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TPP政府代表に外務官僚が就いた意味―政治家はプランCを用意しているか?(ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報)
http://www.asyura2.com/12/senkyo130/msg/364.html
投稿者 五月晴郎 日時 2012 年 5 月 20 日 14:36:51: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://amesei.exblog.jp/15892013/

 先週の半ばころ、TPP交渉に関する日本の政府代表に元外務官僚の大島正太郎が任命されたというニュースがあった。これをどのように読みとくべきか。

 結論から言うと、TPP交渉は「外務省北米局・経済局の仕切り」で行われるということである。経済産業省は権限争いに敗れたわけだ。

 大島正太郎の経歴は以下のとおり。

 大島正太郎。東京大学卒業後、外務省入省。アジア局南東アジア第一課長、情報調査局企画課長、在ロシア大使館公使、在米大使館公使、経済局長、駐サウジアラビア特命全権大使、外務審議官、G8サミット小泉総理個人代表(「シェルパ」)、駐韓国特命全権大使。平成20年退官。WTO上級委員会委員。

 当初、TPP政府代表は、田中真紀子外相とやりあった、同じく外務官僚の野上義二の名前や、長島昭久の名前が取りざたされていた。が、二人は流石に固辞。

 大島は、経済担当の外務審議官、国際貿易・経済担当兼査察担当大使などを歴任、駐韓国大使を務めている。WTO委員でもあり、外務省経済局の利権を守りつつ、日中韓の韓国とのつながりもある大島に落ち着いたのだろう。

 しかし、外務官僚となると厄介だ。通産省・経済産業省にもアメリカのロビイストみたいな官僚はいないわけではないが、外務省経済局は事実上、年次改革要望書の窓口機関( http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/pship_g.html )でもある。日米同盟を重視するという暗黙の圧力で、アメリカ主導のTPPに傷を付けないという国益以前の動きをするのではないかという懸念が否定出来ない。

 そもそもまだ混沌としているアジアの経済秩序に、極めて高度な通商協定であるTPPは不向きだ。地域の経済統合はヨーロッパの例を見ればわかるように時間をかけて行うものだ。TPPはアメリカの多国籍企業の思惑のみで構築されたスキームであり、無理を通そうとすると絶対に後で問題が起きる。

 例えば、TPP加盟から脱退する要件をどうするのかとか、TPPにより経済的な不利益が生まれた場合に各国政府がどのような対応策を打ち出すことが許容されるのかとか、そういう問題がクリアされていない。

 日本政府はアメリカの自動車業界の要求を一部受け入れて、いわばアメリカ側に事前交渉で譲歩することでTPP交渉参加を米議会に認めてもらおうとしているようだが、今述べたようにTPP交渉は性急かつ高度なレベルの貿易協定であり、今のアジア地域にはそぐわない。いまさら日本が後から交渉に加わっても、議論の根幹をひっくり返す主張はできない。したがって、ここは中国・韓国・日本にASEANを加えた中程度のFTAを目指す(各国の利害の部分を各国が認め合う)という段階的な対応で数十年かけた地域経済統合を無理ない形で行うことを目指すべきである。

 アメリカの思惑としては、アジア経済秩序が中国を加えたかたちで形成される前に、アメリカのイニシアチブでTPPを既成事実化したいということだろう。しかし、アジアにはオセアニア諸国である豪州やニュージランドもある。まずはこのアジア・オセアニア地域で通商協定を結んだ上で、米州がメインのTPPとのすり合わせを行うのでいい。最低限、日本はそのことをアメリカに対して説明するという戦略を取るべきだ。

 しかし、それではアメリカとそのお仲間である日本の財界陣には都合が悪いようだ。TPP推進派で三極委員会メンバーのローソン社長の新浪剛史などは英エコノミストの取材に「日中韓FTAではなく、TPPを三カ国FTAのベースにすべきだ」とも語っている。新浪は渋澤健(日本国際交流センター次期理事長)とならび、日米人脈の要。新浪の主張は極めて政治的なものだろう。

 アメリカが強引にTPPを推進することは結果的に、中国との戦略的関係の部分で安全保障上の対立にまでつながる可能性もある。アメリカは通商協定についてもまずは日本や豪州、中国、韓国のプレイヤーのバランスを見計らうという「オフショアバランシング」の発想で動いてもいいように思うのだが、どうもTPPに関しては前のめりである。

