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大阪市議会で先々週、内容も作成経緯も不可思議な条例案が出回った。条例案について尋ねられた橋下徹大阪市長は「僕が市民の側に立った場合には『うるさい。大きなお世話だ』と多分言う」と、言い放った。橋下氏の口調が攻撃的になるのは珍しくないが、今回は様相が異なる。条例案は、自ら代表を務める地域政党「大阪維新の会」の大阪市議団が提起したもので、身内の条例案に代表が首をかしげるというちぐはぐさを露呈した。
問題になったのは、今月1日に維新市議団の美延映夫幹事長が「早ければ5月議会に提出予定」と市議団の総会で説明、報道陣にも配った「家庭教育支援条例案」の原案。児童虐待が相次ぐ現状などを踏まえ、家庭の子育て支援策をまとめたものという。ところがその内容が報じられると市民団体などから維新に猛抗議が相次いだ。橋下氏まで「市議団の方針なので僕に(条例案提出についての)決定権はない」とはしごを外すような発言をするに至り、案の披露からわずか6日で白紙撤回に追い込まれた。
何がまずかったのか。前文には「親になる心の準備のないまま、いざ子供に接して途方に暮れる父母が増えている」との問題提起がある。要は「親自身の成長」を促すための条例だという。そのために、保護者の「1日保育士体験」の義務化などを盛った。これに対し、「上から目線」「親の子育て方法について条例で決めるのはおかしい」との批判がインターネットを中心に噴出した。
さらに傷を深くしたのが、「発達障害、虐待等の予防・防止」を掲げた項目だ。条文中には「乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因である」「(発達障害は)わが国の伝統的子育てによって予防、防止できる」などの記述があった。これでは、発達障害の子供を持つ保護者は、子供に愛情を注いでいなかったかのように取られかねない。発達障害の子供を持つ保護者らが「科学的根拠がない」「発達障害に対する偏見を増幅しかねない」と激怒し、「大阪自閉症協会」など13の市民団体が7日、市議会に詰めかけて抗議し、維新幹部が陳謝に追われた。
文部科学省によると、発達障害はコミュニケーション能力が不足する自閉症や、読み書きなどの習得が困難な「学習障害(LD)」、落ち着きがなく衝動的な行動をとる「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」などの総称。児童精神科医で社団法人「日本自閉症協会」の山崎晃資会長は「発達障害の主たる原因は脳の機能障害や成熟障害とされ、親の愛情不足が原因でないことは医学的に確立されている。もちろん、『伝統的子育て』で予防や治療できるものではない」と指摘。条例案について「障害に対する偏見や無理解を助長する内容で、障害者との共生社会の実現に逆行している」と憤る。
維新関係者の話を総合すると、条例案提出の動きは、当選3回の辻淳子市議が主導したという。同市議や美延幹事長の当初の説明では、原案は明星大学の高橋史朗教授(教育学)が作り、維新側に提供。これをたたき台に第2会派の公明と議論し、共同提案を目指すとしていた。ところが、原案は団長ら一部幹部が目を通しただけで、維新内部で十分な議論を尽くしておらず、橋下氏や大阪府知事の松井一郎幹事長も知らなかったという。
高橋教授は財団法人「親学推進協会」理事長。「親としての学び」と「親になるための学び」の必要性を掲げ、2007年には当時の安倍晋三首相主導の教育再生会議で意見陳述したこともある。辻市議は高橋教授と親学に関する勉強会を重ねており、家庭教育支援条例制定を目指す流れになったという。
ところが、高橋教授は8日、維新が「たたき台」と説明する条例案への相次ぐ批判を受け、同協会のホームページ(HP)に、「ある県の極めて粗雑な非公式な私案が一体なぜマスコミに流れたのか理解に苦しむ」と批判する緊急声明を掲載した。これは維新がHPで、「ある県で提出された条例案を今後の議論の材料として所属議員に提出したもの」と釈明していることを受けたものだ。
高橋教授は今回の騒動で、研究を進めてきた家庭教育支援策が台無しになってしまうとの懸念を示した上で、今後、国会議員の勉強会などを通じ「発達障害の環境要因と伝統的子育てなどについて、科学的知見に基づく情報提供に努める」との方針もHPで示した。
維新は火消しに躍起だが、その説明のずさんさが目に付く。HPの釈明は「巷(ちまた)に出回っている家庭教育支援条例案について」と題しているが、自ら報道陣に配布したものを「巷に出回っている」と責任を曖昧にした形だ。「5月議会には提出せず、さらに議論を尽くす」との説明にも早く幕を引きたいとの思いがにじむ。
維新が言うところの「既に条例案が提出された県議会」というのも実は判然としない。維新内部で名前が挙がった関東地方の地方議会事務局は取材に対し、「色々な報道機関から問い合わせがあるが、承知していない」と回答。再び美延幹事長に聞くと、「『ある県』がどの県なのか、実は私も正確には知らない」との答えが返ってきた。
辻市議にも真相をただしたが、「もう終わった話だからいいじゃん。話すことなんてありません」と真摯な説明はないまま。取材の中で、高橋教授との勉強会の中で出てきた資料が大元になったことは認めたが、「高橋先生から直接渡されたわけではない。(受け取ったのは)そのラインというか……」と不可解な説明に終始した。
維新のお粗末な対応にとばっちりを受けたのは公明市議団。維新側の「共同提案」発言を受け、市民団体の批判が飛び火したのだ。高山仁幹事長は8日の議員団総会で「議論はこれからという段階で、条例案に賛同する方針など示していない」と釈明した。
別の会派の幹部は、ベテランの辻市議や美延幹事長が騒ぎの発端となったことに「新人ならまだしも、ちょっと冷静に条文を読めば批判が殺到することぐらいすぐ分かる」と突き放す。4月に安倍氏を中心に超党派の国会議員らで「親学推進議員連盟」が結成されたこともあり、「親学関連の議員や団体にうまくのせられたんやろ」との指摘も聞かれる。
「何を目的にしたものかがさっぱりわからない」「しょせんベイビーズなんだから橋下に反対されたら取りやめるんだろう」……。維新が同条例案を撤回すると、インターネットの掲示板では様々な批判がわき起こった。普段は橋下氏や維新への肯定的な評価が目立つネット上の世論も、同条例案には厳しい意見が目立つ。
「我々は大阪の貧困を解決するというプラグマティック(実践的)な目的のために集まったグループ。特定の思想信条はないはずなのに……」。大阪府議会議長で維新の政調会長を務める浅田均氏は眉をひそめる。今回の騒動は政治集団としてのガバナンスの低さを露呈しただけでなく、非科学的で偏った考え方を党として掲げたととられかねない危うさもはらむ。「国政進出にあたり、無党派層取り込みを狙う維新の戦略にも水を差しかねない」と維新幹部は危惧するが、組織全体での危機意識共有にはまだ時間がかかりそうだ。
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トンデモ教育論「親学」を推進してる人たちの話 大阪維新の会市議団 「家庭教育支援条例案」の思想的背景
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