当たる、いわゆる3階部分だが、厚労省の推計でも企業年金がある事業所は37・5%しかないのだから、職域加算は廃止するのが筋。しかし、なぜかいったん廃止した後、改めて「新たな年金」について別に法律で定めるということになった。つまりなくならないのだ。
そして、ここからが本題だが、なぜ官僚が自分達の特権を一部放棄してまで厚生年金と統合したいと考えたのか。実は国家公務員共済の将来がかなり危なくなってきているからだ。年金を受給する高齢者を何人の現役世代で支えているかを示す年金扶養率を見ると、厚生年金では2・39。つまり2・4人で一人を支えるのに対して、国家公務員共済は1・53。かなり苦しい。国家公務員は民間に比べて年齢構成がいびつで若い人の割合がどんどん少なくなる構造になっている。しかも、新卒採用の大幅削減を続けることになっていて、状況は一段と厳しくなる。少子高齢化が極めて深刻化することが確実なのだ。
もう一つ、保険料収入で賄われる1階・2階部分の支出に対して何年分を積立金として保有しているかという積み立て比率は、厚生年金の4・2年に対して国家公務員共済は7・8年で3・6年分多い。少子高齢化の影響が厳しい公務員共済にとっては当然の備えだが、3・6年多い程度ではむしろ足りないくらいだ。従って、統合するなら積立金全額を持参金として持ってきてもらわないと、厚生年金の加入者に将来大きな負担がかかることになる。
ところが、今回の統合法案では、厚生年金が4・2年分の積立金しかないから、共済も4・2年分しか積立金を持って来なくてよいということになっている。では、余った3・6年分はどうするのかというと、職域加算、つまり3階部分の支払いに充てて良いということになっているのだ。
つまり自分達の特権は守りながら、将来苦しくなった時には民間のサラリーマンにおんぶにだっこで助けてもらおうという虫の良い話なのだ。要するに官民格差是正に名を借りた公務員共済の救済策そのもの。民主党は官僚と公務員労働組合が反対する政策はとれない。だから、「身を切る改革だ!」などと叫んでも決して信じてはいけないのだ。
「週刊現代」2012年5月5・12日号より
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