 確かにアメリカ側の主張する日本の自動車業界の業務慣行は非関税障壁ととられかねない部分はある。例えば、米通商強硬派のクライド・プレストウィッツがFTへの寄稿で指摘していたが、日本の自動車メーカーのディーラー制度がそれである。トヨタのディーラーにはトヨタ車以外は売っていない。これはむかしナショナルの電気屋がナショナル製品しか扱わなかったことと同じで昭和時代の慣行だ。経団連の中のトヨタロビーがそれだけ強いのかもしれない。

 May 17, 2012 4:05 pm
 Truth behind Japan’s free and open market
 By Clyde Prestowitz  ( http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f848b2a6-9f65-11e1-a255-00144feabdc0.html#axzz1vNwZZwav

 だが、そのような自動車業界の要望はいわば方便である。アメ車が日本では売れないのは燃費や大きさなどのそれ以外の理由があるからだ。アメリカが軽自動車を目の敵にしているようだが、これでは一生、日本ではアメリカ車は売れるはずがない。本当の米財界の狙いはTPPによる関税分野以外の規制緩和だろう。

 規制を緩和するかどうかは個別に判断していけばいい。これを数十分野にも渡る包括交渉、なおかつ交渉終了後は4年間は交渉内容を秘密にするという、まるで19世紀の秘密外交を関係国に強いることで達成しようとするのがTPPというアメリカの戦略である。

 TPPというバスに乗る必要はない。少なくともアジア経済交渉をやった後で検討しても遅くはない。アメリカべったりの人はそれが嫌でたまらないのだろうが・・・。

 しかし、ここでTPP反対派の国会議員の先生方に私が言いたいのは、「もしダムが決壊したらどうするか」という事後の対応についてである。今はTPPに対する反対集会をやっていればいい。しかし、アメリカの圧力が強く、日本の財界が「死んでもTPP」という姿勢を変えなければ、いずれはダムの堤防は決壊する。その時に、「何も考えていませんでした」ということでは、敗北への一里塚である。

 今のうちに、「万が一に交渉になだれ込んだ場合」のシミュレーションをやっておくべきだ。その時に、「傷を少なくする」というダメージコントロールの発想も必要になるだろう。  

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コメント
 
01. 2012年5月20日 14:41:53 : 42nGc6judU
ケインズは、はじめ自由貿易論者だったが、保護貿易論者に転じた。
貿易を否定しなかったが、自由貿易論者には根拠が無いと言った。



02. 2012年5月20日 19:48:06 : AHP301HUto

私自身、経済に関する専門的知識は皆無である。しかし、グローバル化する経済活動では我々素人の生活もいやおうなしに世界経済の動静に侵食されている。
 そこで『自由貿易』という概念であるが、この『自由』という言葉には要注意が不可欠である。超大国にとっての『自由』が弱小国にとっては『自由の侵害』であったり、『侵略』であったり、『属国化』であったり、危険性が内包されている。従って、自由貿易の自由貿易たる条件作りには公平で民主的なプロセスが先ず不可欠である。
 最初の段階で民主的なプロセスを踏むことができないとすると、『自由貿易』は机上の空論に過ぎず、我々は不平等貿易を締結させられることになる。
 

03. 2012年5月20日 20:22:43 : sUpHQ8Q75g
油堕菌どものいう自由とは
連中が美味しい思いのできる環境のこと
詐欺師の常套句だってことさ

04. 2012年5月20日 21:49:37 : jylWuhXUI2

TPPをやるとアメリカの農業はオーストラリアにやられちゃうんだろ?
んなことやるわけないだろw

俺はUSTR廃止と聞いた時点でピンときたよ。
中田安彦情弱杉www



05. 2012年5月20日 23:41:10 : Edke1n3woZ
02様、ご指摘のとおりと思います。
世界経済の知識がない主婦には「T○Pは規制緩和で、『自由に他国民を死ぬまで絞り上げ』富み太る制度破壊であり、強欲資本の経済戦争にしか見えません。
「植民地の夢よ、もう一度」は終わった。日本は絞り上げる側にも絞られる側にも立って欲しくない思いです。
愚民政策で育った日本の「ゆとり」、34歳以下が先輩が築き上げた以上に技術革新しなければ「もう日本は立ち行かない」。しかし彼らは円周率3、台形の面積の出し方をさえ教わってなく、一事が万事「いい加減でいいさ!」と考える習性があるかも。
この戦力で、日本を世界の規制緩和の中で戦わせ「日本資産を根こそぎ奪おう!」と待ち受ける狼の群れに、日本の残り全部を献上するのですか?
真っ先に大島氏は内政、司法・教育・警察組織を「正常化しなければ」と思います。

