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特集ワイド:“剛腕”小沢一郎元代表、どう動く 6月上旬が最初のヤマ
http://mainichi.jp/feature/news/20120518dde012010007000c.html
毎日新聞 2012年05月18日 東京夕刊
大村秀章・愛知県知事(左)、河村たかし・名古屋市長(右)との連携に意欲を見せ乾杯する小沢一郎元代表=名古屋市西区で14日、佐々木順一撮影
http://mainichi.jp/graph/2012/05/18/20120518dde012010007000c/001.html
またまた小沢一郎・民主党元代表(69)の動向に、政界が神経をとがらせている。政治資金規正法違反事件の「1審無罪」で党員資格を回復、親小沢派には国政の主導権奪回への期待が高まり、反小沢派には警戒心が広がる。四半世紀にわたって国政を揺り動かしてきた剛腕は、再びどこへ向かう?【戸田栄】
◇消費増税…首相と妥協成立も
◇倒閣なら…細野豪志氏擁立も
◇解散なら…政界再編の可能性
まず最大の政治課題である消費増税については、敢然と反対する小沢元代表と「政治生命を懸ける」と言い切る野田佳彦首相との歩み寄りは、もはや不可能と見える。
「生活保護受給者が200万人を超える不況下で税を重くしたら、一体どうなるのか。天下り根絶や格差是正、無駄削減などの行財政改革をやってからじゃないと、増税などしちゃいけないんです」。小沢元代表側近の元参院議員、平野貞夫さん(76)が、小沢元代表の主張を代弁する。17日には消費増税を巡る実質審議が国会で始まった。野田首相が、今さら後には引けないと考えるのが常識だろう。
だが、小沢元代表の動向を20年以上も追ってきたノンフィクションライターの塩田潮さん(65)は「そこは政治です。かなり難しいでしょうが、小沢元代表と野田首相の妥協成立が絶対にないかというと、そうでもない」との見方を示す。「実際、野田首相はかなり前から、小沢元代表への個人攻撃を控えている。消費増税について絶対反対ではないと踏んでいるんでしょう。小沢元代表が言っている行財政改革という“前提条件”の整備で落としどころを探れば、歩み寄りの可能性はある」とみる。
振り返れば、竹下登内閣時代の官房副長官として消費税創設に尽力し、細川護熙内閣時代は国民福祉税導入を図ったのが小沢元代表だ。「本来は消費増税積極派」との評も根強い。消費税を14年4月に8%、15年10月に10%に上げる、というのが民主党のタイムテーブル。「つまり、かなり時間があるのです。増税の前提はその間にクリアすればいい。実施に間に合えば同じことだと野田首相が考えを変えれば、法案の今国会成立にこだわる必要はなくなります」。その場合、小沢元代表排除を求める自民党の協力を得るのは難しくなり、かえって法案成立の芽を摘みかねないリスクはあるが、政治が時に予想もしない展開を見せることは事実だろう。
政界では、妥協の道筋をつけるキーマンとして輿石東・民主党幹事長の名前が挙がる。さらに日本新党時代からの野田首相の師匠格で、小沢元代表とも良好な関係にあるという細川元首相による仲介もささやかれている。
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小沢元代表の声を黙殺したまま野田首相が法案成立にひた走れば、どうなるのだろう。
「小沢元代表は倒閣に動く。9月の民主党代表選で野田内閣を打倒する」というのが周辺が描く第1のシナリオだ。その場合、衆参合わせて100人を超える小沢グループが誰を擁立するかが焦点となる。民主党代表はイコール首相候補。党員に戻った小沢元代表自身の出馬は可能だが、政治資金規正法違反事件で検察官役の指定弁護士が控訴したため、「刑事被告人という立場のままではトップは無理」との声が大きい。
「そりゃあ小沢グループの中には『無理だ』とばかなことを言う者もいるが、様子を見なければわからんよ。あの裁判自体が間違っているし、まして控訴なんてね」。平野さんはそう反論する。民主党のある議員も「本人が出ると言えば、止める手段がないのは事実」と話す。
自身が出ない場合の候補について、政治評論家の森田実さん(79)は「最近の小沢さんは、細野豪志・環境・原発事故担当相、谷亮子・参院議員を引き立てている。幹事長時代に重用した細野さんは有力候補でしょうね」と語る。
一方で、10年の樽床伸二氏、11年の海江田万里氏と、小沢グループが推した候補は代表選で連敗中だ。「小沢元代表が擁立すると、どうしてもかいらいと見られるし、勝てる候補を探すのは今回も難しい」と塩田さんは見る。
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では「究極の選択」、小沢元代表がグループを率いて民主党を割る可能性はどうか。
平野さんは「小沢さん側から党を割ることは、今のところない。ただし、野田さんが消費税を絡めた解散をするなら別だ」と語る。「解散」には、野田首相が自民党の協力を得て消費増税を成立させる「話し合い解散」と、審議が行き詰まり消費税そのものを争点として解散する場合の2通りがあるが、いずれにしても小沢元代表は独自で選挙を戦うことになりそうだ。
そもそも小沢元代表は、また政界再編の嵐を巻き起こそうとしているのか。塩田さんによると「小沢元代表は政治の仕組みにこだわってきた政治家」であり、大目標の「政権交代が可能な議会政治」は実現済みだという。「小沢元代表も今年で70歳。さすがに、これから10年をかけて新しい大政党を育てようとは思わないのでは。ただし……」と塩田さんが続ける。「2大政党制の大枠はつくったものの、自民と民主はどこが違うのかという問題は残った。白紙に戻ってガラガラポンの政界再編を目指す可能性もなくはありません」
解散となったら、小沢元代表はどう戦略を描くのか。「北海道に鈴木宗男さん、大阪に橋下徹・大阪市長、愛知には大村秀章知事と河村たかし・名古屋市長がいる。彼らと連携すれば、小沢さん自身は残りの選挙区に全力を注げる。反増税派は自民党にもいるし、国民も支持してくれるだろうから勝てますよ」。平野さんは自信を見せる。
今は自重しているようにも見える小沢元代表だが、いずれ行動を起こしそうだ。動き始めるのは、どのタイミングになるのだろう。
野党は消費増税について100時間に及ぶ審議を求めており、法案を成立させるためには国会の会期延長が必要になりそう。野田首相が採決をにらんで延長を決めるのは6月上旬、そこで小沢元代表が何らかの手を打つ可能性がある−−というのが平野さん、塩田さんの一致した見方だ。
与党の内紛が激化すれば当然、国政の混迷は深まる。それでも平野さんは「消費増税で国民の生活苦を招くより、ずっといい」。迷いなく語る姿は、いつも確信的に事を進める小沢元代表をほうふつとさせる。まだ「剛腕」は鳴りを潜めているものの、早くも政界を疑心暗鬼に陥れている。
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