http://www.asyura2.com/12/senkyo130/msg/364.html
Tweet |
http://amesei.exblog.jp/15892013/
先週の半ばころ、TPP交渉に関する日本の政府代表に元外務官僚の大島正太郎が任命されたというニュースがあった。これをどのように読みとくべきか。
結論から言うと、TPP交渉は「外務省北米局・経済局の仕切り」で行われるということである。経済産業省は権限争いに敗れたわけだ。
大島正太郎の経歴は以下のとおり。
大島正太郎。東京大学卒業後、外務省入省。アジア局南東アジア第一課長、情報調査局企画課長、在ロシア大使館公使、在米大使館公使、経済局長、駐サウジアラビア特命全権大使、外務審議官、G8サミット小泉総理個人代表(「シェルパ」)、駐韓国特命全権大使。平成20年退官。WTO上級委員会委員。
当初、TPP政府代表は、田中真紀子外相とやりあった、同じく外務官僚の野上義二の名前や、長島昭久の名前が取りざたされていた。が、二人は流石に固辞。
大島は、経済担当の外務審議官、国際貿易・経済担当兼査察担当大使などを歴任、駐韓国大使を務めている。WTO委員でもあり、外務省経済局の利権を守りつつ、日中韓の韓国とのつながりもある大島に落ち着いたのだろう。
しかし、外務官僚となると厄介だ。通産省・経済産業省にもアメリカのロビイストみたいな官僚はいないわけではないが、外務省経済局は事実上、年次改革要望書の窓口機関( http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/pship_g.html )でもある。日米同盟を重視するという暗黙の圧力で、アメリカ主導のTPPに傷を付けないという国益以前の動きをするのではないかという懸念が否定出来ない。
そもそもまだ混沌としているアジアの経済秩序に、極めて高度な通商協定であるTPPは不向きだ。地域の経済統合はヨーロッパの例を見ればわかるように時間をかけて行うものだ。TPPはアメリカの多国籍企業の思惑のみで構築されたスキームであり、無理を通そうとすると絶対に後で問題が起きる。
例えば、TPP加盟から脱退する要件をどうするのかとか、TPPにより経済的な不利益が生まれた場合に各国政府がどのような対応策を打ち出すことが許容されるのかとか、そういう問題がクリアされていない。
日本政府はアメリカの自動車業界の要求を一部受け入れて、いわばアメリカ側に事前交渉で譲歩することでTPP交渉参加を米議会に認めてもらおうとしているようだが、今述べたようにTPP交渉は性急かつ高度なレベルの貿易協定であり、今のアジア地域にはそぐわない。いまさら日本が後から交渉に加わっても、議論の根幹をひっくり返す主張はできない。したがって、ここは中国・韓国・日本にASEANを加えた中程度のFTAを目指す(各国の利害の部分を各国が認め合う)という段階的な対応で数十年かけた地域経済統合を無理ない形で行うことを目指すべきである。
アメリカの思惑としては、アジア経済秩序が中国を加えたかたちで形成される前に、アメリカのイニシアチブでTPPを既成事実化したいということだろう。しかし、アジアにはオセアニア諸国である豪州やニュージランドもある。まずはこのアジア・オセアニア地域で通商協定を結んだ上で、米州がメインのTPPとのすり合わせを行うのでいい。最低限、日本はそのことをアメリカに対して説明するという戦略を取るべきだ。
しかし、それではアメリカとそのお仲間である日本の財界陣には都合が悪いようだ。TPP推進派で三極委員会メンバーのローソン社長の新浪剛史などは英エコノミストの取材に「日中韓FTAではなく、TPPを三カ国FTAのベースにすべきだ」とも語っている。新浪は渋澤健(日本国際交流センター次期理事長)とならび、日米人脈の要。新浪の主張は極めて政治的なものだろう。
アメリカが強引にTPPを推進することは結果的に、中国との戦略的関係の部分で安全保障上の対立にまでつながる可能性もある。アメリカは通商協定についてもまずは日本や豪州、中国、韓国のプレイヤーのバランスを見計らうという「オフショアバランシング」の発想で動いてもいいように思うのだが、どうもTPPに関しては前のめりである。
確かにアメリカ側の主張する日本の自動車業界の業務慣行は非関税障壁ととられかねない部分はある。例えば、米通商強硬派のクライド・プレストウィッツがFTへの寄稿で指摘していたが、日本の自動車メーカーのディーラー制度がそれである。トヨタのディーラーにはトヨタ車以外は売っていない。これはむかしナショナルの電気屋がナショナル製品しか扱わなかったことと同じで昭和時代の慣行だ。経団連の中のトヨタロビーがそれだけ強いのかもしれない。
May 17, 2012 4:05 pm
Truth behind Japan’s free and open market
By Clyde Prestowitz ( http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f848b2a6-9f65-11e1-a255-00144feabdc0.html#axzz1vNwZZwav )
だが、そのような自動車業界の要望はいわば方便である。アメ車が日本では売れないのは燃費や大きさなどのそれ以外の理由があるからだ。アメリカが軽自動車を目の敵にしているようだが、これでは一生、日本ではアメリカ車は売れるはずがない。本当の米財界の狙いはTPPによる関税分野以外の規制緩和だろう。
規制を緩和するかどうかは個別に判断していけばいい。これを数十分野にも渡る包括交渉、なおかつ交渉終了後は4年間は交渉内容を秘密にするという、まるで19世紀の秘密外交を関係国に強いることで達成しようとするのがTPPというアメリカの戦略である。
TPPというバスに乗る必要はない。少なくともアジア経済交渉をやった後で検討しても遅くはない。アメリカべったりの人はそれが嫌でたまらないのだろうが・・・。
しかし、ここでTPP反対派の国会議員の先生方に私が言いたいのは、「もしダムが決壊したらどうするか」という事後の対応についてである。今はTPPに対する反対集会をやっていればいい。しかし、アメリカの圧力が強く、日本の財界が「死んでもTPP」という姿勢を変えなければ、いずれはダムの堤防は決壊する。その時に、「何も考えていませんでした」ということでは、敗北への一里塚である。
今のうちに、「万が一に交渉になだれ込んだ場合」のシミュレーションをやっておくべきだ。その時に、「傷を少なくする」というダメージコントロールの発想も必要になるだろう。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK130掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。