06. 2012年5月21日 01:10:49 : On4TjRx810
TPP交渉の政府代表に外務官僚との小さなニュースに、ゾクッとしました。
経済も外交も解るとは云えませんが、直感的に最後の命綱の経済さえも
どん底に落とされるのだと。 
政治の混乱のこの時は他国にとっては最高の攻め時でしょうから、大災害
の大混乱時に脆弱政府を作らせ、後は懐刀のような官僚達を思いのままに?


07. 2012年5月21日 07:47:42 : AX9RzbOfUg
>04

>TPPをやるとアメリカの農業はオーストラリアにやられちゃうんだろ?
んなことやるわけないだろw

TPPは農業問題ではない。そんなことは1年以上前から指摘されていることである。

TPPを推進することで、米国の産業の内の幾つかは打撃を受けることは想定済みだ。従って、アメリカの自動車業界は必死に日本に対して難癖をつけているのだ。

また、アメリカの一般国民も、NAFTAによって、失業率が上がり、当初言われていたような生活の向上などとはかけ離れたものだったために、そもそも自由貿易に対して懐疑的な見方すらある。

オバマも、大統領に就任する前は、NAFTAを批判してきたし、アメリカの伝統的な保護主義の方向により戻すのではないかとさえ言われていた。

では、なぜアメリカはそれでもTPPを推進するのか?それは、現在、米議会をあたかも私有するかのような、米金融業界と軍産複合体の意向が強く働いている。

年次改革要望書で再三言ってきているように、米金融業界の狙いは、郵貯、簡保を含めた、日本の当該分野全体であり、日本人の資産そのものだ。これは、日本にとどまらず、将来を見据えアジア全体の権益の確保に繋げて行くのだろう。それには、アジアの分断が得策であるが、これは軍産複合体の目的にも適うものだ。

軍産複合体に象徴される、米国の国防総省、軍需産業、シンクタンク、議員、などで作られるコミュニティーは、一説によると、鳩山政権の普天間基地問題、中国との関係改善の方針にも影響を受けたらしい。言うまでもないが、TPPとP4協定とはも全くの別物である。

緊密な経済関係を考えれば、米国が中国と戦争になるとは到底考えられないが、将来、中国との対立に備えて、また、何より米国自身の経済利益のためにアジアを分断するのが得策と判断したようだ。

これは、全くばかげた発想で、中野の言うような「戦略家ぶってる馬鹿」が驚くことにアメリカにも多いのだ。現在のアメリカは、ネオコン政権に乗っ取られたブッシュの時と、それほど変わっていないという事実は、日本では一般的には知られていない。

以上を、端的にそして正確な表現にまとめると、投稿者の言う「アジア経済秩序が中国を加えたかたちで形成される前に、アメリカのイニシアチブでTPPを既成事実化したいということだろう」となる。


>俺はUSTR廃止と聞いた時点でピンときたよ。

何をピンときたのでしょうね、謎です。

>中田安彦情弱杉www

従って、情報弱者なのはあなたです。USTR廃止??それで何が分かるのか・・・。実際に、アメリカの政治がどのようなメカニズムで動いているのかの勉強が必要ですね。

しかも、自体はもっともっと複雑で、推進主体は上記の2主体だけでは当然なくて、利害当事者も多数いれば、自由貿易信奉というイデオロギーも入り組んだ、説明しがたい現象なのです。あまり早計に「ピン」とこない方が良いでしょう。


08. 2012年5月21日 09:08:56 : rWmc8odQao
斎藤やすのり氏
「米国は自国の車を売りたい。売るためには日本の排気量毎の税制、日本の”軽”というカテゴリー、ハイブリッドなどの先進技術が邪魔。だから、軽をなくせ!、大型車の税金を安くしろ!、先進技術は共有化しろ!!と圧力をかけてきている。ちなみに米韓FTAではこれらを韓国は飲んだ。」
https://twitter.com/#!/saitoyasunori/status/203630362490961920

「先進技術を共有化しろ」はヒドイよね。マネもできないのか… 中国以下じゃないか…


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